国立国会図書館憲政資料室 日記の世界

石坂泰三:昭和24(1949)年1月7日の日記より

石坂泰三

昭和24(1949)年1月7日

 苦しかったこの2年

日記が途切れゐる時は、かえって色々の事があって筆とる閑がなかったのである。日記をつけてゐる時の方が、平穏な時であった。第一生命をやめて丸二ヶ年を経過したが、この二ヶ年は私にとっても日本にとっても実に名状し難い苦難の時であった。しかし二十三年は二十二年に比べて精神的に物質的に幾分楽になった事は事実である。今年は如何いふ事になるか、早く復興再建の域に向ひ度[た]いものである。…この頃私は毎日東芝へ出かけるが、これといふ定った仕事もないので、何となく安定性を欠いてゐる。しかし気持ちはよい。終戦後始めてのさっぱりした気分である。

第一生命を辞めた昭和22(1947)年は、石坂にとって浪人生活を強いられた苦難の年でした。昭和23年に東芝に入ってからの1年間は、労働争議への対応に当たった日々でした。この2年を比較して、「二十三年は二十ニ年に比べて精神的に物質的に幾分楽になっ」てきているとも述べています。