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第14回科学技術情報整備審議会議事録

日時:
令和3年8月4日(水)午後2時から午後4時まで
場所:
ウェブ会議サービスによるオンライン開催
(国立国会図書館会場:東京本館 人事課大会議室)
出席者:
科学技術情報整備審議会委員 10名(欠席2名)
西尾章治郎委員長、竹内比呂也委員長代理、喜連川優委員、坂本修一委員、佐藤義則委員、戸山芳昭委員、濵口道成委員、藤垣裕子委員、村山泰啓委員、渡部泰明委員
(石田徹委員、児玉敏雄委員は欠席。安嶌潔専門図書館協議会事務局長が陪席。)
館側出席者 16名
館長、副館長、(幹事)総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、利用者サービス部長、電子情報部長、関西館長、国際子ども図書館長、(陪席)総務部企画課長、総務部副部長会計課長事務取扱、収集書誌部主任司書、利用者サービス部副部長サービス企画課長事務取扱、電子情報部副部長、(事務局)利用者サービス部科学技術・経済課長、電子情報部電子情報企画課長
会議次第:
  1. 開会
  2. 国立国会図書館長挨拶
  3. 新委員・幹事紹介
  4. 報告及び懇談
    • (1)第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画の策定
    • (2)国立国会図書館ビジョン2021-2025 ―国立国会図書館のデジタルシフト―
    • (3)国立国会図書館のデジタルシフトに関する最近の動向
    • (4)懇談
  5. その他
  6. 閉会
配付資料:
(参考資料)
議事録:
1. 開会
西尾委員長:
ただ今から第14回科学技術情報整備審議会を開催いたします。委員の皆様におかれましてはお忙しい中、当審議会に御出席くださいまして、ありがとうございます。
本日は、12名の委員中10名の委員に御出席いただいておりますので、定足数は満たされております。
さて、前回1月の審議会では「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けての提言-「人と機械が読む時代」の知識基盤の確立に向けて-」を取りまとめて、館長に提出しました。今回は、これを踏まえて策定された「第五期科学技術情報整備基本計画」の内容を確認します。提言の「おわりに」では、次の点を指摘しています。
  • 「人と機械が読む時代」を迎えつつある今日、「機械」を読者にすることで、検索により必要な知識を瞬時に見つけ出すことを可能にするにとどまらず、「人」では気付くことが難しいパターンを見いだすことができるようになる。それによって、新たな研究や課題解決の道が開かれていく。
  • そのために、国立国会図書館がこれまで蓄積してきた図書館資料を「機械が読める」形でデジタル化し、「信頼に値するデータ」として利活用可能とする。
  • その実現に向けて、社会からも広く理解されやすい、マイルストーンとなるような具体的な目標を設定する。
  • また、オンライン資料なくして今日の学術情報流通は十全なものとはなり得ないので、これまで紙の資料をベースに形成されてきた我が国の知識基盤が、オンライン資料についても同様に国立国会図書館に形成されるようにする。
こうした点を含め、提言の策定のために行った議論の内容は概ね反映されていると思いますが、委員の皆様の中で御意見のある方は、ぜひこの機会に御発言いただきたいと思います。
また、国立国会図書館全体の新たなビジョンも基本計画とほぼ同時に策定されたとのことなので、提言で示した長期的な展望を見据えつつ、国立国会図書館の今後5年間の取組の見通しについて、皆さんと懇談したいと思います。提言で述べたとおり、国立国会図書館が人々に信頼され得る知識基盤であり続けるためには、取り組まなければならないことが数多くあります。その中で、どこに力点を置くことが肝要であるか、皆さんの御意見をお願いします。
事務局からお知らせがあります。
髙品科学技術・経済課長:
事務局の髙品です。よろしくお願いします。本日は、児玉敏雄委員と石田徹委員が御欠席です。御欠席の石田委員の代わりに、専門図書館協議会の安嶌潔事務局長に御陪席をいただいています。坂本修一委員は中座されるとのことです。
また、本日は、幹事のほかに、吉永館長、田中副館長、審議会事務局の職員等も同席しています。関係者名簿を資料1としてお付けしておりますので、御覧ください。新委員及び新幹事につきましては、後ほど御紹介します。
その他の配付資料でございますが、資料2が、委員の皆様から頂いた提言を基に策定致しました「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」です。資料3は、本年3月までの5年間、「第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」の下で行った様々な事業の成果を取りまとめた資料です。資料4と資料5は、「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」と同じく、今後5年間の予定で策定した「国立国会図書館ビジョン2021-2025 ―国立国会図書館のデジタルシフト―」に関するものです。本日は、こちらの内容も含めまして、委員の皆様に御意見いただきたいと考えております。
他に、参考資料を4点お付けしています。参考資料4が、前回の第13回審議会で委員の皆様から頂いた提言でございます。
新型コロナウイルス感染症対策の観点から、今回も、オンラインでの開催とさせていただいております。委員の皆様方におかれましては、御発言を求められる場合は、参加者一覧表示にある挙手ボタンを押してください。委員長から指名されましたら、マイクをオンにして御発言くださるようお願いいたします。
2. 国立国会図書館長挨拶
西尾委員長:
開会に当たり、吉永館長から御挨拶があります。
吉永館長:
