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トップ > 国立国会図書館について > 納本制度審議会 > 第10回納本制度審議会議事録

第16回納本制度審議会議事録

日時:
平成21年7月23日(木)午後2時~5時10分
場所:
国立国会図書館 本館4階特別会議室
出席者:
合庭惇委員、石坂敬一委員、上野徹委員、角川歴彦委員、小峰紀雄委員、佐野眞一委員、関口和一委員、中山信弘委員、濵野保樹委員、福井健策委員、山本隆司委員、湯浅俊彦委員
会次第:
1. 委員の委嘱の報告
2. 会長の選出
3. 会長のあいさつ
4. 会長代理の指名
5. 国立国会図書館長のあいさつ
6. 納本制度審議会の目的及び構成
7. 代償金部会所属委員の指名の報告
8. 事務局からの報告
 国立国会図書館納本制度概要、平成20年度出版物納入状況
 平成21年度代償金予算及び平成20年度代償金支出実績
9. 納本制度に関わる当館事業の紹介
 国・地方公共団体等の発信するインターネット資料の収集に関する国立国会図書館法の改正について
 著作権法改正について
 国立国会図書館の電子図書館事業とデジタル化の推進について
10. 懇談
 オンライン出版物の納入をめぐって
11. 今後の日程について
12. 閉会
配布資料:
(資料1)納本制度審議会委員名簿
 付:平成21年7月21日付け官報該当部分(写し)
(資料2)納本制度審議会の概要
 [参考]納本制度審議会の構成(図)
(資料3)納本制度審議会規程(平成9年国立国会図書館規程第1号)
(資料4)納本制度審議会議事運営規則(平成11年6月7日納本制度審議会決定)
(資料5)資料別納入実績(最近3年間)
(資料6)納入出版物代償金 予算額と支出実績(最近5年間)
(資料7)国・地方公共団体等の発信するインターネット資料の収集に関する国立国会図書館法の改正について
(資料8)著作権法改正について
(資料9)国立国会図書館の電子図書館事業とデジタル化の推進について
(資料10)納本制度調査会及び納本制度審議会の答申に見る電子出版物の取扱いについて
(資料11)日本のオンライン出版について
(資料12)諸外国の国立図書館におけるオンライン出版物の収集について
(資料13)今後の日程(案)
(資料14)国立国会図書館法(抄)
(資料15)国立国会図書館法の一部を改正する法律(平成21年法律第73号)
(資料16)国立国会図書館法によるインターネット資料の記録に関する規程(平成21年国立国会図書館規程第5号)

議事録:
収集書誌部長:  定刻となりましたので、第16回納本制度審議会を開催いたします。本日は、お忙しいところ御出席いただきまして、大変ありがとうございます。収集書誌部長の田屋でございます。
 この5月末日をもって前期委員の任期が満了となり、6月1日付けで第6期の審議会委員の委嘱を行わせていただきました。委嘱後の最初の審議会でございますので、会長が選出されますまでの間、私が進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は15名の委員中12名の方々に御出席をいただいておりますので、定足数は満たされております。なお、関口委員は、15時過ぎに御到着される予定です。本日はそれほど暑くはございませんが、どうぞ上着等はお脱ぎください。
 それでは、最初に事務局から配布資料の確認をさせていただきます。資料がお手元に全部そろっているかどうか御確認ください。配布資料の一覧は、会次第をめくっていただき、次のページにございます。
〔配布資料についての説明〕
 なお、個々の資料の内容につきましては、後ほど必要に応じて個別に御紹介・御説明させていただきますので、説明は省略させていただきます。資料はすべてお手元にございますでしょうか。
 
1 委員の委嘱の報告
収集書誌部長:  それでは、まず会次第の1といたしまして、委員の委嘱について御報告させていただきます。
 今期は、15名の皆様に委員をお願いしております。6月1日の時点で、再任の方が4名です。その後、6月17日に社団法人日本新聞協会の会長が交代されたことに伴いまして、7月13日付けで、北村正任様から内山斉様に委員の委嘱替えをさせていただいております。資料の2ページ目に添付しております官報の写しは、6月1日付けになっておりますので、内山委員の官報公示については、改めて今月末頃の官報に掲載させていただく予定でございます。
 委員の方々でございますが、合庭委員、石坂委員、上野委員、内山委員、角川委員、小峰委員、佐野委員、関口委員、中山委員、濵野委員、福井委員、藤本委員、古屋委員、山本委員、湯浅委員の皆様でございます。名簿につきましては、資料1に掲載しております。
 本日は、第6期第1回目の審議会となりますので、御出席者の皆様から簡単に自己紹介をいただきたいと存じます。合庭委員からどうぞよろしくお願いいたします。
委員:  ただ今御紹介いただきました合庭でございます。よろしくお願いいたします。
 自己紹介ということですが、たまたま今期の納本制度審議会について、事務局と打ち合わせをしている時に思い出したことですが、今年2009年は、日本で本格的に電子出版が開始され25年になります。1983年にPhilipsとSONYがCD-ROMのYellow Bookという規格を発表しまして、翌年の1984年から日本で電子出版の動きが活発化しました。それまでに色々と試みはあったのですが、特にCD-ROMを使って電子出版をやるという話が進みはじめました。そこで、元々は文系の出だったのですが、CD-ROMのスペックについて勉強をし、出版社で電子出版ということを試みてきました。15年程前に転職して大学の方に移りまして、それからはデジタルアーカイブを手がけるようになり、近年はアメリカの議会図書館にあります日本関係資料のデータベースの構築に関わってきました。よろしくお願いします。
委員:  日本レコード協会の石坂です。よろしくお願いします。
 長尾館長をはじめとする国立国会図書館の皆様には、アーカイブ保存の実現にむけて、色々とお世話になっておりますし、また、協調してやっております。1906年頃から1960年頃の音源が、日本においては重要な音源もかなりあるのですが、色々なところに分散しておりまして、なかなか資料として集まっていない、その上、デジタル化していないにもかかわらず、既に金属板が腐食しているものもございます。その音源の中には、風刺演歌の添田唖蝉坊、あるいは東条英機、当時の日本軍の昭和19年の演説や大隈重信公の演説、歌ですと松井須磨子の「カチューシャ」や川上音二郎の「オッペケペー節」などがありますが、そういったものが時系列的にあるいは秩序をもって保存されておりません。現在5万音源を集めておりますが、これを国立国会図書館と協力して、日本の文化財産として確実に保存していこうと思っております。いずれは希望する国民の方々に、参考にお使いいただけるような手はずにしようということで、現在進めております。
 また、CD音源の納本率についても、現在は85%から90%まで高まっており、RIAJ関係の会員社は、納本率をさらに上げようと努力しております。今後ともよろしくお願いします。
委員:  日本雑誌協会理事長の上野でございます。文藝春秋で会長を務めております。この審議会は、初めて参加する会ですので、私自身も色々勉強させていただこうと思っております。
 雑誌協会では、昨年11月に世界デジタル会議を開催いたしまして、活字とデジタルの融合というのが、これからの大きな流れになるということで、雑誌協会内部にもデジタル委員会というものを設置いたしまして、現在、積極的に活動を進めているところでございます。今後、国会図書館とも、現場では刷りあわせの面で、色々な問題が起こってくるのではないかと思われますが、お互いに趣旨を十分に理解し、協力して進めていければよいと思っておりますので、よろしくお願いします。
委員:  角川グループホールディングスの角川でございます。この納本制度審議会の委員は2回目でして、雑誌協会の理事長をしていた時にも委員を務めておりました。
 現在、書籍も雑誌も電子化するのは時代の要請ではありますが、なかなかビジネスモデルが見えていないのが残念なところでして、そういう点も含めて、国会図書館が重要な役割を果たしていただけたらという期待をもって、本日参加させていただいております。よろしくお願いいたします。
委員:  日本書籍出版協会理事長の小峰でございます。日ごろは国立国会図書館には大変お世話になっております。ありがとうございます。
 角川会長がおっしゃったように、書籍の観点からみると、本そのものが大変な運命の岐路に立たされているような状況でございます。デジタル化は避けることはできませんが、よく十分に意見をすり合わせ、連携しながら本の生きる道を探していきたいと思っております。よろしくお願いします。
委員:  ノンフィクション作家の佐野眞一です。個人的な話ですが、昨年5月に納本制度60周年のシンポジウムに参加いたしました。その後の懇親会で、直後に発売予定だった「甘粕正彦 乱心の曠野」という本を披露させていただきましたが、その本が数日前に講談社ノンフィクション賞を受賞いたしました。
 そのシンポジウムで言ったことなのですが、記録と記憶ということに関しまして、この本を読んでいただければ分かるとおり、大正12年の大杉事件の謎を追った本で、おそらく真犯人は特定したと言いました。受賞の翌日には色々な方から電報をいただいたのですが、一番嬉しかったのは、甘粕正彦さんのご長男である、甘粕忠男さんから電報をいただいたことです。甘粕忠男さんは大変抑制のきいた方で、あまり喜びを表に出さない方なのですが、いただいた電文からは、言わないけれども「間に合ってよかった」という感じが伝わってきました。受賞のパーティには、この甘粕忠男さんと大杉栄さんの甥の方も呼ぶ予定であります。
 このように、出版は、デジタルにしても同じですが、一つの意志の表れだということを、今回の受賞で痛感しました。単に受賞したから嬉しいということではなくて、一つの意志と意志がアマルガムのようになって世の中に出ていって、それが色々なよき効果を果たすことの一助として、おそらく国会図書館の審議会があるのだろうと思い、参加させていただきました。
委員:  弁護士の福井でございます。よろしくお願いします。専門は著作権法や、あるいは出版芸術分野での契約交渉などを専門にしております。多いのは、例えば日本の漫画を原作にしてハリウッドで映画化する際に、向こうの映画会社と交渉したりしております。そういうビジネス交渉という点からすると、今年は書籍の問題でいえば、グーグル裁判に揺れた年に、前半のところはなっております。日本においても、本がよりよい形で記憶され、人々がそれに接することができるような仕組み作りのお手伝いができればと思っております。よろしくお願いします。
委員:  中山でございます。去年まで東京大学で知的財産法を担当しておりましたが、現在は明治大学の教授をやりながら、弁護士をやっております。どうぞよろしくお願いします。
委員:  濵野と申します。よろしくお願いします。研究者としては、コンテンツの制作をやっておりますが、黒澤明さんの財団や宮崎駿さんの財団、東京国際映画祭などに関わっておりまして、アニメーションの会社の監査役もやっております。今、アニメは大変な状況に置かれておりまして、権利とか資産の投げ売りの状態で、本当に確保してくのが大変な状態でありまして、民間でやっていくのは難しいということを肌で感じておりますので、こういったところで議論されるというのは大変嬉しく思っております。よろしくお願いします。
委員:  夙川学院短期大学の湯浅でございます。28年間、旭屋書店に勤務しておりまして、勤務の傍ら本に関する著書を出したりしていました。近年は、出版流通、物流情報や書誌情報のデジタル化の問題を研究しておりまして、さらにそこから、コンテンツのデジタル化の問題を取り扱って、今年3月、国会図書館本館で「電子書籍の流通・利用・保存に関する調査研究」の報告会を行いました。以前から納本制度に興味がありまして、特にパッケージ系が納本制度に組み込まれた2000年から後の変化が非常に大きいと思いますので、ネットワーク系の出版物について、皆様と御議論できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
委員:  東京大学の山本です。専攻は行政法でして、この審議会は、前期から2期目となります。よろしくお願いします。
収集書誌部長:  どうもありがとうございました。なお、委員の任期は2年とされておりますので、今期委嘱させていただいた皆様につきましては、平成23年5月31日まで委員をお願いすることになります。委員の方に途中で交替があった場合にも、任期満了の日は変わりません。あらためて、よろしくお願いいたします。
 
