2026年1月5日 新年のご挨拶

謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年が皆さまにとって良い年となりますようお祈り申し上げます。国立国会図書館へのご支援、ご協力に心より御礼申し上げます。
昨年は、「国立国会図書館ビジョン2021-2025 ―国立国会図書館のデジタルシフト―」の下、資料のデジタル化を進め、2000年までに受け入れた国内刊行図書約170万冊のデジタル化は今年度末までに終了する見込みとなりました。令和7年10月末時点で、デジタル化した資料481万点のうち、インターネットで公開中の資料は67万点、デジタル化資料送信サービスを通じて図書館もしくは個人に提供可能な資料は232万点にまで拡大いたしました。出版社、著者の皆さま、連携協力していただいている機関の皆さまをはじめとして、ご理解、ご協力をいただいた方々に御礼申し上げます。
国立国会図書館がこれまで収集してきた紙の出版物のデジタル化は着実に進展いたしました。一方で、電子書籍・電子雑誌等の収集に関しては、令和6年度に公的機関から約4.7万点、民間からは約2.4万点の収集にとどまっています。
納本図書館がその国の出版物に関して、網羅的収集を図ることは基本的な取組みと認識していますが、デジタルでの流通は紙の出版物とは異なる制度となります。たとえば所有権が認められるのは有体物だけですので、デジタルで流通するものは所有することができず、紙の出版物のように購入して貸し出すことは原則としてできません。それぞれの流通制度にふさわしいアクセス環境を構築していく必要があります。
公的機関の電子書籍・電子雑誌収集については、制度収集したウェブサイトから抽出作業を行っていますが、かなり時間がかかっているため、改善方法を検討しています。民間の電子書籍・電子雑誌については、送信による収集を制度として定めていますが、発行側の負担も多く、様々な改善すべき課題が残っております。
リポジトリへ収録済みの電子書籍・電子雑誌や、印刷物と同一版面で刊行されたものは、国立国会図書館への提供義務から除外していますので、このような資料に関しては、国立国会図書館サーチ等での検索を含め、アクセスのための情報提供を十分に図ることも大きな課題と考えています。
情報や知識の生成や流通だけでなく、その収集、整理、利用に関わるあらゆるプロセスがデジタル化されつつあり、今後もその流れは進んでいくと考えられます。電子雑誌・電子書籍等だけでなく、ウェブサイトなどインターネットを通して流通する情報についても、何をどのように収集していくべきなのか、本格的に再検討していかなくてはいけない時期にあります。昨年9月に開催いたしました第40回納本制度審議会においても、事務局から各国国立図書館におけるウェブアーカイブ事業の概要をご報告した上で、委員の皆さまに当館におけるウェブアーカイブのあり方について懇談いただき、様々な視点から貴重なご意見をいただきました。今後、さらなる調査を含め検討を深めていきたいと考えております。
昨今、生成AIに関しては、社会のあらゆる側面に対する大きな影響力が話題となっております。当館でも職員が複数の生成AIサービスを利用できる環境を整備し、様々な業務や活動への導入可能性を検討しております。生成AIの図書館サービスへの展開に関しては、韓国国立中央図書館等が積極的に進めておられます。本年2月に、韓国国立中央図書館のキム・ヒソプ館長を招聘してその将来戦略等について講演をいただく予定ですが、おそらく生成AIの図書館への導入に関しても新しい知見がうかがえるのではないかと期待しております。
他方、当館が持つ大量のテキストデータを、生成AIの大規模言語モデル(LLM)の学習データとして活用する可能性に関しては、多様なご意見をいただいております。その中で、昨年9月に国立情報学研究所で開発されているLLMの構築のために、官庁出版物のデジタル化画像から作成した全文テキストデータ約30万点の提供を行いました。今後も、著作権者の方々のご意向を十分踏まえながら、日本における生成AIの発展に寄与できる方策を慎重に検討してまいりたいと思います。
現在、当館では次期ビジョンの策定作業を進めております。国立国会図書館の基本的な役割とは、知の基盤を構築し、それを最大限活用することで国会活動を補佐するとともに、人々の多様な知的活動を支援し、豊かな社会の形成に貢献していくことにあります。そのためには、伝統的な紙の出版物とデジタルで生み出され流通する多様な情報とを統合的に扱え、全ての人々がアクセスしやすい知の基盤を、生成AI等の新しい技術を取り込みながら構築していくことが重要な課題の一つであると認識しております。次期ビジョンでは、将来の知の基盤の構築とそれを生かすためのサービスのあり方について、次の5年で具体的に取り組む事項を定めていきたいと考えています。
令和8年1月
国立国会図書館長 倉田敬子