視覚障害者等サービス実施計画2014-2016 著作:平成26年3月 作成:国立国会図書館 1 趣旨・経緯 国立国会図書館(以下「当館」という。)の視覚障害者等に対するサービスは、これまで「視覚障害者等サービス実施計画」(平成23年国図企1107141号。以下「平成23年計画」という。)に基づき、視覚障害者等用資料の統合検索、当館製作学術文献録音DAISY資料の配信、視覚障害者等用資料・データの東京本館及び関西館における利用環境の整備、他の図書館が作成する録音図書・点字図書デジタルデータの収集、保存及び提供等の諸施策を着実に実施してきたところである。また、視覚障害者等用データの送信については、平成25年12月18日に国立国会図書館視覚障害者等用資料送信及び貸出規則(平成25年国立国会図書館規則第6号。以下「視覚障害者等規則」という。)等の関連法規が制定されたところである。 この計画は、平成21年の改正著作権法の衆参両議院の委員会審議における附帯決議において、「図書館の果たす役割にかんがみ〔、読書に困難のある視覚障害者等への情報提供を含め〕 、当館において電子化した資料の有効な活用を図ること」とされていること、平成18年12月に国際連合総会本会議で採択された「障害者の権利に関する条約」を踏まえて平成25年6月26日に公布された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)において社会的障壁 の除去が社会一般に要請されていることなどを踏まえ、「戦略的目標」(平成25年国図企1305101号)の「目標3:情報アクセス」に掲げられた「障害者サービスの向上」を達成するため、平成23年計画に続き、当館における視覚障害者等に対するサービスにつき、社会的な連携の中でより充実させるための具体的な方策を示すものである。 2 計画の適用年次 平成26年度から平成28年度までとする。 3 サービス対象者 当館が行う視覚障害者等サービスの対象者(以下「サービス対象者」という。)は、平成23年計画と同様、「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)第4項に規定する「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者」(ガイドライン別表1に例示する状態にあって、視覚著作物(著作権法第37条第3項にいう「視覚著作物」をいう。)をそのままの方式では利用することが困難な者をいう。)であって、当館及び他の図書館等がガイドライン第5項に基づき登録を行った者とする。 なお、当館における登録は、視覚障害者等規則に基づき、当館への来館による申込みのみを受け付けることとし、それ以外の申込みの受付については、計画期間内に受付体制を整備の上、開始することとする。 4 提供するサービス等の概要 (1)視覚障害者等用資料に関するサービス ア 学術文献録音DAISY資料の製作 視覚障害者等の利用に供するため、図書館等を通じた利用者からの申込みに応じて、当館が所蔵する専門的な学術文献をDAISY規格の録音図書(以下「学術文献録音DAISY資料」という。)として製作するサービスを、平成23年計画に引き続き行う。なお、製作方法については、分量の多い文献を録音図書として製作することを可能とし、かつ、1タイトル当たりの製作費用が比較的安価で済むことから同じ経費でより多くの録音図書が製作可能となることを踏まえ、現在の肉声による録音方法から合成音声による録音方法 への移行を、平成27年度から順次行う。 イ 学術文献録音テープ及び学術文献録音DAISY資料の貸出し 当館で製作、所蔵している学術文献録音テープ及び学術文献録音DAISY資料を図書館等を通じて視覚障害者等に貸し出すサービスを、平成23年計画に引き続き行う。 ウ 館内における視覚障害者等用資料の提供 東京本館及び関西館においては、サービス対象者に対して、点字資料、大活字資料等の資料及び視覚障害者等用録音資料・電子資料、当館製作学術文献録音資料(録音テープ及びDAISY資料)等の資料の館内提供並びに同伴者による対面朗読のための措置(場所の貸与)につき、平成23年計画に引き続き実施する。 