ホーム > 資料の収集 > 納本制度 > 納本制度審議会 > 第2回納本制度審議会ネットワーク系電子出版物小委員会議事録

第2回納本制度審議会ネットワーク系電子出版物小委員会議事録

日時:
平成14年10月24日(木)午後2時~4時
場所:
国立国会図書館 新館2階大会議室 電子図書館デモンストレーションルーム
出席者:
納本制度審議会ネットワーク系電子出版物小委員会委員・専門委員(敬称略)
委員:公文俊平(小委員長)、合庭惇、内田晴康、小幡純子
専門委員:奥住啓介、白田秀彰、戸田愼一
要約:
(1)小委員会は、ネットワーク系電子出版物を現行納本制度に組み入れることは不適当であると判断し、別の制度的枠組により対応することについて意見が一致した。
(2)収集する範囲及び方法については今回の委員・専門委員からの意見を踏まえて、修正試案を次回小委員会に提示することとなった。
会次第:
1. インターネット資源選択的蓄積実験事業について
2. 現行納本制度に組み入れることについて
3. 収集すべき範囲及び方法について
4. 次回小委員会の日程について
配布資料:
(資料1)第2回ネットワーク系電子出版物小委員会検討用資料
(資料2)関係法規集(抄)
(資料3)納本制度審議会ネットワーク系電子出版物小委員会所属委員・専門委員名簿
(資料4)第3回ネットワーク系電子出版物小委員会のスケジュールについて

議事内容:
1. インターネット資源選択的蓄積実験事業について
 国立国会図書館関西館において行われている標記実験事業について、事業担当者よりデモンストレーションを交えた説明が行われた。
 
-会の進め方について及び資料説明-
小委員長:  改めて、小委員会を開会いたします。
 本日の会の進行ですが、まず、事務局の方からネットワーク系電子出版物の現行納本制度への組入れについて、続けて当該出版物の収集範囲及び方法について説明があります。
 「組入れ」については、討議を行い、小委員会としての一定の方向性を示すことにします。
 「収集すべき範囲及び方法」については、選択肢を含めて検討を行います。
 最後に、第3回小委員会の日程を調整したいと思います。
 では、まず事務局の方から説明をお願いします。
事務局: 〔配布資料に基づき、ネットワーク系電子出版物の現行納本制度への組入れについて並びにネットワーク系電子出版物の収集範囲及び方法について説明〕
 