2 会長の選出
収集書誌部長:  それでは、会次第2の、会長の選出に入らせていただきます。この手続は、委員の方の互選となっております。どなたか御推薦をお願いいたします。
委員:  中山委員にお願いできればと思います。いかがでしょうか。
収集書誌部長:  ただいま、中山委員を会長にとの御推薦がございましたが、ほかの委員の方はいかがでしょうか。
委員一同:  異議なし。
収集書誌部長:  御異議がないようですので、中山委員に決定いたしました。
 それでは、中山会長、よろしくお願いいたします。
 
3 会長のあいさつ
会長:  御指名でございますので、会長の職を務めさせていただきます。未熟者ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。この納本制度は、法律に基づいた重要な制度ですので、審議の程につきまして、御協力をよろしくお願いいたします。
 私は、この審議会は今回が最初ですので詳しいことは分かりませんが、おそらく図書館というものは、エジプトのアレクサンドリアの図書館以来、基本的には形は変わっていない、そこに直に行って本を読むということが、ずっと続いてきたわけですが、昨今の技術の変化によって、技術的には日本中どこの山間僻地に行っても国会図書館を利用できる、あるいは世界中どこからでも利用できるという状態になっておりまして、それは逆に言えば、著作権の非常に大きな問題を生じているわけでございます。
 長尾館長におかれましては、電子図書館や電子出版が御専門でいらっしゃいますので、あまり詳しいことは申しませんが、納本制度におきましても、電子情報をどう扱うのかというのは、極めて重要な問題であろうと思います。もちろん、前期の衛藤会長の時代にも、電子出版物の納本制度について取り組まれて、答申等も出されておりますし、それに係る改正も行われておりますが、グーグルのような企業が出現し、状況の変化が非常に激しいということで、これからますます重要な審議になってくるだろうと思われます。
 納本制度ですから、本を集めるということがメインではございますが、集めた後にどうするのかということも、併せて考えていかなければならないわけでして、そうなってまいりますと、文化財の保存と利用ということに関して、関係者だけではなく日本国民全体、あるいは世界全体にとって納得できるような制度を作っていかなければならないと思っております。したがいまして、この審議会も非常に重要なものになってまいりますが、どうぞよろしくお願いします。
 
4 会長代理の指名
会長:  それでは、会次第4の会長代理の指名に移ります。納本制度審議会規程第5条第3項によれば、「会長に事故があるときは、会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する」こととなっておりますので、私としては、濵野委員に会長代理をお願いしたいと思います。濵野委員、よろしくお願いいたします。
委員一同: 〔拍手により承認。〕
 
5 国立国会図書館長のあいさつ
会長:  会次第の5に入ります。国立国会図書館長からごあいさつをいただきたいと思います。
館長:  国立国会図書館長の長尾でございます。この度は、納本制度審議会の委員をお引き受けいただき、誠にありがとうございます。特に中山先生におかれましては、著作権関係の権威でいらっしゃいまして、私どもの審議会の会長になっていただきまして、本当に心強く思っております。あらためて御礼を申し上げます。
 御存知のとおり、国立国会図書館は我が国唯一の納本制度による図書館でございまして、日本中の出版物が入ってくることになっておりますが、実情は決してそうではありません。私どもも何とか努力をして、できるだけ100%に近い納入率にしたいと思っております。いわゆる定価のついている通常の出版物は、9割程の納入率でございますが、報告書や市町村が出している各種の出版物、あるいは個人の出される私家版等については、4割から5割弱というのが実情でございまして、これについては、納本制度というものがあって、これが義務付けられているということを、日本中の方に知っていただく努力をしようとしております。昨年からは、5月25日を「納本制度の日」と定めまして、色々な形でPRに努めております。また、納本制度の日を記念いたしまして、昨年は5月24日にシンポジウムを開催し、今日お出でいただいております佐野先生にも、お話をいただいたわけでございまして、何とか努力したいと思っているところでございます。
 その他に電子出版物に関しても、私どもは注意しておりまして、平成16年には、本審議会においてネットワーク系電子出版物の納入の在り方に関して答申をいただいております。それにしたがって、いわゆるインターネット情報、ウェブ情報を集めるということを法制化しようと努力してまいりましたが、日本中のすべてのウェブ情報を集めるというのは至難の業でございますし、また、問題のあるウェブサイトもたくさんございますので、そういうものまで集めるのはいかがかという御意見も、色々なところからございまして、結局、国や地方公共団体、国立大学、独立行政法人等のウェブサイトについて許諾なく集めることができるという形での国立国会図書館法の改正を、つい先般、国会で承認していただきまして、来年の4月から本格的に始めることができるようになりました。そういうわけで、ネットワーク系の出版物と紙の出版物の納入、保存、蓄積ということを我々の方で行っていくわけでございますが、やはり、オンラインのいわゆる出版物、電子出版物と言われているものについては、今のところ、なかなか手がつけられておりません。しかしながら、これらの分野も日本の重要な文化財ですので、何とか集めていきたいと考えておりまして、そういうことを含めて、色々な観点から納本制度審議会で御議論いただいて、しっかりした形の活動をしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
会長:  どうもありがとうございました。
 
