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第51回科学技術関係資料整備審議会議事録

日時:
平成22年2月4日(木)午後2時00分から午後4時05分まで
場所:
国立国会図書館 東京本館総務課第一会議室
出席者:
科学技術関係資料整備審議会委員 10名
有川節夫委員長、相川直樹委員、岡﨑俊雄委員、北澤宏一委員、倉田敬子委員、坂内正夫委員、塚原修一委員、土屋俊委員、時実象一委員、中村利雄委員
(喜連川優委員、倉持隆雄委員は欠席。)
館側出席者 14名
館長、副館長、総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、資料提供部長、主題情報部長、関西館長、国際子ども図書館長、総務部企画課長、同部企画課電子情報企画室長、同部会計課長、主題情報部副部長、同部科学技術・経済課長
会議次第:
1. 開会
2. 国立国会図書館長挨拶
3. 新委員紹介
4. 幹事異動等紹介
5. 委員長代理の選任
6. 報告及び懇談
 (1)平成21年度における科学技術情報整備に係る現況及び関連事業の進捗状況について
 (2)国立国会図書館における電子情報の整備に関する主な動き
 (3)国立国会図書館第二期科学技術情報整備基本計画の4年間の到達点と課題
 (4)懇談
7. 閉会
配布資料:
第51回科学技術関係資料整備審議会 会議次第
科学技術関係資料整備審議会委員および幹事名簿(平成22年2月4日)
第51回科学技術関係資料整備審議会 座席表
科学技術関係資料整備審議会規則
科学技術関係資料整備審議会議事規則

(報告資料)
1. 平成21年度における科学技術情報整備に係る現況及び関連事業の進捗状況について(PDF: 598KB)
2-1. 改正国立国会図書館法によるインターネット資料の収集について(PDF: 250KB)
2-2. 国立国会図書館所蔵資料のデジタル化について(PDF: 508KB)
3. 第二期科学技術情報整備基本計画(平成18年度~平成22年度)‐4年間の到達点と課題‐(PDF: 428KB)

(参考資料)
・第二期科学技術情報整備基本計画
・資料収集方針書(2009)

議事録:
1 開会
有川委員長
(以下、委員長)
ただいまから第51回科学技術関係資料整備審議会を開催します。開会にあたり国立国会図書館(以下、NDL)の長尾館長から挨拶があります。
 
2 館長挨拶
長尾館長: 本日は、お忙しいところお集まりいただき、誠にありがとうございます。今日、科学技術情報や学術情報がどんどん電子化され、当審議会でも議論いただいてきましたが、私どもも電子化については様々な努力をしてきております。
昨年7月はじめに国立国会図書館法が改正され、インターネット情報を収集できるようになりました。後で詳しく報告致しますが、国、地方公共団体、国公立大学、独立行政法人等の公的な組織・機関のウェブサイトを許諾なく集めることができる、といった改正です。現在、準備を進めており、今年4月から本格的に収集を開始することとなっています。最初の間は慣れないこともあるのでどこまでスムーズにいくのか分かりませんが、できるだけ収集の頻度を高くして行いたいと思っています。
昨年6月には著作権法が改正され、NDLにおいては、新着も含めたすべての書物について、保存目的のためのデジタル化を許諾なくできることが明確になりました。それに基づき、昨年、補正予算127億円をいただきました。今年度と来年度の2年間にわたり、デジタル化をするための予算です。とても全体には足りないのですが、127億円で90万冊処理できる見込みです。現在15万冊の資料がデジタル化されているので、合わせてだいたい105万冊になります。デジタル化すべき資料は図書が数百万冊、雑誌も数百万冊はあるので前途ほど遠し、といったところですが、とにかく頑張って行うということで、出版年の古いものから順次始めています。図書は1968年頃までに出版されたもの、雑誌は戦前のもの、博士論文については一部をデジタル化する予定ですが、古いものにはガリ版刷りのような資料もあるため、どこまでデジタル化できるかは課題の一つと思っています。
また、紙の出版物にはならずに、デジタルだけで出版されているものがどんどん増えてきています。これらも国の文化活動の一つですから、NDLが集める必要があるとの認識に立ち、現在、納本制度審議会で電子納本の在り方について審議中です。今年度末の中間報告後、なるべく早く答申を頂戴し、それに基づいて制度設計を行い、来年の通常国会に国立国会図書館法の改正案が提出できればベストと考えています。なかなか難しい問題もありますが、頑張っていきたいと思っております。
電子ジャーナルなど科学技術情報の資料費の高騰をどう解決していくかについては、私どもに依然としてよいアイデアがありません。国立情報学研究所(以下、NII)・科学技術振興機構(以下、JST)との定期的な会合の場で、少しずつ協議しておりますが、なかなか抜本的な解決策がなく、私どもも苦しんでいます。皆さま方のお知恵を拝借して少しでもよい方向に持っていければと思っているところです。
検索システムを含む図書館システムが古くなり、現状にそぐわないという問題もあります。OPAC検索が不便だとの声もあり、現在、新しい図書館システム・検索システムを設計中です。これから発注をし、スペックを変えていくという段階で、平成24年1月の稼働を目指しています。次期システムでは、日本中の主要な図書館の目録が統合的に検索できる検索システム、つまり、利用者が自分の欲しい資料がどこの図書館にあるかを知ることができるようにするほか、各種の検索がだれでも容易に行えるように、いろいろ工夫を盛り込んだ設計を想定しています。
