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びぶろす-Biblos

87号(令和2年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

5. 【特集:官庁出版物の収集と利用】
ベルリン国立図書館における日本の官庁出版物の国際交換とその取扱い

ベルリン国立図書館 (文)ウルズラ・フラッヘ(博士(日本学))
(訳)山本 陽子

1. 歴史

ベルリン国立図書館1における東アジア資料および官庁出版物収集の歴史は長い。当館東アジアコレクションの始まりは、当館が選帝侯図書館として設立された1661年に遡る。すでに1683年には、当館で初めて印刷された目録である中国語資料目録に25品目(のべ276巻)が記載されていた。しかし日本語資料が東アジアコレクションに加わったのは、その大半が日本開国後のことであった。

1861年に日本と修好通商条約を締結したプロイセン王国の使節団は、日本の書籍や絵巻、地図などを当時の王立図書館のために収集した。これと同時期の1862年、プロイセン当局が官庁出版物を王立図書館に納入するよう法令で義務づけたことで、ドイツ語の官庁出版物の組織的な収集も開始された。

時代は20世紀となり、1922年には東アジア部2が独立した一部門として開設された。第二次世界大戦が始まると、当館の所蔵資料は当時のドイツ帝国領の各地に疎開させられた。官庁出版物は大部分が戦争による破壊や散逸を免れたが、東アジアコレクションの数は激減した。大戦終結後、ドイツが東西に分断されたことで、図書館は東と西のそれぞれに置かれることとなった。ウンター・デン・リンデン大通りに位置する元の本館は東ベルリンに属していた。東ドイツ(DDR)の官庁出版物は依然として収集されていたものの、同国が社会主義体制を敷いたことで、資本主義国家の日本から出版物を入手することは困難になった。一方、西側諸国の占領地域で戦争を生き延びた同館の所蔵品は、マールブルクに作られた「西ドイツ図書館」に集められた。


画像1. 2013年、ウンター・デン・リンデン館に新たな図書閲覧室がオープン
画像1. 2013年、ウンター・デン・リンデン館に新たな図書閲覧室がオープン(写真: cinemadirect, Berlin)



東アジア部は西側時代の1951年から統一後の2015年にかけて、ドイツ研究振興協会3(Deutsche Forschungsgemeinschaft、略称DFG)の経済的支援の下、いわゆる特別収集領域を担当した。担当の領域は人文科学および社会科学分野に限定した東アジア・東南アジア地域内の資料であった。DFGの支援によって設立された新しく近代的な東アジアコレクションと同様に、1954年には政府文書も特別収集領域として、まずはマールブルクの西ドイツ図書館で取り扱われることとなった(1978年-2006年、ベルリン館が引き続き担当)。さらに1956年、官庁出版物のための独自の部署(官庁出版物部)が同館に設けられた。同部は1959年7月に国立国会図書館と協定(Agreement between the National Diet Library, Tokyo, Japan and the Federal Office for the International Exchange of Official Publications, Marburg/Lahn, Federal Republic of Germany, for the exchange of official publications of their respective governments)を結び、ドイツ日本間の官庁出版物交換の60年にわたる長い歴史がここに幕を開けた。

1978年、ベルリンの壁近くに位置する西ベルリン・ポツダム通りに図書館が建設され、東アジア部および官庁出版物部を含む図書館全体が、マールブルクから西ベルリンに移転した。そして迎えたドイツの統一をもって、東西に分かれていた二つの図書館もプロイセン文化財団ベルリン国立図書館として再び統合された。

2. 現在

2004年、部署再編の過程で官庁出版物部が閉鎖されて以来、官庁出版物は言語別に管理されている。西洋語の官庁出版物は蔵書構築部4(Abteilung Bestandsaufbau)が担当している。ベルリン国立図書館は4つあるドイツの官庁出版物の国立収集拠点の一つである。さらに当館は、国連(1956年以降)や欧州連合(EC:1963年以降、EU:1993年以降)といった国際機関の文書保存図書館でもある。西洋語以外の言語による官庁出版物は、各言語を扱う部署が担当している。すなわち日本語の官庁出版物は東アジア部日本課が担当するということになる。

