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びぶろす-Biblos

87号(令和2年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

9. 第105回全国図書館大会三重大会に参加して

支部外務省図書館 齊藤 浩

1. はじめに

令和元年11月21日及び22日、三重県津市において、日本図書館協会等主催の全国図書館大会1が、「令和の新時代を拓く図書館~常若(とこわか)のくにからの発信~」をテーマに開催されました。参加したプログラムの中で、22日の第9分科会(図書館の自由)及び第6分科会(図書館情報学教育)において、特に興味深かった点について報告します。

2. 第9分科会(図書館の自由)

本分科会は、「図書館利用のプライバシー保護」というテーマで、図書館の自由委員会の3名の委員から報告がありました。

基調報告として、西河内靖泰委員長から、捜査機関からの「照会」に応じた利用者情報の提供、図書館からの個人情報漏洩、問題となった本の絶版・回収・利用制限要請等、この1年の関連問題について、概略が報告されました。

報告の中で、捜査機関からの個人情報の提供要請への対応として、日本図書館協会(図書館の自由委員会)では、「令状」がなければ提供しないという見解であり、また、国立国会図書館においても、「令状」がなければ個人情報の提供は行われていないとの説明がありました。捜査機関からの情報提供要請についての法律上の解釈は難しいとのことでしたが、図書館での個人情報の取扱いの厳格さを改めて認識しました。

個別の報告として、佐藤眞一委員から「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」について、熊野清子副委員長から『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説』の増補についての報告がありました。いずれも、急速に進展している情報化社会の変化に対応させるための策定又は改訂であったと思われます。『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説』の改訂については、今後、ホームページで一般からの意見を求め、最終決定されるとのことです。

佐藤委員からは、利便性とセキュリティの問題についてもお話がありました。利便性を追求し、ネットワークを広げればセキュリティ上のリスクは高まります。また、セキュリティを高めればお金がかかります。どんなにセキュリティを高めてもリスクを「0」にすることはできないので、自館の業務にどの程度の利便性、セキュリティが必要なのかを考えてシステムを構築することと、その際の利用者への説明が重要であるとのことでした。どうしてもシステム上でのセキュリティの強化という点に意識が向きがちですが、限られた予算の中でシステムを構築・運用しなければならない現状において、業務内容を見直すという観点からのアプローチは参考になりました。

3. 第6分科会(図書館情報学教育)

第6分科会のテーマは、「図書館員のリカレント教育」でした。

はじめに、大谷康晴日本図書館協会図書館情報学教育部会長から、「図書館員へのリカレント教育の現状」について報告がありました。冒頭にリカレント教育についての説明があり、日本の場合は、本来のリカレント教育の意味に加え、働きながら学ぶ、心の豊かさや生きがいのために学ぶ、学校以外の場で学ぶ場合も含めて広範囲に捉えているとのことです。

中央教育審議会大学分科会でのリカレント教育推進に向けた方向性としては、120時間程度の「短期プログラム」、1年程度の「履修プログラム」、「修士・博士レベルのプログラム」と段階的なプログラムを作り、これらのプログラムに一貫性を持たせたり、前のプログラムで取得した単位を次のプログラムにいかしたりするといった連携を持たせる構想のようです。

図書館員のリカレント教育プログラムの現状は、短期プログラムにも至っていない単発的な研修や、社会人を対象とした大学院の高度なプログラムはあるが、中間的なプログラムがないとのことでした。

また、大学でリカレント教育を実施するに当たっては、通常の授業とは別のリカレント教育用講義プログラムを作成し、担当のコマ以外の時間に講義を行う必要があり、財政面でのバックアップが必ずしも期待できない等、担当教員の持ち出し部分が大きく困難なことが多いため、全体的に負担を減らす必要があるのではないかとのお話がありました。

次に、基調報告として、呑海沙織筑波大学教授から、「図書館情報専門職のリカレント教育:筑波大学を中心に」というテーマで報告がありました。同大学には、司書の資格を有し、図書館等での3年以上の実務経験者を対象とする「図書館経営管理コース」と、修了すると図書館情報学の修士の学位が授与される「図書館情報学キャリアアッププログラム」の2つのコースがあり、社会人を対象としている関係で、夜間及び土曜日に東京キャンパスで開講されているとのことでした。また、大学院が新年度から学位プログラム制2へ移行となることから、カリキュラムが変更となるとのお話もありました。

続いて、野口久美子八洲学園大学教授から、「学校図書館員のリカレント教育:八州学園大学の取り組み」というテーマで報告がありました。同大学は通信教育制であり、スクーリングについてもインターネットを通じて、自宅のPC上でライブ授業に参加できるため、通わずに受講できるという特色があるようです。特に、学校図書館職員の養成を重視したプログラムを開講しており、司書資格取得後の受講が推奨される「基礎プログラム」と、基礎プログラム修了後に受講する「応用プログラム」の2つから構成されているとのことでした。

伊東直登松本大学松商短期大学部教授からは、「リカレント教育取り組みの現状と課題―松本大学松商短期大学の事例から―」というテーマで報告がありました。同大学の特色としては、「司書資格取得コース」のほかに、旧課程で学んだ人が新課程を学ぶことができる「学び直しコース」と、年2回開催される「図書館公開講座」があり、公開講座の内容は、現場で働いている人たちが直面している問題を取り上げ、プログラムにすることを目標としているとのことでした。

各報告を拝聴し、現場へ反映できるプログラムを考えられている様子を知ることができ、大変嬉しく思いました。

報告後の質疑応答での先生方の発言の中で、強く印象に残ったことが2つあります。図書館は誰もが自由に利用できる施設であるため、社会の変化の影響を受けやすく、その変化に対応できるものでなければならないということと、自分が学んだ時代の知識は既に古くなっており、受講者だけでなく教える側も常に新しいものを学び続ける必要があるということです。現場にいる私たちは、これからの情報化社会に適応できる図書館であるための努力を続けなければならないことを強く実感しました。

また、私見ですが、私のように図書館と関係のない職種から人事異動で図書館勤務になった職員でも、短時間かつ簡易なプログラムで資格が取得でき、スキルアップしていけるような仕組みも考慮いただけると、現場の活性化につながるのではないかと思いました。例えば、司書資格を簡易なレベルから学位レベルまでグレード別に設定するということも考えられると思います。

4. おわりに

情報化社会の進展により、社会状況も大きく変化を遂げています。その中でも図書館は、私たちの生活に身近な施設である分、その影響を受けやすく、また、社会の変化に対応していく必要があるということを学びました。

そのためには、社会の変化に対応できる人材の養成・確保が必要であること、また、図書館員は専門性を高めるため学び続ける必要があることを再認識した次第です。

(さいとう ひろし)

  1. http://105th-mietaikai.info/
  2. 「学位プログラム」とは、学位のレベル(学士、修士、博士等)と分野に応じて、学生が達成すべき能力を明示し、従来の学部や研究科等の組織の枠を超えて、能力を修得させるように体系的に設計した教育プログラム。

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