2. 現行納本制度に組み入れることについて
小委員長:  早速討論に入りたい。まず、ネットワーク系電子出版物の現行納本制度への組入れについて討議します。御発言の際は、マイクでお願いします。いかがでしょうか。
委員: 質問ですが、資料のまとめのところで、現行納本制度に組み入れるよりも別の規定を設けるほうが法的問題を簡明に解決できるとあるが、具体的にはどういうことでしょうか。また、国立国会図書館法を改正せずにネットワーク系を収集する新しい法律を作るのかどうか確認したい。
事務局:  国立国会図書館法の24条・25条の改正ではなく、別なところでやりたいという考え方を採っております。パッケージ系の収集の際には館法の24条に書き込んだわけですけれども、ネットワーク系の場合は24条・25条に組み込むことはやめましょうということで、館法の別の場所に書くこともないわけではないということです。そうお取りいただきたい。
小委員長:  別に条文を追加するという意味ですか。
事務局:  たとえば館法に一章を新たに設けることもありうるということです。
委員:  具体的には24条に、電気的方法・磁気的方法云々というのがあって、これがパッケージ系ですか。
事務局:  パッケージ系は24条9号で納入対象としています。
委員:  9号にネットワーク系は含んでいないということですか。
事務局:  そのとおりです。
委員:  3ページの図ですが、単純化されているので、誤解があるといけないと思いまして一言申します。ユーザーについて貸与は貸与権の関係で制限を受けるときがあります。必ずしも貸与が完全に自由ということではなく、個人レベルでユーザーが取得した場合の貸与は認められているということで、公衆に対する貸与という意味ではない。
 ここでは図書を中心に考えているようですが、収集の対象として先ほどの9号や映画フィルム、蓄音機用レコードが追加されてきているので、ユーザーの使用権についても著作権上の制限があるものはある。
 分かりやすく類型化して、典型的なものを比較するために図式化するのはいいと思うのですが、対象物によって違うということと貸与権のところについては注をつけたほうがよかったと思います。
委員:  私も、従来の納本制度に組み入れることは無理であるという結論に賛成です。館法に新しい章を、あるいは章ではなくて条かもしれませんけれども、追加する。情報公開法の時には著作権法のほうに入れましたので、ここで言われている意味での著作権制限に関しては著作権法の調整で対応し、収集するために向こう側からの何らかの動きが必要なものについては新条文で定めるのかという気がします。
 そもそも憲法的にいうと代償金は現行納本制度においても絶対に払わなければいけないわけではありません。逆に図書館に入れることは国が保存するという意味では出版者側のメリットでもあるわけで、無料で納本させる国もあると思いますけれども、日本では代償金を払って有体物の出版物について納入させています。
 自動的に集めるものについて代償金を払うことは考えていないと思いますが、有料サイトについて新しい制度を仕組むときに代償金をどういう形に仕組むのか。資料では表層ウェブ・深層ウェブどちらも代償金が必要と思われるとあるが、それは考えどころという気がします。必ずしも代償金が不可欠ということではないと思います。
 また、収集するときの裁量基準が国民に対して説得力のあるものでないと納得されないと思います。ここが大変難しい。恣意性を排除する仕組みが必要でしょう。
 利用も大変問題で、先ほどの代償金が要らないのではないかということとも絡む話ですけれども、どういう利用をさせるかにもよります。有料でないと入れないものを国会図書館では無料で入れるという話になってくると、まさに代償金と連動してきます。
専門委員:  今御議論がございましたように、最初の法的な枠組みですが、私は24条・25条に組み入れないのは賛成です。
 条文を追加することについてここで議論しても仕方がないと思いますけれども、今欧米にあるデータベースの保護、特に一番動きを心配しているコレクション・オブ・インフォメーションの文言と合うかどうかが問題で、書き方一つでずいぶん違ってくるのではないか。審議はあと2年ほどあるので、どういう条文にするかについてはしっかりと海外の動向を見、いろいろな関係法令を検討すべきだと思っています。
 ネットワーク系電子出版物の収集範囲と方法ですが、先ほどのお話にもあったように有償のデータベースはあくまで商品で、代償金を払っても第3者が自由に使うことには非常に問題があるというところもあります。実際、パッケージ系組入れの際にも、CD-ROMを皆が国会図書館で見てしまうと商売に影響があるという声もありました。ネットワークの場合はさらに影響が大きいのではないかと思います。
 技術的な話ですが、論点の中のロボットによる収集ができるかどうかということがあります。やってやれないことはないと思いますが、ロボットが相手側に取りに行って、探したいデータがあり、それをそっくり持ちこんだとしても、ソフトウェアはどうするか、CGIはどうするか、プラットフォームはどうするかという問題があります。こうした問題は代償金どころの騒ぎではなく、ソフトウェアの著作権、使用権、それからソフトウェア自身の対応の問題があり、おそらく普通の事業者であればノウハウもありますので、公開しないのではないかという心配があります。
 また、国立国会図書館でできるのであれば、それを真似るハッカーが出ますから、このあたりも十分に検討する必要があります。
 集めるところはいいのですが、利用させる側の環境をどうすべきかを慎重に検討していただきたい。
専門委員:  表層ウェブと深層ウェブにわけて、表層ウェブに関しては著作権制限でいくのがよいという感じを持っています。深層ウェブに関しては、強制許諾が著作権の原則になじまないので、館法に新章を設けて入れて、深層ウェブに関しては交渉のテーブルにつくくらいは強制するような形にしないといけない。ですから、資料に書いてある大枠でよろしいと思います。
 表層ウェブに関しては著作権を制限してしまえばいいわけで、代償金に関しては考えなくてもよいのではないか。著作権法を見ましたら、映画の著作物に関しては相当な額の補償金を支払うことが書いてあり、アナロジーがいいかどうか分からないですけれども、ネットワークに当てはめると映画の著作物は深層ウェブにアナロジーできる。一定の枠組みは必要かもしれませんけれども、表層ウェブに関しては著作権法の改正で制限し、そもそも権利がないから代償金は支払わないというのが一番すっきりすると思います。
専門委員:  現行納本制度に組み入れるかどうかについて、法律をどう読み解くかについては専門でないのでよく分からないのですけれども、実際の収集の手法を見た場合、従来の図書などではアクションを起こすのは出版者側です。ところが今回のネットワーク系は、表層ウェブを中心に考えているようですが、アクションは収集側が行うということで手法がずいぶん違う。このため、24条・25条で考えるよりは別の枠組みを用意したほうが分かりやすいと考えます。
小委員長:  一番目については、24・25条の部分的な改正で対応するのは不適当ということで意見は一致していると見てよいでしょうか。
全出席委員:  異議なし。
小委員長:  では、小委員会の方向として現行制度に組み入れるよりも、別の新たな制度的枠組みを考えるとまとめることとしたい。
 