ベルリン国立図書館はもともと国立国会図書館からいわゆる「フルセット」、日本語および英語で書かれた全ての官庁出版物を受け取っていた。しかし日本語の出版物に関しては2008年から2009年にかけて特別収集領域の学問分野に準ずることが決定され、人文科学と社会科学に限定した交換になった。この方針転換は受け入れるタイトル全体数の減少につながった。


画像2. ポツダム通り館
画像2. ポツダム通り館(写真: SBB-PK /C. Koesser)



東アジア部および蔵書構築部はともにポツダム通り館内にあり、国立国会図書館から年に4度送付される船便は同館に届けられる。通関業務およびハンブルク港からの輸送の手続きは、蔵書構築部・経理課が一手に担う。国立国会図書館からの受け入れ資料は日本語と英語のタイトル別に梱包されているため、言語に応じたそれぞれの部門で素早く分類される。日本語の官庁出版物の処理については以降に詳しく説明するが、手順はどちらの言語でも基本的に同じである。種類により担当者が異なるため、届いた資料はまず雑誌と図書資料に分けられる。ではまず雑誌について説明する。

(1) 雑誌

国立国会図書館との合意に基づいて作成されたリストには、当館が定期的に受け取る雑誌一覧が掲載されている。これに加え12月に届く国立国会図書館の交換リストを通じて、そのほかの雑誌を入手する機会も提供されている。雑誌はまず年刊誌とその他の刊行物に分類される。年刊の雑誌の場合、一冊ずつ登録して製本された後、ただちに書庫に送られる。その他の雑誌は製本して書庫に収める前に、その年に発行された全ての号が揃うのを待たなくてはならない。

2000年以降、雑誌の管理は電子システムによって行われている。現在のバージョンはLBS4(OCLC)で、ここに全ての冊子が登録される。受入業務の際に一冊ずつ登録番号が手書きで記入され、ベルリン国立図書館の蔵書印が押される。作業時には、書誌情報が最新の状態かどうかもあわせてチェックされる。例えばタイトル変更や編集者の交代といったケースには、新たな書誌を作成するか、既存の書誌を修正する必要がある。


画像3. 雑誌「外国の立法」LBS4上の管理用データ画面
画像3. 雑誌「外国の立法」LBS4上の管理用データ画面



ドイツにおける雑誌の総合目録は、いわゆる雑誌データベース5(Zeitschriftendatenbank、略称ZDB)である。ベルリン国立図書館およびドイツ国立図書館(フランクフルト・アム・マインおよびライプチヒ)が、同データベースの運営および開発の共同責任館を務める。ZDBには出版時期を限定せず、紙・電子媒体を含むあらゆる記録形式におけるあらゆる言語の雑誌、新聞、逐次刊行物等、180万タイトルに及ぶ書誌が登録されている。現在、ドイツとオーストリア国内の図書館およそ3,700館が、ZDBに所蔵書誌を登録している。それゆえに同データベースは、図書館間相互貸借を実施するための重要な検索ツールとして重用されている。ZDBでの登録作業は2015年までドイツの目録規則ZETAに従って行われていた。2015年10月以降は、国際的なRDA目録規則(資源の記述とアクセス)が、RDAツールキットに統合されたドイツ語圏におけるアプリケーションガイドライン(D-A-CH-AWR)に準拠する形で適用されている。

運用当初は技術的な理由により、ZDBにオリジナルの文字を入力することが出来なかったため、日本語の雑誌もヘボン式ローマ字表記による翻字のみで記述されていた。しかし2013年下半期よりオリジナルの文字が入力できるようになり、新規作成書誌には翻字と並行してオリジナルの文字も記述されるようになった。ベルリン国立図書館の蔵書を含む旧規則に従い作成された多数の書誌には、当館東アジア部のプロジェクトを通じて、東アジア諸語の文字が追加されている。しかし全ての書誌に日本語表記が追加されたとはまだ言えず、同データベースを検索する際にはローマ字表記を引き続き使用することが望ましい。


