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科学技術関係資料整備審議会

科学技術関係資料整備審議会諮問・答申

第38回科学技術関係資料整備審議会における諮問事項に対する答申について

国立国会図書館長
緒方信一郎殿
科学技術関係資料整備審議会
委員長 藤原鎭男

諮問事項
科学技術情報の電子化およびネットワーク化などの情報基盤整備が国の内外において進展し、科学技術基本計画が策定された状況にかんがみ、国立国会図書館の役割および科学技術関係資料整備はいかにあるべきかについて

答申
 平成9年3月5日付で諮問のありました「科学技術情報の電子化およびネットワーク化などの情報基盤整備が国の内外において進展し、科学技術基本計画が策定された状況にかんがみ、国立国会図書館の役割および科学技術関係資料整備はいかにあるべきか」について、別紙のとおり答申いたします。

(別紙) はじめに

 近年における情報通信技術の発達は著しく、科学技術情報の電子化およびネットワーク上で流通が急速に進みつつある。わが国においても学術情報ネットワークの全国展開および省際研究情報ネットワークの整備等が進み、また、インターネットの急速な普及によって、世界中の様々な情報へのアクセスが容易になる等、ネットワーク環境下での科学技術情報の流通が一般化されつつある。一方、情報資源の面では、学術文献をはじめとする科学技術情報の爆発的増加や学術雑誌の価格の高騰が、図書館や情報提供機関の財政を圧迫し、国全体としての情報提供能力の低下を招いている。
 こうした状況の下、平成7年11月、今後のわが国の科学技術政策の基本的な方向を示した科学技術基本法が議員立法により成立し、平成8年7月には、法の趣旨を具体化するための科学技術基本計画が閣議決定され、研究開発に関する情報をはじめとする科学技術情報の流通促進の重要性が強調された。
 国立国会図書館は、今日まで、科学技術関係資料の網羅的収集に努め、国の科学技術情報流通に寄与してきた。しかし、科学技術情報流通を巡る環境が劇的に変化し、国全体としての情報流通の一層の促進が求められている現在、収集・提供・保存に関わる従来の方針を時代の要請に応え得るものに改め、情報流通機能をさらに強化することが急務と言えよう。
 多様化する利用者ニーズに基づく情報資源の構築、電子化とネットワーク化への積極的な対応、関係諸機関との協力関係に基づく情報流通体制の充実、リモート・アクセス・サービスの確立、人材育成等を基調とする新たな枠組みの創造とその具体的を図ることが望まれる。

1. 国の科学技術情報流通における国立国会図書館の役割

(1)立法補佐
 国立国会図書館は、国会法および国立国会図書館法のもとで、国会の立法補佐機関としての役割を担っている。現在、国会においては、科学技術関係立法がますます増加すると予想される状況にあり、科学技術に関わる中長期の総合的政策の分析・評価に、立法府自らが積極的に関与していこうとする活発な動きも見られる。今後、こうした状況に対処するため、立法補佐機能のより一層の強化を図らなければならない。

(2)科学技術情報の収集・提供・保存
 国立国会図書館は、納本図書館として、また、昭和32年の衆議院議院運営委員会における科学技術文献整備に関する決議および数次にわたる本審議会の答申に基づいて、国内外の科学技術情報の網羅的収集・提供・保存に努め、国の科学技術情報流通に寄与してきた。国立国会図書館は、新たな情報流通環境において、国の科学技術情報の収集・提供・保存機能のより一層の充実を図らなければならない。

2. 国立国会図書館が実施すべき科学技術情報流通に関わる施策

(1)立法補佐機能の強化
 [1] 国会の科学技術情報ニーズを正確に把握し、国政審議に必要な情報の収集体制強化を図る。
 [2] 情報の迅速かつ的確な提供を行うために、電子図書館的機能の活用を図る。
 [3] 外国の立法補佐機関および国内外の調査研究機関との協力関係を構築する。

(2)利用者ニーズと協力に基づく情報資源の構築
 [1] 国内資料については、納本制度調査会の答申に基づく納本制度の整備等により電子媒体資料を含めた科学技術資料の十全な蔵書の構築を目指す。特に、国内刊行「灰色文献」の積極的、組織的な収集に努める。
 [2] 外国資料については、従来の紙媒体資料を中心とした収集方針を見直し、今後は電子媒体資料についても積極的な導入に努めるとともに、国会および研究者・技術者等のニーズに基づいた的確な収集を図る。また、国内関連機関との相互協力、連携を図ることによって、わが国全体としての科学技術情報の網羅性を高めていく方向をとるべきである。収集にあたっては、以下の諸点に留意する。

