令和8年度第1回 国立国会図書館活動実績評価に関する有識者会議 議事概要
1. 開催日時
令和8年7月3日(金曜)10時00分から12時00分まで
2. 開催形式
Web会議システムを用いたハイブリッド開催
3. 構成員
- (座長)岸田 和明(慶應義塾大学文学部教授)
- 上田 健介(上智大学法学部教授)
- 呑海 沙織(筑波大学副学長、筑波大学附属学校教育局教育長)
- 藤田 由紀子(学習院大学法学部教授)
4. 国立国会図書館出席者
木藤副館長、松浦総務部長、福林総務部企画課長
5. 主な会議内容
国立国会図書館総括評価2021-2025(案)について国立国会図書館(以下「NDL」という。)から説明を行った後、有識者会議構成員(以下「有識者」という。)による意見交換を行った。意見交換の概要は、以下のとおりである。
国立国会図書館総括評価2021-2025(案)について
全体構成について
有識者:
NDLの活動実績評価は、国の定める政策評価に関する法律が適用されず独自の評価を行っており、指標の設定においても評価指標と参考指標の2つがある点が興味深い。国や自治体の政策評価に関わる懇談会等にいくつか参加したことがあり、よく話題に挙がっていたのは、指標に関してアウトプットとアウトカムの区別をどうするかということである。昨今ではアウトプットの指標よりも、より政策の効果を測れるアウトカムの指標をできるだけ設定するという点に関心が集まっており、またアウトカムの評価というのは非常に難しいことから頭を悩ませることも多い。そうした観点を少し考慮に入れると、NDLの評価指標はアウトプットの指標という理解でよいか。
もう1点、参考指標は他律的な側面が強いために特に目標値を設定しないとしており、それ自体は理解できた。いくつかの項目で利用者の満足度の数値が掲げられているが、満足度に関してはアウトカムの指標として捉えてよいと思った。
有識者:
先ほどの有識者の、アウトカム重視で評価することに関心が集まっているという認識は正しい。なお、図書館評価においては、アウトカムは満足度で測定することが通例である。今回のNDLの評価指標の多くはアウトプットであるということもご指摘の通りである。こうした定量的な数値を使って客観的に評価することがこれまでのNDLのやり方である。数値的な指標だけでなく、もう少し定性的な評価を取り入れるべきではないかという議論も過去の有識者会議で取り上げられたこともあったが、難しいということで現在の形になっている。
有識者:
評価指標と参考指標という2つの指標に整理されたプロセスの中で、アウトプットとアウトカムに関する観点をどのように考えられていたか伺いたい。
有識者:
アウトカムの観点は満足度に関する指標のみで、その他はアウトプットを中心にNDLの活動実績を客観的に評価していくという姿勢だと見ている。
重点事業に係る事業分野①及び重点事業に係る事業分野②について
有識者:
重点事業に係る事業分野②の目標の1つとして有償のオンライン資料の制度収集が挙げられている。指標11①「新規収集データ数」については良い数値であり評価できると考えている。取組の中で日本全体のオンライン資料のどの程度の割合をカバーしているかといったことは把握しているか。
NDL:
総量を把握することが難しく、割合を出すことは難しい。
有識者:
もし把握していたら知りたかったという趣旨の質問であり、難しいとは考えていた。事業としては「おおむね達成」という評価で問題はない。
NDL:
引き続き取組を進める。
有識者:
重点事業に係る事業分野①について、良い評価結果だと思う。コメントとして、視覚障害について、先天性の方は視覚障害者のためのサービスをよく知っていることが多いが、後天的に視覚障害となった方にはなかなか広がっていないと感じているため、周知活動を進めていただきたい。
NDL:
引き続き図書館員向けの研修等を通じて取組の周知を図っていく。
事業分野1について
有識者:
「目標を達成した」という評語の通り、各指標が安定して推移している。特筆すべき成果として挙げられている旧優生保護法に関する報告書の作成については類例がない事業であったということだが、NDLを含めた国会で調査を行うこととなった経緯について伺いたい。
NDL:
令和2年度に衆議院厚生労働委員長及び参議院厚生労働委員長からNDLに対して協力要請があり、その後改めて衆議院調査局厚生労働調査室及び参議院厚生労働委員会調査室から協力依頼を受けたと聞いている。NDLが豊富な文献を有すること、また日頃の国会議員からの依頼調査を通じて海外動向に明るいという評価を得ていることからNDLに協力依頼があったと考えている。