6 納本制度審議会の目的及び構成
会長:  それでは、会次第の6に入ります。事務局から、納本制度審議会の目的及び構成について説明をお願いいたします。
収集書誌部長: 〔納本制度審議会の目的及び構成について、資料2、3及び4に基づき説明。〕
会長:  ただ今の説明について、何か御質問等はありますか。特にないようですので、次に進みたいと思います。
 
7 代償金部会所属委員の指名の報告
会長:  それでは、会次第7に入ります。事務局から、代償金部会所属委員の指名についての報告をお願いいたします。
収集書誌部長:  代償金部会所属委員の指名の御報告をさせていただきます。
代償金部会所属委員は、委員委嘱と同日の6月1日付けで、合庭委員、石坂委員、上野委員、小峰委員、佐野委員、福井委員及び山本委員の7名の方々に館長がお願い申し上げました。最新の名簿は、資料1のとおりでございます。
 本日は、審議会の終了後に、部会の開催も予定いたしておりますので、よろしくお願いいたします。
 
8 事務局からの報告
会長:  続いて、会次第の8に移ります。引き続き事務局から、国立国会図書館納本制度の概要、平成20年度の出版物納入状況等の報告をお願いいたします。
収集書誌部長: 〔国立国会図書館納本制度の概要について、パンフレット「よくわかる納本制度」に基づき説明。〕
会長:  ただ今の報告について、何か御質問・御意見等はございますか。
 それでは、私の方から一つ質問いたします。国の機関の非市販資料あるいは地方自治体の資料の納入率が随分と低いようですが、これはどうしてでしょうか。むしろ、こういうものこそ国会図書館に来ると見ることができるということが大事だと思われますが、いかがでしょうか。
収集書誌部長:  非市販資料については、当館としても今後取り組みを強化していかなければならないと考えている資料ですが、何をもって出版しているのかという判断が、多少微妙なところもございますし、審議会資料等については、部内資料の扱いとしていて、なかなか納入していただけないということもございます。当館の方で必ずしも発行の事実を把握できないという場合もありまして、平成19年の調査では5割程度の納入率となっております。これについては、当館の方でも問題視しておりまして、この後取り組みを行って、少しでも納入率を向上させるように働きかけを行っているところであります。
会長:  他に何か御質問はございますか。
委員:  相当な分量になると思われますが、書庫は本当にパンクしないのでしょうか。
収集書誌部長:  東京本館には、この建物以外に新館もありまして、140メートル×40メートル、地下8階の書庫を作りまして、主に雑誌・新聞を入れております。その書庫がいっぱいになり、6年前には関西に書庫を作りました。大規模な収蔵ということで、当初は20年ほどもつのではないかと考えていましたが、最近の出版物の納入点数の増加もあり、それ以外にも色々な要因がありまして、思ったよりもたないのではないかという可能性がでてきまして、現在、新しい書庫の手当を検討している段階です。
会長:  他に何かありますか。
委員:  納入部数の問題ですが、民間の場合は1部納入、大学関係では私立大学は1部、それ以外は複数ということになっていますが、諸外国では複数部納入の国が多いようです。日本の場合は、1部納入ですと、保存の観点から問題が大きいのではないでしょうか。複数部納入という議論はあるのでしょうか。
収集書誌部長:  複数部数の納入については、納本制度創設の当初から議論のあったところであります。1部で保存と利用の両方を兼ね備えるというのは、なかなか問題も多いところではありますが、納入を2部にして、より多くの義務を課すことについては、それに対してのコンセンサスが必要となりますので、現在のところは1部納本となっております。関西館開館の際には、購入によって足りない部分を補充するということを行って、積極的に2部目を購入しましたので、民間出版物についても、1部納入、1部購入という形で複数持っているというケースはかなりございます。
会長:  他に何かございますか。
収集書誌部長:  引き続きまして、最近の出版物の納入実績と代償金の予算と支出実績について、事務局の別の者から報告させたいと思いますが、よろしいでしょうか。
会長:  それでは、お願いします。
事務局: 〔出版物納入実績及び代償金の予算と支出実績について、資料5及び6に基づき説明。〕
会長:  ただ今の報告について、何か御質問、御意見等はありますか。
委員:  平凡社の『世界大百科事典』のように非常に高額なものでも、納本制度に該当するのでしょうか。
収集書誌部長:  出版されたものについては、値段が高くても納本制度に該当するので、納入していただくことになります。
委員:  出版社が納入することになるのですか。
収集書誌部長:  直接には、取次を通じて納入していただくことになります。
館長:  高額なものについては、代償金部会に諮って評価してもらうことになるのではないでしょうか。
収集書誌部長:  そのような形にはなっておりますが、通常の出版物ですと、多少値段が高くても、代償金部会というよりは、通常の定価の半額程度の代償金を支出して納入していただくことになります。
会長:  定価の半額なら、出版社にとってもそれほど大きな痛手ではないと思われますが、いかがでしょうか。
委員:  そのとおりだと思います。良識的という範囲に収まっているのではないかと思います。
会長:  それでは、いったん休憩にしたいと思います。休憩時間は、約10分間とし、3時5分頃の再開といたします。
〔山本委員、退席。〕
 
