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図書館の変革、社会の変革―世界図書館・情報会議(第84回IFLA大会)

NDL書誌情報ニュースレター

NDL書誌情報ニュースレター2018年4号(通号47号)

【はじめに】

2018年8月24日から30日まで、世界図書館・情報会議(WLIC):第84回国際図書館連盟(IFLA)年次大会が、マレーシアのクアラルンプールで開催されました[1]。今回の会議には、約110か国から合計3,500名以上の参加者があり、国立国会図書館(NDL)からは、12名が参加しました。筆者は、2017年8月から目録分科会常任委員会の常任委員として活動しています。今回は、目録分科会常任委員会への出席と関連分科会やオープンセッションにおける情報収集を目的として参加しました。

以下、目録分科会の常任委員会や筆者が参加したセッションを中心に報告します。


WLIC会場(Kuala Lumpur Convention Centre)

1. IFLA UBC Sections

IFLAには五つの部会(Division)があり、書誌・目録関連の分科会(Section)は、おもに図書館サービス部会(Division III)に所属しています。その中でも、目録分科会、書誌分科会および主題分析・アクセス分科会は、“UBC(Universal Bibliographic Control) Sections”とよばれ、各分科会の活動が密接に関わっています。近年は、WLICでオープンセッション等を合同で開催したり、書誌調整や目録作成等に関する動向をテーマとした“IFLA Metadata Newsletter”を共同で刊行したりしています。また、各分科会の常任委員がオブザーバとして他の分科会に参加する等、人的交流も活発で、“UBC sister Sections”とよばれることもあります。

2018年10月現在、NDLからは、これらの分科会の委員として、筆者(目録分科会常任委員)のほか、書誌分科会に常任委員、主題分析・アクセス分科会に連絡委員がそれぞれ1名ずつ参加しています。常任委員は、WLICへの参加だけでなく、メールやオンライン会議で日常的にコミュニケーションをとりあいながら、さまざまな活動を行っています[2]

2. 目録分科会常任委員会

目録分科会では、書誌データや典拠データに関する基準やモデル、ガイドライン、目録規則等の策定と維持管理を行っています。常任委員会は、現在、常任委員20名および連絡委員3名で構成されています。日頃から活発に活動している分科会のため、その活動内容に関心を持つ人も多く、WLIC期間中に開催された2回の常任委員会には、オブザーバをあわせてそれぞれ45名ほどの参加がありました。

会議では、分科会の一年の活動状況やワーキンググループからの取組み状況等について報告がありました。以下、おもなトピックを紹介します。


目録分科会常任委員会

(1) 「国際目録原則覚書」(Statement of International Cataloguing Principles; ICP)2018年改訂版について

ICP2018年改訂版が、8月23日付けで常任委員会の上位組織であるIFLA専門委員会により承認されました。今回の改訂のおもな目的は、昨年のWLICで承認された書誌レコードの機能要件(FRBR)等の後継にあたるIFLA LRM(Library Reference Model)で用いられる概念や用語の定義を反映させることでした。

前回の改訂は、2009年に初版が公開されて以来の大規模なものとなり、その承認プロセスに非常に時間がかかりました。一方、今回の改訂については、IFLA LRMとの単なる調和(harmonization)のための柔軟な改訂(soft revision)とみなされたことにより、目録分科会等でのレビュー作業を経る前に、上位組織のIFLA専門委員会で承認されるという異例の運びとなりました。このため、公開に先立ち目録分科会で改めてレビューを行うことになりました。

(2) IFLA UBC Standardsの位置づけの明確化

IFLAによるさまざまな基準・標準類は、IFLA Standardsとよばれ、これらの策定・改訂は“IFLA Standards Procedures Manual”(以下、マニュアルといいます。)に基づき、一定の承認プロセスを経る必要があります。

このマニュアルの維持管理は、標準委員会が担当しています。IFLA Standardsは、大きく「規範文書」と「参考・技術文書」の二種類に分けられ、それぞれどのような基準・標準類が該当するか、そしてどのような策定・改訂プロセスが必要か定義されています。たとえば、前者には「概念モデル」、後者には「ガイドライン」や「ベストプラクティス」が該当します。

目録分科会では、「IFLA戦略計画2016-2021」に基づき、IFLA LRMやICPといった、書誌や目録に関する基準・標準類(IFLA UBC Standards)の定義や位置づけを整理しています。現在のマニュアルでは、目録分科会が維持管理する基準・標準類について、その位置づけや承認プロセスが曖昧な場合があります。前述のICP改訂のように、目録委員会が想定していた手順とは異なる形で承認されてしまうような事例も実際に生じています。