(i) 雑誌および欧文会議録は重点的に収集する。その他の資料群については、ニーズの的確な把握による効果的な収集に努める。
(ii) 重要度が高いと評価されるものや利用頻度の高い資料は、国内の他の提供機関と重複するものも含めて収集する。
(iii) 利用の比較的少ない資料や利用目的あるいは利用者層が限定される資料は、国内各提供機関との連携協力によって、国内における適切な配置を工夫する。また、所在情報の整備を図る。
(iv) 利用が希な資料や流通経路が明確でない資料で、国内の他機関では入手困難な資料については、収集に努めると同時に海外提供機関へのレフェラル・サービスを行う。
(v) アジア地域における科学技術情報流通のより一層の促進に資するため、アジア地域の図書館や科学技術情報関連機関との協力関係を強化するとともに、同地域で刊行される資料について、積極的な収集に努める。

(3)ドキュメント・サプライ・サービスと電子図書館の実現によるリモート・アクセス・サービスの確立
 論文・記事単位の一次情報を迅速に提供するドキュメント・サプライ・サービスの実現および電子化された一次情報、二次情報、レファレンス情報等をリンクさせ、的確な情報を提供する電子図書館の実現は、効果的なリモート・アクセス・サービスを確立するためには不可欠な要素である。
 ドキュメント・サプライ・サービスおよび電子図書館の実現により、国内およびアジア地域をはじめとする海外からの情報ニーズに的確かつ迅速に応じるサービスを展開し、科学技術情報の積極的な発信に努めなければならない。そのために、以下の施策を講ずる。
 [1] ドキュメント・サプライ・サービス

(i) 電子オーダー・システムや書誌情報とリンクした効果的なドキュメント・サプライ・サービスの実現を図る。
(ii) ドキュメント・サプライ・サービスの充実を図るため、国内各機関からの寄贈・移管による資料も積極的に受け入れる。
(iii) 資料の電子化を積極的に進め、電子ジャーナル等の電子媒体資料とともにドキュメント・サプライ・サービスおよび電子図書館における活用を図る。
(iv) ゲートウエイ等により外部情報資源の積極的な活用を図る。
(v) ドキュメント・サプライおよび電子図書館サービスに関わる著作権問題、課金システム等の法制上、制度上の問題について解決を図る。

 [2] 電子図書館の実現

(i) 必要とする情報に利用者を的確に導くナビゲーション機能、レファレンス機能、ブラウジング機能等を備えた電子図書館システムの開発およびコンテンツの構築を行う。
(ii) 電子図書館の開発においては、電子媒体資料の蓄積・保存についても取り組む。また、技術開発の進展に適切に対処する。

(4)高度なレファレンス・サービスの展開と科学技術情報専門家の育成
 利用者が求める情報を迅速かつ的確に提供するためには、利用者の要求を正確に分析して、提供すべき情報の選択と評価を行い、その結果を利用者に迅速に届けなければならない。そのために、以下の施策を講ずる。
 [1] レファレンス情報を電子化し、電子図書館におけるコンテンツとして利用する等、レファレンス機能を強化し、迅速かつ的確な情報の提供を図る。
 [2] 科学技術情報の分析および評価の専門家の育成を行い、質の高いレファレンス・サービスを展開する。

(5)科学技術情報流通体制の充実に向けた取組み
 情報流通をめぐる環境の変化により、図書館サービスの外部資源への依存が進む一方で、情報資源の相互利用による共有化、電子情報資源の共同利用、単一の機関では対応の困難な蓄積・保存の問題等に共同で対処しようという機運が生まれている。国立国会図書館には、国内の科学技術関連機関との連携・協力に基づく広範で円滑な科学技術情報流通体制の充実に向けて、積極的な取り組みが求められる。そのために、以下の施策を講ずる。
 [1] 全国の科学技術情報の生産および流通に関わる関連機関の情報交換、連携協力の場を設け、科学技術情報流通の促進を図る。
 [2] 科学技術関連の主要な情報提供機関による協力活動を行う。
 [3] 大学、学協会、国公立試験研究機関、民間研究機関等の科学技術情報の生産に関わる関連機関との情報交換を促進し、研究成果の電子化およびその納入・蓄積・保存・利用に関わる共同開発等のプロジェクトに取り組む。

 国立国会図書館は、以上の施策について早急に実施計画を策定するとともに、計画遂行に要する予算上および体制の整備についての措置を講ずるべきである。

科学技術関係資料整備審議会委員名簿(略)

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