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びぶろす-Biblos

81・82合併号(平成30年11月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

7. 【専門図書館紹介】
印刷博物館ライブラリー見学記~情報のお土産を持たせる 

防衛省大臣官房秘書課 大久保 幸合子

1.はじめに

平成30年3月2日、平成29年度行政・司法各部門支部図書館職員特別研修「印刷博物館ライブラリー見学」に参加した。

印刷博物館ライブラリー(以下「ライブラリー」)司書である阿部麻里氏から熱意のこもった業務説明と書庫案内を受け、資料収集や保管など、個々の業務に沿って具体的に知ることができた。

印刷博物館ライブラリーカウンター(左側が閲覧室)

2.印刷博物館

2.1 印刷博物館の概要

業務説明は、ライブラリーの存立基盤である博物館の概要や活動から始まった。

印刷博物館は、凸版印刷株式会社の創立100周年記念事業の一環として、2000年10月に開館した。印刷を総合的に扱った直営の博物館として、特に「印刷文化学」の確立を目指している。博物館の収蔵品やライブラリーの資料の購入費など博物館の運営費は同社が支出している。博物館で学芸員・司書として働いている職員は有資格者である。

2.2 印刷博物館の活動

地下1階で印刷の歴史が展示され、見学時は地上1階のP&Pギャラリーの企画展示で最近の印刷技術や造本・装丁が紹介されていた。

教育・普及活動として、地元の小学校や大学との連携授業が2001年から実施されている。凸版印刷株式会社は、明治30年代以降活版印刷を行っていたことから、地下1階の印刷工房で活版印刷の研究、体験の様子を外から見学ができる動態展示に加え、2005年から体験教室などの教育・普及活動が行われている。

そのほか、産業博物館である印刷博物館の樺山紘一館長が、「産業文化博物館コンソーシアム」を2008年に立ち上げ、トヨタ産業技術記念館などと連携している。また、ヴァチカン教皇庁図書館など海外の印刷関連文化施設と交流している。

3.ライブラリーの概要

ライブラリーは、印刷の専門図書館であり、博物館の活動を支えるための図書室である。業務を通じてその理念を見ることができる。1階のP&Pギャラリーの入口付近にあり、カウンターと閲覧室、情報コーナーと書庫、司書室から成る。職員1名、アルバイト2名で運営しており、主な業務は、資料の収集とOPACへの資料登録やレファレンス対応、資料の保管である。2018年3月末現在、利用可能な資料は約7万点で、閉架式である。主な利用者は、子供から研究者まで年齢や専門性に幅がある来館者と学芸員である。

3.1 資料の収集

ライブラリーの収集対象は、印刷文化全般にわたり、①印刷及びその関連分野、②社史、団体史、③小説等で印刷をモチーフにしているもの(例:『銀河鉄道の夜』など)のいずれかに関連していれば入手するようにしている。流通に乗らない他館の図録や紀要も印刷や出版文化に関連するものは、購入または寄贈により収集する。印刷見本、会社案内は時代ごとの印刷技術や流行がわかる資料として重要な資料である。

そのほか、印刷博物館に関する記事の掲載誌も収集している。

3.2 独自分類

図書は、独自分類を含めた4つの分類を併用している1。①印刷及び印刷関連分野にはS分類(ロンドンのSt Bride Library2の分類を参考に独自に作成した分類)、②印刷関連以外の分野には日本十進分類法(NDC)、③社史・団体史には分類記号Bと業種別の大分類の組合せ、④他館図録には分類記号Cと主催館の頭文字の組合せである。①は、一度決めた分類を動かすことや、新たに作ることもあり、例えば、造本・装丁の分野に装丁家の資料が増えてきたために、新たに「装丁家」の分類を設けた。②は、企画展や収蔵品研究に必要な①以外の資料が多くなったため、NDCを付与することになった。印刷博物館所蔵の駿河版銅活字関連資料として収集した、徳川家康を主題とする資料などはこの一例である。

3.3 詳細なOPAC登録

スタッフにとってのメインの業務であり、レファレンスのために目次を詳細に入力しているのが特徴である。OPACは外部向けと印刷博物館内向けがあり、内部向けには、その資料を印刷した会社名も入力し、検索できるようにしている。