最後に、国の科学技術基本計画についてですが、現在の第3期が来年度で終わるため、次期の第4期を1年かけて作る段階にあると認識しています。それがどういう形に作られるかということと、NDLの科学技術情報のサービス体制をどうしていくかということとは密接に関わりますので、大変注目をしています。私どもとしては、これからの科学技術基本計画は、課題解決型でやっていくのがよいのではないかと、相澤先生(総合科学技術会議議員)はじめ関係者の方々に申し上げているところです。課題解決型を積極的に進めていくことになれば、学術情報に関するインフラストラクチャをしっかり作らないとだめだ、つまり、知識インフラを日本中で共有できるよう整備することについて、総合科学技術会議で取り上げて真剣に検討していただきたい、知識インフラ整備においてNDLは応分の役割を果たすつもりである、ということを申し上げています。NDLには第二期科学技術情報整備基本計画というものがあり、これも来年度で終わるので、ちょうど総合科学技術会議と同じフェーズになります。次の5年間において、私どもはどの点に力を入れていくべきか、計画を組み立てていかなければなりません。総合科学技術会議の考え方とパラレルに検討していくことになるのではないかと思っており、ぜひ、皆様のお知恵をいただきたいと考えています。ほかにも課題は様々ありますが、この審議会に関する重要な点としては、今申し上げたとおりです。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
3 新委員紹介
委員長: ここで委員の退任と就任を報告します。当審議会の委員長代理を務められた名和小太郎情報セキュリティ大学大学院特別研究員が勇退されました。また、国際医学情報センター理事長の交代により、朝倉均委員が退任され、相川直樹氏が委員に就任されました。そして、喜連川優東京大学生産技術研究所教授、中村利雄日本商工会議所専務理事が新たに委員に就任されております。本日は喜連川委員は欠席ですので、相川委員と中村委員から一言ずつお言葉を頂戴できれば幸いです。
相川委員: 相川です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
中村委員: 中村です。よろしくお願いします。一言だけ自己紹介させていただきます。私は日本商工会議所の専務理事ですが、東京商工会議所の専務理事でもあります。東京商工会議所は、唯一商工会議所で図書館をもっており、その関係で専門図書館協議会の理事長も務めています。専門図書館協議会は各企業の図書館が加入しており、私は理事長になって2年ちょっとですが、そこでもデジタル化の話がでています。図書館をもっていることの負担が大きいものですから、デジタル化を進めていくことは重要です。特に東京商工会議所は丸の内にありますので、土地の有効活用といったことなどもあります。いろいろ考えている最中に委員委嘱の話があり、大変勉強になりますので参加させていただきました。どうぞよろしくお願いします。
委員長: 相川委員、よろしければ、少し自己紹介をお願いします。
相川委員: 昨年3月に慶應義塾大学医学部を退職いたしまして、国際医学情報センターに移りました。大学時代は、北里医学図書館の館長をしていたこともあり、先ほど長尾館長のお話にありました電子ジャーナル価格の高騰にも大変苦しんでおりました。これからいろいろ教えていただければと思います。よろしくお願いします。
 
4 幹事異動等紹介
委員長: 国立国会図書館のほうにも異動があったようですので、岡村主題情報部長から紹介をお願いします。
岡村主題
情報部長:
NDL内の人事異動に伴いまして、調査及び立法考査局長が山口幹事に、関西館長が中井幹事に交替いたしました。また、今回から幹事に齋藤国際子ども図書館長が加わっております。
 
5 委員長代理の選任
委員長: 先ほど申し上げた名和委員のご退任により、議事規則にある、委員長が不在の場合に審議会を円滑に運営するために置く委員長代理が不在の状況にあります。委員長代理を倉田先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
一同: 異議なし。
委員長: それでは倉田先生、よろしくお願いいたします。
(倉田委員、諾。)
 
6 報告及び懇談
委員長: 「報告」に移ります。NDLから、「平成21年度における科学技術情報整備に係る現況及び関連事業の進捗状況について」の報告をお願いします。
岡村主題
情報部長:
報告いたします。
(報告略。報告資料1「平成21年度における科学技術情報整備に係る現況及び関連事業の進捗状況について」参照。)
委員長: ご質問等については、NDL側からの報告がすべて済んでから一括して受けたいと思います。続いて「国立国会図書館における電子情報の整備に関する主な動き」について、報告をお願いします。
岡村主題
情報部長:
報告いたします。
(報告略。報告資料2-1「改正国立国会図書館法によるインターネット資料の収集について」及び2-2「国立国会図書館所蔵資料のデジタル化について」参照。)