有識者:
大部の報告書であり、NDLのリソースを活かした大きな仕事であったと理解した。
NDL:
補足として、衆議院厚生労働委員会及び参議院厚生労働委員会から提示があった調査項目は、「旧優生保護法の立法過程」、「優生手術の実施状況等」及び「諸外国における優生学・優生運動の歴史と断種等施策」である。大掛かりな調査であったため、衆議院、参議院及びNDLで協力し、NDLは「諸外国における優生学・優生運動の歴史と断種等施策」を担当し調査を行った。
有識者:
事業分野1は順調に進められたと理解した。評価結果>根拠・説明の2ポツ目末尾に「会議に参加」や「プロジェクトに参加」という記述があるが、参加したこと自体を評価しているのか、あるいは参加した上で何かに寄与したことを評価しているのか伺いたい。
NDL:
ただ会議に参加しているだけということはなく、他機関と連携したレポート作成やセミナーでの発表等を行っているため、具体的な実績はある。一方で、評価の基準として具体的な活動を設定してはいないため、参加したこと自体を評価することになっている。
有識者:
定量的なベンチマーキングとして全体的に指標の推移は良い。コメント及び質問として、図書館評価における全体的な枠組みの中でアウトカムとして盛んに議論されているのは、定性的な方法でのインパクト測定である。他の事業分野と比較して、事業分野1は国会議員という集団が特定できるため、定性的な方法を取りやすいのではないかと思う。具体的には、国会議員におけるNDLの評判といったものがあれば伺いたい。
NDL:
調査及び立法考査局では定期的に国会議員への要望調査及びアンケート等を行っており、依頼調査等について高い評価を頂いていると聞いている。
事業分野2について
有識者:
評語が「目標を一部しか達成できなかった」に留まったのは作業日数に関する指標によるもので、背景の説明も含め状況について承知した。その他では、以前の有識者会議でも発言したとおり、フロッピーディスクのマイグレーションを完了したことは、評価指標には現れないが大変重要な成果として個人的に高く評価している。
質問は、指標16「書誌データの利用①国立国会図書館サーチからの書誌ダウンロード件数」が令和5年度から急激に増えている要因について伺いたい。新たにAPIを公開したといった背景があったか。
NDL:
令和5年度にシステムの切換えがあり、その影響もあるものと考えている。
有識者:
重点事業に係る事業分野②に国立情報学研究所へデータを提供し大規模言語モデル(LLM)の構築に協力したという取組があったが、この書誌データの利用に関するダウンロード数も重要であり、利用件数が増えたことはNDLの一つの事業の評価につながると思う。
有識者:
指標13「東京本館で受け入れた和図書の受入れから書誌データ校了までに要した日数」及び指標15「索引誌当該号の受入れから雑誌記事索引のデータ校了までに要した日数」で未達成の年度があったことの要因について、最近の年度は財源が足りないという説明があった。状況を改善するための新たな予算要求や、あるいは既存の予算の組み直し等を考えているか伺いたい。また関連して、こうした作業日数に関する指標について、数字上は日数が大きくなることがサービス低下という意味になるが、実際にはどの程度影響があると考えているか。
NDL:質問のあった2つの評価指標は過去に長くかかっていた作業日数を評価指標として設定することで改善に取り組んできたという背景がある。作業が例えば1日遅れることの影響について一概には言えないところではあるが、大きなクレームといったものは確認していない。国の財政状況も当館の予算状況も大変厳しいが、引き続き効率化を検討したい。
NDL:
資料の整理にかかる日数の補足として、短期的に効果が表れるわけではないが、AIを活用して効率化できる工程について検討を始めている。また、電子的な出版物が増えている状況を踏まえ、現在は紙の資料と電子の資料について別々に整理作業をしているところ、資料組織化作業を含めた全体的な整理業務の流れの見直しを進めている。
有識者:
限られた予算の中でどの事業に重点的に取り組むかという視点では、先ほど有識者の発言にあったマイグレーション等の資料保存や資料収集が大事であり、それらを優先した結果、書誌データの校了に要した日数が遅れたと考えることもできると個人的に思った。評価を一覧した際に一部の未達成の指標が目立って見える懸念もあるが、先ほどNDLの発言にあったように自発的な改善のきっかけにもなることから、評価の枠組としては維持することに意味があるのだろう。
