ホーム > 報告書・刊行物 > びぶろす > 83・84合併号(平成31年4月)

びぶろす-Biblos

83・84合併号(平成31年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

9. 【専門図書館紹介】
お茶の水女子大学附属図書館を見学して

支部総務省統計図書館 熊澤 建治

1.はじめに

お茶の水女子大学は、明治初期に創立された東京女子師範学校から始まり、昭和初期に現在の場所に移転してからでも既に80年を越える歴史を持つ女子大学である

同大学のお茶の水女子大学附属図書館(以下、「同館」という。)は、平成30年4月にリニューアルオープンした。平成30年度行政・司法各部門支部図書館職員特別研修として、11月13日に同館を訪問する機会を得た。

2.同館における取組

2.1 学生に対してのリテラシー教育

同館では、学生が自ら必要な情報を収集し、発信できるスキルを習得するために、大学図書館の情報・空間・人的サービスの活用方法を身に付けるリテラシー教育が行われている。

新入生必修授業「情報処理演習」内の1コマで図書館職員が講師を担当している「情報探索基礎講習」では、課題の設定から論文作成までのプロセスが提示され、その過程で必要となる文献・情報の調べ方、メディアの種類による特性、利用・引用する際の著作権法に関する注意等が教授されている。文献・情報の見方や資料の排架場所といった新入生向けの利用方法の単なる説明だけではなく、卒業後も一生役に立つ考え方の基本を伝えるものとして、大学の教育的役割の一翼を担っている。

2.2 学生協働

同館ではLiSAとLALAという学生協働の取組が行われている。

LiSA(Library Student Assistant)は、 学生が図書館での業務を体験することによりキャリア形成を行う図書館インターンシップのことである。教育の一環として設置された制度である。社会人基礎力を身に付けるため、単なるボランティアではなく、奨励金を大学が支払い、図書館業務の担い手として職員と共に基本的な図書館業務に携わるほか、ブログTwitter等を通して学生主体のPRを行い、学生の視点が新しいサービスに結び付けられるきっかけともなっている。

また、LALA(Library Academic Learning Adviser)は、学部生に対して学習支援業務を行う大学院生のことである。指導をするという立場ではなく、相談者が自分自身で問題を解決できるようなアドバイスをするという立場で支援を行っている。LALA自身の成長を図るのに加えて、教員と学生をつなぐ役割も期待されている。

2.3 リニューアルに当たって利用者サービスのために考慮したこと

工事期間は1年ほどであったため、利用者への影響を考慮して、全館閉館を最小限にした上で、増築・改築特設ホームページを設け進捗状況をきめ細かく発信する等、図書館利用に関する広報を丁寧に行った。また、館内設備等の設計に当たっては、予算とスペース上の制約の中で同館に本当に必要なものは何かを絞り込み、学生・教員を対象としたニーズ調査やLiSA、LALAとの家具等合同見学会等を行い、利用者の声を反映した。閲覧用の椅子机等も、学生も含めた意見で選定され、デザイン性にも優れたものが配置されている。

3.館内施設について

3.1 エントランス

同館は、学生証等の大学発行の身分証や利用者カードで入館ゲートを通って入館する。ゲート手前の出入り自由のウェルカムラウンジには、当日の新聞やLiSAが選書したキャリアカフェ文庫、除籍本の自由持ち帰りコーナー、テーマ展示(見学時は創設140周年記念展示)があり、気軽にくつろげるスペースとなっている。キャリアカフェ文庫には、書籍を紹介する若い感性の香るポップがつけられている。

家具類に目を向けると、アンティークな椅子等も現役で使用されていた。また、ベヒシュタイン社製のグランドピアノ(昭和初期に附属高校の生徒の保護者が寄付した世界的な名器)が現在でも演奏可能な状態で保存されており、月に一度は音楽表現コースの学生によるコンサートが開かれているとのことである。

ウェルカムラウンジ

3.2 1階コモンズフロア

総合カウンターがあるほか、オープンな空間のグローバルラーニングコモンズは、グループで話し合いながら学習に利用することができる。本研修の会場となったプレゼンテーションルームのほか、予約不要でグループミーティングに利用できる小部屋(ミニコモンズ)、学習支援が受けられるLALAデスク、PCサポーターのいるPCスクエア等もある。PCやホワイトボードの貸出も行っており、グループ学習やプレゼンテーション練習等、多目的に利用することができる。事務室との境がガラス張りとなっているのも、同館の目指す「開放された図書館」を体現していた。

1階 グローバルラーニングコモンズ

3.3 2階ラーニングフロア

書架と閲覧スペースを中心とした配置がなされている。今回のリニューアルで増築した部分には、広々とした机のアカデミックラーニングスペースが設けられた。リニューアル前は、試験前に座席が足りないとの声があったが、リニューアル後はかなり解消された。書架の通路幅を広げたことで、資料を取りやすくすると同時に災害時の安全性も向上した。とりわけ静寂を保つクワイエットラーニングルームや大学院生用研究スペース、また、以前のカウンターがあった場所の段差を活かしたリラックススペース等、利用目的に応じた多種多様な空間が用意されていた。

2階 リラックススペースから一般図書の書架を望む

3.4 全体を通して

全体的に明るく広々とした空間で、学生の利用に配慮した設備が随所に見られた。

比較的利用頻度の少ない図書類(1983年以前)は入館ゲートを通った後は自由に出入りできる1階のオープン書庫の集密書架に排架され、2階に排架された受入れの新しい図書類と別のブロックを形成していた。こうした工夫を通じて、利用頻度による実用性のみならず、インターネットがなかった時期の図書類と最近の図書類との対比を見ることにより、情報媒体としての書籍を時間軸で体感的に捉えることが可能となり、知識体系の歴史的な推移を実感できるのではないかと思った。

1階 オープン書庫

卒業生の著作、大学所属の教員の著作等を集めたコーナーが充実しており、図書館を利用する新入生が自然に同窓意識を持ち、大学生活に溶け込める工夫もされている。

4.おわりに

近年、文化資本が経済的価値を生み出すことに着目して、意匠や装置等デザインの持つ価値による効用が論じられることが多いようであるが、視点を変えて見ると、同館における利用者のために吟味されたデザインが、伝統の継承と尊重に基づいた細やかな心と合わさり、自由でありながら静謐な雰囲気を醸し出している姿には経済性では表しきれないものがあった。

最後に、懇切丁寧に説明してくださったお茶の水女子大学附属図書館の皆様に御礼を申し上げる。

(くまざわ けんじ)

このページの先頭へ