委員長: 先ほどの長尾館長の挨拶の最後のほうにありましたが、NDLの第二期科学技術情報整備基本計画は、次年度が最終年度となっています。「国立国会図書館第二期科学技術情報整備基本計画の4年間の到達点と課題」についての報告をお願いします。
岡村主題
情報部長:
第二期科学技術情報整備基本計画の毎年度の進捗とは別に、計画が開始した平成18年度からこれまでの4年間における到達点と残された課題について整理しました。また、国の第4期科学技術基本計画についても、現在までの検討作業を踏まえて、今後の方向性を簡単にまとめました。
(報告略。報告資料3「第二期科学技術情報整備基本計画(平成18年度~平成22年度)‐4年間の到達点と課題‐」参照。)
委員長: 全部で四つの資料を使って三つのテーマについて報告がありました。まず、それぞれの報告についてご質問を承ります。その後で「今後の国立国会図書館の科学技術情報の整備の在り方」をテーマに懇談いただきます。まず、報告について、質問、確認したい点等があれば、お願いします。
土屋委員: 報告資料1の6頁にある、遠隔複写サービスの伸びが大きいということについて、NDL-OPACの需要が増えてそれを活用した申込みが多いということですが、伸びがよいことなのか、悪いいことなのか、よく分かりません。例えば、JSTで入手するよりもNDLで入手するほうが安いということがあるのではないでしょうか。それで利用がNDLに流れているのだとすれば、状況としてはあまり健全でないように思います。そういった点について細かい話をお聞きしたい。
岡村主題
情報部長:
このサービスは、関西館が開館した当時に開始したサービスで、幾つかの新聞紙上等で非常に便利なサービスとして取り上げられました。ある新聞記事によれば、NDLのサービスにしては、システムと物流を合体させたエレガントなものだとお誉めの言葉もいただいているもので、そういった意味では、右肩上がりなのはよいことだと思っています。
土屋委員: この種のサービスに関して、BL(英国図書館)は著作権料を支払って行っていますが、日本の場合はなぜ支払わなくてよいのか。つい数年前までは10万件もいかなかったサービスが30万となり、このままだと50万件にすぐ到達するのではないかという勢いです。50万件というのは、大学間の国内雑誌に対するILLリクエストと同じくらいで、外国雑誌だと40万件ですから、いわば匹敵する規模のサービスになっていくわけです。そうなってもNDLの場合は権利処理をしないでよいのでしょうか。
中井関西館長: 文献複写サービスは関西館が窓口として行っています。実際には、右肩上がりというものの、平成19年度は33万2005件、20年度は33万7397件であり、伸びは少しずつ鈍化しています。電子ジャーナル化が進んでいることもあり、その意味でいえば、ずっと伸び続けるものではなく、むしろ、次の手を考えなければならないくらいのものだと思っています。個人へのサービスが非常に伸びているというところで、図書館が行うサービスとして、ある程度、需要とのバランスをとってぎりぎりのところで行っているものと認識しています。NDLとしては今の状況を抜本的に変えようと思っていませんが、いずれは電子ジャーナルなど電子的な媒体のものをどうしていくのかが課題であるとの認識をもっております。
委員長: 平成15年度との比較ということで6年程度経っており、その間に情勢が社会的にも技術的にも相当変化していることもあります。それから、大学図書館からの申込みは逆に減っています。大学のほうでも電子ジャーナル化してからかなり傾向が変わったとか、図書に関しては遡及入力が進んだ図書館に殺到したとかいったことがありましたが、今はかなり落ち着いてきているのではないかと思います。土屋委員、いかがでしょうか。
土屋委員: これまでもこの場でたびたびお話ししてきたことですが、大学に関していえば、ILL(文献複写)は100万強から50万ちょっとに減りました。3分の2は外国雑誌への申込みの部分で減っています。論文タイトルを見る限りでも明らかに電子ジャーナルの影響で申込みが減ったということは間違いないと思います。
委員長: いずれにしましても、NDLに対する専門図書館あるいは個人からの期待が非常に増えてきているということになっているのだと思います。
中村委員: 今のお話ですと専門図書館からの申込みは増えていて大学図書館からの申込みは減っているわけですが、これは、専門図書館が自分の蔵書を整理(廃棄)して、他の図書館とコネクションすることによって資料を提供するという方向に変わっていった、ということが表れているのではないでしょうか。我々としては、そういう方向、つまりNDLの整備状況に合わせてこれと連携することに注力すればよい、と理解すればよいでしょうか。
委員長: 専門図書館は、その専門の図書館ということで利用者が来ているはずですから、そういう意味では仲介的な機能をしっかり果たしている、といえるのかと思います。
時実委員: NDLの所蔵資料のデジタル化についてお聞きします。デジタル化した資料の他の図書館における利用に関して、権利者側と合意がまだ充分になされていないという話ですが、説明をお願いします。
田中
電子情報
企画室長:
現在、出版社・権利者団体等とは、協議会という形で、複製した資料の具体的な利用について条件を詰めています。複写など館内での利用については実施の細かいところが決まってきていますが、図書館間貸出しに相当する部分については話がまとまっていません。話合いを継続している、という状況です。