目録分科会では、このような問題を解決するため、マニュアルの改訂を検討してきました。今回、議長のMiriam Björkhem氏から標準委員会に改訂案が提出され、WLIC期間中に承認されました。今後、マニュアルに追加する具体的な基準・標準類の事例を目録分科会で検討し、標準委員会に提案する予定です。

そのほか、議長から、2019年8月から任期が始まる常任委員の新規募集について案内がありました。常任委員の任期は4年であり、2年ごとに半数の任期が満了し、改選が行われます。目録分科会では、例年、立候補者が定員を超え、選挙になることが多いです。筆者も選挙を経て常任委員になりました。来年は、現在の議長やその他の分科会の運営に携わる主要な役職の委員たちも任期を終えるため、これらの役職への立候補について検討するように、既存の委員に対して呼びかけがありました。

3. MulDiCat(Multilingual Dictionary of Cataloguing Terms and Concepts)

MulDiCatは、IFLAが維持管理している図書館の目録作成に関する用語や概念等を収録した多言語辞典です。日本語を含む26か国語が収録されています。1998年にプロジェクトが開始され、2010年9月にドラフトが公開されました。最新版は、2012年8月に公開されています。

現在、これ以降に策定または改訂されたIFLA LRMやICP等における用語や概念の定義の追加・修正作業を行っています。筆者もこの編集グループに所属しており、担当者の打合せに参加しました。


MulDiCat編集グループ打合せ(WLIC会場内のカフェにて)

グループは約10名で構成され、リーダーは、フランス国立図書館のMélanie Roche氏です。アジア圏で参加しているのは、筆者のみです。普段は、メールやオンライン会議で連絡をとりながら、作業を進めています。

作業は大きく二段階に分かれています。まず、マスターとなる英語版の更新作業です。つぎに、各言語への翻訳作業を行います。現在は、第一段階として英語版に収録する用語の更新作業を行っています。IFLA LRM等を対象とした新たな基準・標準類の用語の追加作業や定義の更新作業はすでに完了していましたが、ICP2018年改訂版の反映作業が必要になりました。

前述のとおり、ICP2018年改訂版がIFLA専門委員会で迅速に承認されたため、今後のスケジュールや作業分担についての調整が急遽必要になりました。そのため、会議室ではなく、会場内のカフェでの打合せとなりました。

打合せでは、今後のオンライン会議の日程調整やMulDiCatの位置づけについても検討しました。MulDiCatは、目録に関する用語や概念の定義集として、IFLA UBC Standardsの策定・改訂、そして翻訳作業の際に参照されるべきものと考えられています。そのため、MulDiCatの改訂が他の基準・標準類に及ぼす影響は、非常に大きいといえます。

そこで、前述のIFLA Standardsのマニュアルの改訂にあたり、IFLA UBC Standardsを策定・改訂する際にはMulDicatを参照することを必須とする旨を盛り込むよう、標準委員会に提案する予定です。

4. その他のおもな常任委員会、オープンセッション等

(1) 書誌分科会常任委員会(オブザーバ参加)

書誌分科会では、全国書誌機関のためのコモンプラクティス(Common Practice for National Bibliographic Agencies)の改訂作業を進めています。現行の「こうあるべき」という規範を示すベストプラクティスから、より専門的な文書(professional document)としてのコモンプラクティスに名称を変更し、その位置づけを見直すことが、IFLA専門委員会により承認されたという報告がありました。改訂作業は、2019年早期の公開を目標に進められる予定です。

また、各国の全国書誌の作成・提供状況が一覧できる「全国書誌登録簿」(National Bibliographic Register)の更新作業も、引き続き行われる予定です。

(2) 主題分析・アクセス分科会常任委員会(オブザーバ参加)

ジャンル・形式用語のワーキンググループから、2017年11月に、国立図書館におけるジャンル・形式用語の実務に関する調査報告書が公開されたことが報告されました[3]。今後、関連する既存の語彙やシソーラス、参考情報等について調査し、それぞれリストを作成する予定です。

また、委員から索引の自動化に関するワーキンググループの設置が提案されました。

(3) 目録分科会、書誌分科会等共催オープンディスカッション

目録分科会、書誌分科会、主題分析・アクセス分科会および情報技術分科会の共催により、「機械時代のメタデータスペシャリスト(Metadata specialists in the machine age)」をテーマとしたイベントが行われました。当初はオープンセッションが企画されていましたが、会場等の調整により、オープンセッションとしての開催は見送られました。代わりに、参加者全員によるディスカッションが行われました。

IFLA LRM等の新たなモデルや基準等の登場、メタデータ付与作業の自動化の拡大、IT専門家やシステムベンダー、博物館・美術館等の関連部門との連携、そしてLinked Data等の情報環境の進展等、目録・書誌の関連コミュニティは、現在進行形でさまざまなパラダイムシフトを経験しているといえます。

