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83・84合併号(平成31年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

2. 【特集:世界図書館情報会議(国際図書館連盟(IFLA)第84回年次大会)大会】
国立国会図書館行政・司法各部門支部図書館制度の意義 ―行政・司法情報へのアクセスを確保するために

国立国会図書館総務部支部図書館・協力課 吉間 仁子

世界図書館情報会議(国際図書館連盟(IFLA)第84回年次大会)大会の政府機関図書館分科会のセッションのテーマは、「(国際連合の)持続可能な開発目標(SDGs)による情報に基づく政策を通じた社会変革」であった。2018年8月28日に開催された本分科会オープンセッションにおいて、支部図書館制度の概要と、それがSDGsの目標16と通底していることについて発表したので紹介する(なお、記事として読みやすいように、発表内容1を一部編集した)。

オープンセッションにおいて報告する筆者

1.はじめに

国立国会図書館は、日本の唯一の国立図書館であり、立法府に属する議会図書館でもある。国立国会図書館と支部図書館制度は、国立国会図書館法により、1948年に創設された。これらは、立法・行政・司法が正しい情報に基づいて行われるべきであるという、戦中の情報統制への反省によるものであった。

国立国会図書館法が定める、国立国会図書館のサービス対象は、(1)国会、(2)行政及び司法の各部門、(3)国民である。このうち(2)に対するサービスは、支部図書館制度を通じて行われている。この制度は、正しい情報に基づく立法・行政・司法の執行と、国民による行政・司法情報へのアクセスの確保を目的としたものである。これらの目的は、SDGsの目標16が目指す「有効で説明責任のある透明性の高い(公共)機関を発展させる」こと、「情報への公共アクセスを確保する」ことと共通する。

2.支部図書館制度の概要

国立国会図書館法は、国の行政府省庁及び最高裁判所に設置されている図書館を、その組織の図書館であるとともに、国立国会図書館(支部図書館制度においては「中央館」という。)の支部図書館として位置づけている。2018年現在では、33の支部図書館(分館6館を含む)がある。各館の職員は、それが所属する行政・司法各部門の職員が任命されており、総計173人に上る。合計して、3万点の図書と延べ48,000タイトルの逐次刊行物を所蔵している。

支部図書館の基本的な役割は、行政・司法各部門のそれぞれの所掌分野の専門図書館として、閲覧・貸出・レファレンス等の図書館サービスを提供することにより、その職員に対して業務遂行を支援することである。そのために、各支部図書館では、所掌する専門分野の資料の収集や整理を行っている。

支部図書館制度は、立法・行政・司法の三権にまたがる図書館ネットワークである。各支部図書館間、支部図書館と中央館との間で連携することによって、様々なサービス等に取り組んでいる。

3.納本制度や資料交換における支部図書館の役割

各支部図書館は、納本の窓口という重要な役割も担っており、官庁出版物の包括的な収集に貢献している。日本の納本制度の下、行政府省庁及び裁判所は、その刊行物を一定数、国立国会図書館に納本することが義務付けられている。中央館は、支部図書館を通じて又は関係職員が直接持参・郵送することで、納本資料を受領している。

また、支部図書館間の資料の寄贈・交換も行われており、支部図書館全体が、官庁出版物の巨大なコレクションを有するネットワークを形成している。

そのために、1週間に1回、連絡便と呼ばれる自動車が都心の支部図書館を巡回している。これにより、中央館は、支部図書館を通じて官庁出版物を収集し、支部図書館は、相互に資料を交換する。

4.その他のサービス

中央館は、国の唯一の国立図書館として、納本制度によって収集した民間の刊行物を含む全分野の資料を、支部図書館の利用に供している。また、支部図書館のために役に立つ電子ジャーナルや索引データベース等を提供している。各支部図書館は、相互貸借、複写及びレファレンス・サービスを通じて、中央館の膨大な情報資源を活用することができる。

さらに、中央館は、各支部図書館のOPACを横断検索するシステムを運用し、相互貸借に役立てている。また、中央館は、各支部図書館の運営について助言したり、研修を実施して人材育成を支援したりしている。

言うまでもなく、支部図書館を通じて収集された官庁出版物は、国立図書館である中央館において国民が知識と情報を得るためにも供されている。

また、支部図書館の中には、国民に公開している館もある。例えば、支部農林水産省図書館は、支部林野庁図書館と共同で運営して、一般利用者も入館しやすいよう、専用の入口を設けている。こうして、支部図書館は、専門的な主題の研究者等に情報へのアクセスを提供しながら、一方でその所属する行政府省庁及び裁判所の政策や取組を広報する役割も担っている。

5.SDGsの目標16との関係

1948年に開設された支部図書館制度は、本年で70周年を迎えた。支部図書館制度の責務は、70年間かけて経験を積み重ねながら遂行されてきた。これらの責務は、本セッションのテーマである、SDGsと通底する。中央館と支部図書館が積み重ねてきた経験は、本分科会にとって参考になると考える。

支部図書館制度の責務とSDGsの目標16は、次のような関係にある。

支部図書館は、行政府省庁及び裁判所の職員に必要かつ正確な情報を提供することにより、効果的な政策形成を支援することができる。これは、16.6「有効で説明責任のある透明性の高い(公共)機関の発展」の趣旨に合致する。

また、支部図書館は、官庁出版物の納本の窓口と他の支部図書館への交換・寄贈業務を担う。こうして収集された資料は、中央館及び一部の支部図書館を通じて、一般にも供されている。これは、16.10「情報への公共アクセスの確保」の趣旨に合致する。

6.今後の課題

日本では1990年代半ばから行政の情報化推進が始まり、現在の電子政府の取組に至っている。これは、より多くの情報が、一般向けにオンラインで公開され入手できるようになったということであり、それ自体は歓迎すべきことである。かつては官庁出版物を収集し、納本することが、支部図書館が自らの組織の公開情報を網羅的に把握することにつながっていた。しかし、現在では、各業務の担当部門が電子的に作成したデータを、図書館を通じることなくインターネット上で公開するため、支部図書館が必ずしも全てのデータを把握できているとは言えない状況となっている(こうした資料は納本制度から漏れてしまうこととなったが、中央館は国立図書館として、国等が発信するインターネット資料の制度的収集を行っている)。

一方で、支部図書館の親組織である行政府省庁及び裁判所においても、情報公開と透明性の確保、国民への情報アクセスの保障、知識のオープン化(オープンガバメント、オープンサイエンス等)、「根拠に基づく政策形成」(EBPM)等を視野に入れた活動の強化が期待されている。こうしたことは、SDGsの目標16の重要な要素と言える。

これまでの70年で支部図書館制度は重要な発展を遂げてきた。しかしながら、本セッションのテーマであるSDGsの目標を達成するためには、より機能的な制度を発展させる必要がある。支部図書館が各行政府省庁及び裁判所の中で、政策形成のために情報を集め、提供していくこと、そして、国民が行政・司法情報に持続的にアクセスできるようにすることは、ますます重要となっている。中央館と支部図書館制度の積み重ねてきた経験は、本セッションの議論に大いに参考になると確信する。

(よしま さとこ)

  1. プレゼン資料は、以下に掲載されている。
    http://www.ndl.go.jp/jp/international/news/2018/IFLA2018_3.pdf

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