時実委員: 見通しとしてはどうなのでしょうか。今まで図書館が相互貸借で利用できていたNDLの資料がデジタル化によって利用できなくなることがあっては非常に困る、逆に非常に不便になってしまいます。図書館界で声を上げたほうがよいとか、協力したほうがよいといったことがあるのかどうか、教えていただきたい。
田中
電子情報
企画室長:
出版社の新刊の販売等に影響する、つまり、公共図書館等で専門書や学術書を買い控えてしまうのではないかなど、いろいろな懸念が表明されています。実際にNDLがデジタル化した資料を使うことの影響はさほどないということはある程度時間を経過しないとなかなか理解していただけない部分もあると思いますので、引き続き協議を進めていきたいと考えています。補正予算127億円のデジタル化については、1968年頃までに受け入れた図書が対象であり、相互貸借による販売等への影響は最小限度にとどまります。その意味では少し時間に余裕があるので、話合いは引き続き進めていきたいと考えております。
土屋委員: 状況は分かるのですが、郵送ベースでNDLにある資料を使って知識インフラを構築する、ということはどう考えても奇異だと思うので、是非とも資料を便利に使えるようにしていただきたいと思います。
委員長: 先ほどの知識インフラ構築というのは、郵送ベースの話なのですか。
長尾館長: そのあたりはまだまだ煮詰まっていないところです。NDLだけがサービスするのではなく、大学、専門図書館など各機関が情報・知識をもっておられるので、まず、それらの情報の所在をはっきり分かるようにして、そこにアクセスする仕組みをつくる。また、著作権法に触れない範囲でウェブに流せるものは流すなど、そのあたりをこれから検討していく必要がある、というのが今の段階です。
委員長: 所在情報については、NIIが大学図書館と協力して行っている遡及入力事業において、昨年件数が1億件を超えて、重複があるので2億冊分と記憶しているのですが、かなり整備が進んできています。そういったものとNDLが連携して検索できるようになれば、所在に関しては劇的に改善されることになるのではないかと思います。
坂内委員: 昨年、各大学図書館がこつこつ行い1億を突破しました。有川先生は2億冊とおっしゃいましたが、どこにあるかの所在情報については1億5千万くらいです。そろそろ到達すべきところにはきており、一つの連携の規準にはなったと思っています。それはそれとして、利用サイドについて、法律も含めて長尾館長のリーダーシップのもと推進してくれているのはありがたい側面もあるのですが、ひいて全体を見てみると、出版社、研究所、学会など一次情報を作るところと、データベース化するなどそれを利用するところとがバランスよく繋がり、大きな知の循環になる、利用に伴う広い意味でのインカムがコンテンツ・情報を作るサイドにも流れていく、という全体を俯瞰したステムを創ることが大事ではないでしょうか。いま、出版社が懸念しているのは、単に著作者だけでなく、編集、コンテンツ作成など一次情報を作るところにコストがかかっているのであり、それが成り立つようにバランスをとっていかなければならないことです。
データベースもインターネット資料として収集するという話ですが、サービスウェブはウェルカムですが、ディープウェブと呼ばれる、データベースなどライセンスをとって活用しているものや、構築に大きなコストがかかっているものについて、それを利用サイドで食べつくすということになると、コストをかけてデータベースを作るサイドが成り立たない。一次情報あるいはデータベース化の作成コストと利用・便利さとをトータルで考えていただきたい。出版社が足を引っ張っているとかどんどんやってよいという発言がありましたが、それは狭い了見という感じがします。ともあれ、こういう大きなことはどこかが動きださなければならない。例えば、キンドルや新しいアップルのiPodなども大きな動きになりますが、そういう意味では、NDLを中心に大きな流れの中で議論をしていかなければならないという気がしました。
委員長: 出版する側、データベースを作る側も財政的に成立するよう考えていくことも大事なことですが、一方ではICTが使える社会ですので、それをしっかり踏まえた情報の生産流通の仕組みを考えて、出版社もまたそれをベースにした新たなモデルを考えていかなければならない。モデルはあると思うのですが見つけ切っていない、部分的には見つけているのかもしれませんが、そういった状況にあるのだと思います。いずれにしても127億円でデジタル化されるのは、古いほうからということで、どちらかというと保存という面での貢献が相当あるのではないかと思います。
倉田委員: 電子化の絡みで聞きたいのですが、基本的には、画像イメージでのデジタル化なのか、テキストベースなのか。
武藤企画課長: 現在進めている127億円の大規模デジタル化は画像イメージでデジタル化します。これは、先ほど申し上げた著作権団体・出版社団体との協議・合意に基づき、テキスト化については今のところ認められていないことを踏まえて、画像に限っています。ただ、我々としても、今後も継続協議し、全文テキスト化については実験・検証も含めて対応していきたいと考えているところです。
委員長: ある種の索引は考えているのですか。
武藤企画課長: 図書、雑誌とも目次データまではテキスト化して検索の便に資するということで進めています。
