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第13回科学技術情報整備審議会議事録

日時:
令和3年1月13日(水)午前10時から午前11時20分まで
場所:
ウェブ会議サービスによるオンライン開催
(国立国会図書館会場:東京本館 人事課大会議室)
出席者:
科学技術情報整備審議会委員・専門委員 8名(欠席6名)
西尾章治郎委員長、竹内比呂也委員長代理、喜連川優委員、児玉敏雄委員、佐藤義則委員、戸山芳昭委員、藤垣裕子委員、北本朝展専門委員
(石田徹委員、ロバート キャンベル委員、塩崎正晴委員、濵口道成委員、村山泰啓委員、生貝直人専門委員は欠席。安嶌潔専門図書館協議会事務局長が陪席。)
館側出席者 16名
館長、副館長、(幹事)総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、利用者サービス部長、電子情報部長、関西館長、国際子ども図書館長、(陪席)総務部副部長企画課長事務取扱、総務部副部長会計課長事務取扱、収集書誌部主任司書、利用者サービス部副部長、利用者サービス部サービス企画課長、(事務局)利用者サービス部科学技術・経済課長、電子情報部電子情報企画課長
会議次第:
  1. 開会
  2. 国立国会図書館長挨拶
  3. 議題
    • 第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けての提言(案)について
  4. その他
  5. 閉会
配付資料:
(参考資料)
議事録:
1. 開会
西尾委員長:
ただ今から第13回科学技術情報整備審議会を開催します。
委員の皆様にはお忙しいところ、当審議会に御出席くださり、誠にありがとうございます。
本日は、12名の委員中7名の委員に御出席いただいていますので、定足数は満たされています。また、本日は、基本方針検討部会の部会員である北本専門委員にも御出席いただいています。
まず始めに、事務局からお知らせがあります。
上保科学技術・経済課長:
本日は、石田徹委員、ロバート キャンベル委員、塩崎正晴委員、濵口道成委員、村山泰啓委員が御欠席です。御欠席の石田委員の代わりに、専門図書館協議会の安嶌潔事務局長に御陪席をいただいています。
また、本日は、幹事のほかに、吉永館長、田中副館長、審議会事務局の職員等も同席しています。関係者名簿を資料1としてお付けしていますので、御覧ください。
その他の配付資料について御説明します。配付資料一覧を御覧ください。資料2-1が本日御審議いただく提言案本体、資料2-2は第12回審議会でお示しした提言素案からの主な修正点です。資料3-1と3-2は提言案作成に当たり参考とした資料で、提言の附属資料の位置付けとなります。他に、参考資料を6点お付けしています。参考資料6は、提言の検討経過をまとめたもので、今回の審議会の経過を加筆して提言の参考資料とすることを予定しています。
新型コロナウイルス感染症対策の観点から、今回も、オンラインでの開催としています。委員の皆様方におかれましては、御発言を求められる場合は、参加者一覧表示にある挙手ボタンを押してください。委員長から指名されましたら、マイクをオンにして御発言くださるようお願いいたします。
2. 国立国会図書館長挨拶
西尾委員長:
開会に当たり、吉永館長から御挨拶を頂けるとのことですので、よろしくお願いします。
吉永館長:
本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定のため、一昨年、令和元年の第11回審議会において、委員の皆様に御提言をお願いし、基本方針検討部会を設置して御検討いただいてきました。この度、部会で提言案をまとめていただき、本日、本審議会で御審議いただく運びとなりました。御指導いただいた西尾委員長を始め委員の皆様、また、6回にわたる基本方針検討部会等で御議論・御起草いただいた竹内部会長、佐藤委員、生貝専門委員、北本専門委員には、これまでの御尽力に厚く御礼申し上げます。