本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本審議会では、令和元年度と2年度の2か年度にわたりまして、今後の国立国会図書館の科学技術情報整備の基本方針について御議論いただき、提言を頂戴いたしました。提言の取りまとめに際して、審議会委員の皆様に多大なる御尽力を頂きましたことに、改めて御礼申し上げます。
国立国会図書館では、頂戴した提言を踏まえまして、今年の3月に「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」を策定いたしました。この基本計画は、提言において示された長期的な展望の下、「人」による利活用及び人工知能(AI)等の「機械」による利活用という二つの方向性の実現に向け、「利活用促進」と「恒久的保存」のための基盤を整備するために、国立国会図書館が令和3年度から7年度までの今後5年間に取り組むべき事項を定めるものでございます。
本日は、この基本計画について御報告申し上げ、御議論いただきたく、お願い申し上げます。また、この基本計画と連動する国立国会図書館の新しいビジョン「国立国会図書館ビジョン2021-2025 ―国立国会図書館のデジタルシフト―」を御紹介します。さらに、デジタルシフトに関する最近の動向として、①資料デジタル化の推進、②デジタル情報資源へのアクセス向上、③デジタル資料の収集と保存の3つのテーマを取り上げ、御説明します。
本日は、忌たんのない御意見をいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
3. 新委員・新幹事紹介
髙品科学技術・経済課長:
事務局から委員の交代等につきまして報告します。
文部科学省大臣官房の坂本修一審議官と、国文学研究資料館の渡部泰明館長が、新たに委員に御就任くださいました。手短に一言ずつお言葉を頂戴したいと存じますが、坂本委員は到着が遅れているとのことですので、渡部委員、お願いします。
渡部委員:
前館長の後を継ぎ着任いたしました。何とぞよろしくお願いいたします。
髙品科学技術・経済課長:
ありがとうございました。また、当館内の人事異動に伴い、幹事に異動がありましたので御報告いたします。寺倉調査及び立法考査局長と大場電子情報部長が前回の審議会以降に新たに幹事に任命されました。
4. 報告及び懇談
西尾委員長:
それでは、会議次第の「4. 報告及び懇談」に移ります。
事務局が報告した後に、懇談に移ります。
まず、「(1)第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画の策定」について、事務局から報告をお願いします。
髙品科学技術・経済課長:
(資料2に基づき説明。資料3は提示のみ。)
西尾委員長:
ありがとうございました。続いて、「(2)国立国会図書館ビジョン2021-2025―国立国会図書館のデジタルシフト―」について、報告をお願いします。
上保企画課長:
(資料4に基づき説明。)
西尾委員長:
ありがとうございました。最後に、「(3)国立国会図書館のデジタルシフトに関する最近の動向」について、報告をお願いします。
藤本副部長:
(資料5に基づき説明。)
西尾委員長:
ありがとうございました。それでは以上3点の報告を踏まえて、懇談に移りたいと思います。審議会からの提言を重く受け止めていただき、「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」が策定されましたが、この内容についてさらに踏み込んだ御意見等、また国立国会図書館(以下「NDL」)の「ビジョン」について御質問や御意見もあろうかと思います。せっかくの機会ですので、各委員には順番で御意見や御質問をお願いいたします。事務局等からの回答時間も踏まえて、恐縮ですが1人3分程度でお願いします。
竹内委員長代理:
委員長代理を拝命しております千葉大学の竹内でございます。今回策定されました基本計画につきましては、提言の趣旨を汲んでいただき、細部にまで行き届いた計画策定をしていただいたと考えており、御尽力いただきましたNDLの皆様方には敬意を表したいと思います。引き続き、国内からの資料のニーズ、及び日本国外からの日本国内において出版された資料群への安定的かつ利便性の高いアクセスに向けて、絶え間のない努力をしていただきますようお願いをしたいと思います。
また、NDL全体としてのビジョンにおいてもデジタルシフトが明確に打ち出されたことは、2021年5月の著作権法の改正等、環境整備とも相まって時宜を得た誠に素晴らしいものと考えております。図書館のデジタルシフト、デジタルトランスフォーメーションとも言いますが、昨今のCOVID-19パンデミックの中でその必要性が広く認識されるようにはなりましたけれども、これは決して急に目の前に現れてきたものではなくて、図書館にとっては当然のことであったと考えております。NDLの初代の副館長でいらした中井正一氏は、「印刷物がマイクロフィルムへ、そして電話網を利用した情報伝達へと変わってきたように、図書館の概念も目に見える場所ではなくなっていく」と、今から約70年前に記されていたことを最近知りました。慧眼とはまさにこのことだと思う訳でございますけれども、これからのNDLがその揺るぎない理念の下、技術の変化に合わせて、また時代の要請の中で、適切に変化していかれるということを期待しております。図書館の概念が目に見える場所ではなくなっていくとすると、図書館の機能は何かということを、またデジタルシフトは何のためかということを改めて問われるのでないかと思っております。もちろん、このような問いはNDLに対してだけではなくて、日本の図書館関係者全体に対して答えが求められているものかと思いますけれども、その中でもぜひNDLにおかれましては、先導するような形でお考えをお示しいただくことが強く望まれていることなのではないかと考えております。ぜひこのことについて何か御意見を頂戴できればと思います。
