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びぶろす-Biblos

83・84合併号(平成31年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

3. 【特集:世界図書館情報会議(国際図書館連盟(IFLA)第84回年次大会)大会】
議会のための図書館・調査サービス分科会主催の行事に参加して

国立国会図書館調査及び立法考査局総合調査室 小林 公夫

1.はじめに

国際図書館連盟(以下「IFLA」という。)には分野、地域等別の分科会(Section)が多数設けられており、その一つに「議会のための図書館・調査サービス分科会(Library and Research Services for Parliaments Section)」(以下「議会図書館分科会」という。)がある。国立国会図書館(以下「NDL」という。)には、NDLが国会議員に提供する立法調査サービスを担う組織として調査及び立法考査局(以下「局」という。)が置かれており、議会図書館分科会がIFLA年次大会(以下「年次大会」という。)に合わせて開催する様々な行事には、局の職員が例年参加している。

筆者は、2018年8月24日から30日まで開かれた年次大会(IFLA2018)に合わせてマレーシアのクアラルンプールで開催された議会図書館分科会の行事に参加する機会を得た。ここにその概要等を記し、読者の参考に供することとしたい。

IFLA年次大会登録エリア付近の看板(人気の撮影スポット)

2.プレコンファレンス

議会図書館分科会では、年次大会の前に、開催国の議会の施設を用いて数日間(近年では2~5日間)プレコンファレンスを開催するのが例となっている。ところが、マレーシアでは2018年5月に議会の下院議員総選挙が行われ、1957年の独立以来初の政権交代があったばかりであり、議会側の受入れ態勢が整わないとの理由で、年次大会の会期中に、年次大会の会場であるクアラルンプール・コンベンションセンター(Kuala Lumpur Convention Centre:KLCC)において、1日(8月24日)のみの開催となった。年次大会のプログラムに「調査の日(Research Day)」として記載されたこのプレコンファレンスには、世界中の国(地域を含む。以下同じ。)から100人を超える参加者があった。

テーマは、2018年の年次大会のテーマ「図書館の変革、社会の変革」に合わせた「変化する顧客ニーズに対応するための議会図書館・調査サービスの変革」であり、マレーシアの議会図書館によるプレゼンテーションとワークショップが実施された。

ワークショップにおいては、2017年から策定に向けての作業が開始された「議会のための図書館・調査サービスに係る倫理ガイダンス」が取り上げられた。現在作成中のガイダンス案として後述の7種類のチェックリストが配付され、プロジェクト・リーダーのイアン・ワット氏(欧州議会調査局)による報告の後、チェックリストごとにグループに分かれ、意見交換が行われた。チェックリストは、①任務、②運営上の自律性、③サービスへのアクセス、④資源配分、⑤実施方法、⑥スタッフ、⑦議員の権限・影響力の7種類計55項目あり、各項目について「非常に重要」・「有用」・「有用でない」・「実用的でない/高リスク」・「実施済み」のチェック欄が設けられていた。参加者は、全ての項目をチェックした上で、年次大会の会期中に提出することを求められた。このガイダンスは、今回の意見交換等の結果を踏まえた精査の上、2019年の完成が予定されている。

3.年次大会におけるセッション等

年次大会においては、議会図書館分科会が主催/共催する様々なセッション等に参加した。ここでは、オープンセッションとネットワーキング・イベントについて紹介する。

(1)オープンセッション

「議会に影響を及ぼすための図書館・調査サービスの変革」をテーマとして、8月28日午後に開催された。筆者を含む6人の報告者がそれぞれ10分程度の報告を行い、最後に聴衆に向けて2つの質問を提示し、その後、その質問について各報告者を囲んでのテーブル・ディスカッションが行われた。

筆者は、局が人材育成のために30年以上にわたって毎年実施している部内研修を取り上げ、インターネットの出現といった情報環境の変化及びこれに伴う国会議員のニーズの変化を背景として、2000年以降研修科目を拡充してきたことを報告した。

オープンセッションにおいて報告する筆者


なお、筆者以外の報告者の所属(報告内容)は、①カナダ議会図書館(同図書館が公開している議会情報データベースの大規模リニューアル)、②ブラジル連邦議会下院図書館(同図書館におけるサービス改善に向けたデザインシンキングの実践)、③フィリピン・デ・ラ・サール大学(同国下院図書館における法律情報データベースの構築事業)、④英国議会下院図書館(議会図書館におけるソーシャル・メディア活用の利点、課題等)、⑤欧州議会調査局(最新の情報フォーマットを用いた同局作成資料の発信)であった1

筆者の報告に係るテーブル・ディスカッションは、前述のワッツ氏を進行・調整役として、シンガポール、タイ、ミャンマー、ケニア、ナミビア、ザンビア等の議会図書館員等の参加を得て行われた。時間の都合で、国会議員のニーズの変化に対応するための人材育成に向けた各図書館等の取組についての意見交換が中心となった。局のように講師の大半を職員が務める研修を組織的に実施している例は見られなかった。