坂内委員: 先ほど理念的な話をしましたが、今度は足元の話をします。4月からインターネットの収集が始まるということで、我々も対応しなければならないのですが、ロボットで取れるものは取っていく、取れないものは送信しろとの連絡がくるわけです。その場合、安定して提供しているものについて、NDLは納入不要とすることができるとされているものの、運用上不確定な要素があるように思います。人手とコストをかけて構築したものを納入しなければならないのは、先ほど申し上げた大きな知の循環からいえば、製作サイドをディスカレッジする側面もあると思うのですが、具体的な運用において、エンカレッジすること、バランスをとることは、何か考えていないのでしょうか。
中井関西館長: インターネット情報は、これまで関西館電子図書館課が「WARP」と称して許諾ベースで集めてきましたが、今年4月からは国立国会図書館法の改正によって国等の機関のウェブサイトについては、許諾なく収集できるようになりました。自動収集できるもの以外のインターネット情報についてもNDLが必要と考えるものは送信・送付をお願することによって収集するということになっていますが、安定的に提供されているものについては除外するという規定があります。機関リポジトリなどは、それに該当し、現時点で収集対象にすることは考えていません。ただし、将来的には、持ちきれなくなった、そろそろNDLに提供してよいといったことになれば、そのときにNDLにもらうことになるかもしれません。
ロボットで集められないものについて送信いただく件ですが、何が公用のために必要かについて、報告書・白書の類といったカテゴリを幾つか定めました。実際には、NDLが各機関に対してこれを収集させてくださいと個別にお願いしながら相談して集めていくことになると考えています。4月から始めるのはウェブサイトのロボット収集で、それから順に、これが必要なので送信してほしい、又は取りに行くので取れるようにしてほしいといったように、個々に相談して集めることとなります。ディープウェブ、データベースの中に入っているものについてどうするかですが、例えば白書データベースなど、データベースの各コンテンツが、いわゆる出版物の形をとっている、形の定まっているものについては、個別に送信してくださいということもありますが、データベースそのものを全部ください、という考え方はありません。各コンテンツを収集する経験自体、これから積み重ねていかなければならないので、順次、段階的にやっていきたいと考えております。
時実委員: ウェブの収集頻度はどのようにするのでしょうか。
中井関西館長: 中央省庁レベルだと月1回、その他は年4回です。今までと比べると格段に回数が増えました。今までは各省庁も年1回又は大臣が変わったら取るといった形で集めていました。今まで集めたものが全体で15テラだったのですが、今後は1年間で20テラ集める容量でやっていかなければならないことになります。4月からの業務体制、新しいロボットの機能など、鋭意準備しているところです。
委員長: 機関リポジトリなど、大学等で安定的に構築されているものについては当面集めないが、大学もつぶれる可能性があるので、そういうときはNDLにお願いすることになるというのは分かりますが、収集ロボットでひっかからなかったものを送信してもらって収集する必要があるのでしょうか。自らきちんと管理・運営しているところは任せておいてよいと思いますが、少し危ないようなところに対しては、NDLでしっかり収集して保存して活用できるようにしてほしいという気持ちをうまく使う方法もあるのではないかと思います。別の言い方をすれば、NDLに収集してもらいたければロボットで収集されるように工夫してください、というやり方でもいいように思います。そうしない理由はあるのでしょうか。
中井関西館長: NDLのデータベースについてもいえることですが、データベースは非常に利便性がよく、検索によって様々なデータを引き出すことができるので、いろいろなものがデータベースの中に格納されています。それらをすべて表面に出す作りをすることは、可能かもしれませんが、それと個別に送信するのとでは、どちらがよいのかということです。それぞれの利点がありますが、全部を表面に出すのはなかなか難しいと思います。今までの経験からいうと、ロボットで集めきれないものは非常にたくさんあります。それについては、第4四半期から順に個別に機関にお願いして、送信あるいは取れるように置いていただくなどして収集していきたいと考えています。
土屋委員: 具体的にお聞きしたいのですが、例えば、データベースの中身をくださいとなるとどうやって送ればよいのですか。
委員長: データベースということですと、ネットワーク上にないものですからロボット収集できないものですよね。
土屋委員: ロボット収集できないので、例えば、データベースのデータ構造が定義されるものについて、NDLからくださいと言われれば、CSVで送ります、という話になるのでしょうか。
中井関西館長: どういう形式でデータベースが作られているのかによりますが、イメージしているのは、白書データベースなどであり、表層で(リンクをたどって)ロボット収集できるものもあれば、(途中で何らかのアクションが必要なため)なかなか取れないものもあります。データベースに入っているがファイル自体はPDFなどでできているものをイメージしております。データベースそのもの、あるいはそのデータ全部を収集しようということではありません。
時実委員: 白書についてですが、納本とも関係しますが、白書は紙ではNDLが所蔵していて、今後、電子化される機会もあると思います。一方で、各省庁も電子化を進めていると思うのですが、そのあたりの事情を教えてください。
