憲法懇談曾の日本國憲法草案

憲法懇談会の日本国憲法草案(昭和二一、三、五発表)

(尾崎行雄、岩波茂雄、渡辺幾治郎、石田秀人、稲田正次、海野普吉)

特色

一、君民同治主義 天皇ハ第一市民(フアーストシチズン)タルノ主義ニヨリ主権其他ニ関スル規定ヲ設ケタリ
二、憲法ノ精神ヲ憲法ノ前文ニ於テ宣明シタリ
三、天皇ハ最少限ノ政治上ノ権利乃チ法律裁可、執行命令、議会召集、停会、衆議院ノ解散、官吏任免、条約締結(議会ノ同意ヲ要ス)、栄典授与、恩赦ノ権ヲ有スルモ立法行政ノ実権ハ議会及議会ニ対シテ責任ヲ負フ内閣大臣ノ手ニ帰セシムル所謂議会主義機構ヲ採用シタリ 天皇ニ此ノ程度ノ国法上ノ地位ヲ保留セシムルハ 天皇ガ日本社会ノ道義的中心タル為ニモ不可欠ナルベシ
四、内閣大臣ハ国務全範囲ニ亘ル唯一ノ補弼ノ機関タルコト又総理大臣ハ内閣統一保持ノ特殊地位ヲ有スルコトヲ明示シ、大臣ハ両院議員中ヨリ任ジ総理大臣ハ衆議院ヨリ奏薦スル様規定シタリ(両院議長ヨリ奏薦セシムル事ハ両者ノ意見不一致ノ場合都合悪シ、此ノ案ノ如ク衆議院ニ奏薦権ヲ与フルトキハ実際ニ於テハ外国ノ例ノ如ク院内ニ各政党間ノ交渉行ハレタル後院議ヲ以テ決定セラルルコトトナルベシ)
五、以上ノ諸点ニ付テハ英国流ノ立憲君主制ニ範ヲ採ルコト多シ
六、議会ハ二院制ヲ採用シ第一院タル衆議院ハ直接普通平等選挙制ヲ採用シ第二院タル参議院ハ地方議会議員ヲ以テ成ル選挙母体ヨリ選出サレタル議員、職能代表議員及両院ヨリノ推挙議員ヨリ成ルモノトシタリ、衆議院ハ活溌ニ民意ヲ代表セシメ参議院ハ寧ロ国民各層ノ知識経験ヲ代表セシムルコトトナシタリ、而シテ参議院ハ多少恒久性ヲ有セシムル為ニ任期ヲ長クシ又一時ニ全員ノ交代ヲ見ルコトナキ様ニナシタリ、又解散制ハ衆議院ニ限ルコトトシ参議院ハ徳義上原則トシテ内閣ニ対シテ不信任ノ意思ヲ表示スルコトナキモノトシ、参議院ノ予算議定権ヲ制限シタリ
七、議会ハ自ラ閉会期日ヲ定メ得ルコトトシ、又其他ノ規定ヲ設ケテ英米ノ如ク一年大部分開会スルコトトナシタリ、議会ノ請願処理権ヲ重視シタリ
八、皇室典範ノ重要原則ハ憲法中ニ編入シ他ノ皇室ニ関スル細則ハ皇室法トシテ議会ノ同意ヲ要スルコトトナシタリ、又譲位ノ制ヲ設ケ華族制ハ廃止シタリ
九、個人ノ権利自由ノ保障ヲ完全ナラシムル為各条ノ文言ニ留意シタリ、特ニ言論、出版、集会及結社ノ自由ハ軍国主義勢力ノ抬頭ヲ防止スル為ニスル場合ヲ除キ政治活動ノ面ニ於テハ法律ヲ以テシテモ制限シ得ベカラザルモノトナシタリ
十、司法権ヲ特ニ強化スル為ニ裁判所ニ違憲ノ法律ノ無効ヲ宣告シ得ル権ヲ与へ又大審院判事ノ任命ハ参議院ノ同意ヲ要スルコトトシタリ大審院ノ恒久性ヲ保ツタメニ其ノ院ノ判事ノ停年ハ七十年以上トナシタリ
十一、九、十ノ二点ハ殊ニ米憲法ノ主義ヲ参照シタリ
十二、人民発案及人民投票制度ニ付キテハ疑問多ク殊ニ人口多キ国ニ於テハ実施困難ノ事情アルヲ以テ一般立法、行政監督ノ分野ニ於テハ之ヲ採ラズ、只憲法改正ノ場合ハ其ノ慎重ヲ期スル為ニ議会ノ議決ヲ経タル後国民投票ニ付シテ国民ノ追認ヲ受ケシムルコトトシタリ
十三、会計ニ関シテハ租税法ノ効力ヲ原則トシテ一年タラシメ又予算超過外支出ヲ認メザル等財政ノ厳正ヲ期シタリ
十四、経済、教育ニ関シテハ統制ノ範囲内ニ於ケル個人ノ経済活動ノ自由ト財産ノ私有ノ承認、土地公有、特殊大企業ノ公営、国民勤労ノ権利義務、勤労無能力者ニ対スル生活保障、教育ノ機会均等、憲法ノ精神ニ基ク公民教育ノ重視、男女同権等々ノ規定ヲ設ケタリ
我等日本国ノ天皇及国民ハ
軍国主義及過激国家主義ノ迷妄ニ由リ国家及国民ヲ破滅ニ陥レタル未曽有ノ過誤ヲ将来再ビ繰返サザルベキコトヲ痛感シ
人権ノ尊重ト国民ノ為ノ国民ノ政治ガ近代文明国タルニ値スル憲法ノ基本原則タルコトヲ確信シ
善キ隣人トシテ他国民ト交リ進ンデ世界平和ノ確立ト人類文明ノ向上ニ貢献センコトヲ希求シ茲ニ日本国憲法ヲ改正シタリ

