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びぶろす-Biblos

83・84合併号(平成31年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

7. 第104回全国図書館大会東京大会第19・20分科会に参加して ―明日から始める!士業連携と図書館―

東京大学附属図書館柏地区図書課 坂牧 一博

1.はじめに

日本図書館協会主催の第104回全国図書館大会の2日目、10月20日(土)に法情報をテーマとする第19・20分科会が開催されました。政策立案に必要なエビデンスとなる資料や、社会課題を解決するためにこれまで行われた政策に関する資料、またその理念や背景について記録された資料をどのように収集するか、法律・判例・逐条解説等の法情報を必要とする利用者からの問合せにどこまで回答するか、図書館職員がどのように法情報を身につけていくか等の知見を得るために、この分科会に参加しました。

2.第19・20分科会

本分科会では、『明日から始める!士業連携と図書館』というテーマで、調布市立図書館と東京都行政書士会、鎌倉市図書館、神奈川県行政書士会、鳥取県立図書館が実践している法情報セミナー等の事例報告がありました。その後に登壇者をパネリストとして質疑応答・意見交換が行われました。以下、順に報告します。


調布市立図書館では、2014年から、「まちの法律家」である行政書士を講師として、「暮らしに役立つ法務ミニセミナー」と題したセミナーを開催しています。専門家の解説により、テーマへの理解を深め、読書の敷居を低くし、図書館の所蔵資料の利用につなげる好循環が生まれています。

講師を引き受けている東京都行政書士会も、2009年に始まった裁判員制度の啓発普及のため、地域の情報機関である図書館と連携し、「あらゆる人、あらゆる世代に法情報を提供する」という活動を広げる場としてセミナーを活用できているとのことでした。


鎌倉市図書館からは、「暮らしのお役立ち講座」として、行政書士、税理士、医師、保健師、社会福祉士等と連携事業を行っている事例が報告されました。専門家と司書の連携は、事業の目的を共有しやすいので継続して実施できます。イベント参加者は、図書館資料やデータベースに触れ、専門の相談先や機関を知る機会を持つことができます。また、イベントに関わった関係団体は図書館の存在や活用のヒントを得ることができ、図書館は連携した先のニュースレター等の情報を得る機会となっています。


神奈川県下の図書館と連携している神奈川県行政書士会の「図書館セミナー」は、2010年から、セミナー終了後に相談会を行う形式で開催されています。開催に係る資料の準備、講師と相談人の派遣費用は神奈川県行政書士会が負担し、資料の印刷、場所の準備、利用者への周知は図書館が行っています。この取組により、地域住民の身近な法律専門家として行政書士の存在を知ってもらい、相談いただく機会にもなっているとのことでした。


鳥取県立図書館では、2006年から、裁判所、検察庁、弁護士会等の協力を得て外部委員会を設け、法律情報サービスを始めました。2008年には「困りごと解決支援」の要素を加え、トラブル解決に役立つ情報を1枚の用紙にまとめたパスファインダー「法情報検索マップ」(現:暮らしの困りごと解決ナビ)を作成し、図書館玄関前に陳列して提供しています。また、図書館内で、行政書士会や司法書士会と共催で定期的に無料相談会を実施したり、労働局や法テラス等と連携したセミナー・講座を開催したりすることにより、県民が法律や制度について、専門家に相談したり学んだりする機会を提供しています。図書館が所蔵資料だけでなく、支援団体・関係機関とつながることにより、専門家に相談できる窓口となり、相談者が問題解決できる場所になっています。


その後、質疑応答・意見交換が行われました。

質疑応答・意見交換の様子


Q.法律の基礎知識をどのように身につけているか?

A.図書『リーガルリサーチ』や関連団体のホームページで、法律の調べ方、法律トラブルの指南書を読む。利用者からの問合せに一緒に汗を流す。図書館の研修に参加する。グループで新刊書の選書を行う。イベントのために勉強する。過去のレファレンス記録を読む。専門家にお薦め図書を訊く。


Q.なぜ図書館が法情報のイベントやセミナーを開くのか?

A.イベントなどの開催を通して利用者の問題解決の役に立つ。地域の情報のハブとしての図書館、課題解決型図書館として、人・まち・社会を育む情報拠点となるためにも、専門家や専門団体との連携を図ることが求められている。図書館は、安全で公平で中立な場所であるので、問題解決を提案できる専門家へとつなぐ役割を担える。図書館の書棚に図書を並べておけばよい時代ではない。


Q.連携している行政書士の方は、図書館にどのような情報を求めているか?

A.図書館と連携をするときに困ったことは、どこが連携の窓口かが分からないこと。担当窓口名、電話番号、メールアドレスをホームページ等に掲載してあると分かりやすい。連携してイベントを開催するに当たって、どこまでの業務を分担できるか、会場の手配やお知らせを行ってくれるか否かについて、事前に取決めがあるとスムーズにイベントの準備が進められる。


Q.法情報のレファレンスで、利用者からの問合せにどう対応しているか?

A.相談者は、自分に有利な立場で判断例を選んで読んでしまうので、複数の図書を提供するなどの配慮をする。調べ物の回答を探すときは、対話をしながら、お互いに確認し合いながら、調べ物をする。

3.おわりに

今年の全国図書館大会のテーマは、『市民とともに成長する図書館―図書館専門職の力―』でした。図書館が、地域に対し、地域に住む人に対し、人の一生にわたる学びに対し、様々な利害関係者をつないで、困難や問題の解決に貢献する「図書館の力」を共有しました。士業連携をクローズアップしたこの分科会は、本大会のテーマに時宜を得た内容でした。

(さかまき かずひろ)

(本稿は、筆者が支部文部科学省図書館在籍中に執筆したものである。)

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