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びぶろす-Biblos

87号(令和2年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

10. 市政専門図書館の建物と保存

国立国会図書館総務部管理課 齊藤 公治

1. はじめに

今回、令和元年度国立国会図書館行政・司法各部門支部図書館職員特別研修に参加させていただく機会を得て、短い時間ではありましたが、市政専門図書館1を見学することが出来ました。簡単ではありますが、実際に見て感じた事などを含めてまとめてみました。


画像:市政会館
市政会館



2. 市政専門図書館の建物

市政専門図書館は、都市問題や地方自治に関する専門図書館で、日比谷公園内の「市政会館2」の中にあります。建物は日比谷公会堂も一体で併設されていますが、施設の老朽化対策及び耐震化を目的とした大規模改修工事が予定され、現在は休館しており、残念ながら公会堂の中は見学することが出来ませんでした。なお建物は「景観まちづくり重要物件(千代田区)」、「BELCA賞(ロングライフ部門)」、「近代化産業遺産(経済産業省)」、「東京都選定歴史的建造物(東京都)」などの賞や指定を受け、歴史的建築物として評価されています。日本は欧米に比べて近代建築への評価や保存に対する関心が低いと言われていますが、このような素晴らしい評価制度があります。

3. 保存活用状況とその特徴

画像:外壁を覆うスクラッチタイル
外壁を覆うスクラッチタイル



建物は、霞が関界隈に現存する歴史的建築物の一つであり、設計は宮内省内匠寮御用掛から早稲田大学工学部教授となった建築家の佐藤功一です。竣工は昭和4(1929)年10月で、総理大臣官邸(現総理大臣公邸)も同年に竣工しています。外観はネオ・ゴシック様式の垂直のラインを強調したデザインで、建設当時、官公庁施設において大変流行したデザイン様式です。外壁を覆うスクラッチタイルは櫛で引いたような独特の材質感から重厚さが感じられ、色合いを含めて公園の緑と調和しています。このタイルは現在製造されておらず、当時の製法技術の衰退もあり復元は難しいもののようですが、既存の材料を出来るだけ使うなど、当時の外観を保つ改修がなされています。


画像:郵便受け箱
郵便受け箱



内部は、竣工当時から使われていたであろう設備や仕上げが保存・活用されておりましたのでいくつかご紹介します。まず、アメリカ製の郵便受け箱です。各階から投入した郵便物が最下階の郵便受け箱に集まるメールシュートのような仕組みのもので、ホールに設置されていました。同じものが国会議事堂や明治生命館にもあります。

次に屋内消火栓です。通常は不燃の鋼板製の箱の中に納めてあるものが一般的ですが、ガラスの扉の中にホースや吹き出し口が見えるように格納されています。昭和初期には屋内消火栓はまだ一般的ではなかったので、当時としては先進的な消火設備が設けられていたようです。


画像:屋内消火栓
屋内消火栓



図書館資料については、一部の開架式資料を除き、約13万冊が閉架式の書庫で保管されています。書架は東日本大震災での影響により木材を用いた補強がなされていますが、使いながら大切に保存されている大型の木製書架があり、真鍮製の落下防止柵と相まって、竣工当時の趣が感じられる貴重なものでした。


画像:市政専門図書館の書庫
市政専門図書館の書庫



そのほか、エントランスには鋼製の重厚な鎧戸が当時のまま使われており、エレベーターホールや廊下の壁仕上げは、大理石と漆喰のほか、淡い青色のタイルが美しく保存され、当時の設えを上手く保存しつつ照明などの新しい機能を合わせる工夫がされていました。また、屋内の階段室においても、優美な曲線を描く階段手すりが当時のまま保存されており、見応えのある空間となっています。


画像:鎧戸
鎧戸



4. おわりに

国土交通省の職員として、文部科学省庁舎(現文化庁庁舎)の保存改修の参考にするため、外壁に使われているタイルの改修状況を確認しようと15年ほど前に一度だけ立ち寄った以外は、気になりつつもなかなか内部へ入る機会がありませんでした。今回の見学はとても有意義であり、今後の様々な既存建物の保存や活用の検討に当たり、参考になる機会となりました。


画像:市政会館の内部の様子1

画像:市政会館の内部の様子2

画像:市政会館の内部の様子3

画像:市政会館の内部の様子4

市政会館の内部の様子



(さいとう こうじ)

  1. https://www.timr.or.jp/library/
  2. https://www.timr.or.jp/office/building.html

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