さて、この間、新型コロナウイルス感染症の流行という思いもかけぬ出来事が起こり、自由な往来や生身の対人コミュニケーションが抑制されることとなりました。当館でも、感染拡大防止のため、昨年は一時期休館し、現在も入館制限を継続しています。依然として深刻で予断を許さない状況が続いていますが、一方で、コロナ禍を契機に、オンライン化やデジタル化への大きな流れが加速化したように思います。本審議会からは、デジタル化を推進するよう、これまで度々御意見を頂いており、昨年9月の第12回審議会で提言素案を御議論いただいた際にも、実現に必要な予算確保について励ましのお言葉を頂きましたが、昨年12月に閣議決定された令和2年度の第三次補正予算案に、60億2,800万円余のデジタル化経費が計上されました。近年の資料デジタル化予算は、毎年約2億円規模でしたので、久方ぶりの大規模な予算措置となります。また、政府においては、著作権法の図書館関係の権利制限規定についてデジタル化・ネットワーク化に対応するための見直しが検討されています。これらを契機に、当館のデジタルシフトを加速し、御提言の方向性に沿う取組を進めていくことができればと思っております。
本日は、御提言の最終案の御審議を通じ、将来に向けた指針をお示しいただき、また、五期計画策定・実施に際し留意すべき点等に関し忌たんのない御意見を頂ければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。
3. 議題
西尾委員長:
続いて、会議次第の「3.議題 第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けての提言(案)について」に移ります。
前回の第12回審議会での素案についての議論を受けて、基本方針検討部会において検討がなされ、本日、資料2-1として配付されている「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けての提言(案)―『人と機械が読む時代」の知識基盤の確立に向けて―」がまとめられました。この案は前回の審議会で皆様から頂いた意見を十分に踏まえた案となっています。
本日、この案について、御審議いただき、御了承いただいたものを吉永館長にお渡しすることができればと考えています。
では、提言案の内容について、部会長の竹内委員から御説明をお願いします。
竹内委員長代理:
部会長の竹内です。前回の審議会後、10月に第6回基本方針検討部会を開催し、審議会で頂いた御意見を踏まえ、案について更に検討を加えました。その後もメールベースで部会員や事務局と細部を詰め、本日御審議いただく提言の最終案をまとめました。
お手元の資料2-1が提言案の本文、2-2がその概要の図です。
提言案本文につきまして、素案でお示ししたものから、基本的な方向性や、構成についての変更はありません。委員の皆様から頂いた御意見を基に検討を加え、文章を追加したり修正したりしています。また、特に前回の審議会では、具体的な取組事項を記載する基本計画との関係性を踏まえつつ、提言の中でも方向性や留意すべき点を漏れなく挙げ、優先すべきことを示すようにしたいと申し上げました。その点については、必ずしも適切に達成できていない嫌いはありますが、今回の提言の「人と機械が読む時代」というサブタイトルに込めた方向性、すなわち、国立国会図書館(以下「NDL」)が営々と収集保存してきたテキストが今日的な意味での情報基盤として利活用可能となるように、機械可読となっていくことの重要性を強調すべく、「おわりに」を大幅に書き直しました。先ほど、吉永館長からも言及がありましたが、文化審議会著作権分科会において図書館における著作物利用の権利制限に関する議論が進んでいるところです。具体的には、絶版等による入手困難資料の図書館へのデジタル送信サービスを個人まで広げることなど、その意義は非常に大きいと考えています。このような状況の下で、多くの方々にNDLの資料をデジタル化し、提供することの重要性について御理解いただけるようマイルストーンとなるような具体的な目標を設定することを、基本計画の中で御検討いただきたいことを明確に記しました。
詳細については事務局から説明をよろしくお願いします。
上保科学技術・経済課長:
(資料2-1及び2-2に基づき説明。)
西尾委員長:
今御説明いただきましたように、今回の改定案は、この審議会また部会等におきましても鋭意検討された結果でありますが、この提言案について御意見等ございましたら挙手をお願いします。このままで吉永館長にお渡しすることで御異存ございませんでしょうか。それでは、提言の改訂案のとおりで皆様の御了解が得られているということで、吉永館長に提出したいと思います。再度の確認ですがそれでよろしいでしょうか。
全員:
異議なし
西尾委員長:
それでは、皆様の御了承を頂きましたので、これをもちまして提言を確定とし、吉永館長に提出します。