また、今回の提言の特徴につきまして、会の冒頭でも西尾委員長から提言のいくつかの点に言及がございました。とりわけ今回の提言の中で、私自身が気にしておりましたことは、NDLの具体的な活動について、どのようにしたら広く社会から認知されるかということでございました。具体的な文言として、マイルストーンをお示しいただくように提言の中に盛り込ませていただきました。今回の計画の中には必ずしもその部分が含まれておりませんけれども、先ほど御紹介いただきましたビジョンとそしてデジタルシフトに関する動向において、2000年までに刊行され受け入れられた資料を5年間で100万冊以上デジタル化をするという数値が示されております。NDLがどれだけの規模の蔵書を持っているかを知らない市民の方からすると、まだその程度かと思われてしまうかもしれないと少し危惧しております。できればそのあたりにつきましては、誰にでも分かるような見せ方を今後も工夫してお示しいただけると大変ありがたいなと思っております。大変雑駁な意見ではございますが、以上でございます。ありがとうございました。
西尾委員長:
竹内委員長代理、貴重なコメント、また今後NDLが考えていかなければならない点を御指摘いただきましてありがとうございました。
最後のコメントにつきまして、デジタル化に関して2000年までの書籍等のデジタル化といった一つの達成目標が示されておりますけれども、こういう取組がどれだけ大変なことなのかを広く社会に認知いただけるようアウトリーチをしていくことが今後大事だと思っておりますので、この点よろしくお願いします。
竹内委員長代理から図書館にとって大事な御質問が出ておりまして、いわゆる図書館という空間が今後どういう意味を持つ空間になるのかということと、デジタルシフトそのものについての考えについて、2つの重要な質問がありました。これらに関して事務局から簡単なコメントでも結構ですが、何かございませんでしょうか。
大場電子情報部長:
竹内委員長代理からの御質問については非常に重たい御質問ですので、簡単にお答えするというのはなかなか難しいところでございます。まずデジタルシフトがどのように社会に意味があるのかということにつきましては、これまで紙でしかアクセスできなかったものが、最終的な目標にありますけれども、全てデジタルで利用できるようになることによって、社会的な基盤を作ることができるようになるのではないかと考えております。そこを目指して、少しずつでも近づけていくように努力することが現在求められていることだと思いますし、今回補正予算を頂いたことで少し前進できるのではないかなと考えております。
図書館の空間がデジタルシフトの進展でどう変わっていくのかというのは、まだまだ我々としても見出し切れていないところですので、今後の宿題とさせていただければと思います。
西尾委員長:
どうもありがとうございました。竹内委員長代理、よろしいですか。
竹内委員長代理:
はい、答えづらい質問に対して大変真摯にお答えいただき、ありがたく存じます。
西尾委員長:
次に文部科学省の坂本委員におかれましては、御出席いただける時間が限られておりますので、今何かここで御意見や御質問がありましたらよろしくお願いいたします。
坂本委員:
文部科学省研究振興局審議官の坂本です。遅れて申し訳ございません。是非西尾委員長をはじめ、先生方の御指導をこれから頂ければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
私から一点申し上げます。現在文部科学省で進めている研究開発に関わるデジタルトランスフォーメーションについてですが、NDLでも長年努力を積み重ねられていますが、蓄積されている出版物をはじめ、プレプリント、そして加工編集されたデータ、さらには分析、計測されたデータの、適切な管理下での流通、共有、統合が非常に重要になってきております。基本計画中にもNDLと国立情報学研究所(以下「NII」)、科学技術振興機構(以下「JST」)との連携の記述があります。例えばNIIの、喜連川委員の前で恐縮ですけれども、図書、研究データあるいは研究者、研究プロジェクトの情報を包括的に探索できるCiNii Researchというシステム、これとNDLとの連携について現在調整が進められていると伺っています。文部科学省としては、今まさに、研究データを様々なサイエンス、新しいサイエンスや社会実装のアプローチに結び付けるプロセスが構築されるような包括的なプラットフォームの形成を本格的に進めようとしているところです。また、例えばマテリアル、バイオの分野においても、日本全国の様々な機関で日々生み出されている計測、分析データを含め、このようなデータを計測分析する科学者の方々、専門分野の科学者の方々、そして情報科学者の方々の協力によってその価値を見出し、共有し、統合していくためのシステムづくりを進めようとしているところです。ぜひNDLの皆さま、あるいは委員の先生方の御協力もいただきまして、NDLが蓄積してきたデータに関しても研究開発分野のデジタルトランスフォーメーションにおけるプラットフォームとしっかり連携できるよう、文部科学省としても後押しをさせていただきたいと思っております。以上です。ありがとうございます。
西尾委員長:
最後に文部科学省としても力強く支援していきたいという御言葉をいただきまして、どうもありがとうございました。NDL、NII、JSTで上手く連携を取っていただきながら、いま坂本委員がおっしゃったような日本全体としてのプラットフォームをどう構築していくかというところでまた考えたいと思いますし、NDLの方でもどうかその点よろしくお願いします。坂本委員どうもありがとうございました。
それでは、いまのことも含めまして喜連川委員、御意見や御質問いただければと思います。
喜連川委員:
NDLが置かれている立ち位置はかなり特殊な状況で、国会にサービスすることと、制度に基づいて収集することは他の図書館には無い機能です。その特殊性に鑑みながら先ほどのデジタルシフトを進めるというのは、国民に理解していただけるよう伝え方を相当工夫しないとできないことで、そこに挑戦されることを応援させていただきたいと思います。
