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びぶろす-Biblos

83・84合併号(平成31年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

4. 【特集:世界図書館情報会議(国際図書館連盟(IFLA)第84回年次大会)大会】
官庁出版物分科会オープンセッション等に参加して

国立国会図書館電子情報部電子情報流通課 井上 佐知子

1.はじめに

IFLAの分科会の一つである官庁出版物分科会で報告を行う機会を得て、2018年8月、マレーシアのクアラルンプール市内にあるクアラルンプールコンベンションセンター(Kuala Lumpur Convention Centre:KLCC)をメイン会場として開催されたIFLA2018に参加した。

クアラルンプールコンベンションセンター

本稿では、報告を行った官庁出版物分科会オープンセッション及び合わせて参加した他セッションの様子を紹介する。

2.官庁出版物分科会オープンセッション

8月29日(水)午前に官庁出版物分科会オープンセッション「Global E-Government: Trust, Transparency, and Transformation - Government Information and Official Publications」が開催された。本セッションはペーパー発表であり、事前にセッションのテーマに沿ったペーパーを事務局に提出したものがIFLAの公式ウェブサイト1で公表されるとともに、オープンセッションではその内容を要約したプレゼンテーションと質疑応答を行うという形式で進められた。

報告者は筆者を含めて4名であり、「国境なき図書館」からは市民のデジタルリテラシー向上のための取組、ナイジェリア大学からは電子政府の導入による汚職の抑制に関する調査、マダガスカル高等教育省からはオープンデータ化を通じた災害対応力向上の取組、と多岐にわたるテーマで報告があった。特に図書館がデジタルリテラシーの向上に役割を果たすべきだとする「国境なき図書館」の提言に関しては参加者の関心が高く、会場からの質問を受けて議論が深められた。

オープンセッションでの当館発表の様子

国立国会図書館からは国立国会図書館東日本大震災アーカイブ「ひなぎく」をテーマに、公開に至るまでの経緯と現状、他機関アーカイブとの連携等による震災資料の収集方法、及び今後の課題を中心に報告を行った。同アーカイブについては、公開年の2013年に開催されたIFLAシンガポール大会でも報告2を行っており、今回が2回目となる。震災直後早い段階から記録の収集と保存が試みられたことを評価する意見も頂き、会場からの質問を受けて、収集対象とする記録の範囲や当館を含めた国内の震災アーカイブの持続可能性についても詳しく紹介することができた。

3.他分科会のオープンセッション

大会期間には、各分科会の常任委員会や特定の参加者向けの特別セッションに加え、100を超えるオープンセッションが開催され自由に参加することができた。筆者が参加したいくつかのセッションの中で興味深かった話題について、簡単に御紹介したい。

8月27日(月)の午後に開かれた文献提供・資源共有分科会主催オープンセッションでは、デジタル化が進展した社会における資源共有の在り方の変容が取り上げられた。中でもカリフォルニア州立図書館から「Zip Book」として報告された取組3は、利用者が図書館の予算でオンライン書店から希望する本を購入し読了後に図書館に送付することにより、同じ本を図書館間貸出等で手配した場合のサービス所要時間や図書館から利用者への本の配送コストを削減するというものであった。当然ながら会場からは図書館員の重要な役割である選書を利用者の自由意思に委ねることの是非について質問がなされたが、報告者からは、この枠組みによる本の購入はあくまでコレクションの一部であること、実際購入された本も利用者の需要を反映したものでありその点を評価すべきであることを理由に、問題ないとの認識が示された。なお、購入を決め最初に書店から配送を受けた利用者が、利用後その本を図書館に返却しない問題も想定されるが、その確率は通常の貸出しの延滞と同程度とのことであった。

8月28日(火)の午前中に開かれた著作権及び法的諸問題(CLM)諮問委員会主催オープンセッションでは、21世紀の著作権に関する諸問題と題して、様々な図書館から著作権に関連する報告がなされた。ピッツバーグ大学からは、近隣の図書館の著作権問題を担当する職員のネットワークを作り、相互の相談や情報交換を進めているとの報告があり、また、中国の国家科学図書館からは、図書館員の著作権問題に関する意識を高めるべく、図書館員を対象に、著作権問題についての講習を実施しているとの報告があった。著作権に関する法制度や関連する課題は国によって様々であるが、図書館サービスを行う上で著作権問題への対処が避けて通れない課題であり、図書館員の研鑽による専門知識の涵養が求められている状況が伺われる。

4.おわりに

筆者にとって、今回が初のIFLA年次大会参加であり、開会式や閉会式、新規参加者向けに行われたセッションも興味深いものであった。大会には開催地の図書館員だけでなく多くの市民ボランティアが参加して会場整理等に当たっており、図書館が社会に果たす役割を市民に伝える一助にもなっていたように思われる。

新規参加者向けセッションの様子

今回のIFLAはアジア圏かつイスラム文化圏でもあるマレーシアでの開催ということもあり、近隣諸国やイスラム文化圏からの参加と思われる参加者も多く、多様性に富んだ会議であった。日常業務の中で見聞きする機会の少ないアジア諸国や中南米、アフリカの参加者からの報告や質問に触れ、各国の図書館とその課題について見聞を広める貴重な機会となった。

ペーパー及び発表原稿の準備に御協力頂いた多くの皆様に感謝申し上げる。

(いのうえ さちこ)

  1. IFLA Library中のSession 233 - Global E-Government: Trust, Transparency, and Transformation - Government Information and Official Publications
  2. 発表内容はIFLA Library中のNational Diet Library’s efforts to build the Great East Japan Earthquake Archive and its current status参照
  3. 詳細はIFLA Library掲載のペーパー“Zip Books”: Using the Online Marketplace to Build Stronger Collections and Higher Customer Satisfaction By Delivering Books Quicker at Lower Costを参照

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