本日の審議会で、「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けての提言―『人と機械が読む時代」の知識基盤の確立に向けて―」を審議し、決定しました。NDLには提言の実現に向けて一層の努力をお願いいたします。
提言につきましては、本来私からお渡しすべきものですが、オンラインで参加しているため、NDLで参加されている竹内委員長代理から私に代わって吉永館長に渡してもらいます。よろしくお願いします。
(竹内委員長代理から、吉永館長に提言を手交)
西尾委員長:
どうもありがとうございました。それでは、吉永館長から一言いただければと思います。よろしくお願いします。
吉永館長:
ただ今、貴重な御提言を頂きまして、ありがとうございました。提言に記載された内容の実現に向け、当館は、科学技術情報整備基本計画の策定とその実施を始めとして、精一杯、努力してまいる所存でございます。
本日まで審議会委員の皆様には、御指導を賜りましたこと、改めて感謝申し上げます。
西尾委員長:
部会で御議論いただき、また、審議会委員の皆様にも、本当に貴重な御意見を多々頂きましたことにつきまして、心から御礼申し上げます。また、事務局には、審議会等において出ました様々な御意見を真摯に受け止めていただきまして、最終的な提言に反映いただきまして誠にありがとうございました。ただ今提言を吉永館長にお渡ししましたが、この提言は、来年度からの5か年にわたるNDLの第五期科学技術情報整備基本計画に向けたものです。今回の提言を踏まえて、NDLにおいて第五期基本計画が策定され、その下で来年度から実施されていくことになります。皆様にはせっかく今日の審議会に御出席いただいていますので、この提言、また、第五期基本計画の策定に向けて特に留意しておくべきこと、更に、広く一般にNDLの今後の在り方について御意見を頂ければと思っております。よろしいでしょうか。御出席の委員に一言ずつ頂ければと思います。まず、今回のまとめに当たっても多大なる御尽力いただきました竹内委員からお願いします。
竹内委員長代理:
本日ここに提言を御承認いただけましたこと、案の取りまとめのための部会の責任者として肩の荷を下ろした思いがしています。御議論いただきました西尾委員長を始め、委員の皆様方に御礼申し上げます。また、提言案の策定に当たりましては、部会員を務めていただいた佐藤委員、生貝専門委員、北本専門委員の御尽力、そして事務局の皆様方の献身的な努力があってのことと思います。重ねて心から御礼申し上げます。
人間の知的な活動の所産の記録化は、文字やドキュメントというものが生み出されて以来、人類が営々と続けてきた行為であって、その成果が今日図書館の蔵書という形で残されていると考えています。もちろんこれとて人類が生み出してきたもののごく一部にすぎないわけですが、前回の委員会での御議論にありましたように、それが単に残されてきたというだけではなく、信頼できるよりどころとして我々が常に参照できるような形で存在していることの社会的意味はなかなか気付かれることはないと思いますが、非常に大きいと考えております。このように収集し残すということが法律によって定められていて、それが実行されていることの背景には、蔵書が所蔵されるというだけではなく、時を経て広く活用されるという期待があると考えるべきではないかと思っています。ですので、メディアの種類によらず、あらゆるものを集めることの意味は非常に大きいだろうと思います。今回の提言におきまして、「おわりに」に部会長としての思いを書かせていただきました。読み返してみますといささか個人的な記述であり、かつ情緒的で恥ずかしい思いもしております。しかしながら、NDLがその使命を果たし、これからも信頼に足る情報基盤であり続けるために、時には大胆なアクションも起こしていただきたいとの期待を込めたものにしたつもりです。今後、基本計画が策定され、その成果が広く社会に向けて発信され、NDLのみならず、広く図書館というシステムに対する信頼感が社会において増していくことを強く期待しています。どうもありがとうございました。
西尾委員長:
非常に貴重な御意見、また、今後に向けてのコメントを頂きありがとうございました。心から御礼を申し上げます。
喜連川委員:
この提言そのものは新型コロナウイルス感染症の流行の前から御検討を進めていただいており、竹内先生が言われた、最後の文章は迫力のあるものになっていると思います。お書きになるのは相当な時間を使われているのがにじみ出ている深い文章だと頭が下がる思いです。冒頭で吉永館長から60億円余の補正予算についてお話がありました。国立情報学研究所が昨年度末から20回以上にわたって開催している「大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム」でも、複数の大学図書館に発表していただいていますが、図書館の活動は著しく低下しています。表現が難しいですが、例えば、大学図書館を学生に開放してWi-Fiでキャンパス内でもオンライン授業を受けられるようにすることなどが考えられています。しかし、具体的な図書館の未来像はあまり描けていないのではないかというのが個人的な印象です。
新型コロナウイルスの流行の収束にはまだ相応の時間がかかると言われています。それも踏まえて、今回の補正予算が成立した場合、何をする予定なのかをお聞きしたい。また、図書館の活動でグローバルに見て先進的な取組があれば教えていただけると有り難いです。
西尾委員長:
非常に重要な御指摘ありがとうございました。現時点においてNDLで把握しておられる海外の図書館の先進的な取組などがありましたら教えていただければと思いますが、よろしくお願いします。
竹内委員長代理:
喜連川委員から御質問のありましたコロナ禍における図書館の対応ですが、国際的なことにつきましては、資料3-2の「学術情報流通の整備を巡る諸外国の状況調査」に若干触れられているかと思います。
国内の大学については、確かにWi-Fi環境の整備がキャンパスにおける大きな課題となっていまして、その改善をどう図るかが様々な所で議論されています。図書館について、例えば図書館が行ってきたサービスの構成要素で考えますと、コンテンツの収集・保存・提供、活動の場の提供、活動の場で行われる様々な人的支援の3つのカテゴリで考えられると思います。確かに新型コロナウイルス感染症の問題を考えますと、一つの場に学生を集めて様々なディスカッションをさせるのは現状では非常にリスクが高いので抑制する動きはあると思いますが、オンラインでのコミュニケーションでそれに代わる様々な活動は行われているだろうと思います。
コンテンツについては、やはりオンラインも見据えて電子化されたものを利用したいという希望が多くありますが、日本の出版における電子化の遅れが非常に大きなネックになっています。ある会議で伺った、ある大学の調べですと、シラバスに掲載されている図書のうち、電子的に提供できたものはわずか4.7%であるとのことでした。私ども千葉大学附属図書館でも教員や学生から希望を募って、授業や教育に必要な資料の電子書籍の整備を進んでやっておりますが、それでも和書に関しては図書館で電子的に提供できるものは10%しかありませんでした。出版の電子化の遅れがやはり現実的な問題としてありまして、今回、文化審議会著作権分科会で議論されています著作権法第31条における権利制限の拡大は非常に大きな意味を持っています。これについては一刻も早い法改正と、その実現が求められていると考えています。
人的支援については、残念ながら例えばレファレンスのオンライン化が広くなされているかというと、まだそういう状況にはないと思いますが、取組を進めている先進的な大学もあると思います。それ以外にも様々な教育における人的支援のオンライン化はなされていまして、私ども千葉大学附属図書館では英語論文執筆のためのコンサルテーションやライティングの支援、学習の支援などを全てオンライン化しています。先ほど喜連川委員が言われたことは、既に取り組んでいる所も多々あるのではないかと考えています。
西尾委員長:
ありがとうございました。資料3-2として、諸外国の状況調査をまとめていただいております。個人的に興味がありますのは、コロナ禍の中で、また、ポストコロナに向けて新たな図書館像を探る動きや実際に進んでいる新たな取組などです。このようなことについては、今後も情報収集をしていただければと思っています。
喜連川委員:
先ほど竹内委員からお話のあった、人間の作り出した知をしっかりと管理し利用可能にするということが人類にとって非常に重要であるということはそのとおりですが、コロナ禍は、我々がどこに悩みを抱えているのかということをゼロから考える良いチャンスではないかという気がします。
今までのライブラリアンがやってきたように学生にこの資料を読めば良いと言ったところで、今は資料を提供することが難しい。図書館員の方々も中途半端なところで悩ましく感じていると思いますが、では何をすれば良いかというときに、著作権法の改正が必要ならば、図書館全体として働きかけることが考えられます。このとき法文のどこをどう変えるかまで用意して持って行くというのが(文化審議会著作権分科会)法制度小委員会でのやり方です。そこをこれからやりますということが考えられます。それは多分海外も同じ悩みを持っているのではないでしょうか。著作権法は法律の中で一番変更が繰り返されている法律です。そこに向かって何をするのかということを考えることが重要ではないかと感じます。