NIIにいて、デジタルとは何ですか、とよく聞かれることがあり、そういう質問はFAQにまとめておりますけれども、答える際には必ずデジタルを目的とすべきではない、という言い方をしています。つまり何かをデジタルにするというのは一つの手段ですけれども、それを目的と考えてしまうと話がややこしくなるということです。これは濱口委員がおられる中で、私の言っていることが正しいかどうか医学的見地で御判断いただかないといけないのですが、私は地方の小さな医院やお医者様がおられるところで、電子カルテを導入する必要はないと、個人的には考えております。最終的な目的は、地方におられる住民の方々の面倒を見るときに、面倒な電子カルテを使って云々というよりも、住民の情報全部がお医者様の頭に入っていれば良いということです。継続性といった問題は一定程度ありますけれども、HER-SYSと同じで、使いにくいものを使ってみてもしょうがないと思うのです。ただ、こういう言い方はできますけれども、今回のNDLの場合は少しややこしいので、援用することはできません。
長尾先生が館長でおられたときに何度かNDLの館長室に伺いお話させていただく機会があり、先ほど竹内委員長代理もおっしゃったとおり、時代と共に変化していくことをどう捕まえるのかということがやはり全てだと思っております。当時、長尾先生がおっしゃるには、図書館にお越しになられてどの本を借りたかという情報は1週間経ったら全部捨ててしまいますと。これが現行の個人情報保護法の制約から来ていると。長尾先生もこれはおかしいと思うけれども、なかなか変えられないとおっしゃっていたのを今でも覚えております。今回のコロナ禍の中で、皆さんもニュースを見ていただくと分かるのは、勝っているのは全部ITカンパニーということです。GoogleもAppleもMicrosoftもFacebookも利益率は倍以上になっているところも多い。なぜなのかというと、ユーザーというよりエンドの思惟を捉えているからです。私は現行法の中で十分できると思うのですけれども、個人情報の改革を行い、どういう資料に利用がシフトしているのか捉えること、例えば先ほど坂本委員がおっしゃったようなライフサイエンスやマテリアルサイエンスという大きなくくりではなく、その中のどこに視点が動いているかという細かな動きを、デジタル化の目標空間に置いていただくのが良いのではないかと思います。そういうメリハリの議論もしていただけると、個人的には国民に訴求しやすくなり、国民の理解に資するのではないかと思いました。以上でございます。
西尾委員長:
どうもありがとうございました。最後でおっしゃったところで、やはりNDLでどういうところのデータへのアクセス、閲覧が多いのかという分析をしていただきながら、そういうところをより重点的にデジタル化していくというストラテジックなデジタル化のプロセスを是非考えていただければと思います。喜連川委員どうもありがとうございました。濱口委員、後で喜連川委員の御質問に対してお答えいただけるとありがたく思います。
次に、佐藤委員よろしくお願いいたします。
佐藤委員:
私も提言の原案作成に携わらせていただきまして、こういう機会をいただいたことに大変感謝しております。その提言について、きちんと計画という形で様々な要素を漏れなくまとめていただいて非常にありがたく思っております。一つだけコメントさせていただきますと、資料のデジタル化についてはこれまでの図書館の延長線上にあるものとして分かりやすいですけれども、資料5の15スライドと16スライドにあるようなオンライン資料の制度収集に関しましては、デジタルシフトという中でも、従来の図書館とはかなり趣の異なった活動を今後展開しなければならないところです。より端的に申し上げますと、従来印刷体の場合には、購入あるいは契約によって所有権が移転する、所有権の移転というものが資料の貸出あるいは保存といった事業の礎になっているということがあった訳ですが、今後オンライン資料、特にサブスクリプションという形での契約を前提にすると、所有権が移転しないものですから、どういう形でこういった制度収集を実効性のあるものにしていくか、強制力を伴って実行していくかということが、非常に問われてくるだろうと思います。そういう面で、先ほどの御説明の中で2022年度中の制度化を目指されるということを伺いまして、大変興味深くかつ期待を持って今後を注視させていただきたいと考えているところであります。この辺のところでもう少し具体的な見通し等がありましたら、簡単にお話しいただければありがたいなといった次第です。以上です。ありがとうございました。
西尾委員長:
それでは最後に御質問いただいたことについて、事務局のほうからお答えございますか。
山地収集書誌部長:
納本制度審議会の事務局も担当させていただいております。納本制度審議会からの答申を3月に頂きまして、2023年1月を目途にオンライン資料の収集を進めていくことをプレスリリースにも書かせていただきました。答申を受けて今後特に商業出版については丁寧にお話をしていかないといけないと思っております。またリポジトリというようなモデルも、JSTのJ-STAGEや各大学の機関リポジトリも参考にしながら、民間でも提案がございましたので、実効性のあるというところは今後もう少し丁寧に詰めながら、制度の執行まで1年半進めていければと思います。雑駁ですがこんなところでよろしいでしょうか。
西尾委員長:
佐藤委員いかがですか、何かお気づきになったポイントなどあれば。
佐藤委員:
特にございません。ありがとうございました。
西尾委員長:
次に濵口委員、御質問等いかがでしょうか。
濱口委員:
その前に喜連川委員の御意見に少しコメントしたいのですけれど、今は情報化の時代だと思います。医療の現場でも、どれだけ正確な情報を大量に収集して分析できるかが大きな課題です。特に日本は開業医の先生方が非常に頑張っておられ、かかりつけで長期に様々な疾患をずっと見ておられる、宝の山がいっぱいあるのですが、これを喜連川委員がおっしゃるように、その頭の中だけに入れておりますと、日本全体として、日本人の特性、疾患の特性や、流行状況、そういうものが見えてこないのです。本当は電子カルテがオールジャパンとしてきちんと繋がるシステムができると、すごい金鉱を掘ることができるのですが、今の問題点は個人情報保護法あるいはシステムの違いとか、様々なブロックがあって、非常に残念ですけれど、この宝の山を使い切れてない状況にあるというところがございます。