3. 収集すべき範囲及び方法について
小委員長:  では次に、新たな制度的枠組みを考えるにあたっての当該出版物の収集範囲及び方法についてですけれども、各委員の意見をベースとして収集範囲の分類・整理がなされ、その整理を踏まえた二つの収集範囲の事務局試案とこの試案に基づく収集方法の試案が提起されています。「試案における論点」を中心に討議いただきたい。いかがでしょうか。
委員:  資料では表層ウェブと深層ウェブということが自明の概念であるかのように書かれていますが、表層と深層をどう区別するか、概念規定はどこに書かれていますか。つまり、表層・深層という分け方で話が進んでいっているので、表層の部分は著作権制限でいいのかという問題もあると思うのですけれども、表層と深層をどう分けているのかをお伺いしたい。
 それからロボットによる収集・複製ですけれども、通常の検索エンジンで持ってくるのはURLです。ページを実際のコンピュータに持ってくる、複製するのは個人の行為ですね。そこまでできるロボットは、おそらく技術的に可能でしょうけれども、本当にそれでできるのかどうかが気になります。
 場合によっては、ロボットは深層の部分も自由に出入りできる。先ほどハッカーの例が出ましたけれども、ハッカーでなくても実際にウェブページの本来許諾を必要とするところ、IDとパスワードに保護されている部分に入ることができることもあります。
事務局:  資料では表層ウェブと深層ウェブはロボット収集での可否によって定義されるとしました。先ほどおっしゃいました認証が必要であるとかパスワードで保護されているという区別は自由アクセス、制限アクセスとして扱っております。
 後で出てきます収集方法の著作権制限・契約強制との関係で、ここでは表層ウェブ・深層ウェブを使い分けております。
事務局:  私どもの理解ではロボット収集で内容も収集できると考えておりました。
事務局:  確かに表層ウェブと深層ウェブには境界領域が発生し、厳密には分けにくいということがあります。一般的には、リンクが静的に張られていてリンクをたどって情報をロボットで収集できるものを表層ウェブと呼んでいます。それに対して、データベースが多いですけれども、別の検索のシステムが働いており、何かしら検索語を入れて、その結果を返して、それを表示するというものですと、一般的にはロボットでは収集できません。
 ただし、実はデータベースの中でも静的なリンクが張られているものがありまして、ロボットで収集できてしまうものもあります。
 それからデータベース等では作り方が様々でして、個別に考えないと対応できないこともあります。一筋縄ではいかないことはあると思います。
委員:  そういうことを踏まえた上で、この深層ウェブ・表層ウェブという言葉の使い方でいいとお考えですか。
事務局:  これは大雑把なアイディアを示したもので、法律にする場合にはまた別のいろいろな議論・調査を経る必要があります。これがこのまま法律にできるとは思っておりません。ですからどう法律を作るかはこれから御審議をお願いすることになります。
 先ほど申し上げましたようにロボットで機械的に集められるものを表層ウェブとし、集められないものを深層ウェブとしております。機械的に集められる場合は著作権制限によって複製行為で集められるのではないか。機械的に集められない場合には何らかの契約を強制することで集めることができるのではないかという試案です。
委員:  今、作業のプロセスにあるわけですから、表層とか深層という言葉についてこれ以上こだわりませんが、これが著作権制限と結びつくのが発想として分かりません。表層にあって誰でもアクセスできるものも著作権で保護されているわけです。表層にあるものを著作権制限で押さえてよいのか。これは著作権とは別の考え方を持ち込んだほうがいいのではないかという気がします。
専門委員:  その場合、当然権利処理を始めなければならないが、膨大にある表層ウェブに関してはおそらく事務作業が煩雑になりすぎ、コスト的に実現不可能になると思います。そこで著作権制限でやる場合と図書館新法でやる場合があります。
小委員長:  機械的に取ってこられるから、収集した後に権利処理をしなくてよいように著作権を制限する趣旨ですか。
委員:  著作権制限というと、法律の専門家にお聞きしないといけないですが、著作権法の改正を伴うのであれば、その道は選ばないほうがよい。つまり国立国会図書館の何らかの規定でいけるならそれでいいが、もし著作権法の改正を伴うようだと非常に厄介になりそうなので、そちらの道を選ばないほうがよいと思います。
委員:  私も個人的な見解としては著作権法を改正して、著作権者の権利を一般的に制限するのは大変なので、著作権を制限するにしても、館法を変える方がやりやすいという感じがします。その場合も収集目的に限定し、結果的に著作権の制限になるというほうがよい。
 法律では、表層ウェブと深層ウェブの定義をきちんとすることになると思うが、自由にアクセスできるものについては著作権制限で行い、そもそもアクセス自体にも契約とか何らかの手続きを要するものについては契約強制を使うという理解でしょうか。