3.4 複写サービスの制限とレファレンス

ライブラリーは運営母体が営利法人であるため、著作権法第31条1項を適用できない。したがって、外部からの複写依頼に対応できる資料は極めて少ない。来館された一般利用者に対して、OPACの目次情報や他の所蔵館を紹介するなど、「情報のお土産」を渡すことをスタッフ3人で徹底して、レファレンスに対応している。 

ライブラリーはレファレンス協同データベース事業にも参加している。なかなか入力に手が回らないが、同事業の事務局がTwitterなどで事例を紹介すると、ページビューが増える。数値での成果を示しにくい専門図書館にとって、ページビューの数値は、ライブラリーにとって運営母体に対して活動の成果を示す貴重な指標となる。

4.書庫見学

業務説明の後、書庫見学に移動した。この書庫は、保存のため、博物館の学芸員と司書以外は入室を制限している。

書庫内見学の様子

4.1 書庫内環境

紫外線による資料の劣化を防ぐため、LED照明が採用され、空調は地下1階の博物館収蔵庫と同じ条件で温湿度を24時間一定に保つよう管理している。書庫の2つの出入口にはそれぞれ2枚の扉を設けた風除室があり、比較的外気の影響は受けにくいが、梅雨の時期はやや湿度が高くなることもある。

4.2 博物館収蔵資料とライブラリー書庫資料の違い

収蔵庫と書庫のすみわけについてよく質問される。①情報が活用されるべき資料はライブラリーで、②展示して見せるべきものは収蔵庫で保管することにしている。

4.3 装備

所蔵資料は展示に出されたり、将来収蔵庫に移されたりする可能性がある。後世に長く残すためにも、装備の条件は①必要最小限、②可逆性があることの2点である。このため、表紙に接着するブックコートはかけない。資料に害を与えないと言われているポリプロピレンカバーを資料のサイズに合わせてかけ、その上から、タイトル・請求記号のシールを貼付している。

雑誌は展示資料になることを考慮し、製本しない方針を取っている。見せていただいた雑誌のうち、『印刷雑誌』はライブラリーと印刷図書館3と国立国会図書館の所蔵資料を合わせてようやく揃う稀少なもので、デジタル化を進めるようにしており、整備済のものは情報コーナーにある端末で閲覧できる。

4.4 保存・修復

装備同様、保存・修復もどちらかというと博物館資料的な方針で資料を扱っている。針サビの発生防止のためにステープラーの針を外して糸綴じにするなどの作業は、できる作業をライブラリーで行い、サビ除去や表紙外れなどの修復は、博物館として付き合いのある会社に依頼している。

戦前・戦中と戦後間もない時期のものは紙の劣化・酸性化が激しく、脱酸処理も考えている。劣化の進んだ資料は、資料の大きさに合わせた保存箱に収納している。

パンフレットやリーフレットなどの薄い資料、1枚もののチラシ状資料は、東京修復保存センター特注のダブルフラップフォルダに挟んで保護して立てた状態で保管している。

ダブルフラップフォルダ(ラベルは左下部のポケットに見えるように入れる)

4.5 除籍など

ライブラリーの資料を収蔵する電動式書架と壁面書架は、開館18年を経てほぼ満架状態である。除籍を考えざるを得ない時期であり、複本を保持する基準が課題とのことだった。

5.おわりに

帰り道、阿部氏の「学芸員の補佐は大事な仕事です。司書は、学芸員と異なり、展示という成果物はないし、収蔵品の構築をしているのも彼らですが、資料の収集(使いそうなものはあらかじめ入手する)、学芸員のレファレンスに対応する、などで展示に関わっているのです」との言葉を、所属機関の業務遂行のための情報収集と提供という、支部図書館の役割を重ねて反芻した。

貴重な時間を割いて、見学会の準備と御案内をしてくださった印刷博物館の皆様に心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。

(おおくぼ ゆりこ)

(本稿は、筆者が支部防衛省図書館在籍中に執筆したものである。)
  1. 山﨑美和 「独自分類の試み:印刷博物館ライブラリー事例報告」『専門図書館』(212), 2005, p.25-30. [国立国会図書館請求記号:Z21-3]
  2. 1895年11月に公開された図書館で、印刷、タイポグラフィー、製紙、グラフィックデザインに関する世界で最も重要なコレクションを持つ。
  3. 印刷図書館(東京都中央区新富町、昭和22年設立。平成29年に70周年を迎えた)は組合や業界の最先端に関する資料に強く、印刷博物館ライブラリーは印刷の歴史に強いのが特徴とのこと。

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