テーブル・ディスカッションの様子

(2) ネットワーキング・イベント

8月27日の午前・午後に、会議場外の通路に置かれたテーブル・セットにおいて実施されたイベントであり、参加者は、①調査・情報の成果物のデザイン、②ソーシャル・メディアの利用、③議会のための図書館・調査サービスの影響度の測定方法、④主題分類法の開発等、⑤国連の「2030アジェンダ2に議会図書館が貢献できる方法、という5つのテーマから任意の2つを選んでテーブル・ディスカッションに加わった。今年のプレコンファレンスの開催期間が1日にとどまったことから、議会の図書館・調査機関に共通の話題について自由に意見交換することを目的として実施された企画であり、非公式行事との位置付けであったが、筆者は③と②に参加し、興味深い意見を聞くことができた。

③においては、「サービスの影響度とは議会や議員の活動の成果として結実するものでなければならず、サービスに対するフィードバック(満足度等の反応)とは異なり、可視的ではなく、測定は困難である」との見解が示されたことが印象に残った。「議会図書館等は、議会の審議等を常にモニターしているわけにもゆかず、提供したサービスがどの程度影響を及ぼしたのかを客観的に測定することは困難ではないか」、「各議会図書館等が示すことができるのは提供したサービスに関する統計程度ではないか」、「将来的に人工知能(AI)が発達すれば測定が可能になるかもしれない」、等の意見が述べられた。

②においては、情報発信手段としてのソーシャル・メディアを利用する取組について国や機関によって相当程度の開きがあることが分かった。参加者の中で最も先進的な取組を行っていたのはブラジル連邦議会上院図書館であり、ソーシャル・メディアの利用についての方針が策定されており、複数の専任スタッフも配置されているということであった。ちなみに、NDLでもソーシャル・メディアを利用しているものの、局では今のところ利用していない。ソーシャル・メディアの利用の在り方についてはオープンセッションの報告でも取り上げられており、議会図書館等が直面している課題の一つと言える。

4.常任委員会の会議

8月24日と27日に議会図書館分科会の常任委員会の会議が開催された。筆者は、NDLの常任委員代理として、オブザーバー出席した。

議会図書館分科会の1年間の活動に関し、様々な報告や検討が行われた。その内容の詳細は議事録に譲り、ここでは2点記すにとどめる。

年度活動計画案の検討においては、2019年の策定を目指して作業が進められているIFLAグローバルビジョン(IFLA Global Vision)3への言及があった。その報告概要「図書館の注目すべき役割と目指すべき活動トップ10」に掲げられた事項のうち、10「図書館は若き専門家に、学習、開発及び主導の効果的な機会を提供しなければならない」が議会図書館分科会にとっては特に重要とされ、具体的な取組として、例えば40歳未満の調査員による会合を開いてはどうかといった意見が出された。

また、各地域の議会図書館ネットワークの活動報告の一環として、アジア太平洋議会図書館長協会(Association of Parliamentary Librarians of Asia and the Pacific: APLAP)の第12回大会の予告がなされた。この大会は、NDLをホスト館として2018年10月31日から11月2日まで東京で開催され、IFLA議会図書館分科会常任委員会議長のスティーブ・ワイズ氏(英国議会下院図書館)も報告者として参加した。

5.おわりに

8月25日に行われた年次大会の開会式には、マレーシアのマハティール首相によるビデオ・メッセージが寄せられた。その中で、同首相が情報の大切さを強調していたのが印象的であった。

また、様々な国の議会図書館等における取組を知る中で、日常業務ではなかなか考えが及ばないような議会サービスをめぐる課題を認識することができたことは、大きな収穫であった。

(こばやし きみお)

(本稿は、筆者が調査及び立法考査局政治議会調査室在籍中に執筆したものである。)

  1. 各報告者が用いた資料は、IFLA公式ウェブサイト議会図書館分科会のページPublicationsの中にあるIFLAPARL at the 84th IFLA World Library and Information Congress (WLIC), Kuala Lumpur, 2018に掲載されている。
  2. 「我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための2030アジェンダ」。17の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)及び169のターゲットから成る2030年までの国際的な開発目標で、2015年9月に採択され、2016年1月1日から施行された。2030アジェンダをめぐるIFLAの取組については、例えば武田和也「国連2030アジェンダと図書館:IFLAのツールキット」『カレントアウェアネス-E』No.297(E1763),2016.2.4を参照されたい。
  3. 現代の図書館が直面する課題は全世界の図書館が連携し包括的に対応することによってのみ克服可能との認識の下、全世界の図書館による議論を通じた将来ビジョンを策定する取組をいう(武田和也「議論を通じた将来ビジョン策定の取組“IFLA Global Vision”」『カレントアウェアネス-E』No.348(E2034), 2018.6.14)。2018年7月に公表された報告概要によれば、190か国の全ての世代・館種の図書館員が議論に参加しているという。

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