それから今回の審議会で一番印象に残りましたのは、最初のところの「人と機械が読む時代」というお話です。本当に情報が膨大な時代になって情報の中を我々は泳いでいるような認識があります。しかもフェイクニュースもどんどん一緒になってきます。その中でしっかり国の、国会としての政策決定に確実な情報を届ける使命というのが今まで以上に大きな仕事だと思います。少しお聞きしたいのは、AIを使ってもっとデータ化した様々な情報を分析する作業は今後あると思います。そのためには情報に様々なタグ付けをして、例えばコロナというキーワードを入れるとどれぐらいの情報が集まって、その中にどういう特徴があるか、というような分析ができるようになると、政策の厚みも大きく変わってくるように思うのですが、そういったAIを今後導入していくかといった戦略を考えておられるか、少しでもお話がありましたらすごく刺激的なお話になるかと思い質問させていただきたいのですが。
西尾委員長:
どうも貴重な御質問ありがとうございました。それではNDLから今の濵口委員の御質問に対してのお答えはいかがでしょうか。
大場電子情報部長:
AIによる分析に関しては、今はまだNDLでは端緒に就いたところで、まずはAIを導入して分析していくためのベースとなるテキストをどう作るか、というところにAIを使っている状態になっております。特にOCRについて、どうやって効率的に文字を正確に読み取れるようにするか、が最大の課題になっておりますので、まずはそこをクリアし、膨大なテキストデータが出てきたところで次のステップに進めていくということになるのではないかと考えております。今回の補正予算でも、過去にデジタル化した資料に関して、外部委託ではありますけれども、一旦テキストデータを作ってみよう、ということで進めておりますので、そうしたテキストデータが出てきたところで、次にどのような活用があり得るのかということについて、外部の先生方のお力も借りながら検討していきたいと考えております。以上のようなところでございます。
西尾委員長:
現況は今御説明いただいたところですが、濵口委員としては何かこうあってほしいというようなところがもしあればと思うのですが、いかがでしょうか。
濵口委員:
これはまずもって相当コストのかかる作業になってくると思いますし、その AIのシステムをどこにおいて情報管理をしていくかというような問題もあるかと思いますので、相当しっかりした設計と製作へのフィードバックがいるのではないかと推察しているところでございます。我々もバックアップしたいと思います。
西尾委員長:
それでは喜連川委員にお願いしたいのですけれど、先ほどの濵口委員の、喜連川委員の御質問に対するコメントと、今のAIの導入等に関して、喜連川委員の御知見等がもし頂ければありがたく思っておりますが、いかがでしょうか。
喜連川委員:
濵口委員のおっしゃっていることはその通りで、私が申し上げましたのは、お医者様が濵口委員のお考えのとおり動いてくださる方ばかりだと良いのですけれども、現場はなかなかそうなっていない中で、無理やりデジタルをプッシュするということが難しく、図書館も同様の問題を抱えているところがあるかと思い、そういう心配の気持ちで発言をしました。
AIという観点では、NDLがなされようとしているのは、Data Fuel AIであるため、まずデータがないとそもそも賢くならないのが現状のAIです。もちろん少量のデータで AIをトレーニングするという研究はいくらでもあるのですけれども、たくさんあるデータには全然勝てませんから、まずデジタル化するというのは大本命ではあります。ただ補正予算が60億円とお伺いしましたので、データ化するというよりも、どちらかというとアノテーションの部分ですね。ジャパンサーチには2,200万件のメタデータがあるという数字が確か出ていて、それでNDLには275万件のデジタルコンテンツがあるというお話もされていました。この辺のコンテンツの数とメタデータの数、あんまりよく分からないところがあるのですけれども、さらにそのうちデジタルコンテンツは55万件しか公開されていないときに、上手くバランスを取ってAI開発をしていく必要があるのかなと感じました。それと濵口委員がおっしゃったように、今はもうバトルの対象は原則フェイクニュースです。ですから、NIIもフェイクメディアセンターといった新しい組織を作っているのですけれども、AIは賢くしようと思うといくらでも賢くなり、賢さを悪用しようと思うといくらでもできる、いたちごっこのようなものですから、それをNDLに云々するのは、少しデマンディングなところがあろうかと思いますので、JSTを含めITプロパーの研究者がお手伝いする仕組みがあるとよいなと感じました。
西尾委員長:
喜連川委員から NDLに対する温かいお言葉をいただきました。それとJSTの御力も借りながら、フェイク情報という非常に大きな問題の解決からまず進めていく必要があるのではないかということでございました。
では、戸山委員、よろしくお願いいたします。
戸山委員:
思いつくままに少しお話しさせていただきます。このデジタル化の推進によって、竹内委員長代理もお話しされたように、図書と図書館の役割や在り方の大きな変換期にあるのかなと思います。これがどのように進むかは、この審議会等々でやはり議論していかなければいけないところではないかと思います。
デジタル化で全ての国内出版物が読める未来を目指すと、これは私、大賛成なのですけれども、つまりは、いつでも、どこでも、誰もが、適当な時にアクセスできて、それが収集できるということで、それを教育、義務教育から研究、大学までも含めた研究調査にどんどん展開していく、それが世界にリンクしていくというところに向かうのではないかと思います。特にやはりハードとソフトの両面で、このデジタル化が推進した場合に、図書や図書館そのものがどういうふうな形になっていくのかということが非常に気になるところです。
それからもう一つは、色々な提供サービスがこれだけデジタル化で利用できますよといった場合に、一方的なものではなくて、例えば大学とか企業とか国民とか、多分取り組まれていると思うのですけれども、研究所とか、様々なところからどういう風なサービスが必要であるか情報収集して、できる限り両方向で進められると良いのではないかと思います。今回この5年計画の1丁目1番地は、国のデジタル化において日本が遅れていて、これから進める必要があるということですので、もっと予算をつけていただいて、可能な限りデジタル化を進めていただくという5年間ではないかなと思います。以上です。