委員長: 各省庁が作っている白書など、それがデジタル化されてネットワーク上に置いてあるケースについてのご質問でしょうか。
時実委員: ネット上に置いてないかもしれませんが、そういうプロジェクトがあるかどうかなどお聞かせください。
田屋収集書誌部長: 悉皆的な調査をしている訳ではなく、はっきりとしたことはなかなか申し上げられませんが、今、各省庁では広報目的のための資料についてのデジタル化は率先して行われています。白書類はその中でも代表的な刊行物であり、デジタル化はかなり進んでいると思います。10年ほど前に、私どもで、各省庁の白書のデジタル化について調査したことがあったのですが、その段階では、まだ各省庁のデジタル化は十分にできていませんでした。現在はかなりの割合で、ほとんどがデジタル化されているのではないかと思います。
時実委員: 新しい刊行物は、もちろんそうでしょうが、過去の資料に遡ってのデジタル化はどうでしょうか。
倉田委員: ちょっと古いデータでうろ覚えなのですが、2005年に調査した時、最新のものに関しては全部電子化が終わっていましたが、刊行の古いものに関しては、省庁ごとに様々でした。白書の名前が変わってしまっていて、つまり、当然ですが文部省が文部科学省になっていたりして、きれいに整理されていなかった記憶があります。アーカイブという形できちんと探せるようになっている省庁は結構少なかったように思います。デジタル化されたものがあるのだとは思っても、探すのが大変でした。また、PDFにはなっていてもHTMLにはなっていないなど、利便性という意味ではまだまだと思った記憶があります。かなりデジタル化は進んでいたと思いますが、完全ではないようです。
土屋委員: もう一つ、利用者的な質問ですが、例えば、何年に収集したどこのアーカイブといった形で検索できますか。
中井関西館長: はい。個体と呼んでいますが、時系列で見られるようになっていないと意味がないので、この個体は何年何月に収集したもの、と記録して、それを表示するようにしています。
土屋委員: これはいつのものという表示については分かるのですが、例えば、2010年の10月に収集したNDLのトップページを最初から指定して、それを見ることはできるのでしょうか。つまり、いつのどこのサイト、又はいつからいつまでのこの単語を含むサイト、などの検索ができるのかどうかが知りたいのですが。
委員長: NDLのポータルから行儀よく入っていかなければいけないわけですか。それ以外からでも検索できるのでしょうか。
中井関西館長: 今提供しているWARPにおいてできているかどうか記憶にありませんが、それは可能だと考えております。(事務局注:現行のWARPでも検索は可能です。)あとは、混乱を避けるため、NDLで何年何月に収集したものといった表示について、これは今まで足りなかった部分ですので、それを確実にしようということで行っています。
委員長: 少し交通整理をしますと、本日懇談する主な点は、先ほど資料3で報告のあった、スライド7頁以降の、第二期科学技術情報整備基本計画の開始以降におけるNDLの取組に関する総括を踏まえた今後のNDLの科学技術情報整備の在り方についてです。これをメインのテーマにして、先生方に活発な議論をしていただきたい。もちろん、これまでの進行やご発言もすべて関連はありますが、ここからは、将来に向かってどうあるべきか、ということを意識しながら議論していただければと思います。
坂内委員: アーカイブ、特に国の関係のアーカイブというと、国立公文書館があります。これはNDLと類似のミッションのものだと思っているのですが、実際は、NDLの関係機関となるとNIIとかJSTが出てきます。国立公文書館とはどういう連携をしていくのでしょうか。
委員長: 特にウェブ上のデータの収集という点からしますと、進めていく上で、公文書館の守備範囲にも深く関係しますか。
長尾館長: 国立公文書館とは館長同士で不定期に話合いをしています。公文書館は、いわゆる公文書を集めるというのがミッションであり、現在、拡充計画などもあると承知します。それに対して、私どもは、あくまでも出版物という形態のものを集めています。電子資料については、ウェブサイトの情報それ自体が公文書であるというわけではないと認識しますので、それについて公文書館とシェアするという議論をしたことはありません。公文書館で行うのがよいのか、我々がやるのがよいのか常に考えながら進めていく必要があるという認識はもっていますが、今のところバッティングするケースはないと思っています。
坂内委員: インターネットの資料というと、ファクトデータベースのようなものも国の機関や大学などで発信しているのですが、それは対象外になりますか。
長尾館長: 国の機関のウェブサイトに公文書のテキストが載ることはあるでしょうが、そのオリジナルの紙を中心に集めるのが公文書館ではないでしょうか。
土屋委員: 有価証券報告書は、今、正本が電子になっています。公文書がいつまでも紙だという状況は、もう後1、2年で変わるかもしれない。
坂内委員: お聞きしたかったのは、インターネットの資料にはファクトのデータベース、例えばゲノムのデータベースなどがありますが、その類は、今は全く収集対象ではないのですか。
長尾館長: そうしたデータベースは、我々としては集めるつもりはありません。