その中で、従来の「カタロガー(目録作成者)」は「メタデータスペシャリスト」として、図書館におけるその専門性を改めて位置づける必要があり、これを脅威ととらえるか、好機ととらえるか、また、今後どのような条件が「メタデータスペシャリスト」に求められるのかといった問題提起が、フロア全体に対して行われました。

それぞれの課題に対し、まずは周囲の参加者間で所属機関の状況を共有したり、その解決方法について議論したりしました。その後、議論した内容をフロア全体で共有しました。すべての課題に対する結論が導き出されたわけではありませんが、来年のWLICで開催が予定されているサテライトミーティングの検討材料となるような、充実した時間となりました。

(4) その他のオープンセッション

以下のオープンセッション(ペーパー発表と質疑応答)等に参加しました。オープンセッションの発表やディスカッションでは、ウェブやデジタルといった情報環境・技術環境の変化に伴う全国書誌や目録サービスの見直し、目録作成者に求められる役割の変化等、大会のテーマである「図書館の変革、社会の変革(Transform Libraries, Transform Societies)」に沿ったものが多く見られました。

  • 「市民がよりよい情報を得るためのデータモデルおよびフォーマットの再考」(目録分科会主催)
  • 「全国書誌:情報へのアクセスへの着実な進展」(書誌分科会主催)
  • 「最近承認されたIFLA Standardsの影響」(標準委員会主催)
  • IFLAメタデータレポート(目録分科会、書誌分科会および主題分析・アクセス分科会が合同で開催。各分科会や関連プロジェクト等の活動内容、目録や書誌に関する最新動向の共有を目的とした報告会。)


目録分科会主催オープンセッション

【おわりに】

2019年のWLICは、“Libraries: dialogue for change”をテーマに、ギリシャのアテネで開催されます。今年の“transform”に続き、次回のテーマにも“change”という言葉が含まれており、図書館自体の変化、そして、社会の変化を促進させるための図書館の機能・役割の見直しが期待されていると感じられます。

筆者は、今回初めてWLICに参加しました。分科会では、具体的な議論に加わることができ、日頃のメールだけでなく、“face to face”によるコミュニケーションの重要性を実感しました。

IFLAの常任委員は、WLICへの参加だけでなく、基準・標準類の維持管理や分科会運営に関する提案等に、日常的に取り組む必要があります。その中で、年1回のWLICにおける分科会の常任委員会への参加は重要であり、また果たすべき義務でもあります。常任委員会は意思決定の場であり、議決権は常任委員本人のみが有しています。こうした点からも常任委員として関与することの責任の重さを実感しています。

これからも、目録・書誌コミュニティへの貢献のために、そして国際的なNDLのプレゼンス向上のために、常任委員としての責任を果たせるように努めていきたいと思います。


宿泊したホテルのエレベータホールにて

柴田 洋子
(しばた ようこ 収集・書誌調整課)

[1] 今回の大会プログラムや発表ペーパー等は、以下に掲載されています。
https://2018.ifla.org/, (参照 2018-10-05).
http://library.ifla.org/view/conferences/2018/, (参照 2018-10-05).
また、2017年のIFLA年次大会の参加報告については、以下をご覧ください。
津田深雪. 世界図書館・情報会議(第83回IFLA大会)とVIAF評議会会議参加報告. NDL書誌情報ニュースレター. 2017年4号(通号43号).
https://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2017_4/article_01.html, (参照 2018-10-05).

[2] 常任委員は、任期4年(最長2期8年)で、原則として選挙によって選ばれます。WLIC期間内に開催される常任委員会の会合に参加すること、常任委員会やワーキンググループ等の活動に参加すること等が責務としてあげられています。また、各分科会の主題分野の専門家としてガイドラインや標準等の策定に貢献し、WLICにおけるオープンセッション等のイベントの企画・運営等に積極的に参画することが期待されています。一方、連絡委員は、任期は2年(最長2期4年)であり、選挙はなく、各分科会の議長の決定により任命されます。WLICの常任委員会に地理的または経済的な理由により参加が難しい場合でも、日常的なメール等による活動に貢献できる人が対象です。常任委員会に参加できても、議事の投票権を持たない点が常任委員との大きな違いです。

[3] 報告書の概要は、下記をご覧ください。
鎌倉知美. 国立図書館におけるジャンル・形式用語の実務に関する調査. カレントアウェアネス-E. No.343, 2018.03.08.
http://current.ndl.go.jp/e2007, (参照 2018-10-05).


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NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)

ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2018年4号(通号47号) 2018年12月26日発行

編集 国立国会図書館収集書誌部
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