日本国憲法草案

第一章 総則

第一条 日本国ノ主権ハ天皇ヲ首長トスル国民全体ニ淵源ス
第二条 立法権ハ天皇議会共同シテ之ヲ行フ
第三条 行政権ハ天皇大臣ノ輔弼ヲ以テ之ヲ行フ
第四条 司法権ハ裁判所之ヲ行フ

第二章 国民ノ権利義務

第五条 国民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第六条 国民ハ凡テ法律ノ前ニ平等ナルモノトス
国民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ均ク公民トシテ公務ニ参与スル権利及義務ヲ有ス
華族制ハ之ヲ禁ス
第七条 国民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ其ノ能力ニ応シ公ノ負担ヲ分任スルノ義務ヲ有ス
第八条 国民ハ其ノ居住移転ノ自由ヲ侵サルルコトナシ
前項ニ対スル例外ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第九条 国民ハ其ノ人身ノ自由ヲ侵サルルコトナシ
国民ヲ逮捕シ監禁シ審問シ又ハ処罰スルカ為ニハ法律ノ正当ナル手続ニ依ルヲ要ス
犯罪容疑者ニ対スル審理遅滞及自白ノ強要ハ之ヲ禁ス
第十条 国民ハ正当ノ裁判所ノ裁判ヲ受クル権ヲ奪ハルルコトナシ
第十一条 国民ノ住所ノ安全ハ侵サルルコトナシ
前項ニ対スル例外ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 国民ノ信書ノ秘密ハ侵サルルコトナシ
前項ニ対スル例外ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十三条 国民ハ其ノ信教ノ自由ヲ侵サルルコトナシ
第十四条 国民ハ其ノ言論及出版ノ自由ヲ侵サルルコトナシ
風俗維持ノ為ニスル前項ニ対スル例外ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十五条 国民ハ其ノ平穏ナル集会及結社ノ自由ヲ侵サルルコトナシ
第十六条 軍国主義及過激国家主義ノ勢力ノ回復ヲ防止スルカ為ニハ憲法第十三条乃至第十五条ノ規定ニ拘ラス法律ニ依り国民ノ自由ヲ制限スルコトヲ得
第十七条 国民ハ其ノ請願ノ自由ヲ侵サルルコトナシ
第十八条 国民ハ其ノ財産権ヲ侵サルルコトナシ 公益ノ為ニスル財産権ノ徴収及制限ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第三章 天皇

第十九条 皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス
皇位継承ノ順序ハ皇室法ヲ以テ之ヲ定ム
第二十条 天皇ノ一身ハ侵スヘカラス
大臣ハ天皇ノ凡テノ国務上ノ行為ニ付責ニ任ス
天皇ノ凡テノ国務上ノ文書ハ大臣ノ副署ニ由リテ其ノ効力ヲ生ス
第二十一条 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布ヲ命ス
第二十二条 天皇ハ議会ヲ召集シ其ノ開会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス
第二十三条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム
第二十四条 天皇ハ官吏ヲ任免ス、但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル行政各部ノ官制ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五条 天皇ハ議会ノ同意ヲ以テ諸般ノ条約ヲ締結ス
第二十六条 天皇ハ栄典ヲ授与ス
栄典ニ関スル条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七条 天皇ハ大赦特赦減刑及復権ヲ命ス
恩赦ニ関スル条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八条 天皇ハ十八年ヲ以テ成年トス
第二十九条 天皇未タ成年ニ達セサルトキハ摂政ヲ置ク
天皇久シキニ亘ル事故ニ由リ政務ヲ親ラスル能ハサルトキハ議会ノ議決ヲ経テ摂政ヲ置ク
摂政就任ノ資格及順序ハ皇室法ヲ以テ之ヲ定ム
第三十条 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ政務ヲ執ル
第三十一条 天皇特ニ重大ナル事故アルトキハ譲位ヲ為スコトヲ得