西尾委員長:
戸山委員、現時点で NDLが、どういう立ち位置で、何をすべきか、ということについて明確なビジョンと言いますか、ミッションをお話しいただきまして誠にありがとうございました。図書館が今後ハードとソフトの両面で高度なデジタル化が進む中で、どういう場所になっていくのかということは非常に大きな問題であり、また先ほども喜連川委員から御意見ありましたように、ニーズがどういうところにあるのかということを明確にしながら、ユーザーとの間でキャッチボールをしながらデジタル化を進めていくということの大事さをおっしゃっていただきました。最後に、今後の5年間というのは、やはり、図書のデジタル化を一段進める、そのことをもっと予算をつけていただいて可能な限り進めましょう、とおっしゃっていただいたことで目的が非常に明確化したのではないかと思っております。どうもありがとうございました。
藤垣委員どうぞお願いいたします。
藤垣委員:
NDLがデジタルシフトに向けて、様々な構造的な戦略をとっていらっしゃることがよく分かりました。どうもありがとうございます。一つ目は、ビジョン2021-2025の中のデジタルシフトにおける「ユニバーサルアクセスの実現」の4というところです。「『知りたい』を支援する情報発信」というのがございまして、上保さんから説明があったのですけれども、これは非常に良い試みと思いました。調べ方ガイドを作るということですね。ただ、このガイドを作るうえでこれからやらなければいけないことは、恐らく国民の「知りたい」というのは非常にバラエティに富んでおり、それにどう対応していくかということだと思います。東京大学にある「東京カレッジ」という所で「『知りたい』に応える」というセミナーを開いた時に分かったことですが、いわゆる専門家の知識生産と、人々が知りたいということとの間には少しギャップがございます。それをどうやって埋めるか、つまり「『知りたい』に応える」ためにどうやって知識を再編するかということを考える必要があり、例えばCovid-19の話でも、専門家が知りたいということと、市民が知りたいこととの間にはやはりギャップがあります。他にも色々とあるのですけれども、それが次なる目標になるかと思い、考えていただけたらというのが1点目でございます。
2つ目は、「図書館という空間がどうなっていくか」という点で、竹内委員長代理や戸山委員から提起された点でございます。これはデジタル空間がどうなっていくかということと、リアルな空間がどうなっていくかということの両方があると思うのですけれども、この議論は実はコロナ収束後の大学での授業がどうなっていくかという話と少し重なるところがございます。私達の大学では現在ほとんどがオンラインで授業を行っており、対面授業は一部です。コロナ収束後に、元のように「全てを対面授業」という形には戻らないと思います。オンラインを一部入れながら、両面で行っていくことになります。その時、オンラインの良い点は、時差さえ管理すれば、例えばハーバード大学の先生に旅費なしで授業してもらうとか、議論ができるとか、大変良いところもあるのですけれども、やはり対面の良い面もありまして、例えば学生同士の教室での何でもない会話みたいなものが対面授業の良さであったりするわけです。それと同様に、図書館におけるリアルな空間の良さというのも恐らくはあるはずだと思います。例えばNDLだと所蔵図書のコピーを取ることの依頼ができますが、普通の図書館でしたら本を触るとか、製本してあるものを触るとか、居心地の良さとか、他の利用者が必死で勉強している姿を眺めて真剣さが伝わってくるとかいろいろあるわけでして、静寂の中で真剣に集中する空間を提供するという点も同時に図書館の良さであります。またやはりデジタルの空間を作る場合にも良い点と悪い点があるため、リアルな空間の図書館をどう作るかを検討するには、私が申し上げた第1点目とも重なる点があるかと思われます。「調べる」を支援するという時には、デジタルでやるのもある一方で、やはりリアルでインタラクティブに調べるを支援するというのもあるのではないかということです。以上でございます。
西尾委員長:
どうもありがとうございました。最初のユニバーサルアクセスの実現の4についての藤垣委員のコメントに関して、NDLから何かお答えやコメントはございませんか。
遊佐利用者サービス部長:
今、藤垣委員から御指摘いただきましたユニバーサルアクセスの知りたいを支援する情報発信につきまして、我々も今後withコロナからafterコロナに移行することはあっても、beforeコロナに戻ることはないと考えておりまして、今後来館サービス、それから非来館の遠隔サービスをどのように構築していくか、今後検討していきたいと思っております。情報発信については、基本計画の一つであります「利用者サービス基本計画」をビジョンと同じ期間で今回策定いたしました。ここでレファレンスサービスについて、情報発信型に軸足を置いていくことを打ち出しております。リサーチ・ナビというコンテンツで情報発信を進めておりまして、これまではコンテンツの数を増やすことに注力していたのですが、最近では、数は多少絞り込んでもアップデートを頻繁に行い情報の鮮度を保っていこう、ということでバランスを取って取り組んでおります。一方、対面のサービスについては、このコロナ感染症の状況ということで、予約制度を導入し入館制限を行っておりますが、対面のサービスの重要性が完全になくなるという訳ではありませんし、先ほど藤垣委員がおっしゃったような複写物の入手のニーズは遠隔・来館共に非常に強まっているのが実績でも示されておりますので、バランスを取りながら今後どのようなサービスをNDLとして提供していくべきなのか検討して参りたいと思っております。以上です。
西尾委員長:
どうもありがとうございました。特に藤垣委員の方から、「『知りたい』を支援する情報発信」という質問があったのですが、そのことはいかがですか。
遊佐利用者サービス部長:
失礼いたしました。私どもの利用者としては、学者の先生方、それから図書館員、図書館の関係の方、また市井の研究者の方など、お持ちになっているニーズとレベルもそれぞれ違っている中で、皆さんに貢献できることが望ましいわけですけれども、どこをターゲットにすればよいのかは、なかなか難しいというのが正直なところです。提言を検討していただいた中でも、やはり私どもとしては市井の研究者といった方々をターゲットにしていくことも重要ではないかと御示唆もいただいていると認識しておりますので、そうした点も意識しながら今後取り組んで参りたいと思います。
西尾委員長:
今おっしゃいましたように、利用者というのは多岐にわたり、様々な方がおられるというのは非常に大変なことだと思います。その多様な利用者からのニーズの中のどういうところに焦点を当てるかといったことが、今後、全体を見る上で重要かと思いますので、御検討いただければと思います。また先ほどの藤垣委員のコメントで気づいたのですが、図書館のリアルの空間の良さを逆に掘り起こすことが大事なのではないかと思いました。デジタルになってどう変わるのかを考えるときに、今のリアルな図書館の雰囲気や空間が持つ意味や重要性、そうしたものを我々が一回掘り起こす、考え直すということが重要なのではないかと思いました。その考察のもとで、今後の図書館の在り様を考えていくことが一つのアプローチ方法なのかと思いました。どうも藤垣委員ありがとうございました。
それでは、村山委員どうぞ。
村山委員:
あまりまとまったポイントでお話できるか自信がないのですが、まずは先生方がすばらしい提言を作成されて、それに対応してすばらしい計画が策定されたということを改めて理解いたしまして、これに対してお祝い申し上げたいと思います。本格的にデジタルシフトの方向性を打ち出しておられて、これも大きな社会の曲がり角といいますか、時代を反映したものだろうと思います。
この場は科学技術情報の整備審議をするわけですけれども、科学技術情報は我々の社会が科学技術文明に基づいて運営されており、いわば社会の統治原理になっているわけです。例えば司法においても、エビデンスに基づく多角的な判断が課題になっており、行政でもEvidence Based Policy Makingなど、様々な面で近代合理主義を原則とする社会の基盤が重要になっている。社会的な課題の中で、例えばマンション建設や、熱海の土砂災害事故などもありますが、地盤の地下構造の測定や推定データが人命に関わるような問題も科学技術に根付いています。この場ではもちろん、図書館として文献書籍になった情報が対象です。AIで分析することとして、例えばリアルな空間という話がありましたけれども、かつては「勘」等の形で、例えば漁業や農業に従事されていた方が、肌で感ずる気候とその年の農業・漁業等の実作業とをつなぐ暗黙知のようなものが現場にあったと言われますが、なかなか他の場所では生かせないし、暗黙知の伝承自体も容易ではありません。AIによって、エビデンスにまでなるかどうかは今後の課題でしょうが、一定の傾向を見出し、それを社会に活用できると、非常に有用な知識ベースになってくる可能性もあります。
特に市民科学の拡大について、我々も何らかの専門家であり、かつ市民の一部であることも事実ですので、色んな自治体、環境省等でも気にされておられますけれども、各地域がどのようにうまく生き延びていくかという意味でも、知識を利用できる社会を目指すためのベースを作っていくことは非常に重要かと思います。
先進諸国を中心に、デジタル化で国力強化を狙っているという傾向はもちろんある一方、同時に我が国のように少子高齢化で労働者人口が減少していくというのも同じ傾向です。科学技術立国をする上で、科学者人口が減少することは、国力の危機ではないかと憂慮しています。科学技術情報の生産と管理・活用をどのようにうまく行うかということは、国のためにも問題です。
リアルとデジタル、という関係については、デジタル・ディバイドの課題もあります。先日、国連のOpen Science Conferenceに招かれて議論したのですが、デジタル・ディバイドの問題はいまだに大きく、日本ではシニアの人口層の方が情報にアクセスできない等という話も耳にしますし、やはりリアルな空間でのガイドが必要であろうといったお話もあります。またそれとは別に、紙の本への愛情や愛着、アートとしての書籍の装丁などの文化面も存在するため、やはりデジタルだけで済まないという社会の構造も考えながら、しっかりと進めることが重要だと大変共感いたしました。
最後に、また話がデジタルに戻って恐縮ですが、重要なデジタル情報を長期保存するためマイグレーションをしていくという非常に地道な努力をNDLで行っておられますが、これは今後も非常に重要と思います。研究データ、数値データ等はNDLの対象ではないですが、是非NDLのデジタル情報のマイグレーション、長期保存のノウハウ・知で、共有していただけるものがあれば、学協会や研究機関等で文献からデータを含むデジタル長期保存のための基礎技術として活用するなどを通じて、日本として確かな社会の情報基盤確立につながるのではないかという印象を持ちました。
非常に雑駁な印象論ばかりで恐縮ですけども、以上とさせていただきます。ありがとうございます。
西尾委員長:
どうもありがとうございました。書籍データのみならず、東日本大震災の震災関係データの収集等も、長尾元館長のときからNDLでずっと構築をしていただいておりますけれども、村山委員のお話からすると、社会の中におけるデジタルデータを今後どのように収集して蓄積していくのかというノウハウの共有も大事な観点かと思います。どうもありがとうございました。
次、渡部委員お願いいたします。
渡部委員:
私は今回初めて参加させていただき、提言も含めて初めて拝見させていただきました。大変意欲的な、また啓発的な提言及び計画で、そのデジタルシフトの方向性は、私が所属しております国文学研究資料館の今後の方向性とも本当に一致する、とても心強いものでもありました。その点でも、大変ありがたいものだと思います。本当にこの勢いで先導していってほしいと、私たちも伴走あるいは並走したいと心から思います。
