計算機

標準画像を開く 画像は、1851年の第1回ロンドン万博に出品された、コルマー(C. X. T. de Colmar)が1818年に発明し、その後研究を重ねてきたアリスモメーター(世界で初めて量産された歯車式計算機)である。

1642年、フランスのパスカル(B. Pascal)は現存する機械計算機では最古のものを発明した。当時ヨーロッパでは複雑な進法の貨幣単位が使われていたため、税務官吏として計算に苦労していた父親の仕事を助けるために、パスカリーヌとよばれる歯車式の計算機を試作した。盤にいくつかのダイヤルがあり、それぞれの桁をあらわしている。桁ごとに、足し引きしたい数値を入力していくと、中の歯車と連動して自動的に繰り上がりを行うのが特徴である。補数を加えて引き算を行う方法や、桁をずらしながら加減算をすることで除算を行う方法は、その後の様々な計算機に組み込まれ、現代の最新式コンピュータにも、彼の発想が原理的には全く変わらない形で用いられている。

その30年後の1693年、ライプニッツ(G. W. Leibniz)は、段付歯車を使って加減算だけでなく乗除算も完全に自動的に行うことができる機械を製作するのに成功した。またライプニッツは、現代のコンピュータに普及している2進法の発展の創始者でもある。

冒頭のアリスモメーターはこれら歯車式計算機の、世界初の量産機械である。当時は、こうした手動の卓上計算機が使われていた。

プログラムの可能な自動計算機を最初に構想したのはイギリスのバベジ(C. Babbage)で、当初は、階差機関と呼ばれる、数表を作るための多項式の計算ができる計算機の実現に力を注いだ。当時は、航海などで膨大な数表が必要だったのだが、手動で計算を行うため、間違いが頻出していたためである。

しかし、バベジの階差機関は結局、彼自身の手では完成せず、スウェーデンのショイツ(Scheutz)親子が1843年に完成させた。彼らは1853年と59年に改良型を作り、1853年のものは1855年の第1回パリ万博で金メダルを取っている。1859年のものはイギリス人ドンキン(B. Donkin)が製作し、イギリスの生命表計算のために使われた。この機械は1862年第2回のロンドン万博に出品され、現在は科学博物館に保存されている。なお、右の画像は、1876年フィラデルフィア万博に出品されたグラント(G. B. Grant)による階差機関である。

バベジは1837年に、与えられたプログラム通りに計算する、より一般的な解析機関を開発しようとした。これは計算結果を機械的メモリーである歯車箱に蓄えることができ、一連の操作結果を呼び戻すこともできた。設計のみにとどまったが、式と計算結果を分けるという点で、コンピュータの歴史上、重要なステップとなった。

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グラントによる階差機関

計算機 (3画像)

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アリスモメーター Israel Abraham Staffelの計算機 グラントによる階差機関
参考文献:


内山昭 『計算機歴史物語』 岩波書店 1983 <M151-76>
戸谷清一 『計算と計算機器の歴史』 富士短期大学出版部 1972 <M151-16>
ハーマン H.ゴールドスタイン著 ; 末包良太[ほか]訳 『計算機の歴史 : パスカルからノイマンまで』 共立出版 1979 <M151-46>
星野力 『誰がどうやってコンピュータを創ったのか?』 共立出版 1995 <M154-E1242>
M.キャンベルーケリー, W.アスプレイ著 ; 山本菊男訳 『コンピューター200年史』 海文堂出版 1999 <M154-G1022>