第四章 議会

第三十二条 議会ハ衆議院及参議院ノ両院ヲ以テ成立ス
第三十三条 衆議院ハ直接普通平等及秘密選挙ニ依り四箇年ノ任期ヲ以テ選出セラレタル議員ヲ以テ組織ス選挙ニ関スル条規ハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四条 参議院ハ地方議会議員ニ依り選出セラレタル任期六箇年ノ議員(二年毎ニ其ノ三分ノ一ヲ改選ス)各職能団体ヨリ選出セラレタル任期四箇年ノ議員(二年毎ニ其ノ半数ヲ改選ス)及学識経験アリ且ツ徳望高キ者ノ中ヨリ両議院ノ推挙シタル任期六箇年ノ議員ヲ以テ組織ス
選挙ニ関スル条規ハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第三十五条 何人モ同時ニ両議院ノ議員タルヲ得ス
第三十六条 凡テ国民ニ負担ヲ課シ又ハ国民ノ権利若ハ自由ヲ制限スルノ条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第三十七条 両議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得
第三十八条 両議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得
第三十九条 議会ハ毎年之ヲ召集ス
第四十条 議会ハ自ラ其ノ閉会ノ期日ヲ決定スヘシ
第四十一条 臨時必要アル場合ニ於テ常会ノ外臨時会ヲ召集スヘシ
第四十二条 両議院ノ議員ハ其ノ院総員三分ノ一以上ノ発議ヲ以テ臨時会ノ召集ヲ奏請スルコトヲ得
第四十三条 議会ハ常会及臨時会ヲ通シ毎年少クトモ六箇月間開会スルコトヲ要ス
第四十四条 議会ノ開会閉会及停会ハ両院同時ニ之ヲ行フヘシ
衆議院解散セラレタルトキハ参議院ハ同時ニ停会セラルヘシ
第四十五条 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ四十日以内ニ之ヲ召集スヘシ
第四十六条 両議院ハ各々其ノ総議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ為スコトヲ得ス
第四十七条 両議院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル処ニ依ル
第四十八条 両議院ノ議事ハ公開ス、但シ其ノ院ノ決議ニ依リ秘密会ト為スコトヲ得
第四十九条 両議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得
第五十条 両議院ハ国民ノ請願ヲ受クルコトヲ得、此ノ場合ニ於テ両議院ハ請願ノ内容ヲ審査シ之ヲ採択シタルトキハ請願ノ主旨ニ基キ政府ニ建議シ又ハ其ノ院自ラ法律案ヲ提出スル等有効ノ処置ヲ為スヘシ
第五十一条 両議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノノ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得
第五十二条 両議院ノ議員ハ議院ニ於テ発言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ
第五十三条 両議院ノ議員ハ現行犯ニ関スル罪ヲ除クノ外会期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラルルコトナシ

第五章 大臣

第五十四条 大臣ノ天皇輔弼ノ職務ハ国務ノ全範囲ニ亘ル
大臣ノ外天皇輔弼ノ機関アルコトナシ
第五十五条 内閣ハ各大臣ヲ以テ之ヲ組成ス
内閣総理大臣ハ各大臣ノ首班トシテ内閣ノ統一ヲ保持ス
内閣ノ組織及職権ハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十六条 内閣総理大臣ノ任命ハ衆議院ノ奏薦ニ依ル
他ノ大臣ノ任命ハ内閣総理大臣ノ奏薦ニ依ル
第五十七条 大臣ハ両議院ノ議員中ヨリ之ヲ任ス、但シ衆議院ノ解散ニ由リ議員タル資格ヲ失ヒタル大臣ハ次ノ総選挙ニ至ルマテ其ノ職ニ留マルコトヲ得
第五十八条 大臣ノ在職ハ議会ノ信任アルコトヲ要件トス
第五十九条 大臣職務上ノ違法行為アリタルトキハ両議院ハ之ヲ弾劾スルコトヲ得、此ノ弾劾事件ハ法律ノ定ムル所ニ依リ大審院之ヲ審判ス

第六章 裁判所

第六十条 裁判所ハ憲法及法律ノ外如何ナル権力ニモ服スルコトナシ
第六十一条 裁判所ハ一切ノ民事訴訟、刑事訴訟及行政訴訟ヲ管轄ス
裁判所ハ大審院及下級裁判所ヨリ成ル其ノ構成ハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第六十二条 裁判所ハ訴訟事件ノ審判ニ当リ法律ノ憲法ニ適合スルヤ否ヲ判決スルコトヲ得
第六十三条 裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
大審院判事ノ任命ハ参議院ノ同意ヲ経ルヲ要ス
第六十四条 裁判官ハ刑法ノ宣告懲戒ノ処分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルルコトナシ
懲戒ノ条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ規定ハ法律ニ依ル裁判官ニ対スル停年制ノ設定ヲ妨ケス、但シ大審院判事ノ停年ハ七十年以上ナルコトヲ要ス
第六十五条 裁判ノ対審判決ハ之ヲ公開ス
但シ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ裁判所ハ決議ヲ以テ対審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得