事務局:  今のお話のとおりです。
委員:  できれば著作権法自身を触らないほうがよいというのはおっしゃるとおりです。立法技術的にもそのほうが面倒でないと思います。
 情報公開(法)のときにも著作権法についても調整が必要だということで、そのときはみなし規定みたいな形で、「特に申出がない限り」という話で済ませました。
 国会図書館の新たな目的のための話ですから、立法技術でどうするかは別にして、クリアーすることは可能だろうと思います。
 常識的に考えると不特定多数がアクセスできるものについては、館が収集できるわけだから、問題は、むしろどこまで収集するかとか、更新をどれくらいするかといった恣意性や収集頻度に関する収集基準をしっかりすることでしょう。また、そういう場合には代償金を払う方が奇妙な感じがしています。
 ただ、不特定多数が無料でアクセスできないものについては別ではないかと思います。先ほど申しましたように納本でさえも代償金が要らない可能性があるので、この場合も代償金が要らないという可能性はないわけではないが、有料サイトを館では無料で見られるというのもおかしいから、何らかの区別はあると思います。
小委員長:  有料サイトについてはURLを教えるだけで、あとは勝手にやってくれという話はありますか。
専門委員:  はい。
 ひとつ教えてください。契約強制という言葉ですけれども、これを分かりやすく言うと、契約をしなくてはいけないということですか。館側が事業者に対して強制的に、無理に契約を結ばせるという概念でよろしいでしょうか。
事務局:  顕著なところでは例として日本放送協会と受信者の契約がありますが、結ばねばならないという概念です。
委員:  契約の内容は利用方法との関係でかなり変わってくると思います。
事務局:  資料にもありますが、契約強制とは収集利用について類型化した内容の契約の締結を強制するということです。
委員:  どういう利用をさせるかによるでしょう。
専門委員:  代償金がどのくらいかというのもありますけれど、データベースの事業者の観点からいくと強制的に契約させ情報を提供させると、自分たちが作った市場がほとんどものにならないという声も出てくる可能性があります。ですから、利用の方法をどうするかを明確にしないと事業者からは反対の声が大きいと思います。
事務局:  パッケージ系のときにやはり同じような問題が生じたため、利用については館内のみにせざるをえないといった制約でやっております。
 納本制度をうまく運用していくためには、発行者の理解のなかでやっていかなければならないので、今後十分な話合いが必要だと思っております。
小委員長:  2、3細かい質問です。個人と法人の区分について。事実上ジャーナリストとしての自覚を持って活動している人がいるが、これは法人といえるか。その他の法人についてもNPO、NGOは学術団体だと思います。また、先ほどのデモの中でもあったが、リンク情報だけで内容のないものはどう考えるか。
 これらは重要な問題だが、あまり言いだすときりがなくなる。
委員:  小委員長のおっしゃるインターネットのリンク情報というのは、非常に重要なのでやはり入れて考えておかないといけないと思います。今日の資料の収集範囲試案を提示するところで、前段からの流れからこの二つの試案が提示される論理的な必然性が分かりにくい。なぜ濃い網掛けが官庁と学術団体で、薄い網掛けでは民間企業が入ってくるのか。先ほど小委員長のおっしゃったNPOの問題なども入ってくると思います。
 網掛けを二つに分けないで、薄い網掛けを収集するときに出てくる問題を技術的なものまで含めて議論して、薄い網掛けでは当面駄目なので濃いところにするということなら分かるが、今日頂いた資料では最初から2種類に分けられた論理的な道筋が分かりにくい。
事務局:  今言われたような、薄い網掛けの収集を考え、難しいところを明確に出して試案2に収斂していくというやりかたについては、ありうる考え方だと思う。
委員: 細かいことですが、資料では収集範囲からニュースグループを外しているが、グーグルが収集したアメリカのニュースグループの資料としての評判は高い。日本でもああいうニュースグループの何らかの形で蓄積・保存は考えられるのではないか。価値を選んではいけないという話があったが、学術団体のものを残すとか、そういうことは考えられないでしょうか。
 
4. 次回小委員会の日程について
小委員長:  それでは、収集すべき範囲及び方法については、今ありました議論を事務局の方で取りまとめ、次回において試案の改訂版の提示をお願いします。
 なお、この場にとどまらずメールを用いて各委員のお考え・意見をお寄せ願えればと思いますので、よろしくお願いします。
 次回小委員会の日程について事務局からどうぞ。
〔事務局から日程について説明〕
小委員長:  本日はこれで閉会いたします。ありがとうございました。
(閉会)

このページの先頭へ