コラム

さまざまな蔵書印


日本の蔵書印は、中国や朝鮮のものと比べて印文、形、色など多種多様で変化に富んでいます。そこで、ここでは少し変わった蔵書印をご紹介いたします。

大きい印・小さい印

最も大きな蔵書印は、近江国仁正寺(のちに西大路と改称)藩藩校日新館の「日新館図書記」と福居芳麿の「嶰谷蔵書記」で、どちらも縦15cm、横9cmを超えています。反対に最も小さい蔵書印は、中村俊定が使用した丸長印「中村」(縦6mm、横4mm)です。また、印文が最も長いのは先の福居芳麿の印で、238字あります。

日新館図書記

日新館

嶰谷蔵書記

福居芳麿

中村

中村俊定

古い印

時代を最も遡ることができる蔵書印は、聖武天皇(701-756)の「松宮内印」と、光明皇后(701-760)の「積善藤家」「内家私印」です。

内家私印

光明皇后

積善藤家

光明皇后

松宮内印

聖武天皇

変わった蔵書印

神代文字を使った、賀茂真淵の印文不詳印と常世長胤の「サカキノヤノシルシ」、また万葉仮名を使った今尾清香の「奈泥志古曾能爾乎左牟留布美良乃思流之」(なでしこぞのにおさむるふみらのしるし)や山川正宣の「麻佐乃布」などは、変わった文字を使用した蔵書印と言えるでしょう。

奈泥志古曾能爾乎左牟留布美良乃思流之

今尾清香

サカキノヤノシルシ

常世長胤

[印文不詳]

賀茂真淵

麻佐乃布

山川正宣

動植物をモチーフにした印

文字を用いない蔵書印もあります。淡島寒月と小泉八雲の「烏」、加藤曳尾庵の「亀」、橘守部の「唐獅子」、木村仙秀の「橘」、新島八重子の「菊」、漆山天童の「鳥と魚」などはその例です。

鳥と魚

漆山天童

加藤曳尾庵

淡島寒月

小泉八雲

木村仙秀

新島八重子

唐獅子

橘守部

天皇や外国人などの印

先の聖武天皇の「松宮内印」、孝明天皇の「此華」、後桜町天皇の「明和」などがあります。外国人の蔵書印としては、アーネスト・サトーの「英国薩道蔵書」、バジル・ホール・チェンバレンの「英王堂蔵書」、フランク・ホーレーの「寶玲文庫」などがよく知られています。戦国大名大内義隆の「日本国王之印」は、当時の時代背景をよく表している印です。

此華

孝明天皇

英国薩道蔵書

アーネスト・サトー

松宮内印

聖武天皇

英王堂蔵書

バジル・ホール・チェンバレン

明和

後桜町天皇

寶玲文庫

フランク・ホーレー

日本国王之印

大内義隆

カラフルな印

蔵書印の色彩は、普通朱色を使うことが多いのですが、稀に墨色のものも見られます。この2色以外では、松平忠房の「尚舎源忠房」や脇坂安元の「藤亨」などの藍色、本居大平の「藤垣内印」や小中村清矩の「阿豆麻居蔵」の緑色、佐伯有穀の「富山佐伯有穀蔵書」や森田柿園の「森田」の茶色などがあります。また、2色を組み合わせた蔵書印には本間光丘の「本間氏図書」がありますが、稀有な例です。

森田

森田柿園

藤垣内印

本居太平

本間氏図書

本間光丘

阿豆麻居蔵

小中村清矩

富山佐伯有穀蔵書

佐伯有穀

尚舎源忠房

松平忠房

藤亨

脇坂安元

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電子展示会

「蔵書印の世界」は国立国会図書館の電子展示会です。 電子展示会の各コンテンツでは、国立国会図書館所蔵の様々なユニークな資料について、わかりやすい解説を加え紹介しています。

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