画像4. 雑誌データベースZDBの「国立国会図書館月報」作業用画面
画像4. 雑誌データベースZDBの「国立国会図書館月報」作業用画面



雑誌データベース上の当館蔵書データ全レコードは定期的にダウンロードされ、当館のオンライン蔵書目録であるStaBiKat6に一括登録される。日本語の官庁出版物のうち逐次刊行物はこちらで検索することが可能である。


画像5. 「国立歴史民俗博物館年報」のユーザー向け目録画面
画像5. 「国立歴史民俗博物館年報」のユーザー向け目録画面



ここで官報についても言及しておこう。官報は日本の公の機関紙として非常に重要な資料だが、官報の知識を持つ図書館員なら、ほぼ毎日発行される本紙および多岐にわたる号外を登録する作業が労力を伴うことも理解しているであろう。月ごとに官報の小包が届けられると、これを分類する作業が待っている。同紙の蔵書管理を迅速に行うため、特別な登録番号用スタンプが用意されている。


画像6. 図書館蔵書印と印の押された官報号外3点
画像6. 図書館蔵書印と印の押された官報号外3点(写真: SBB-PK / U. Flache)



ベルリン国立図書館所蔵の日本の官庁出版物(雑誌)(2020年2月現在)
官庁出版物(雑誌) 合計 収集継続中のタイトル 完結済みのタイトル
日本語 631 290 341
英語 246 23 223
合計 877 313 564


(2) 図書

官庁出版物の図書資料も定期的に船便で届けられる。あらかじめ入手を希望する資料の発行者一覧が国立国会図書館との間で取り決められている。同一覧表には、例えば国立公文書館、国立国語研究所、文化庁、東京国立博物館、国立劇場、国会といった重要な施設・機関の名が並び、当然そこには国立国会図書館も含まれている。

国立国会図書館はこれに加えて、日本国外の図書館等を対象に毎年3月と9月に幅広い図書資料の交換リストを提供している。同リストには通常の書籍取引に含まれない資料が主に掲載されているため、蔵書構築の上で大変な価値がある。提供される資料は、地域および市町村立美術館・博物館の展覧会図録、地域史、地方の人物伝、地域および市町村立図書館等の資料目録、寺社出版物、あるいは地方の祭礼記録などバラエティに富んでいる。交換リストの内容は多岐にわたっており、ドイツの日本学研究にとって大変有用なものとなっている。選択できるのは毎リスト100タイトルまでという制限があり、最終的に当館が何冊受け取れるのかは運任せである。入手は「先着順」と決まっており、時差のせいでドイツは常に一歩遅れを取ることになる。30タイトルしか受け取れない時もあるが、90タイトルを入手出来るような場合には喜びもひとしおである。

本来ドイツでは、図書資料はドイツの目録規則RAK(Regeln für die alphabetische Katalogisierung)に従って記述されていたが、2015年から徐々にRDAへの切り替えが行われた。ベルリン国立図書館は、北ドイツの複数の州で構成され、PICAデータ形式を適用する共同図書館連盟(Gemeinsamer Bibliotheksverbund, 略称GBV)の参加館である。GBVにRDAが導入されたのは2016年初頭のことである。英語の官庁出版物はGBVで目録化され、StaBiKatを通じて検索することが出来る。一方、日本語の官庁出版物は東アジア部のオンライン所蔵目録7に入力される。

官庁出版物の場合、登録作業と同時に受入業務も行われる。図書資料は資料ごとに登録番号と貸出用の電子番号が割り当てられ、資料の2か所に蔵書印が押される。ソフトカバーの資料は、まず製本に回され、その後書庫へ納められる。登録番号は書庫収納場所のアドレスであり、決まった形式で記述される。


画像7. 東アジア部オンライン蔵書目録の「特別図書館間貸借(ブルーローン)」リンク
画像7. 東アジア部オンライン蔵書目録の「特別図書館間貸借(ブルーローン)」リンク