9 納本制度に関わる当館事業等の紹介
会長:  それでは、再開いたします。会次第の9に入ります。事務局から、納本制度に係る国立国会図書館の事業等の紹介が3件あるそうです。よろしくお願いします。
 まずは、国立国会図書館では最近、国等のインターネット資料の収集について法改正を行ったと聞いています。その報告からお願いします。
事務局: 〔国・地方公共団体等の発信するインターネット資料の収集に関する国立国会図書館法の改正について、資料7に基づき説明。〕
会長:  ありがとうございました。引き続きまして、資料保存のためのデジタル化に関する著作権法改正に関してお願いします。
事務局: 〔著作権法改正について、資料8に基づき説明。〕
会長:  ありがとうございます。それでは、引き続きまして、国立国会図書館の行う電子図書館事業についてお願いします。
事務局: 〔国立国会図書館の電子図書館事業とデジタル化の推進について、資料9に基づき説明。〕
会長:  ありがとうございました。それでは、ただ今の3件の報告について、御意見・御質問等がございましたら、お願いいたします。
委員:  ただ今の説明にあった大規模デジタル化について、対象に漫画は入っていないのでしょうか。
事務局:  当初の部分については、1968年以前の刊行図書を対象にしようということで作業を進めております。その中に入ってくるものが一部あろうかと思います。その他に、雑誌のところで、コミック系の雑誌も当然対象になると思っております。これについては、関係者協議会の合意事項を踏まえて、了解を取りながら進めていきたいと考えております。
委員:  漫画家の先生方とお話をした際に、国会図書館ではカバーを全部捨てていると聞きました。カバーというのは、漫画家の先生が特別に書いた、大変貴重なものであるということでした。デジタル化する場合、カバーがないと価値が半減するのではないでしょうか。
 実は現在、携帯漫画では300億円から400億円の市場があって、手塚先生以降にストーリー漫画ができたので、どの作品もだいたい著作権が残っているのですが、古いものでも携帯で売ることが可能になっています。出版社にも在庫はないので、国会図書館でやっていただければ、ロイヤリティを国会図書館に払ってでも携帯で配信したいという思いがあるということを、漫画家の先生がとても強調されていて、そういったビジネスのチャンスについて、国会図書館と交渉の余地はあるのでしょうか。
事務局:  保存のためのデジタル化ですので、まずは館内提供に限定したところでスタートするという位置付けでございます。デジタル化したコンテンツの利用については、例えば民間の出版社等が提供していきたいということについては、現行の枠組みでも、復刻の許可申請をしていただければ、それを使って民間の方がビジネスチャンスを広げていただくという枠組みはございます。それにプラスして、協同でどのような形ができるかという点については、これから、もし具体的に保存状態のよいものをお持ちの出版社があれば、逆に当館の所蔵資料よりも、より鮮明に撮れるケースがあろうかと思いますので、個別に御相談させていただきながら、進められるところは進めていきたいと考えております。
館長:  国会図書館のデジタル化計画は、これからずっとやっていこうと思っておりますが、それの流通に関しては、今後色々なモデルが考えられると思います。民間の出版社等の利用要求も聞きながら、図書館としての利用提供が十分できるとともに、出版社など色々な方が満足されるようなモデルをお互いに検討しながら、作り上げていくということが大事だと思っておりますし、やらなければならないと考えております。
委員:  ぜひ一刻も早くカバーだけでも取っておいていただけないでしょうか。
収集書誌部長:  カバーにつきましては、当館としても大変心苦しく思っておりますが、文芸書などのカバーや箱も同じ扱いになっています。何故捨てているかと申しますと、当館は1冊だけの納本で利用提供も行っておりまして、1日2000人以上の利用者に対しまして、資料を効果的に適切に早く提供しなければならないという時に、カバーがあると取扱いがしにくいということがございまして、カバーを捨てるということを長年続けております。これが保存用と利用と別の形であれば、1冊については、カバーや箱、帯等を完全に付けた形で保存もできるはずですが、なかなかそういったことができなくなっております。特に漫画などの雑誌については、書架に置きにくいということがありまして、ある程度のまとまった量になると製本しております。製本する際には別のカバーを付けたりしていまして、ますます原型から離れていくことがございます。あまり望ましくはないのですが、現状は1冊を利用と提供のバランスをみながら、主に提供を考えた扱いを取らざるを得ないというのが現状でございます。
館長:  将来の課題として検討の余地はあると思いますので、御発言は大切にしたいと思います。
委員:  少なくともデジタル化していく段階で、箱とカバーと帯が捨てられてしまうのは、出版社としては痛ましくて耐えられないと思います。保存するシステムを作った上で捨てるというならば、次善の策かと思いますが、これからデジタル化していく中で、そういったものが保存されて活用されるという部分を残していくと、出版社や著作者の理解が得られやすくなるのではないかと思います。
委員:  カバー・帯の問題については、まったく同感であります。
 また、確認までにお伺いするのですが、つい先日伺った件で、日本脚本アーカイブズというプロジェクトがございまして、いわゆる放送台本などを放送作家の方々が中心になって、何とか収集・保存・公開しようとするプロジェクトのようですが、ヒト・カネ・著作権という三大障害に阻まれて、どうにも動きがとれない、集めることもままならなければ散逸もおそろしい、公開も目途がたたないというお話でした。こういった放送台本については出版物とは見なしえないので、現行法の下では、国会図書館での収集・保存対象とはなり得ないという理解でよろしいのでしょうか。
館長:  個人としては大変興味があり、大いに関心を持っているのですが、理想的に言えば、脚本とテレビレコード、映画レコードがペアになって収蔵されて利用されるのが理想だと思っておりますので、国会図書館がやるのがよいのか、フィルムセンターがやるのがよいのか、あるいはフランスのように、あらゆる放映されたものを全部レコードするような新しい機関を作って、そこが脚本と共に保存するのがよいのか、非常に大きな問題ではないかと思っております。関心がないわけではございませんが、色々な問題もございまして、簡単にはイエスということはできませんので、東京大学の吉見先生などと今後議論をしながら、収まるべきところを探していこうかと思っております。
〔関口委員、入室。〕
会長:  関口委員が御到着されましので、簡単に自己紹介をお願いします。
委員:  日経新聞の編集委員と論説委員をやっております関口でございます。主にITや情報通信、放送コンテンツ、そういった分野を担当しております。よろしくお願いします。
会長:  それでは、ただ今の議論を続けていきたいと思います。他に質問はございますか。
 アーカイブは確かに大事でして、本だけでなくあらゆる媒体があり、戦略本部でも大切であるという話は出ております。私も何とかこれをやりたいということを申しておりましたら、この度、国会図書館に100年分の予算がついて驚いているところです。これ以外にも、無形文化財やフィルム、放送等がありますので、色々と協力してやっていかなければならないだろうと思っております。
委員:  憲政資料室の資料は、デジタル化の対象でしょうか。
事務局:  今回の補正予算の対象資料として先ほどスライドで御紹介しましたのは、予算上計上されているものでして、当館としては、今回広く候補対象資料というものを設けておりまして、憲政資料の一部についてもデジタル化の対象に挙げております。今後は実際に調達をかけてみませんと、補正予算の計上額でどの程度賄えるのかということがございますので、これから具体的に対象資料を決めていきたいと思っております。ただし、保存のためのデジタル化でありまして、著作権処理をしておりませんので、デジタル化した場合には館内提供のみとなります。
委員:  所蔵資料のデジタル化に関して、古い方からデジタル化していくという考え方と、むしろ今の生活に実務的に役立つ、新しいものからデジタル化していくという、双方の考え方があると思うのですが、このデジタル化の対象資料を選定していく基準というのは、どういったものでしょうか。
事務局:  実際には、先ほど御紹介いたしました「資料デジタル化及び利用に係る関係者協議会」というものを、出版社・著作権団体等と進めておりまして、基本的に保存のためのデジタル化という位置付けでやっております。当館としても、できる限り新しい方までデジタル化していきたいと思っておりますが、限られた予算ですので、まずは保存のために古い方からやっていこうという形にしております。予算上どこまで執行できるかによりますが、図書については概ね1968年以前という形にしておりまして、雑誌については、今後、関係者協議会の合意事項に基づいて、デジタル化しようとしているタイトルをあらかじめ公表して、了解を得たものからやるという形にしております。当館としては、対象資料をできる限り広く設けた上で、まずは、古い方からデジタル化を行っていき、できるだけ新しいものに下っていきたいと考えております。
委員:  現在公開されている「近代デジタルライブラリー」は、マイクロからスキャンされているので、非常に読みにくく、テキストデータもないので全文検索もできない状態になっていますが、これから行われるものについては、既にマイクロ化されている部分もあるかと思われますが、デジタル化に当たっては、元から撮り直すのでしょうか。それとも、既存のマイクロ資料から画像データを撮るのでしょうか。できましたら、元から撮り直していただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。
 また、終戦直後の組版ならOCRでのテキスト化は難しいかもしれませんが、1950年代以降であれば、元データがきれいであれば、後で校正する必要はありますが、かなり簡単にテキスト化できるのではないかと思います。そういったデジタル化の方法について、現在どのようにお考えになっているのか伺いたいと思います。
事務局:  マイクロ化につきましては、保存のためという位置付けで、これまでも大規模にやってまいりました。昨年度に、今後は原則として保存のための手段として、マイクロに代わってデジタルデータと位置付けを変更しました。ただ、これまで過去何十年間にわたって蓄積したマイクロ資料がございまして、そこに投入した予算がすでに相当規模になっており、昭和前期まではマイクロ化が終了しておりますので、これをもう一度最初から行うという形になると、別の方面から予算の無駄遣いではないかという御指摘もございますので、この点については、画像処理の方法等で、できるところを改善して、見やすさに心がけた形でやっていこうと思います。保存のためのマイクロ化が行われているものについては、マイクロからデジタル化するという方式で臨んでおります。
 テキスト化の件につきましては、関係者協議会で画像データのみということで合意しておりますので、これからテキスト化する際には、関係者協議会での御了解を得ないと進められませんので、今後の課題となっております。
委員:  近代デジタルライブラリーで提供中のものは、ほとんど著作権の保護期間が切れており、本来であれば許諾が要らずに提供できるはずものですが、保護期間が切れていることの確認だけで、1冊平均1000円以上かかっていると伺ったことがあります。逆に保護期間が残っているかもしれないものついて、裁定によって権利者に支払われた対価というのは、1冊50数円と聞き、何とも痛ましい話であると思いましたが、今回の127億円の予算の中で、権利処理に係る予算はどれぐらいを考えていらっしゃるでしょうか。また、その中で権利者に実際に渡るお金はいくらぐらいになるのでしょうか。
