自動車

標準画像を開く 画像は、1867年のパリ万博で、会場への客を乗せた蒸気自動車。運転手とボイラーマンが乗り、煙突が付き出た姿は、自動車というより蒸気機関車を想像させる。

機械動力による最初の自動車は、1769年にフランスで作られた大砲輸送用蒸気自動車である。不幸にも実験走行中に壁に衝突したので、自動車事故としても世界第一号となった。

イギリスでは、1801年にトレヴィシック(R. Trevithick)が高圧蒸気機関を搭載した自動車を開発した。約20年後にはバスの動力としても使用されるが、運賃が高額で、法律で運行速度が厳しく規制されたこともあり、蒸気自動車の開発は止まってしまう。

その間、フランスやアメリカで蒸気自動車が発達を遂げる。フランスでは、1828年以降、蒸気機関を備えた貨物車、牽引車、二輪車が登場する。1873年に蒸気自動車の父と呼ばれるボレ(A. Bollee)が8人乗りの蒸気バスを製作、その後軽量化の研究も進んだ。アメリカでは、エヴァンズ(O. Evans)による1805年の水陸両用で軌道を走る蒸気浚渫車(土砂をすくう車)の開発に始まり、小型軽量化による性能向上の研究が進み、大量生産される。1850年ごろには起動の早いボイラーと石油バーナーの組み合わせが生まれ、パイプ・フレームと放射状に棒組みした車輪などで軽量化も図り、ガソリン自動車に近い外観と構造の高性能車が製造された。

その後、内燃機関の登場により、ガソリン自動車の時代を迎える。ドイツで、エンジンの設計者としてマイバッハ(W. Maybach)の協力を得たダイムラー(G. Daimler)は、1885年、0.5馬力エンジン搭載の2輪車を製作した。同じくドイツのベンツ(C. F. Bentz)は、翌年に初の実用的なガソリンエンジン自動車とされる三輪車を製作する(0.9馬力)。以後、1891年にステアリング装置の特許を取得するなど、ベンツは走行機械としてのまとまりを重視した自動車製造を行っていく。一方、ダイムラー社は近代的キャブレター(気化器)、4気筒10馬力エンジンの製造などエンジンを重視した開発を進める。両社はそろって1889年の第4回パリ万博にも出品した。

そのほか、1891年には、エンジンを前方に置く自動車の基本となる駆動システムや、自動車用空気入りタイヤが実現している。なお、19世紀にはガス自動車や電気自動車も開発されたが、主流とはならなかった。19世紀後半から20世紀初頭にかけてヨーロッパ、アメリカの主要メーカーが続々と設立され、間もなく自動車時代の到来を迎える。

自動車 (3画像)

万博会場を運行した蒸気自動車 標準画像を開く 自動車の展示 標準画像を開く Postel-Viney社の小型自動車用V2電動機 標準画像を開く
万博会場を運行した蒸気自動車 自動車の展示 Postel-Viney社の小型自動車用V2電動機
参考文献:

荒井久治 『自動車の発達史 : ルーツから現代まで. 上』 山海堂 1995 <NC23-E790>
アルバート・L.ルイス, ウォルター・A.マシアーノ著 ; 徳大寺有恒訳 『世界自動車図鑑 : 誕生から現在まで』 草思社 1980 <NC23-253>
エリック・エッカーマン著 ; 松本廉平訳 『自動車の世界史』 グランプリ出版 1996 <NC23-G227>
樋口健治 『自動車技術史の事典』 朝倉書店 1996 <NC23-G117>