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国立国会図書館の貴重書

1. 貴重書等の指定

国立国会図書館では、収蔵資料のうち、遺例が少なく、歴史、社会、文化等を研究する上で特に重要であるとみなされる資料を、貴重書あるいは準貴重書に指定している。指定は、「国立国会図書館貴重書指定基準」及び「国立国会図書館準貴重書等指定基準」に基づき、貴重書等指定委員会によって行われている。

貴重書等の指定基準の大枠は、資料を和書、中国書、洋書の3つに区分し、さらにそれぞれの中を刊本と写本に分けて具体的な基準を定めている。基本的には「時代」と「資料的価値」を基準としている。和書の刊本を例にとると、慶長以前(1615年以前)のものはすべて貴重書として扱われる。元和以降のものは、伝本が少なく資料的価値があると認められるもの等を貴重書としている。当館のホームページにこれらの基準の全文を掲載しているので、参照していただきたい。また、新たに貴重書等に指定された資料は、『国立国会図書館月報』で随時紹介している。

2. 貴重書の概要

平成20年10月現在、当館の貴重書は、国指定の重要文化財6点を含め1,246点、準貴重書は785点である。貴重書のうち中国書は約120点、洋書は約200点となっている。和書の内容は、古写経・古刊経約60点、五山版を始めとする中世の刊本約90点、平安〜室町時代の写本約200点、名家自筆本・書き入れ本等約110点、文書・記録約110点など広範囲にわたっている。これらは、当館の源流である東京書籍館の時代から、現在に至る百数十年の間に、資料の収集、構築を重ねてきた結果であり、最近は特に、古活字版や絵入り本など書誌学上重要な資料の充実を図っている。

古活字版は現在約250点を所蔵し、国内でも有数の所蔵機関と言えよう。近年は『伊勢物語』(2 本展示会資料番号、以下同様)、『源氏物語』(6)、『平家物語』(15)、『日本書紀』(21)など、それぞれ最初期の刊行で優れた版をコレクションに加え、『寛永行幸記』(57,58)は、その諸本を充実させることができた。

江戸時代初期頃までの絵巻物や奈良絵本など、当館では今まであまり所蔵がなかったものについては、『義経奥州下り』(55)、『ゆや』(61)、『てんじんき』(62)などが加わり、質的にも充実が図られた。また『御馬印』(60)は、今後の印刷史研究の上で極めて重要な資料と思われる。

3. 貴重書の保存と利用

貴重書、準貴重書に指定した資料は、「貴重書及び準貴重書取扱要領」に基づき、保存と利用の両面において、他の資料とは違う特別な扱いをしている。

原資料は文化財として永く保存し、後世に伝えるために、資料の利用には一定の制約を設けている。その一方で、多くの方に利用していただくため、これらの資料のマイクロフィルム化及びデジタル化を進めている。デジタル化した資料は、「貴重書画像データベース」として平成12年3月から当館ホームページで提供を開始し、現在は「国立国会図書館デジタルコレクション」に移行している。同じく当館ホームページで提供している「ディジタル貴重書展」は、平成10年に開催した「国立国会図書館開館50周年記念貴重書展」をデジタル化したものである。今回の「開館60周年記念貴重書展 学ぶ・集う・楽しむ」とあわせて、当館の代表的な貴重書を身近に感じていただければ幸いである。