事務局:  予算上のところで申し上げますと、戦前期までの図書と学位論文については、著作権処理経費が計上されておりまして、これまでの明治期・大正期の著作権処理経費の1件あたりの単価を元にした予算で計上しております。実際上は、福井委員の御指摘のとおり、現行の著作権法の枠内では、切れているという見込みで提供すると御批判もございますので、保護期間が満了しているかどうかをきちんと調査した上で、著作権承継者の連絡先の調査ということもやっております。そういう意味で、著作権法第67条の規定に基づいて、かなり「相当の努力」を行っているというのが実情でございます。連絡先不明の際に長官裁定を受けるための補償金の額についても、明治期をベースにした形で想定しております。具体的に供託した中で、どれくらいが権利者の方に渡ったのかについては調査を行っておりませんが、これまでの近代デジタルライブラリーにおいて、実際に連絡先が判明した場合でも、直接に当館から使用料をお支払いするという形は採っておりませんで、無償で提供させてくださいという許諾を取ってまいりました。連絡先不明のものについてのみ、1件あたりいくらと算定いたしまして、補償金を供託するという形になっております。
委員:  つまり、明治・大正期と基本的に同じような扱いということは、調べることに大半の処理費がかかり、権利者に渡る部分は、現状ではないという感じでしょうか。
会長:  文化庁長官の裁定利用者は、ほとんどが国会図書館であると聞いています。普通の人はなかなか利用しないかもしれませんが、今度法律が変わりますので、かなり利用しやすくなるのではないでしょうか。そうすれば、費用も減ると思われます。
委員:  スキャンする際に、やはりグーグルと同じイスラエルの2000万円のスキャナを使うのでしょうか。これだけ大量のものをデジタル化するのであれば、技術開発を含めて国会図書館が日本の会社を指導していけば、民間でも購入可能な機械が出てくるのではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
館長:  今は企業に発注してスキャンしようとしているので、どの装置を使うかについては精査してないと思います。
事務局:  これから仕様スペックを決めていくところですが、スキャナの性能をどの程度にするかについては、国の機関でございますので、特定のスキャナしかないような調達はできませんので、競争性を確保しながら進めていこうと思っております。
館長:  1年半で補正予算を執行しなければならないということもありまして、開発等の時間的余裕がないというのもあります。
委員:  イスラエルのスキャナは、聖書の羊皮紙を傷めないために開発された技術なので、少しオーバースペックな面もありまして、日本の技術でもっといいものをもっと安く、民間でも買えるように御指導いただければと思いましたが、予算の執行の期間があると聞きまして、了解いたしました。
収集書誌部長:  今回の大規模デジタル化がある前には、館の中でデジタル化ということも想定しておりましたので、そこでは濵野委員がおっしゃったようなロボットスキャンを想定して、スキャナの性能等についても調査をしておりました。
委員:  この問題は重要ではないでしょうか。国会図書館が重要だからこそ、127億円の予算がついたわけでして、国民の意識や行政の意識も、そこで業者を育成しようとしているのだと思います。大規模デジタル化の事業を通じて、グーグルやマイクロソフト、アマゾンなどの企業の日本版を育成していく、そのプロセスと位置付けられているのではないかと思います。
 例えば、127億円を単純に今回デジタル化の対象とされている90万冊で割ると、1冊あたり1万円以上となり高額です。国会図書館がいかに廉価なシステムを作っていくかということが、民間がデータベースを構築していく際のよいモデルになるのではないでしょうか。そこはぜひオープンにしていただいて、透明性の高い使い方をしていただきたいと思っております。
 これは、長尾館長がおっしゃる「グーグルに独占させてはいけない」という考え方の一方にあることだと思います。グーグルが廉価に作っていることは間違いないことですので、廉価に作っているという部分を、日本版グーグル、国会図書館がやらなければならないと思います。また、どのキーワードで検索するのかということも、国民に分かるような形にした方がよいと思いますので、メタデータの公開にも取り組んでいただきたいと思います。
委員:  予算の性格としては、デジタル化するためのオペレーションに係る部分についているのか、それとも開発費用も認められているのでしょうか。
事務局:  オペレーションの部分のみです。スキャンとメタデータの作成費用、あとは先ほど申しました一部の著作権処理の経費、こちらについては資料を持ち合わせていないので額は分かりませんが、全体に占める割合はかなり低いと思います。
委員:  そうすると、それは単に作業を前倒しするだけの話であって、成果物は残りますが、消えてなくなってしまう性質のものであります。しかし、将来にわたって今回のような予算がつくのは滅多にあることではないので、角川委員がおっしゃったように、ある意味の基盤作りの費用に今回の予算を充てて、将来にもっと安いオペレーション費用で使えるような基盤作りを行い、可能であればそれを民間にも開放して、他でもそのインフラを使っていく、そういった形のものができたらよいかと思います。予算のつけ方の問題もあると思いますが、ある程度解釈や運用ベースで使い方を変えられるのであれば、インフラ整備に充ててもよいのではないでしょうか。
委員:  中小出版社がデータベースを作成するのは、負担が大きくてできないだろうと思われます。しかし、そういうことをやらないと、自社の財産が単に本としてしか残っていないという状況になるので、国会図書館がデータベースの作り方を指導することによって、民間の出版社がそれを踏襲する、メタデータを共有することによって国会図書館が使ってもよいという共有意識ができるようになり、加速度的に国会図書館でのデータベース化が進むのではないでしょうか。ぜひ検討していただいて、それを共有することが大きな関心を持つことにつながると思います。
委員:  そういったインフラが共通フォーマットとしてできれば、出版社の方でも本にする前からデータを作り込むことができると思います。結果、出版と同時にデータを納めるような形ができるので、組み上がった本をスキャンするよりは、よっぽど効率がいいのではないでしょうか。
委員:  グーグルは、本質的には非常に秘密主義だと思います。メタデータがどんなものであるのかを一切公表していません。ですから、グーグルが世界の図書をすべて検索化するという事業を始めて、当初は非常に陳腐なメタデータしか用意していなかったそうです。検索技術がその間に向上して、非常に精細なものに向上していったと聞いております。その一連の流れが我々にまったく公表されておらず、グーグルが何を考えているのか分からないということが、今回のグーグル裁判の底流にあるのではないでしょうか。ですから、国会図書館が透明性を発揮していただくことで、出版社や作家、文芸家協会も、国会図書館への協力の仕方が変わってくると思います。
事務局:  角川委員から御指摘のあったメタデータの公開につきましては、総務省が進めている「デジタル文明開化プロジェクト」というものがござまして、地方公共団体が進めるデジタル化について、国立国会図書館と連携しながら基盤作りを進めるという形になっております。これは今年度からスタートして、我々も今回大規模デジタル化する際には、メタデータを公開して標準化の役割を果たしていきたいと考えております。
 また、関口委員から御指摘のあった設備投資まで含めた対応については、予算上はデジタル化経費のみとなっているので、なかなか難しい面もございますが、今回の補正予算によりまして、それぞれのデジタル化の業者について、スキャナの整備等も含めて相当の影響が出てくるのではないかと思っております。国や地方自治体が総合的にデジタル化に取り組むことによって、設備投資したものを回収していくような形が望まれるのではないかと思います。その点に関連して、今年度は社会保険庁のデジタル化が相当な規模で予定されていますので、その過程でスキャナ等もかなりの部分で用意されていくと思われます。そういったことを踏まえて、当館のデジタル化事業がカバーされていくのではないかと考えておりまして、デジタル化の基盤整備ということが、今回の補正の結果として、民間の方に波及していくことを期待しております。
会長:  他に何かございますか。
委員:  デジタル化について、先ほどから「関係機関との協力」という言葉がしばしば出てきておりますが、著作権の問題にしても、利害関係というほど強いものではないかもしれませんが、それぞれの考え方に違いがあるものについて、デジタル化や1968年以降の資料の利用の仕方についての問題を協議する、定例的な機関や組織・委員会といったものは既に存在しているのでしょうか。それとも、これから組織化していくのでしょうか。
事務局:  「関係者協議会」と私どもは呼んでおりますが、資料のデジタル化の利用にあたりましては、書籍出版協会や雑誌協会、新聞協会といった業界団体の皆様と、それから文芸家協会といった権利者側の皆様など、十数名のメンバーによる委員会を1カ月おきぐらいで開催しておりまして、昨年度は、館内での利用についての具体的なところを協議いたしました。今年度につきましては、8月から協議を再開いたしまして、具体的なところを御相談させていただく予定です。
委員:  それぞれの立場によって、取り組みに微妙なニュアンスの違いも出てくると思いますので、その辺りの協力関係は綿密に行い進めていただければと思います。
委員:  今のお話にありましたデータベースの問題、あるいはインフラ整備ということに関連して、おそらくメタデータということに入ってくるのだろうと思いますが、権利に関する情報の整備も非常に大事だと思います。個人情報の問題もありますので、一定のルールは必要ですが、こういった情報もインフラとして提供するとよいのではないでしょうか。なぜならば、作品を利用していく上で権利処理はネックであり、権利情報というのは大変な貴重なものです。グーグル裁判というのは、あまりに乱暴ではありますが、あの裁判の旨さ、怖さの一つに、作家らが参加して権利主張しようとしたり、あるいは書籍の配信を停止しようとすると、権利情報を集めていかざるをえないし、自ら申告してグーグルが設立する版権レジストリというものに登録していかざるをえない、ということがあります。期せずして、世界最大の権利情報データベースが生まれる可能性が非常に高いです。グーグルは直接にそれを管理するわけではありませんし、そこまで狙っているか分かりませんが、結果として権利情報のデータベースができあがることに対して、情報の文化帝国主義と絡めて、危機感を表明する方も非常に多いです。国会図書館が多くの予算を使って権利情報を取得するのであれば、その情報を適正な形で、日本の多くの事業者が利用できるようにするのがよいのではないかと思います。
委員:  メタデータの代表と言われているダブリンコアは、権利情報についてのエレメントを含んでおり、国会図書館もダブリンコアをモデルとしているので、権利情報について詳しい情報を書き込むとしたら何をするのか、という議論をしなければいけないと思います。DOIなど、たいていのメタデータには権利情報が付与されていますので、グーグル問題を見据えながら、今後どのように展開していくのかということだと思います。
会長:  よろしいでしょうか。それでは、次に進みたいと思います。
 
