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書誌データの基本方針と書誌調整:目録に関する国際的な動向

アジア初の目録専門家会議 ―IME ICC 4報告―

原井 直子
横山 幸雄

 国際目録規則に関する第4回IFLA目録専門家会議(The Fourth IFLA Meeting of Experts on an International Cataloguing Code、以下「IME ICC 4」)が、2006年8月16〜18日にソウルの韓国国立中央図書館において開催されました。バングラデシュ、カンボジア、中国、香港、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、ネパール、パキスタン、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、台湾、ベトナムから61名が招待されましたが、実際に参加できたのは44名で、IFLA目録分科会IME ICC企画委員会からの5名を加え、参加者は49名となりました。ボランティア約30名の協力などにより、英語に加えて中国語、日本語、韓国語の4か国語については同時通訳が常時行われるという運営を背景に、アジア各国から目録専門家が結集する初めての機会となりました。なお、日本からは日本図書館協会目録委員会からの5名をはじめ、大学図書館を中心に11名が参加しました。これには、当館からの2名の参加者(原井、横山)も含まれています。

 同会議の目的は、書誌および典拠レコードの標準化を促進することにより、世界的な目録情報の共有化を果たすことです。具体的には、1961年に定められた標目に関する国際原則である「パリ原則」を、目録概念モデルとして提唱されているFRBR(書誌レコードの機能要件)の概念から見直し、時代情勢にあわせて多様な図書館資料に適合するものに拡張するとともに、標目のみならず記述にも対象範囲を拡大した新たな国際目録原則を策定することを目標としています。第1回会議(北米・欧州諸国を対象に2003年フランクフルト・アム・マインで開催)において「国際目録原則覚書草案」(以下「覚書草案」)が発表されて以来、第2回はブエノスアイレス(対象:中南米・カリブ海諸国)、第3回はカイロ(対象:アラビア語圏)で開催の都度「覚書草案」の修正が図られてきました。第4回にあたる今回は、アジア諸国の意見を集約し反映させること、つまり、アジア各国で使用されている目録規則とパリ原則との類似点、相違点を比較、検討し、必要とあれば「覚書草案」を修正すること、加えて用語集についてもアジア諸言語の視点からレビューすることなどが目標でした。(「覚書草案」については2003年草案の日本語訳を『全国書誌通信』No.120(2005.3.4)および当館ホームページ「国際目録原則覚書(2003年草案)」、2005年9月草案の日本語訳を同No.124(2006.8.31)および当館ホームページ「国際目録原則覚書(2005年9月草案)」に掲載。)

 初日(8月16日)の全体会においては、最初に企画委員会から国際目録原則の背景説明があり、ISBD(国際標準書誌記述)についてエレーナ・エスコラーノ・ロドリゲス(Elena Escolano Rodriguez)氏、FRBRについてパット・リヴァ(Pat Riva)氏、VIAF(バーチャル国際典拠ファイル)についてバーバラ・B・ティレット(Barbara B. Tillett)博士が報告を行いました。これらの資料はIME ICC 4のウェブサイト(2006-11-7現在)に掲載されています。
 
次に、アジア7か国(カンボジア、中国、インドネシア、日本、韓国、ネパール、スリランカ)から、それぞれ自国の目録規則の歴史と現状や将来、パリ原則との類似点および相違点、実際の目録作業における運用実態などについての報告が行われました。CJK各国(中国、日本、韓国)はそれぞれ独自の目録規則を制定し、国際標準にあわせた目録を作成しようとしてきた歴史を持っている、その他の国ではAACR2(英米目録規則第2版)を使用しながらも自国の環境にあわせるためのローカル・ルールなどについて苦心してきた経緯がある、といったことが具体的な内容を伴って相互に情報共有できたことは特筆すべき出来事でした。(これらの報告もすべて前記ウェブサイトに掲載されています。)

