第三章 暦の中のことば

干支②方位神(ほういじん)

東西南北の方位と干支や方位神との関係を表している図です。

干支は、年、月、日、時間、方位などを示すためにも使われ、それらの吉凶を表わすようにもなりました。

例えば、方位は北から東回り(時計回り)に子、丑、寅…と12等分します。すると北東、東南、南西、西北が表現できないため、中国では易の八卦(はっけ)に基づいた坎(かん)、艮(ごん)、震(しん)、巽(そん)、離(り)、坤(こん)、兌(だ)、乾(けん)を用いて表現していました。日本では、北東(艮)は十二方位の丑と寅の中間なので丑寅(うしとら)、同じように、東南(巽)は辰巳(たつみ)、南西(坤)は未申(ひつじさる)、西北(乾)は戌亥(いぬい)とも呼んでいました。

そして、陰陽家は方位神(ほういじん)と呼ばれる方位の吉凶を司る神を祭り、例えば、今年はこの方向に嫁にいってはいけないなどと、暦上に記していました。方位神は現在でも一部の暦や占いなどで使用されています。

八掛
八掛 音読み 訓読み 方位 十二支
かん  
ごん うしとら 北東  
しん  
そん たつみ 東南  
 
こん ひつじさる 南西  
  西
けん いぬい 西北  

歳徳神(としとくじん)

牛頭天王の后で、八将神の母。この神のある方位は「恵方(えほう)」「あきの方」などと呼ばれ、万事に吉とされます。

金神(こんじん)

殺伐を好むといわれ、この神の方位は極めて凶とされます。

土公(どくう)

土公神(どくじん)ともいい、土を司る神で、四季により位置を変えます。その場所、方位で土を犯すことを忌みます。

八将神(はっしょうじん)

吉凶の方位を司るとされる八神。暦本の最初にあげてあり、その方位は年の十二支によって決まります。太歳、大将軍、大陰、歳刑、歳破、歳殺、黄幡、豹尾の八神。

八将神
八将神 暦注記載例 解説
太歳神
(たいさいじん)
此方ニむかひて万よし
但木をきらす
木星の精。毎年、その年の十二支の方角と同方位に位置する(例えば子の年は北)。この方向に向かってことを行なえば万事吉だが、木を伐るのは凶。
大将軍
(だいしょうぐん)
ことしまて三年ふさかり 金星の精。殺伐を司り、その方角は凶。同方位に3年とどまって次の方角に移ることから、「三年ふさがり」ともいう。
大陰神
(だいおんじん)
此方ニむかひてさんをせす 土星の精で、太歳神の皇后とされる。この方角に向かって結婚・出産を行なうのは凶。
歳刑神
(さいきょうじん)
むかひてたねまかす 水星の精で、刑罰を司るとされる。この方角は万象に凶で、耕作・種まきを忌む。
歳破神
(さいはじん)
むかひてわたましせす
ふねのりはしめす
土星の精で、常に太歳の反対位置にあるという。この方角に移転(わたまし=引越)、旅行、乗船は凶だが、家畜を求めるを吉とする。
歳殺神
(さいせつじん)
此方よりよめとらす 金星の精。この方位は殺伐の気に満ち、万物を損し滅する。特に結婚・出産を忌む。
黄幡神
(おうばんじん)
むかひて弓はしめよし 架空の星、羅侯星の精。万物の墓の方といい、また兵乱の神ともいう。この方角に向かって土を動かすのは凶だが、弓はじめなどには吉。
豹尾神
(ひょうびじん)
むかひて大小へんせす
くるいもとめす
架空の星、計都星の精。黄幡神と反対の位置にあり、万事不浄を忌み禁ずるとされる。大小便すること、家畜類を求めることを忌む。

実際の暦の画像です。八将神などの方位神が、暦のどの部分に記載されているかを示しています。 選日 方位神