第5章 西洋数学の導入

コラム 超越方程式(難易度2)

代数方程式でない方程式のことを超越方程式と呼びます。

それでは代数方程式とは何かといえば、「多項式=0」の形の方程式のことですが、(x+1)2-(x2+2x+1)=0のような恒等式は方程式とは呼びません。x2+y2=1は代数方程式で、自然数の範囲では解はなく、整数の範囲ではx=±1,y=0または x=0,y=±1が解になります。有理数の範囲では(a,b,c)をa2+b2=c2であるピタゴラス数とするとx=±a/c,y=±b/cが解になるので、解は無限に存在します。実数の範囲では、-1≦x≦1である任意のxについて y=±√(1-x2)とすれば、x,yが解になるので、こちらも解は無限に存在します。係数が整数で変数が複数ある方程式の整数解を求める場合、その方程式はディオファントス方程式と呼ばれます。xn+yn=znはn≧3の時、x=y=z=0以外の解が存在しないという17世紀のフェルマー予想は1995年にやっと証明されました。

係数が有理数で変数が1つの代数方程式の解となる数(実数または複素数)は代数的数と呼ばれます。例えば、x=1+√(1+√3)という数は(x-1)2=1+√3より、x2-2x=√3、両辺を2乗してx4-4x3+4x2-3=0とすると、この方程式の解ですので、代数的数です。複素数を係数とする代数方程式の解は必ず複素数の範囲にあるという定理は代数学の基本定理と呼ばれ、1799年にF.ガウスが証明しました。

それでは実数や複素数はすべて代数的数であるかというと、そうではありません。円周率πが解になるような代数方程式は存在しません。πはsin x=0のような代数方程式でない方程式の解であり、このような代数的数でない実数は超越数と呼ばれます。もうひとつ有名な超越数は自然対数の底と呼ばれるeという数で、自然数nに対し(1+1/n)n乗という数を作り、nを無限に大きくしたときの極限となる数2.718281828...がeです。y=exという関数を作ると、この関数はxで何回微分しても

dy/dx=ex,d2y/dx2= ex,…

と、もとのままの関数であるという不思議な性質があります。eeはテーラー展開すると、

ex=1+x/1!+x2/2!+x3/3!+ …

という、きれいな形で書ける関数です。

このeとπを使うと、e+1=0 という式が成り立つことが知られています。

超越数は代数的数より多く存在することを1874年にG.カントール(1845-1918)が証明しましたが、例えばe+πやe×πが超越数かどうかもまだ分かっていません。具体的に知られる超越数は限られています。

超越方程式は、指数関数、対数関数、三角関数を式に含む形のものが一般的で、数値的な解法を取るのが普通です。

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