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びぶろす-Biblos

85・86合併号(令和元年10月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

9. 2019年度専門図書館協議会全国研究集会に参加して

支部会計検査院図書館 川野 雅恵

1.はじめに

令和元年6月21日に東京ウィメンズプラザにて、専門図書館協議会主催の2019年度全国研究集会が開催されました。今年度は開催日が1日間(昨年度は2日間)になりましたが、「専門図書館員/インフォプロのキャリアアップを目指して」をテーマに6つの分科会とミニシンポジウムなどが開かれ、とても内容の濃い研究集会になったと感じました。

本稿では私が参加しました第3・6分科会について感想を交えながら御紹介したいと思います。

2.第3分科会「著作権法の“いま”~現場で の事例研究を中心に~」

国立国会図書館の舟越瑞枝氏より著作権法の改正内容や複製、引用などをする際の注意点などについて具体例やクイズを交えながらお話しいただきました。この講演では大きく分けて以下の2点についての説明がありました。 

一つ目は保護期間の延長です。著作権の保護期間が原則著作者の死後(又は公表後)70年に変更されました。ただし2018年の法改正前に保護期間が満了している著作物は該当しません。つまり、原則として、1968(昭和43)年以降に著作者が亡くなった、又は公表された著作物が対象になります。

二つ目は権利制限規定が見直され、著作物の利用促進が図られたことです。例えば、AIによる深層学習やデジタル教科書への掲載、美術作品の展示や障害者の情報アクセス機会の場面などにおいて、権利者の許諾なしで著作物を利用できる場合があります。

次に著作物を「提供」する場合として複写サービスの説明を受けました。複写サービスは当館でも提供しているため、業務に直結する箇所が多くあり興味深い内容でした。特に、どのような図書館でも行えるわけではないということ、資料の種類(小説、楽譜集など)によって一著作物の範囲が異なるということを知り、サービスを提供する上できちんと把握しておくべき内容だと思いました。

さらに、著作物を「利用」する場合として引用を中心に留意点の指摘がありました。引用の場合には、必然性や明確区分性、主従関係が明確など様々な要件を満たした上で利用することができることを学びました。

3.第6分科会「デジタルアーカイブを巡る動向と構築事例」

第6分科会では2名の講師による講演を聴講しました。

はじめに、弁護士の数藤雅彦氏から「デジタルアーカイブ整備推進法案(仮称)の行方」という題で2018年5月にデジタル文化資産推進議員連盟の総会で公表された法案を基に、デジタルアーカイブの必要性についての報告がありました。法案では目的や定義、基本計画などを規定する一方で、所轄官庁が未定であり抽象的な箇所があるなど今後さらに議論が必要とされています。講師の数藤氏は、今後は「現場」に応じたルールメイクをしながら「実証例」を作ることなどが必要になると指摘していました。数藤氏によると、デジタルアーカイブが重視されるタイミングは文化財がトラブルに遭った時が多いそうです。2018年に火災にあったブラジル国立博物館では収蔵品の多くが失われましたが、現在はデジタル博物館として復旧しています。このお話を聞いて、自然災害の多い日本にとってデジタルアーカイブの構築は、図書館資料を次世代につなげるために大切なことだと感じました。

次に、帝国データバンク史料館(以下、「史料館」という。)の橋本陽氏から「帝国データバンク史料館におけるデジタルアーカイブの構築」という題で、実例の紹介がありました。史料館は百年史1の編纂を契機として、2007年に開館しました。信用調査業に関する唯一の企業博物館とのことです。2005年に収蔵品データベースを立ち上げ、社史資料をテキストやPDF、Word文書などとしてデジタル管理できるほか、登録データのキーワードによる検索が可能となっています。さらに、管理者がデータベースを登録する際に閲覧の可否や登録データの開示状況を制御できるようになっています。例えば、管理者権限のページで検索キーワードを設定することや保管場所の棚の番号などを登録することができます。しかし、デジタル資料が蓄積されていく中で、古いフォーマットの資料を開くことができないといったトラブルがあったそうです。橋本氏はデジタル資料の長期保存は世界的な課題であるといいます2。技術変化の中で時代遅れのものは見ることができなくなってしまいます。また、利用者のニーズに合わせること(デジタルでの閲覧など)も大切ということです。最後にそれらの対応策としてOAIS参照モデル3の紹介がありました。NASAにおいて、25年前のデータのファイルが開かず、読み出すことができなかったというデータ管理の反省を基に策定され、日本では国立国会図書館デジタルコレクションがそれを採用しているそうです。カナダにおいてもArchivematicaというシステムが開発されており、世界でデータの長期保存・利用に向けたデータベースが構築されつつあります。

4.終わりに

私は今年の4月から図書館業務を行うようになり、知識も経験も浅い中で今回の研究集会に参加しましたが、図書館員として知っておくべき多くのことを学びました。著作権法は解釈が難しい部分が多くある印象を受け、今後さらに深く学習したいと思います。また、デジタルアーカイブに関しては初めて聞いた言葉でしたが、図書館の可能性を感じることができました。議論が進み広く実現することができれば支部図書館の在り方も大きく変わるので、今後注目していきたいと思います。

最後になりましたが、本研究集会を開催してくださいました関係者の皆様に心から感謝申し上げます。

(かわの まさえ)

  1. 帝国データバンク創業百周年記念プロジェクト百年史編纂室編『帝国データバンク創業百年史』帝国データバンク, 2000 [国立国会図書館請求記号: DH22-G594]
  2. 一般社団法人 電子情報技術産業協会 「コンピュータ用テープによるデジタルデータの長期保存」 参照 https://home.jeita.or.jp/upload_file/20111221165535_MvQbSIymHi.pdf
  3. Open Archival Information Systemのこと。デジタル情報の長期保存システムの構築において有力な標準である。(ISO14721)

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