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資料防災

災害は、図書館が長年保存してきた資料が一瞬にして消失する要因となる、資料保存における最大の脅威です。図書館は、災害から人命や施設を守るだけでなく、資料に対する被害を最小限にする責務があります。国立国会図書館は、資料を災害から守るための考え方として「国立国会図書館資料防災指針(PDF: 298KB)」を策定し、施設と人命を守るための消防計画と合わせて、資料の防災に取り組んでいます。

資料防災対策は、大きく分けて次の4段階に分けられます。

  1. 予防
  2. 準備
  3. 対応
  4. 復旧

特に、予防と準備にどれだけ取り組めているかが、被災後の対応・復旧に大きく関わってきます。ここでご紹介している対策や関連サイトを参考にしつつ、自館の状況に合わせた資料防災計画を策定し、突然起きる災害に備えていただければ幸いです。

後段には、よくある質問参考情報問い合わせ先も掲載しています。

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1. 予防

災害の発生を防止し、発生した際に被害をできるだけ抑えるための対策をとります。

  • リスクアセスメント
    はじめに、自館の建物や設備、資料の置かれている状況において、どのような災害や事故の危険性が潜んでいるかを調査し、危険度を評価します。
  • 予防
    次に、それらの危険を除去、あるいはできる限り減らす方策を考え実行します。

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2. 準備

被害が発生した場合に迅速に対処するために必要な準備をします。

  • 資料防災計画・対応マニュアルの整備
  • 救出・復旧に必要な備品や物資の準備
  • 訓練、等

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3. 対応

災害や事故発生後の初期対応の段階です。

  • 防災計画で想定した行動・手順の確認
  • 被害状況の確認
  • コストの見積もり
  • 被災現場の環境の安定化
  • 被災資料の保護・救出、応急処置等

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4. 復旧

被災した設備、資料等の整備・復旧を行い、業務とサービスを通常に戻していく段階です。時間をかけて計画的に進めます。

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よくある質問

資料が水に濡れてしまったなど、よくある質問はこちらをご覧ください。

Q
資料が水に濡れてしまいました!どうしたらいいですか?
A
水に濡れた資料は48時間以上経つとカビが発生しやすくなりますので、早急に乾かす必要があります。紙資料の場合、①まず濡れている所をタオルなどで押さえて表面の水分を取り除きます。②次に、数十ページおきにコピー用紙やキッチンペーパーなどの吸水紙をはさみ、資料を縦置きします。③扇風機などで風をあて、空気の流れを作って乾かします、④吸水紙は湿ったら取り替え、半乾きになるまで②~③を繰り返します。⑤最後に吸水紙を抜き、板に挟んで完全に乾くまで置きます。
乾かす際に注意が必要な塗工紙(コート紙)が使われた資料や、乾燥させる前に洗浄やクリーニングが必要な場合もありますので、詳しくは、対応のページで紹介している各種マニュアルを参照してください。
Q
濡れたまま時間が経ってカビが発生してしまった資料も救済できるのですか?
A
状態等にもよりますが、カビが発生した資料も、十分に処置すれば再び利用できるように修復することは可能です。ただし、カビは人体に有害なので作業には防護と十分な留意が必要であり、また、乾燥・殺菌・燻蒸・クリーニング・修復後の経過観察等が必要で時間・労力・経費に大きなコストがかかるため、本当に救済が必要かの判断が必要となります。
Q
災害が発生した時、資料の救済のための初期措置で大切なことは何ですか?
A
第一に人命を優先すること。建物内や周囲の安全が確認されてから、被害が拡大しない措置と資料の救出作業を始めます。救出は水に濡れた資料が最優先となります。大きな地震の場合は、余震によって建物や設備がさらに損傷するケースもあるので、注意が必要です。台風や洪水などで被害があらかじめ予想できる場合がありますが、避難する時間と経路を確保できる場合に限り、可能な範囲で資料の保護や移動を行います。被災状況及び初期対応の記録を取っておくことも重要です。
Q
現在、何も防災対策をしていないのですが、何から始めたらよいですか?
A
最初にすべきことは、自館が想定すべき災害のリスクを把握することです。自館の置かれている状況下では、どんな災害の危険性が高いか、また発生した場合、どの程度の被害が想定されるかについてランク付けして把握する必要があります。ほとんどの図書館の場合、大小の水害と火事の危険性が最も高く、日本の場合は地震も大きなリスクです。まずは自治体が作成しているハザードマップを確認しましょう。それ以外にそれぞれの図書館によって異なるリスクがあります。自然災害だけでなく、建物や設備の老朽化やメンテナンスの不備、人為的ミスや不注意によるリスクもあります。リスクを把握したら、被害を抑えるために出来ることを検討し、可能な範囲で実行します。
Q
消防計画・防災計画は既にありますが、資料防災計画が別に必要ですか?どんな内容が必要ですか?
A
既存の消防計画・防災計画に追加する形でも良いですが、資料の被災対応の担当者と対応手順、優先的に救出する資料と配置図、搬出場所、被災記録票書式、訓練などについて定めておくことで迅速な対処が可能になり、資料の救済につながります。
Q
大規模被災した場合、どこに支援を求めたらよいですか?
A
まずは設置者の定める消防計画等に基づいて必要な機関等に連絡をしてください。併せて、地域の中心的図書館(たとえば公共図書館であれば県立図書館等)や日本図書館協会図書館災害対策委員会(日本図書館協会サイトへのリンク)にもご連絡ください。個々の状況によりますが、日本図書館協会や国立国会図書館が支援できる場合もあります。広域大規模災害の場合は、文化財防災センター(文化財防災センターサイトへのリンク)が文化財の被災情報を集約して、支援の枠組みを構築するネットワークがあります。また、各地の歴史資料ネットワーク(歴史資料ネットワークサイトへのリンク)も資料救済についての問合せに応じています。 自館の職員だけでは対応できない大規模な被災を想定して、あらかじめ地域・県域の図書館や類縁機関と協力ネットワークを作っておくことをおすすめします。

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参考情報

資料防災の考え方全般、作業の全体像の把握のために。

被災資料の応急処置についての参考情報は、対応のページに掲載しています。

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問い合わせ先

国立国会図書館では、各種図書館における資料防災への支援・協力を行っています。図書館の資料防災や被災資料の処置等についてのご質問やご相談は、下記にお問い合わせください。

収集書誌部 資料保存課
電話:03-3581-2331(代表)
メールアドレス:hozonkaアットマークエヌディーエルピリオドジーオーピリオドジェーピー

実際に被災された際のご相談は、以下のような被害についての具体的な情報を添えて、お問い合わせください。

  • 被害の種類(落下による破損、水損、焼損等)
  • 資料の種類(図書、雑誌、新聞、郷土資料、非図書資料等)
  • 被害の規模・程度(数量、軽度か重度か、等)

参考:過去の主な取組

2011(平成23)年~2014(平成26)年
文化庁の東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業(文化財レスキュー事業)に参加。
岩手県野田村立図書館の郷土資料や同県陸前高田市立図書館の吉田家文書の修復等を実施。
2015(平成27)年~2016(平成28)年
平成27年9月関東・東北豪雨により茨城県常総市立図書館の資料が水損。約30点の郷土資料等を修復。
2016(平成28)年~2017(平成29)年
平成28年熊本地震により熊本県立図書館の資料が大量に落下、破損。職員を派遣して修復実技指導等を実施。専門技術・道具での本格修復が必要な数点を修復。
2019(令和元)年
令和元年東日本台風により川崎市市民ミュージアムの資料が水損。職員を派遣して紙資料救済作業指導等を実施。

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