有識者:
図書館評価では、例えば相互貸借までにかかった日数等が定番の指標としてあり、有識者が言及された改善のきっかけという観点が確かにあると思う。
有識者:
同じ指標について発言が重なるが、書誌データの作成に関しては、NDLの役割を考えると、早さよりも正確さや精緻さが重要であると思う。指標16に関して有識者の発言にもあったとおり利用は増えており、また指標17「Web NDL Authoritiesのトップページのアクセス数」もよく活用されていることが分かることから、書誌データの作成は高く評価できる取組と考えている。
事業分野3について
有識者:
指標21「遠隔複写④インターネット経由申込複写について、受理から発送までに要した日数」や指標22「図書館等へ貸出し②受理から発送(又は謝絶)までに要した日数」について、目標が未達成であった理由については、評価結果に関する説明や先ほどの事業分野2での説明で大まかに分かる。一方で、指標29「イベント」において、開催回数という目標が達成されていないことに関しては、コロナ禍という説明以外に、なぜ達成されていないかをもう少し説明してほしい。
NDL:コロナ禍以前の実績から目標値を設定したため、達成が難しいところがあった。
有識者:評価指標としては未達成となっているが、現場の職員も「少ない」という印象を持っているのか。
NDL:特に少ないとは聞いてはいない。現場としては、制限がある中でオンライン等のやり方を工夫した結果だと思っている。評価指標の設定としてはこのままでよいのかという議論が館内でもあった。
有識者:著作権法が改正される中で、NDLはそれに応じたサービスを提供していかなければならないという状況であった。大変だったと思うが、個人向けデジタル化資料送信サービスも始まり、来館できない利用者向けの遠隔サービスの充実が進められていることは大変良い印象を持った。
有識者:指標21「遠隔複写④インターネット経由申込複写について、受理から発送までに要した日数」について、既定目標値型の評価指標として5.0日という目標値が設定されている。令和2年度は13.9日かかっていたところ、令和7年度が6.3日になっていることを鑑み、5.0日という設定について、今振り返ってどのように捉えているか。
NDL:この5.0日という数字も、コロナ禍以前の体制から設定したものである。
有識者:今後は5.0日を達成できる見込みであるということでよいか。
NDL:遠隔複写の受付から発送までの間には様々な工程を経る。手間がかかる資料は一定程度あるが、8割以上の申込みが5.0日以内に発送できればよいとして決めた基準である。コロナ禍の前後でその工程自体は変わっているわけではない。しかし、来館者数はコロナ禍以前の水準に戻ってきているのに対して、複写サービスの需要は低調なままという状況である。資料の説明時に複写事業者が作業体制を縮小したために日数が伸びたと申し上げたが、需要が戻らず収入の回復が見込めない状況では作業体制を元には戻せない。そのため、未達成の状態が続いている。その一方で、NDLは個人向けデジタル化資料送信サービス等、紙の複写の需要を減らすような施策も進めており、複写の需要が今後上向きになるということは事実上考えにくい。工程上可能であるからと言って、サービスレベルの基準としての目標値が5.0日のままでよいかは、今後見直す必要があると考えている。
事業分野4について
有識者:この5年間で新国立国会図書館サーチに切り替わり、誤差範囲かもしれないが、満足度の数値は上がっている。インターフェース部分のユーザビリティテストなどはしているか。
NDL:開発に際して調査を行った。
有識者:
今回、事業分野2に一部達成、事業分野3に未達成の評価指標があったが、様々な状況的要因によるものということを理解した。それに対して、この5年間の大きな変化の中で、評価指標にはない部分でNDLは様々な対応を行なっており、サービスの向上に努めていることを理解した。国立国会図書館総括評価2021-2025(案)について、この有識者会議としては了承ということでよろしいか。
(異議なし)
有識者:
評価指標が未達成や一部未達成となった取組については、サービスの改善、あるいは指標の見直しを今後進める必要があると思うが、了承とする。