さらに、平成27年度の国際子ども図書館のリニューアルに合わせ、同館においてもこれらのサービスを実施するとともに、関西館と東京本館・国際子ども図書館相互間での視覚障害者等用資料の取寄せを実現する。 エ 学術文献録音テープの媒体変換等 音声データの消失が懸念される当館製作学術文献録音テープについては、保存及び利活用の機会を保障するため、デジタル化によるマイグレーション やDAISY規格の録音データ化を想定した検討を行う。 (2)アクセシビリティの確保及びサービスに関する情報の周知 ア 当館ウェブサイト及びウェブ上で提供するサービスのアクセシビリティ確保 平成25年6月には当館のウェブアクセシビリティへの対応目標を明確にした「国立国会図書館ウェブアクセシビリティ方針」(平成25年国図電1306201号)を策定し、7月にホームページで公開した。今後はこの方針に基づき、当館のウェブアクセシビリティの確保・向上のため、当館職員への研修や各ウェブサービスにおけるアクセシビリティ対応状況を確認し、順次改善するなどの取組を続ける。 イ 視覚障害者等向けアクセシビリティに関する調査 社会のバリアフリー化が進む中、当館サービスに対し、視覚障害者等に配慮したアクセシビリティの確保が求められている。これを踏まえて、有識者及び視覚障害者等の協力を得て意見聴取を行うなど、視覚障害者等のアクセシビリティを高めるための具体的方法に関する調査を行う。調査の結果は、必要に応じ、4(2)アの取組等に反映させる。 ウ 視覚障害者等への情報提供ページの運営 障害のある人が当館を利用する際に必要な情報を得やすいように、障害者向けの利用情報やサービス概要を集約し提供する目的で、国立国会図書館ホームページの「障害者サービス」のページを、平成23年計画に引き続き運営する。 (3)視覚障害者等用データに関するサービス ア 当館製作学術文献録音DAISY資料の送信 当館製作学術文献録音DAISY資料のデータにつき、4(3)ウの統合検索を提供する「国立国会図書館サーチ」を検索用インターフェースとしてデジタルデポジットシステムから送信するサービスを、平成23年計画に引き続き実施する。 なお、送信対象者は、サービス対象者及び視覚障害者等サービスを行う機関のうちでこの送信を受けるための登録を受けたものとする。 また、当該資料のデータを「サピエ図書館 」のシステムに搭載し、「サピエ図書館」から送信するサービスも、平成23年計画に引き続き実施する。 イ 他の図書館等が作成する視覚障害者等用データの収集、保存及び送信 他の図書館等が作成するDAISY規格の録音データ及び点字データ(以下「視覚障害者等用データ」という。)の収集、保存及びデジタルデポジットシステムによる送信サービスを、平成23年計画に引き続き実施する。ただし、DAISY規格の録音データについては、サービス対象者及び視覚障害者等サービスを行う機関のうちでこの送信を受けるための登録を受けたものに限定して送信を行う。 視覚障害者等用データを収集する対象機関は、当面、公共図書館及び視覚障害者情報総合ネットワーク(サピエ)施設・団体会員とする。ただし、サピエ施設・団体会員からは、当該施設が「サピエ図書館」に搭載しなくなった視覚障害者等用データに限り収集することとする。 これらの機関からの収集が定常化し次第、収集する対象機関の大学図書館等の他館種(視覚障害者情報提供施設を除く。)への拡大及びデータ種別の拡大を検討する。 また、当該収集の円滑化を図るため、他の図書館等からの送信によりデータを収集する機能をデジタルデポジットシステムに実装し、平成27年度以降にこの機能を用いての収集開始を目指す。 ウ 視覚障害者等用データ等の統合検索 「国立国会図書館サーチ」で、「NDL-OPAC」、「点字図書・録音図書全国総合目録」及び「サピエ図書館」の統合検索機能を、平成23年計画に引き続き提供する。さらに、デジタルデポジットシステムに搭載した視覚障害者等用データの統合検索も行う。 エ 館内における視覚障害者等用データの提供 サービス対象者に対して、当館製作学術文献録音DAISYデータ、他の図書館が作成する視覚障害者等用データ、「サピエ図書館」収載の視覚障害者等用データ等を、平成23年計画に引き続き、東京本館及び関西館の館内で提供する。 