第七章 会計

第六十六条 租税ヲ課徴スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ム、租税法ノ効力ハ其ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノヲ除クノ外一箇年限リトス
第六十七条 国債ヲ起シ及予算ニ定メタルモノヲ除クノ外国庫ノ負担トナルヘキ契約ヲ為スハ議会ノ同意ヲ経ヘシ
第六十八条 国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ議会ノ同意ヲ経ヘシ
第六十九条 予算及租税法ハ衆議院ニ於テ先議ス
参議院ハ衆議院ノ議決ヲ経タル予算ニ対シテ修正ヲ為スコトヲ得ス
第七十条 皇室ノ歳費ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第七十一条 法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ属スル歳出ハ法律ノ範囲内ニ於テノミ議会之ヲ廃除シ又ハ削減スルコトヲ得
第七十二条 会計年度開始前ニ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ二箇月ヲ限リ仮リニ前年度ノ予算ヲ施行スルコトヲ得、此ノ場合租税法ハ其ノ効力ヲ仮リニ存続シタルモノト看做ス
第七十三条 国家ノ歳出歳人ノ決算ハ会計検査院之ヲ検査確定シ政府其ノ検査報告ト倶ニ之ヲ議会ニ提出シ其ノ承認ヲ求ムルヲ要ス
会計検査院ノ組織及職権ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第八章 経済及教育

第七十四条 以下各条ハ経済及教育等ニ関スル立法行政ノ基礎タルヘキモノトス
第七十五条 経済秩序ハ国富ヲ増殖シ凡テノ国民ノ生活ノ物質的文化的水準ヲ向上セシムルヲ以テ其ノ目的トス
此ノ目的ヲ達スルカ為ニ国民経済ニ対スル総合的計画ニ基ク統制行ハルヘク国民ノ経済上ノ自由ト財産ノ私有ハ制限セラルへシ
第七十六条 土地其ノ他重要ナル生産手段ハ公益ノ為必要ナル限リ公有タルへキモノトス
封建的小作制ハ之ヲ禁ス
第七十七条 公共ノ福祉ニ重大影響アル大企業ハ原則トシテ公営タルへキモノトス
独占資本ノ支配ハ之ヲ禁ス
第七十八条 国民ハ凡テ勤労ニ服スル義務アルモノトス
不労所得ニ依存スル生活ハ之ヲ禁ス
第七十九条 国民ノ勤労権ハ保障セラル
失業ハ防止セラルヘク又勤労ノ質量ニ相応スル報酬ハ与ヘラルヘシ
勤労者ニ対スル休息ノ施設ハ完備セラルヘシ
第八十条 勤労者ノ勤労条件ヲ改善シ公共経済ノ発達ニ寄与スルカ為ニスル自主的組織ハ保障セラル
第八十一条 病者老者其ノ他勤労能力ナキ者ニ対シテハ社会保険制其ノ他ノ施設ニ依ル生活上ノ保障与へラルヘシ
第八十二条 国民ハ凡テ教育ニ対スル均等ナル機会与へラルヘシ
第八十三条 学校其ノ他社会ニ於ケル学問芸術及授業ノ自由ハ尊重セラルヘシ
第八十四条 学校其ノ他社会ニ於テ憲法ノ精神ニ基ク公民教育ハ特ニ重視セラルヘシ
軍国主義及過激国家主義ノ教育ハ之ヲ禁ス
第八十五条 男女ハ政治経済文化其ノ他ノ社会生活ニ於テ均等ナル待遇ヲ与へラルヘシ
第八十六条 母性及乳幼児ニ対スル保護施設ハ完備セラルヘシ

第九章 憲法改正及附則

第八十七条 憲法改正ハ政府又ハ両議院之ヲ発議スルコトヲ得
此ノ場合ニ於テ両議院ハ各其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス、出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス
第八十八条 議会ノ議決ヲ経タル憲法改正ハ別ニ法律ノ定ムル所ニ従ヒ国民投票ニ付スヘシ
天皇ハ国民投票ニ於テ国民ノ多数ノ賛成ヲ得タル憲法改正ヲ裁可シ其ノ公布ヲ命スヘシ
第八十九条 皇室法ノ改正ハ議会ノ議ヲ経ヘシ
第九十条 此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ凡テ遵由ノ効力ヲ有ス
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