 2日目(8月17日)は参加者が5つの作業部会(個人名、団体名、逐次性、統一タイトルとGMD、多巻構造)に分かれ、それぞれのテーマごとに検討が行われました。各部会においては、前述4か国語の同時通訳が用意されたほかリーダーの司会進行を補助するための記録員が配置されたこともあって、活発な議論が繰り広げられました。その一端を紹介します。

  • 個人名標目の形式は、各国の文化的伝統と深く係わっている。
  • 中国、韓国では同姓同名が多く、同名異人の識別を厳密に行うことは困難である。
  • 姓と名の区切りにコンマ(,)を用い続けることについて、検討が必要である。
  • 日本語の「読み」は、標目の重要な属性であり、明確な位置づけが望まれる。
  • ISBD(CR)(継続資料)において、先頭から5語の変更の有無によって「タイトルの変化」を判断する規定は、アジア諸国にとって適切なものではない。
  • GMD(一般資料表示)については、AACRの改訂動向に合わせ、用語法の変更を含め今後の方向性を定める。
  • アジア諸国においては、欧米諸国に比べて多巻ものの刊行が多い。国際規則においては、このような地域事情を反映した事例を多用すべきである。

 作業部会での検討は午後も継続して行われ、リーダーが部会報告を取り纏めました。その後の全体会では、各作業部会からの報告に引き続き、部会提案・意見について参加者全員による審議が行われました。第3回カイロ会議後の修正を反映した「覚書草案2006年4月稿」(2006-11-7現在)に対する主な提案とその検討結果は次のとおりです。(英語形の後の丸がっこ内は2005年9月草案の日本語訳)

  • (序論)注記1の誤植は訂正する。
  • (序論)”convenience of the users”(利用者の利便性)を”user centric approach”または”user friendly approach”に変更することについて、メーリングリストでの検討を続ける。
  • (3.1.2など)”family”(家族)という実体を対象とする必要性についての疑義があったが、文書館への適用時に必要であり、このまま残すこととする。
  • (5.1)”controlled access point”(統制形アクセスポイント)という表現は不明瞭であるかどうかについて、検討を続ける。
  • (5.3.1など)”should be”(〜ものとする)という表現が不適切かどうかについて、検討を続ける。ただし、「目録原則」においては”could be”や”may be”という表現は用いることはできない。
  • (5.5)”name/title combination”(名称/タイトルの複合形)に関する記述を、用語集の”uniform title”(統一タイトル)の項に追加する。
  • (5.5)アジア各国の、キリスト教圏とは異なる独自の文化的基盤の上に成立した聖典や古典籍については、5.5.2を新設し、それが作成された国が統一タイトルを用意する責任を負う旨の条文を加える。
  • (7.1.2.2)5.1.2.1.2の団体名の変更に関連して、7.1.2.2の典拠レコードに不可欠なアクセスポイントとして相互参照形を含めるべき、という提案については、検討を続ける。
  • (7.1.3)OPAC実装の現状等に鑑み”the year(s) of publication or issuance”(出版または発行の年)は7.1.2.1でなく7.1.3に置くべき、という提案について、検討を続ける。

 最終日(8月18日)は韓国国立中央図書館見学会などが行われ、アジア各国からの参加者およびIME ICC企画委員会メンバーとの交流が深められました。また、CJK各国の国立図書館関係者を中心とした集まりがあり、3か国が目録・書誌情報関係で一層の協力関係を築く必要性について認識が一致しました。

 IME ICC 4からの提案はアジア各国で共有されるとともに、これまでのIME ICC参加国での検討を経て、IME ICC 4の草案として確定されます。2007年8月に南アフリカのプレトリアにおいて開催される第5回会議(対象:アフリカ諸国)でも同様の検討が行われ、最終的な「国際目録原則覚書」に結実する予定になっています。

(はらい なおこ 書誌部国内図書課長)
(よこやま ゆきお 書誌部書誌調整課課長補佐)