10 懇談
会長:  会次第の10の懇談へ移ります。まずは、長尾館長から最初のお話をしていただければと思います。
館長:  すでに色々議論していただきまして、私どもが今日までやってきましたデジタル化あるいは電子図書館化の内容について、様々な御指摘やあるべき方向性についても御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 私どもとしては、まず何と言ってもデジタル情報をきちんと集めるというのが、第一の重要課題であると思っております。その一つは、紙に書かれている情報をデジタル化する、もう一つはネットワーク上に存在するデジタル情報をきちんと集めるということでありますが、いずれの場合も著作権者の許諾など難しい問題が存在することは事実でございます。しかしながら、それを何とか解決しながらきちんと集めていきたいと考えております。紙の情報のデジタル化に関しては、著作権法を改正していただきまして、お金さえあれば、コツコツやっていけば何とかなるという状態であるのに対しまして、ネットワーク上の情報は、国関係の情報しか集めることができないという限界があります。
 そこで、次のステップとして我々が考えていかなければならないのは、電子出版物としてネットワーク上で販売あるいは発信される情報を、いかにしてきちんと集めるのかということであります。紙の出版物は納本制度により納めていただいておりますが、ネットワーク上に発信される、いわゆる出版物にあたるものをきちんと集めていくために、これらについても制度化していく必要があると考えております。もちろん、どこまでが出版物であるかについては、これから議論していかなければならないと思いますが、紙のものは納本制度という義務が確立されているのに対し、ネット上の情報についてはそういう制度が確立されていないので、これをどうしたらシステマティックに集められるのか、色々御議論していただき、お知恵を拝借したいと思っているところでございます。
 それから、電子情報を集めた場合に、それをどういう形で利用に供するのかいうことも、もう一つの非常に大きな問題でございます。現在は権利者の方と協議を行い、館内で提供するという範囲になっておりますが、国の税金で賄われている国会図書館でございますから、現在の情報通信技術を使えば、日本中誰でも、どこにいても使うことができるという状態が技術的には可能なわけですから、何らかの形でそれを実現していかなければならないと思っております。これはまた大きな話になりまして、納本制度審議会で御議論していただく内容なのかどうかは分かりません。しかしながら、私どもも、著者・出版社等が妥協できる、そして図書館もサービスができて利用者も喜ぶような利用の形態というのを、どのようにしたら実現できるのか検討しているところでございます。いずれにしても、何とか電子的な情報をきちんと国会図書館に納めていただけるような制度、枠組みを作らないと、後世から国会図書館は電子情報に関してはまったく集めておらず、日本の貴重な文化財が抜けているではないかという御指摘を受けることになりかねないと思われますので、まずはこの審議会で色々御議論いただいて、お知恵をいただけると有難いと思っております。よろしくお願いします。
会長:  今の館長のお話につきまして、これから1時間近く議論したいと思いますが、何か御意見・御質問等はございますか。
委員:  国会図書館が収集するのは出版物でなければならないということがありますが、この出版物というものを、どのように捉えるのかという問題だと思います。元々出版物というのは有体ですが、これが無体になってネットという形態に変わったというレベルの捉え方でよいのでしょうか。そういうレベルではないからこそ、オンラインのものを集めたいとおっしゃっているわけでして、時代の変化の中で、大きな意味で出版物であること、文化財であること、税金で賄われていること、こういった原則の中で、出版物であるかどうかを、もう少し議論する余地があるのではないかと思います。
館長:  出版物というのは、かなり広い概念で捉えなおす必要があると思っております。
委員:  そのとおりだと思いますし、それをもっとオープンにして活発にしていかなければならないと思います。グーグルは「知」について検索すると言っており、「知」とは何かというと知識と情報だと言っています。ですから、グーグルの今やっていることは何かというと、そもそもの検索だけには収まっておらず、ブログの検索からメールの検索までやっていて、Gmailを使うと彼らはそれをロボット検索にかけているそうです。そういうレベルまで行っているワールドワイドな事業者と、出版物にこだわっている国会図書館とでは、ますます離されてしまうのではないでしょうか。せめて出版物であるかどうかではなくて、知識と情報に分けているうちの、知識の部分は収集していくという考え方に定義を少し変えた方がよいと思いました。
委員:  角川委員の御指摘は、おそらく長尾館長がこの場に投げかけられた問題そのものではないかと思います。いわゆるウェブアーカイブという形でウェブページを集めていくのか、それとも出版物で、各ページが何らかの形でデジタル化されていてインターネットで公開されている、そういったものを集めていくのか、その点についての議論をしなければいけないと思います。もしウェブアーカイビングであれば、私は納本制度審議会のテーマではないという気がいたします。やはり納本制度というのは、出版物に係る、特に有体物をいかに国会図書館に速やかに到達させるかということですので、世の中がこれだけ変化している中で、どこまでを納本制度の枠組みでカバーしていったらよいのか、国会図書館が悩んでいる問題は、まさにそういう点ではないかと思います。
 実際にウェブアーカイビングは、先程の紹介にもあったように、WARPとしてこれまでも取り組みが行われていて、サッカーのワールドカップのページや平成の大合併で消滅した地方自治体のホームページなどを収集していて、これはアメリカのInternet Archiveと同じようなやり方ですが、Internet Archiveも議会図書館がサポートしておりますので、そういった事業を国会図書館も今後やっていくのかという問題になるのではないかと思います。
委員:  国会図書館の審議会はいくつかあるようですが、デジタルアーカイブに関する審議会はないと聞いております。ということは、どこかで意思統一や議論をしなければいけませんので、納本は確かに「本」とありますが、これをPublishingと英語で読みかえるのであれば、今のWeb PublishingもPublishingですので、国会図書館の方向性を議論する場として、内容の拡大解釈にはなりますが、こういった場で議論するのも決して悪いことではないと思いますし、むしろデジタル時代の方向に適った審議会のあり方ではないかと思います。場合によっては、審議会の名前を変えるぐらいのことはしてもよいかと思います。従来の納本もきちんとやった上で、将来の納本をどうするのかということも考えていかなければならないと思います。
 また、先ほどのインフラ整備の話の中で、今回の127億円がオペレーションの費用であるということですが、グーグルは自分のお金で勝手にデジタル化を行っているわけです。それを我々が日本のインフラとしてやっていこうとすると、どこかにその予算がなければいけませんが、民間の出版社が一企業でやるということは、おそらくどの出版社も不可能に近いことですので、一緒にやっていかなければならないと思います。そして、どこがそれに一番近いかと言いますと、私はやはり国会図書館が一番近い立ち位置にあると思いますし、納本という従来の仕組みもあるので、少なくともそこに情報を集めることに対する、皆様のコンセンサスもあるのではないでしょうか。それをもう少しデジタル時代に見合った形に育てていくことが必要ではないかと思います。
委員:  出版社が紙の本や雑誌を出して、これをデジタル化し、近代デジタルライブラリーのような形で公開する従来の流れと、例えば、最近はコンテンツプロバイダや新しいプレイヤーが出てきている中で、こういった非出版社系の業者が、実際に著者や漫画作家と直接交渉して、電子書籍の配信サービスを行っている場合もありまして、こういった場合のコンテンツの収集となりますと、やはり国会図書館が行っていくべきではないかと考えております。