(3) FIDアジア-CrossAsiaの利用

閉架式図書館であるベルリン国立図書館においては、全ての資料はオンライン蔵書目録を通じて請求する必要がある。近年の雑誌各号および蔵書構築部の最近の蔵書(ともに日本の官庁出版物含む)は、ポツダム通り館に置かれている。一方、東アジア部の所蔵する図書資料は官庁出版物も含め、全てがベルリン郊外にあるフリードリヒスハーゲンの書庫に収納されている。一日に一回、ポツダム通り館、ウンター・デン・リンデン館、フリードリヒスハーゲン書庫の全ての拠点を輸送車が回って資料の集配を行う。古書(1955年以前)や貴重書、あるいは取り扱い注意の資料は閲覧室での利用に限定されているが、その他の資料は登録したユーザーへの館外貸し出しが可能である。

さらに東アジア部の蔵書資料は、日本の官庁出版物も含めてドイツ全土へ貸し出される。東アジア部は2016年以降DFGの経済的支援を受け、いわゆる「専門情報サービス」(Fachinformationsdienste、略称FID)を管理しており、ハイデルベルク大学図書館および同大学南アジア研究所の協力の下、アジア地域の人文学、社会学、経済分野を包括するFIDアジア- CrossAsiaを運営している。

DFGの助成金によって、日本の雑誌および図書の幅広い収集に加え、電子リソースやデータベースのライセンス購入も行われる(例:日本の日刊新聞データベース)。ポータルサイトCrossAsia8の運用と開発もFIDアジアの業務である。日本の官庁出版物を含むアジア全ての資料およびそれに関するサービスはCrossAsiaに紐づけられている。主要なサービスの一つは東アジア諸言語資料のためのサービス、いわゆる「特別図書館間貸借(Blauer Leihverkehr = ブルーローン)」である。ドイツ国内には20か所近い日本学研究機関がある。サービス登録済み機関の所属メンバーは、CrossAsiaの提供するデータベースを使用する権利、あるいは「ブルーローン」を通して論文や図書を注文する権利を有している。

希望資料のリクエストを送ることも可能である。FIDアジアのディスカバリー・システム「CrossAsiaサーチ」には、「利用者主導型蔵書構築法(PDA)指標」として国立国会図書館のOPACのデータもAPI経由で検索インデックスに含まれている。「購入を提案する(Suggest for acquisition)」のボタンを通じて、資料の購入リクエストが行える。もちろんユーザーが官庁出版物の購入を提案することもできる。希望資料タイトルは購入後処理を経て、「ブルーローン」の枠内で利用することが可能となる。


画像8. クロスアジア検索結果と購入リクエストのリンク
画像8. クロスアジア検索結果と購入リクエストのリンク



雑誌記事の入手に関しては、国立国会図書館の尽力に負うところが大きい。例えば、当館未所蔵の日本語雑誌に掲載された論文が「ブルーローン」を通じて請求される場合、当館は希望資料を入手するために国立国会図書館遠隔複写サービスを利用する。FIDアジアが費用を負担し、国立国会図書館からの複写物がユーザーの所属機関に送られる。

3. 終わりに

ここまで見てきたように、国立国会図書館とベルリン国立図書館は多方面にわたる協力関係を築いてきた。国際交換を通じて当館が受け取る官庁出版物等の資料もさることながら、豊富な蔵書と優れた書誌データを有する国立国会図書館は、ドイツの日本学研究にとってなくてはならない存在である。


(Ursula Flache、やまもと ようこ)

  1. https://staatsbibliothek-berlin.de/en/
  2. https://staatsbibliothek-berlin.de/en/about-the-library/departments/east-asia-department/
  3. https://www.dfg.de/jp/index.jsp
  4. https://staatsbibliothek-berlin.de/en/about-the-library/departments/collection-building/
  5. https://www.zeitschriftendatenbank.de/startseite/
  6. http://stabikat.de/en/
  7. https://crossasia.stabikat.de
  8. http://crossasia.org

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