その上で、少し場違いになってしまうかもしれませんけれども、私なりの感想を申し述べたいと思います。特に提言の中で、「人と機械が読む」ということは大変啓発的な言葉ですけれども、その意図を汲みつつ私なりの言葉で言い換えますと、「機械が読んで、人は行間を読む」となります。機械が文章を読んで、人はさらに行間を、もっと深いところを読むと理解したいと思います。
データ駆動という言葉が提言にもあり、これは私たちが掲げていることでもあり、大変関心を持ちつつ読みました。人が気づかないパターンに気づくという、まさしくその通りだと思うのですけれども、これをただ大量のデータがあり、それを人間の力では処理しきれないからというだけではなくて、より深いところ、隠れた大事なことを明らかにする、「しんそう(深層/真相)」というのは掛詞で、深い層でもあり、本当の実相でもあると考えました。このように自分なりに理解しますと、頷かれてくるところがたくさんあろうかと思います。機械と人が鍛え合う、深め合うといったことを私としてはイメージしております。
その点で、先ほどの藤垣委員の意見は本当に共感するところの多い、私の関心とも非常に合致する御意見でした。教育や啓蒙との関わりがどうなるのかというところで、ビジョンの中にあるユニバーサルアクセスの実現に関連する問題です。何ができて、何が調べられ、何が分かるのか、そして自分がどう前へ進めるのかということについては、まだ分からないことのほうが多いわけです。実際に若い人と付き合ってみると、本当にそこで悩んでいて、だからこそ調べられる、調べると分かるよと言っても、では何をどう調べたら良いのかというところで立ち止まっています。恐らく方法の問題だけではなく、自分自身の関心が見えてないとい場合も大変多く、そこをどう耕していくかという問題があろうかと思います。デジタル化の意義というのも、そういうところに見出せるのではないかと思います。
と申しますのは、教え子に本当に教わるということがあります。高校の先生となった者に聞きますと、昨今のコロナ禍でオンライン授業をやらなければならない、もちろん対面もありますけれども、そのときにやはり高校生の方がはるかにオンライン授業についてくるわけです。私自身もこの3月までは大学の教員であり、教育に関わって指導要領を作ったり、教科書を作ったりした経緯の中で、模擬授業を実施する授業をやっていました。完全に対面であることが大事で、演劇的な手法も取り入れながら教室を再現するということを行っていました。それがコロナ禍で全くできなくなってしまい、もちろんオンラインで授業をやるしかなく、この授業はもうできないかなと思っていましたが、学生はむしろ生き生きと授業に参加していました。彼らはオンラインでも参加できる方法を考えつくのです。そのことに私自身が啓発されました。
日本の古典は私の専門ですから、その特色が参加することにあるだろうと思っております。能舞台に立つのは限られた能役者ですけれども、謡を謡うことで参加することはできるというような、この参加するということを非常に大事にする伝統があるわけです。日本の文化を考えていく上でも、自ら参加してそれを味わっていく、身体化していくということは非常に大事なことであって、それがデジタルと決して矛盾しないということに、むしろデジタルをうまく活用することによって、より深められるのではないかという方向性に、可能性に気づいたところがありました。まだ少し理想論かもしれませんし、思いつきなのですけれども、いかにNDLや、国際日本文化研究センターや、私どものデータベースを使って授業が組み立てられるかという試みをしている研究会に参加し考えたところでは、それこそ学校の授業で、義務教育や高校の授業で、どんどん使ってみて調べてみようといった授業もできるのではないかと、一つのアイデアとしてお示ししたいと思います。都度お考えを伺わせていただけたらと思います。何か思いつきのようなことで大変申し訳ありませんが、以上です。
西尾委員長:
どうもありがとうございました。デジタルシフトの重要性、また図書館の一つの今後の活用方法の中で、デジタルであるが故に、授業等も含めてその利用の仕方も変わってくるのではないかという点をおっしゃっていただきました。
最後に石田委員の代理で本日出席いただいております安嶌様、何か御意見がございましたらどうぞ。
安嶌専門図書館協議会事務局長:
特に意見はございませんが、専門図書館の立場で申し上げると、ジャパンサーチなど色々デジタル化が進んでいくのは、今後とも非常に重要なことだと思っております。一方で、専門図書館にはワンパーソンで運営しているところもたくさんありますので、そういうところでは資料のデジタル化など、まだまだ十分ではないので、NDLとしてぜひ目配りをお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。
西尾委員長:
安嶌様のNDLへの貴重なご要望等ありがとうございました。
これで皆さまから一通り御意見をいただくことができました。特に新たな第五期の基本計画期間をどういう期間として位置付けるのかに関して、皆さまから貴重な意見を多々頂くことができました。NDLには計画を実現していく過程の中で、本日いただいた御意見も是非参考にしていただき、取組を進めてもらうことを切に願います。皆さま方には貴重な御意見を頂きましたことを改めて御礼申し上げます。新たな期がどういう観点から重要な期であるのかが、NDLもより明確になったのではないかと思います。
5. その他
西尾委員長:
事務局から、今後の予定について説明があります。
髙品科学技術・経済課長:
貴重な御意見どうもありがとうございました。第五期科学技術情報整備基本計画の進捗につきましては、今後の審議会で報告いたします。次回の審議会につきましては、来年7月頃に開催を予定しております。具体的な日程は、改めて御連絡差し上げますので、引き続きよろしくお願いいたします。
6. 閉会
西尾委員長:
予定していた議事は全て終了いたしました。事務局から連絡事項があります。
(事務局から事務連絡)
西尾委員長:
それでは、第5期の基本計画がますます進捗していくことを祈念しまして、これにて閉会にしたいと思います。
改めまして、委員の方々には、貴重な意見の数々、ありがとうございました。
(閉会)

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