 また、非出版社系の中でも、まったく料金を徴収しないような「魔法のiらんど」や「モバゲーTOWN」といった携帯小説のサイトもあります。例えば、「魔法のiらんど」で提供しているインターネット上で小説を書く機能のデータベースとして、「魔法の図書館」というものがありますが、ここには10万タイトルほどの作品があって、さらに毎日300タイトルずつ増えていますが、これらの作品はどこも収集していないという問題があります。アクセス数の多い一部の作品については逆に書籍化されることもありますが、他の作品は保存すらされていないという、非常に大きな問題点があると思います。やはり、出版社系の紙からデジタル化するもの、非出版社系のボーン・デジタルなもの、両方を収集するという方向性で討議していくべきではないかと思っております。
収集書誌部長:  当館の方でも電子出版をどのように捉えるのかということにつきまして、インターネット情報の収集なども視野に入れながら法改正等も行ってきたところですが、オンラインの出版物についてはどうするのかということで、先ほど館長からも御指摘があったところであります。ただ今、湯浅委員から御紹介いただいた事に関連して、日本の電子出版物について、今までどのようなものがあって、どのような形で流通し、どのような形で見ることができるのかにつきまして、ここでの議論の参考のために、事務局で簡単にまとめたものがありますので御紹介させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
会長:  お願いします。
事務局: 〔日本のオンライン出版について、資料11に基づき説明。〕
会長:  ありがとうございました。それでは、議論の題材を提供するという意味で、続きまして、納本制度審議会の答申の見る電子出版物の取扱いについて、簡単に説明をお願いいたします。
事務局: 〔納本制度調査会及び納本制度審議会の答申に見る電子出版物の取扱いについて、資料10に基づき説明。〕
会長:  ありがとうございました。諸外国の国立図書館におけるオンライン出版物の収集についても調査をしていただいておりますが、予定時間が17時10分まででございますので、46ページ以降に載っておりますので、そちらの方を御覧いただければと思います。では、残りの時間を議論に費やしたいと思いますが、ただ今の報告を含めまして、何か御意見や御要望等がございましたら、お願いいたします。
委員:  諸外国の事例を見たところ、デンマークでテレビ・ラジオ番組の納本規定が追加されたとあるのですが、デジタルであれば、ドキュメントでも映像でも音声でもハンドリングは同じなので、例えばエイベックスとドコモが始めた携帯専用放送局の「Bee TV」のようなものであっても、PublishといえばPublishであると思います。それをどこが保存するのかと考えると、長尾館長がおっしゃったように大局的に考えていかないと、事業の失敗等であっという間になくなってしまう可能性があるのではないでしょうか。任天堂もWiiをプラットホームにして放送局を考えていて、それを放送と考えるのかPublishと考えるのか、考え方ひとつで国会図書館の対象にもなると思います。民放連やNHKがそういった番組をアーカイブするとは考えられないので、高い次元で考えていかないと、分からないのではないかと思います。
館長:  知識や情報の範囲はあらゆるメディアに広がっているので、どこまでを考えるのかという問題は非常に難しいと思います。国立国会図書館として、すべてを一元的にやれるのか、やったほうがよいのか、あるいはフィルムセンター等の別の分担組織をバランスよく考えて、国として考えていただくのが適切なのか、その辺りも非常に大きな問題であると思っております。現在の国立国会図書館の実力からすると、すべてを我々のところでやるというのは至難の業ですので、やはり分担的に色々なところがやりながら、検索など利用者からみた時にはトータルに色々なものが利用できる、そういうスキームを考えていくのが適切ではないかと思っています。
委員:  私も濵野委員の問題意識に似ております。例えば、政府でも「情報通信法」という議論が出ておりまして、これは2010年に「(仮称)情報通信法」という新しい法制度を総務省で法案提出しようとしているものです。ここでは、今までの通信・放送といった旧法の枠組みをいったん壊して、すべてを一括した情報通信法という形で規制しようとしています。その中では、従来の放送や通信といった言葉をあまり使用せず、「コンテンツ」という言い方をしております。すなわち、多くの人にデリバリーされるデジタルのコンテンツはすべて対象にするとしております。
 今までは放送だから放送業者と言っておりましたが、そういう形ではない時代がやってくるわけでして、多くの人の目にふれるものはすべて対象にしていこうとしております。そういう意味でいえば、国会図書館で議論するものもオーバーラップして発想していかなければならないと思います。それが放送波で流れるのか、携帯の通信で流れるのか、あるいはインターネットで流れるのか、パイプは何でも構わないですが、同じように多くの人が見るのであればアーカイブしていく、あるいは将来の納本に相当するものの範疇に入ってくると考えるのがよいのではないかと思います。
委員:  音楽をデジタルで納本することにつきましては、音楽産業はデジタル化してから予想しない色々な問題が起こっておりまして、非常に良い面と悪い面が併存していて混乱しております。例えば、デジタルの音楽の民間事業における特性としては、値段が安すぎる、違法コピーの蔓延、いわゆるパソコン配信があまり伸びていないということがありまして、RIAJ調査では、正規市場が900億円、違法市場が1200億円ほどの規模があり、正規市場を違法市場が軽々と上回ることは、誰も想定しておりませんでした。音楽は流行りますが、企業は場合によっては窮地に追い込まれ、アーティストの創造のサイクルは打ち壊されているというような事態が、商売では現実にあります。
 オンライン情報の色々な収集を行っていくことは、基本的によい面があるとは思いますが、現役の民間業者が苦労して作り上げてきた事業が阻害されないような形で、例えば廃盤をデジタルで保存して、それを参考に使うという時には非常によいと思いますが、同時進行で現役の音楽がデジタルの形で流布してしまいますと、現役のビジネスは阻害されるということもありますので、取捨選択の道義的基準、あるいは民間ベースのビジネス的基準などをぜひ御考慮の上で、展開していただければよいと思います。
会長:  その点についてはいかがでしょうか。先ほどの報告でも、基準というのは大変苦労したように思いましたが。
委員:  納本というコンセプトですが、今までは本という形のある有体物でしたので、どこか1か所に集めないとデータベースとして意味がないということで、これだけの敷地と建物が作られたのだと思います。しかし、デジタルデータの場合には、1か所に集まっている必要はなく、メタデータそのものも色々なところに分散していてよいと思います。一つのデータベースとして系列化され、検索可能な状態にあればよいと発想を転換すると、色々なところがデータを持った状態で、それらを標準化する、あるいはユーザーから見た時の入口を整備するといった役割を、国会図書館が担っていくのがよいのではないかと思います。
館長:  長期的な保存という観点からしますと、民間企業でデータを保存していくのは、本当に長期間にわたって安定して持ってもらえるのかという懸念があります。分担してデータを持つというのは賛成なのですが、それが100年、200年という観点から安全に保持できるという、バックアップのようなことも十分に考えなければならないので、そういった機能を持つということが大事だと思います。
委員:  先ほど申しました「分散して持つ」というのは、出版社や音楽出版社が個別に持つという意味ではなく、例えば業界ごとに集約したものを作って、そこが将来も含めてきちんと管理できるような状態で持つということです。現在、クラウドコンピューティングということが、霞が関をはじめ色々なところで議論されていますので、正にグーグルやアマゾンがやっているような巨大なサーバー群を、ある一つの約束事の下に日本中に作って、そこに集約していくのがよいのではないかと思います。
委員:  資料12のフランス国立図書館の事例を見ていただきたいのです。なぜ私がフランスにこだわるのかと申しますと、御存知のとおり、フランスはベルヌ条約を作った著作権の先進国家ですから、そういった国の国立図書館法がどういうものなのか、非常に参考になりますし、我々が規範にしていいのではないかと思いましたので、紹介させていただきます。