坂内委員: 安定的かどうかの判断をしてそれは取らないなど、収集対象に関してもすべてNDLの運用の掌の上といった感じがします。どこまでが対象かについてのオープン性が少し欠けているように思います。指針のようなものを公開いただき、この段階まではこうだというように明示していただきたい。法律(国立国会図書館法)で言っている、国の機関、大学等がインターネットで公開している資料、というと全部が対象に入ってしまうような感じがします。
土屋委員: 法律では、NDLは“できる”と書いてあるので、やらなくてもいいのです。
坂内委員: 何をやって何をやらないのかについて明確にしていただきたい。
長尾館長: 4月以降収集を始めてから、収集物にどのようなタグ付けをするのか、ウェブサイトの構造そのままでは使いにくいので、そこからテキスト、ドキュメントだけを別に取り出して著作物のデータベースに移し変えるなど、幾つかの作業をしなければなりません。おそらく1年くらい悪戦苦闘して行った後、NDLとしてどういう範囲で集めるのか、又は集めないかを整理して社会に対して明らかにする、ということをする必要があると思います。今すぐは(報告資料2-1の5頁に言及のある「告示」以上の)収集対象の細部で提示できるものはありません。
田屋収集書誌部長: NDLが収集する資料について、分かりにくいということがあるかもしれませんが、納本制度が対象としているものは出版物になりますので、私どもが収集するものは、基本的に出版物です。出版物には様々な性格のものがあります。図書、逐次刊行物、小冊子のほか、地図、あるいは出版物相当のもので電子的な媒体のものもあります。いずれにしても基本的に対象は出版された物です。
坂内委員: 要するに出版物の資料を収集するということですね。
田屋収集書誌部長: 原則そうです。
中村委員: 成長戦略など報告資料にいろいろと書かれていますが、収集する範囲を広げることや連携する範囲を広げるといったことは、出版物に限定するということでしょうか。そうすると、例えば、特許は特許庁でやっていますけれども、原子炉設置の申請書、あるいは車の認可を取るための技術情報の類は原則的には対象にしないということでしょうか。今の方向性の中で、足りないものは何か、どこと連携すればよいのか、ということをこれから議論していく、という理解でよいでしょうか。
田屋収集書誌部長: 出版物とは何か、定義が難しいところがありまして、公文書の原本のように作成部数が1部のものですと、これは出版物ではないだろうといえるのですが、仮に30部、50部又は100部を印刷しているというもの、例えば、原子炉設置許可申請書や設置変更許可申請書などは、かなりの部数を作成し、それを頒布しています。定価がついているかどうかは関係なく、印刷された形態で一定部数を作成・頒布しているものについては、出版物相当と考えることができますので、ご提示の内容のものすべてが排除されるということでは必ずしもありません。
北澤委員: 学会誌など、特に論文関係はどのように考えていますか。これらは出版物ではあるのですが。
田屋収集書誌部長: まさに出版物を構成する代表的なものとして雑誌記事・論文があると思っています。しかし、今回、国立国会図書館法の改正により4月以降収集するのは、国等がインターネットで公開した資料ということであり、学協会等が論文誌をインターネットで公開していても、現在のところ制度的収集の対象になりません。あくまでも“国等”ということで、国、国立大学等が紀要などで刊行しているものについては枠の中に入りますが、学協会については今のところは入っておりません。
北澤委員: 多くの民間企業、民間の出版者が出している有料の雑誌がありますが、月刊誌、週刊誌、そういった類のものはどういうことになるのでしょうか。
田屋収集書誌部長: この4月から制度収集する対象には入っておりませんが、先ほど長尾館長から紹介いたしましたとおり、今、民間の図書・逐次刊行物に相当する情報がインターネットのみで流通するというケースが多くなっています。それを制度的に収集することについて、現在、納本制度審議会において審議をいただいているところです。審議の結果、制度的収集の対象になるという方向が出ましたら、それに基づいて制度設計を行っていくことになると思います。
土屋委員: 要するに、出版物であるものについては納本制度の枠の中に持ち込むが、そうでないものについては、インターネットアーカイブで抽出する、ということですか。
田屋収集書誌部長: 出版物の定義がなかなか難しいということがありますが、インターネットについては、非常に広い意味では“ネットワーク系電子出版物”という中に入ります。有形の出版物と無形の出版物とがあり、形のある電子的な出版物としては、CD-ROM、DVDなどがあります。形のない電子の出版物としては、インターネットのウェブサイトなどがあるということです。ただ、その中でも、特に著作性のあるもの・ないものという形で分類していくと、いろいろ別れるものが出てくるのかもしれませんが、広い意味では、ウェブサイトはネットワーク系電子出版物と考えています。
委員長: 大学の紀要などは対象になるとのことでしたが、その一方で、少し前の議論で機関リポジトリは収集しないと言われていましたが、今、紀要というのはほとんど機関リポジトリになっています。印刷物はやめて電子だけにしようというところも相当出てきているのですが、それらはどうなるのでしょうか。