さらに、平成27年度の国際子ども図書館のリニューアルに合わせ、同館の館内においても、これらのサービスを実施する。 オ デジタル化資料のテキスト化及びテキストデータの送信に関する検討 当館では、本計画冒頭にあるように、平成22年の改正著作権法(第37条第3項)の趣旨に沿い、視覚障害者等を対象としたデジタル化資料の有効な活用方法を検討するため、平成22年度以来、デジタル化資料のテキスト利活用に関する実証実験を実施してきた 。それらを踏まえた現状認識は次のとおりである。 @ 画像データ(デジタル化資料)からOCRを用いてテキストデータを作成する方法による場合、学術文献録音DAISY資料相当の実用に堪える認識率を得ることは、現時点における技術水準では困難である。 A 一方、校正作業等の人手を経ない形でのテキストデータであっても、資料の内容を把握するためのいわゆる「斜め読み」を行うなどのニーズに応えることのできるサービスの実施可能性がある。 以上の認識に基づき、上記Aに対応したテキストデータの送信実験を行い、併せて校正・構造化に係る調査・研究も行いつつ、平成27年度以降のシステム開発及びテキストデータの視覚障害者等への送信開始を目指す。 なお、著作権法第31条第2項のデジタル化資料を用いてテキストデータを作成すること、作成対象とする資料の範囲及び著作権法第37条第3項に基づいてテキストデータの送信を行うことについては、実験の検証結果を踏まえた上で、改めて関係機関・団体等と協議するものとする。 (4)「サピエ図書館」との連携 平成22年4月にサービスを開始した「サピエ図書館」は、現在、11,000人を超える個人利用者と、260を超える視覚障害者等サービスを行う施設や団体によって利用されており、インターフェースの操作性の快適さとあいまって、視覚障害者等に最も普及している視覚障害者等用データの送信データベースであるといえる。 「サピエ図書館」を通じ、当館製作学術文献録音DAISY資料のデータだけでなく、他の図書館が作成する視覚障害者等用データを視覚障害者等に送信することができれば、これらのデータをより多くの視覚障害者等に直接送ることができるようになる。このため、遅くとも平成28年度までには「サピエ図書館」と当館システムとの連携を行うことを目指し、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会及び「サピエ図書館」のシステム運用管理を行っている社会福祉法人日本点字図書館等と協議を行う。 5 スケジュール 実施予定スケジュールは次のとおりとする。 (継続実施) ○学術文献録音DAISY資料の製作及びデータ送信 ○学術文献録音テープ及び学術文献録音DAISY資料の貸出し ○東京本館及び関西館における視覚障害者等用資料及び視覚障害者等用データの提供 ○視覚障害者等への情報提供ページの運営 ○他の図書館等が作成する視覚障害者等用データの収集、保存及び送信 ○視覚障害者等用データ等の統合検索 ○デジタル化資料のテキスト化及びテキストデータの送信に関する検討 平成26年度 ○「サピエ図書館」で搭載しなくなった視覚障害者等用データの収集、保存及び送信の開始 平成27年度 ○合成音声による録音方法を用いた学術文献録音DAISY資料の製作開始 ○国際子ども図書館における館内サービスの開始 ○関西館と東京本館・国際子ども図書館相互間での視覚障害者等用資料の取寄せの開始 実施時期未定 ○他館経由による視覚障害者等個人からの登録受付開始【平成26〜28年度】 ○視覚障害者等向けアクセシビリティに関する調査【平成26〜28年度】 ○収集機能を用いた視覚障害者等用データの収集開始【平成27年度以降】 ○デジタル化資料のテキストデータを用いた視覚障害者等向け送信サービスの開始【平成27年度以降】 ○「サピエ図書館」と当館システムとの連携【平成26〜28年度】 6 その他 (1)他の機関等との協議等 この計画の実施に当たっては、必要に応じ、関係機関・団体等との協議を行うものとする。 (2)法規整備 この計画の実施に当たり必要となる関係法規の整備は、順次実施する。 (3)計画の見直し この計画は、必要に応じ、適宜見直しを行う。 以上で、視覚障害者等サービス実施計画2014-2016 終わり