全国一の蔵書を誇った名古屋の貸本屋

大野屋惣八(大惣)

(おおのやそうはち(だいそう)

1733-1811(享保18-文化8)


名前

姓は江口、通称は新六。号は胡月堂。知多郡大野村出身なので大野屋とも号した。略称は2代目以降も大惣。

職業

貸本屋

人物

はじめは酒屋で薬種屋を兼ねていたが、明和4年(1767)から貸本屋を本業とした。基礎が固まったのが2代目からであり、3代目にかけて全盛時代だった。顧客は、武士、町人、学者など各階層にわたり、府下における庶民文庫の性格をもっていた。家業はその後、清次郎、貞蔵、惣太郎、惣太郎の妻と4代まで引き継がれたが、明治32年(1899)に廃業した。

蔵書印

ほかに、「大總貸本」「湖月堂」など十数点が知られている。

印影のよみ・大きさ

「大」(だい):21x20mm
「長嶋町五丁目大野屋惣八」(ながしまちょうごちょうめおおのやそうはち):31x14mm
「書林尾州名古屋長島町五丁目大野屋惣八」(しょりんびしゅうなごやながしまちょうごちょうめおおのやそうはち):39x25mm
「大惣かし本」:25x7mm

印影撮影資料

印影撮影資料
蔵書について

大惣には、坪内逍遥が頻繁に通い、本を読みあさったことは有名。
蔵書の規模も大きくかなり知られた貸本屋だったが、明治後年になって営業不振となり、蔵書は売却され四散した。大口としては、帝国図書館、東京と京都の両帝大図書館および東京文理科大学(現筑波大学)図書館に入った。東大に入ったものは若干をのぞいて関東大震災で焼失したが、京大に入った分は現在も見ることができる。蔵書目録は残っていないが、売却用に作成した目録が早稲田大学の図書館にある。
当館には、明治30年(1897)3月と5月の購入印が捺されている。

参考文献

柴田光彦編著『大惣蔵書目録と研究―貸本屋大野屋惣兵衛旧蔵書目―』本文篇・索引篇(青裳堂書店 1983)【UP171-198
『郷土文化(第五十七号第三号)』(名古屋郷土文化会 2003.3)【Z8-202
『日本一の貸本屋 大惣』[ビデオ](名古屋市博物館)

電子展示会

「蔵書印の世界」は国立国会図書館の電子展示会です。 電子展示会の各コンテンツでは、国立国会図書館所蔵の様々なユニークな資料について、わかりやすい解説を加え紹介しています。

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