Amazonが10年ほど前にプリント・オン・デマンドのサービスを始めています。これは、紙の在庫を持つのではなく、オンデマンドでデジタルから紙にして提供するというビジネスモデルです。今はちょうどその逆、オンデマンドデジタイゼーションが求められています。
まだ1年くらいは新型コロナウイルス感染症によって図書館が置かれる環境は変わらないと思います。竹内委員を中心にもう一度これからの図書館の在り方を検討するのはどうでしょうか。言いたい放題ですみません。答えがないので、みんなで考えていきたいと思っています。
西尾委員長:
重要な観点から御指摘いただきまして、誠にありがとうございました。
佐藤電子情報部長:
少しだけ補足させていただきます。喜連川委員の御指摘について、なかなかすぐに答えられることはないのですが、著作権法改正に向けた動きに関しては、出版者などの関係者と、具体的にどう運用していくか協議を始めつつあります。微力ながら図書館として主体的に働きかけていきたいと思います。
60億円余の予算で何をするかについて、簡単に説明したいと思います。一番大きいのは図書資料のデジタル化です。1987年までに刊行された図書のデジタル化を行います。これまで画像データしか作っていないのですが、提言でも指摘されているように、テキストデータを作らないともはや意味がないと強く認識していますので、過去にデジタル化した画像データも含めてテキストデータを大量に作成しようと考えています。さらに、特に昔の資料に対するOCRの精度が良くないので、精度を向上させることも考えています。それから、60億円余の予算ですと、1987年までに刊行された図書について全てをデジタル化できるわけではありませんが、これを足掛かりとして更にデジタル化を進めていくための予算を要求できるように、成果を見せられる形で進めていきたいと考えています。
西尾委員長:
貴重な情報をいただきまして、ありがとうございました。
佐藤委員:
きちんとした提言案をまとめられたこと、そこに加われたことを大変うれしく思っています。実際にこの提言の内容をどのように具体化していくかということが、非常に大切になるかと思います。中には実現していく上で非常に時間がかかることや、あるいは技術的な問題も出てくるかと思います。例えば資料2-1の5ページの「恒久的保存のための領域」に関しましては、12ページの「オンライン資料」のところにありますように、現在、有償又はDRMが付いているものは収集対象外とされています。これは法律的な問題というよりも、おそらく技術的な問題によるものだと思われますが、その解決に向けて計画にうまく盛り込んでいただけるようお願いします。
西尾委員長:
この件は、今言われましたことを踏まえまして、今後どのように実施していくかを考えていただければと思います。
児玉委員:
基本方針検討部会の先生方の御尽力のおかげで、次期基本計画策定に向けての具体的な提言として立派なものができていると思います。提言を反映した次期基本計画の策定をお願いしたいと思います。また、久方ぶりの大規模な予算が計上されたことは、羨ましい限りですが、提言の中にもありますように、限られた予算や人などのリソースを考慮して、かつスケジュールを明確にした詳細な実行計画を作成して実行していくことが肝要かと思います。その上で、計画どおりに行かないことも多々あるかと思いますので、その場合には計画を見直すことも重要だと思います。いわゆるPDCAのサイクルを回すことが大事かと思います。成果を期待したいと思います。
また、man machine interfaceという言葉がありますが、従来、machineは人の手先としてprocessingするものでした。しかし、今はサービスの対象という観点からはmanとmachineを同等に取り扱わなければいけない時代になってきたと思います。manはmachineをコントロールできるのか、どのようにコントロールしていくのか、倫理的な問題も絡んでくるところかと思います。そのような観点からも目が離せないと思っております。
西尾委員長:
貴重なコメントありがとうございました。特に、機械と人間との関係、その上での倫理上の問題などは、非常に重要な観点かと思います。
戸山委員:
まずは、提言について素晴らしくまとめていただいてありがとうございます。来館して資料を読む、借りて自宅に持ち帰るというところから、来館とオンラインのハイブリッドとなり、今後はオンラインで資料を提供する、利活用する時代に間違いなくシフトすると思います。学校教育も大きく変わるでしょうし、社会や企業も変わるでしょう。建物等のハード面、人やサービス等のソフト面を含む図書館の在り方が、大きく変わり得る時期かと思います。良い悪いは別として、コロナ禍を機会として図書館が一体となった取組が求められています。今後5年間では、オンラインサービスに不可欠である資料のデジタル化の推進が一番キーになると思います。60億円余が補正予算案に計上されたのはうれしいことですが、せっかく国が動き始めたのですから、うまくそれに乗って、もっと予算を頂いて、限りなく早くデジタル化を進めてほしいと思います。提言の中では「全ての所蔵資料のデジタル化を長期的には実現すべきである」と書いてありますが、所蔵資料のうち今デジタル化が済んでいるのが5分の1程度ということなので、まだまだ5分の4が残っています。10年や7年など具体的なスケジュールを立てて予算要求することが大事ではないかと思います。
前回も申し上げましたが、小学校、中学校、高校、さらには大学でも教育の在り方が大きく変わってきています。オンライン教育が普及・進展する中で、図書館の所蔵資料やそのデジタルデータ等の利活用への期待が大きく膨らんでいます。図書館が文部科学省など教育関係と密に連携して、教育でうまく使ってもらえるように具体的な取組を進めるべきだと思います。利用者への図書館資料のデジタル送信等について「充実したサービス提供体制を構築すべきである」というのは提言なのでこれで良いと思いますが、より具体的なものを出していただけると素晴らしいと思います。1番のポイントはデジタル化で、それをオンラインで、どこでも誰もが見られて、教育でも広く利活用されているというのが、今後向かうべきところではないかと思います。
西尾委員長:
全て貴重なコメントであり、感謝申し上げます。最初に言われたのは、先ほど喜連川委員からも御指摘のあった、今後の図書館の在り様を抜本的に再考することが迫られているのではないかということかと思います。それは、まさにコロナ禍を経てピンチをチャンスに変える時期に来ているのではないかと考えます。来る第五期が、デジタル化に関して重要な期間になるのでは、とのお話がありましたが、そのとおりだと思います。提言をベースに第五期基本計画を策定するときに、タイムスケール、つまり、何をいつまでに実行するとというような記述をいただく方が良いのではないかという御意見もありました。例えば、それを記述することによって予算の獲得がよりしやすくなるということであれば、基本計画に期間を明記することをも考えていただければと思います。今後、大学のみならず小中高の教育等においてもNDLのサービスが更に大きな意味を持つ、大きな影響を及ぼすということをきちんと考えるべきとの御意見でしたが、そのとおりだと思います。
藤垣委員:
9月30日の第12回審議会での議論を基に非常に効果的に修正していただきまして、部会長の竹内委員を始め部会の先生方の御尽力に感謝したいと思います。資料3-2も拝見しましたが、充実していて貴重なデータになっていると思います。第五期に向けて、新型コロナウイルス感染症の話も大切ですが、同時に前回にも議論したとおり、ちょうど過渡期にあるオープンサイエンスにも目を向ける必要があります。図書館データにおける科学と社会の関係の変化のみならず、研究者コミュニティ自体の情報蓄積の在り方も変化の途上にあります。ですので、この提言の中に、新たな学術情報流通への移行期にあること、そしてそれと同時にオープンデータをベースとしたシチズンサイエンスが進展しつつあるということを追加していただき有り難いと思います。特に学術情報に関しましては、コロナ禍とオープンサイエンスの相乗作用が働き、査読なしのプレプリントが急速に普及しつつあります。その辺りもきちんと見ながら、この提言を基に第五期基本計画を策定していただければと思います。オープンサイエンスの動きの中でNDLが今後とも効果的な役割を果たしていただけるように基本計画を作っていただければと思います。
西尾委員長:
シチズンサイエンスという言葉を入れていただいたのは、非常に大きな意味を持っています。貴重な御意見をいただき、誠にありがとうございました。
安嶌専門図書館協議会事務局長:
陪席の身でありますが、発言の機会を頂きありがとうございます。委員として委嘱していただいております石田は、東京商工会議所の専務理事であり、専門図書館協議会の理事長としての立場で参加させていただいています。今回の提言については、実行に移していただくことが肝要だと思っております。専門図書館協議会について一言御説明させていただきます。専門図書館協議会は、昭和27年にNDLも参加してできた団体で、現在は東京商工会議所も協力しています。会員機関は、専門資料を持っていますが、著作権法第31条に規定されている図書館等の範囲に入らない施設も多いです。今回の提言とは直接関係ありませんが、こうした専門資料を持っている小さな図書館との連携についても思いの中に含めていただけると有り難いです。
北本専門委員:
今回この提言の専門委員に加えていただき、竹内委員のリーダーシップの下提言をまとめる作業に関わることができたのは、私にとっても非常に良い経験となりました。委員の方々にも貴重な御意見を頂き、非常に良い提言に仕上がったと思っています。
今回の提言については、機械が図書館の正式な読者として認められたことに大きな意義があると考えています。先ほど人と機械が対等というお話がありましたが、英語で言えば、機械も今や「first-class citizen」になったと言えます。図書館が機械を読者として認める時代になったわけですから、機械を読者として迎えるためにどういう体制が必要かを、今後に向けて検討していく必要があると考えています。新型コロナウイルス感染症の影響により、人が集まる場所としての図書館の意義が問い直しを迫られています。一方、これからの図書館は機械が集まる場所にもなりますので、機械が集まって色々なことをやっていく場所としての新たな意義が生まれ、図書館が技術開発のフィールドとして活気ある場所となる可能性もあります。その際には、NDLが技術開発のリーダーシップを取れるような体制も必要です。単に読者を受け入れるだけでなく、技術開発にもより一層力を入れていただくことを希望します。
西尾委員長:
北本専門委員のお話を伺って、図書館が大きく変貌していくことを予感することができました。今後の図書館が第五期基本計画の間にどのように大きく変わっていくか、我々としても目が離せないところかと思います。ありがとうございました。
第五期の基本計画を策定するに当たって、大きなビジョンとしてどういうことを踏まえながら策定すると良いかに関しまして、貴重な御意見を数多く頂きました。NDLには今頂いた御意見、コメントも踏まえて、第五期基本計画の方向性を更に精査いただくと同時に、それを実現していただくように、何とぞよろしくお願いします。
本日は以上をもちまして議題を終了したいと思います。本当にありがとうございました。
4. その他
西尾委員長:
事務局から今後の日程の説明をお願いします。
上保科学技術・経済課長:
本日頂きました御提言を踏まえ、NDLでは、今年度中に、科学技術情報整備基本計画を策定いたします。その内容については、次回、第14回の審議会で報告いたします。現在のところ、今年の7月頃に開催することを考えております。引き続きよろしくお願いします。
1点補足させていただきます。喜連川委員から海外の図書館のコロナ関係の取組について御質問がありました。今回お付けしました資料3-2の海外調査関係の資料にもコロナ関係のことは記述がありますが、今回この調査をするに当たりまして参考としました、当館で提供している「カレントアウェアネス」というコンテンツで、随時海外の図書館のコロナ禍における対応などを御紹介しています。また、当館は国立図書館として国際図書館連盟(IFLA)に参加していますが、IFLAでも海外の図書館のコロナ対応などをまとめていて、それを当館で改めて紹介するということで、皆様にコロナ禍における対応状況などを紹介しています。
西尾委員長:
喜連川委員の御質問に関連して、関連情報がどのような形で提示されていて、また、今後も収集していくということに関して貴重な情報提供を頂きありがとうございました。
5. 閉会
西尾委員長:
予定していた議事は全て終了しました。事務局から連絡事項があります。
(事務局から事務連絡)
西尾委員長:
委員の方々には、本日のみならず、毎回の審議会において大所高所から素晴らしい御意見を賜り、大変感謝申し上げます。特に、部会の竹内委員、佐藤委員、生貝専門委員、北本専門委員には提言の策定に大変な御尽力を頂き、ありがとうございました。また、事務局も資料の取りまとめ等に多大な御尽力を頂き御礼を申し上げます。これにて閉会にしたいと思います。ありがとうございました。
(閉会)

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