 まず、2006年8月に「情報社会における著作権及び著作権隣接権に関する法律」が公布されています。フランスはもともと著作隣接権に対しては非常に冷淡でした。これはイギリスを中心にして発達した考え方で、著作物を普及させた人に対して権利を与える、すなわち著作物を作った人は著作権者、普及に貢献した人に対しては著作隣接権者ということになります。例えば日本では、放送事業者などが著作隣接権者で、そこに実際に出演している実演者などは著作権者と言いますが、日本の法律では著作隣接権者にも許諾権を与えています。こういうことを考えると、2006年の法律は、フランスも遂に著作権法の中に著作隣接権というものをきちんと位置付けたということを印象深く感じます。また、「著作権者の許諾を得ることなく、インターネット情報を収集・保存できることが明記」とありますが、フランスは、伝統的に国民の平等と公共というものに対して非常に概念が発達しているので、著作権者の権利が強化されて公共の利益や国民の利益が損なわれる時には、著作権者の許諾がなくても構わないという考え方を持っているわけです。さらに「ロボットによる自動収集」とありますが、これは明らかにグーグルに対する対抗意識の表れだと思います。グーグルがやっているロボット検索というものを、フランスも開発して対抗していきましょうという表現だと思います。
 このように見ていきますと、フランスの国立図書館法というのは、フランスの著作権法の特別立法になっていて、そこでは明らかにフランスの文化を守るためには、著作権者の権利を一部阻害してでも、グーグルに対抗していかなければならないという精神が非常に表れていると思います。実は、フランスは反グーグル主義を掲げて急先鋒に立っている国ですので、御紹介させていただきました。
会長:  各国の制度については、私も拝見いたしまして、なかなか興味深い資料だと思いましたので、御覧いただければと思います。韓国もだいぶ変化があるようです。
 日本は昭和45年の制定当時の経緯もありまして、権利者の権利を非常強く考えているところがございますが、世界的には公共の利益、つまり情報を共有することによる利益と権利者の利益のバランスを取ることがあります。日本の場合は、権利者が強いということがありまして、なかなかやりにくい面もありますが、これから著作権審議会でも色々議論されていくことと思います。こういった世界の事例は参考になると思います。
委員:  フランスの国立図書館は、先ほどから話題になっている放送番組の収集を15年ほど前から行っていて、放送台本の収集をはじめ番組に関するあらゆるドキュメントの収集も一緒に行っています。しかし、かなり先進的な取り組みは行っておりますが、利用形態は非常に限定的で、研究者にしか公開していません。収集と利用の仕方を分けて考えなければならないと思いますが、そういう点では、フランス国立図書館は一つのモデルとしてあると思います。
会長:  収集しなければ消えてしまうということがありますので、収集をするのが国会図書館だけでよいかという問題はありますが、とりあえず国会図書館で収集する、利用はその次に考えていくということで、これから審議会でも色々議論されることと思います。
館長:  フランス前国立図書館長であるジャンヌネー氏を、9月中旬に当館に招待しまして、講演を行う予定がございます。フランスの色々な考え方をお話なさると思いますので、お時間がございましたらぜひお越しください。
委員:  先ほどから出ております、この委員会でこういった問題を討論してよいかという点については、いかがでしょうか。
会長:  過去の委員会でも議論はしておりますし、やはり「納本」という言葉を「紙でなければならない」という解釈は、もう採れないのではないかと思います。その解釈を採るとすれば、国会図書館の存在理由や国民に対する義務を果たすことができないのではないかと思いますので、「出版物」あるいは「納本」という言葉があっても、法律解釈はいかようにもなりますので、なるべく広い視野で議論した方がよいのではないかと思います。議論しないとなると、別の審議会を作ることになってしまうのではないでしょうか。
委員:  館長、よろしいでしょうか。
館長:  ぜひそのようにお願いいたします。
会長:  インターネット情報のアーカイブとしては、アメリカのWayBackMachineというものがありまして、過去のインターネット情報を全部保存しており、裁判で証拠として採用している場合などもございます。こういった世界中のインターネット情報を収集するところが既にあるわけですが、では、国会図書館との違いはどうなのか、という問題もあると思います。このWayBackMachineについては、いかがでしょうか。
収集書誌部長:  アメリカのInternet Archiveというところが実施している事業でして、世界中のインターネット情報を、非常に広範囲にかつ頻繁に収集しております。データベースの深さについては、一番深いところまでは収集せずに、おそらく10~15階層ぐらいのところで収集を止めるということをしているのかもしれませんが、世界中の情報を収集しているということで、非常に膨大なデータベースを維持管理しているようです。国会図書館の場合は、差分収集は現在技術的に実現できていないのですが、Internet Archiveは差分収集も行っております。この事業は、アメリカの議会図書館との共同事業でして、議会図書館もInternet Archiveに支援する形で収集を行っておりますが、世界の国立図書館も、自動収集のためのロボット技術の供与など、Internet Archiveから技術的な支援を受けながら、事業を進めているようです。しかし、民間機関でもございますし、Internet Archiveが収集をしているから、国会図書館が収集をしなくてもよいということにならないと思います。刺激を受けている面もございますが、当館は当館として独自にウェブ情報の収集を行っていこうとしております。
会長:  WayBackMachineというのはプライベートなものでしょうか。
収集書誌部長:  そのとおりです。
会長:  どのようにして資金を調達できているのでしょうか。
収集書誌部長:  別の事業体を持っておりまして、その収益をもって、WayBackMachineに充てていると聞いております。
会長:  相当な費用になりますよね。
収集書誌部長:  数十ペタという非常に膨大なデータベースを管理しているとのことですので、費用は莫大だと思います。
委員:  証拠としての使用は何回かやったことがあります。私が記憶するところでは、判決で証拠価値に言及されたことは、経験上ではありません。
会長:  2件ぐらいはあります。裁判所で証拠として採用できないと否定された例もありますし、肯定された例もあります。確か日経新聞の記事が証拠として提出されて、これが合っていないということで、証拠価値がないとされた判決もありました。ですから、こういうプライベートなものが、どの程度信用できるのか、あるいは100年後にどうなっているのかなど、色々な問題があると思います。
収集書誌部長:  公的機関が発行したタイムスタンプをきちんと押しているということであれば、それなりに証拠価値もあるかと思いますが、公的機関がある程度証明するようなものがWayBackMachineにあるのかどうかについては、多少疑問があると思います。
会長:  他に何か御意見等はございますか。よろしいでしょうか。時間もありますので、本日の懇談はこの辺で終了したいと思います。
 
11 今後の日程
会長:  会次第の11に入ります。今後の日程について事務局から説明をお願いします。
収集書誌部長: 〔今後の日程について、資料13に基づき説明。〕
会長:  ただ今の説明について、何か御質問等はございますか。
委員:  もしよろしければ、フランスの前国立図書館長の来日に合わせて、私たちのためにも1時間程講演を聴かせていただいて、その後に委員会を開くというのはどうでしょうか。非常に参考になると思います。
収集書誌部長:  正式な審議会というわけではありませんが、何かしらの場を設けたいと思います。
会長:  では、御考慮いただきまして、また御連絡をいただければと思います。
 
12 閉会
会長:  それでは、以上をもちまして、第16回納本制度審議会を終了いたします。ありがとうございました。
(午後5時10分終了)

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