国立国会図書館憲政資料室 日記の世界

石坂泰三:昭和22(1947)年11月26日の日記より

石坂泰三

昭和22(1947)年11月26日

電力不足による満員電車に乗って  経済

この頃の電車やバスは、実際窒息しそうな混雑である。電力不足の為め車台の数を減らした為らしい。何としても非常な苦痛で全くなさけなくなる。しかしパスカルはその冥想録において「廃黜[はいちゅつ]された王でなくして誰が王でない事を不幸だと思ふであらうか。…又眼を一つだけ持ってゐるのを不幸だと思はぬ者があらうか。人は恐らく眼を三つ持たない事を敢て悲しみはすまい」と云っている。大正十二年の震災から自働[動]車に乗って二十五年、今年自働[動]車がなくなってこの交通地獄に逢ふのは果して不幸であらうか。

戦後復興に動き出した日本で、最大のネックとなったのはエネルギー不足でした。この頃には終戦時の1.5倍に電力需要は膨れ上がっていました。そのため、一般家庭では停電が起こったり、電車も本数を減らしての運行だったようです。