田屋収集書誌部長: 機関リポジトリの中に入っている紀要等についても、広い意味では制度的収集の対象にはなっています。ただ、そこにどういう義務のかけ方をするかということであって、送信いただく件については、国立国会図書館長が必要と認めたときに、それを送っていただく。その際、特別な理由がなければそれに応えていただくこととなります。ただ、基本的にはご相談させていただきながら収集します。先ほど申しましたように、安定的に運用されているものについては、無理に収集するということはないと考えております。
委員長: 各方面に協力をしてもらわなくてはならないので、そのあたりのことも、分かりやすく整理しておく必要がありますね。
岡﨑委員: 今の“何を収集するのか”ということに関連して、報告資料3の第二期科学技術情報整備基本計画の問題について質問させていただきます。今後の方向性の中で“知識インフラの構築”ということで、前提となる科学技術基本計画における問題について、多くの社会的な課題をかかえている今、課題解決型の取組に向けて、科学技術政策をイノベーションという観点から捉えていくことは、非常に大事なことです。その中でNDLが今後の計画を作るということですが、今議論になっている、何を収集対象としてどういうものを提供していくのかについて、ここに書いてあるように“社会の課題解決”ということを相当意識された方向にチャレンジしようとしているのでしょうか。例えば、スライド10頁の(2)、(3)について、ユーザからの求めにどのような形で応えていくのか、あるいは専門機関を含めた連携に対して、NDLは科学技術基本計画が対象とするような具体的な社会問題の解決を意識した収集体制を取る、又は、それをある程度踏まえた専門機関との連携体制を構築するということにトライしようとしているのでしょうか。それは今のNDLの計画とはだいぶ様子が違ってくる可能性があると思うのですが、ここに書かれている社会の課題解決のために、NDLとしてどの程度何をしようとしているのか、その意識はどういうところに置いているのか、ということについて説明いただきたいのですが。
委員長: 少し抽象的な表現ですから、何か具体的なNDLのイメージを示していただきたいと思います。
岡村主題
情報部長:
その一つとして、現在、情報探索サービスについて検討しています。単純に有形物を収集して提供するというだけではなく、APIによる様々な連携、他のネットワークに参加して利用者に届ける、あるいはgoogle、yahoo等のサービスを通じてユーザに届けるなど、ネット上の様々な運用の中で一つの核となってNDLがサービスをするイメージです。物のイメージではなく、ウェブサービスの中でそのような役割を今後目指していくことを、まだ検討を始めたばかりですが、考えております。
塚原委員: “社会の課題解決”として考える場合、大抵需要と言いますか、デマンド側から探していく、何か必要があってそれに対応してこれを解決できる科学技術はないかと探していることが多いと思いますので、いわゆる索引の作り方のようなところの工夫をされると非常に使いやすい形になるのではないかと思います。
岡﨑委員: “社会の課題解決”を相当意識したサービスや情報収集、場合によっては単に刊行物だけでなく、先ほど議論になったいわゆるデータベースのようなところまで踏み込んで、社会問題の解決に何が必要なのか、という意識をもって収集・提供するのでしょうか。そこにどの程度まで踏み込んでいくのか、というのが質問の趣旨なのですが。
長尾館長: そのあたりはこれから検討して進めていく必要があります。大変重要なご指摘だと思います。
委員長: 報告資料3のスライド10頁にある“社会の課題解決”ということに関しては塚原委員がおっしゃったようなことを意識して進めていかなければならないでしょうし、また、“知識インフラの構築”については、10頁の(1)、(2)、(3)が関係するのでしょうが、(1)は言うなれば情報コンテンツといったものだろうと思いますし、(2)はナビゲーション機能で先ほど説明されたこと、(3)はいろいろな既存のものと国の機関等との連携であり、いわゆる人・モノのネットワークを作るということで、これら三つの要素が知識インフラ構築には入っているのだと思います。そう捉えてよいでしょうか。
岡村主題
情報部長:
はい。
時実委員: この情報探索サービスについてのスライドは、今の10頁の(2)に関わると考えてよいでしょうか。
岡村主題
情報部長:
いいえ、10頁の(2)だけはありません。
委員長: (3)の連携とも関係がありますね。
時実委員: 考え方としては、検索エンジンそのものではなくて、ナビゲーションを意識しているということでしょうか。
10頁の(2)について、これは非常に大事だと思うのですが、このあたりはNIIもJSTも事業として行っていることですので、こうした機関との連携が重要だと思います。中でも、先ほどお話に出てきた海外の情報については、土屋委員もおっしゃったとおり、電子化が進んでアクセスが便利になってきているため、いわゆる伝統的な文献複写、つまり紙での複写が減っているという傾向が明らかにあります。これは科学技術分野だけでなく、他の分野でも同様の傾向があります。ただ、日本の学術雑誌全般について、電子化は非常に遅れていまして、紀要などはJSTもNIIも進めておられるのですが、やはりまだまだ圧倒的に少ないという状況です。当然のことながら、電子化をどんどん進めないといけないのですが、同時に紙の雑誌論文・記事全般についてのアクセス、いわゆるリンクについてもしっかりと考える必要があります。電子的なものについてはご存知のとおりDOIという識別子があってリンクできるようになっていますが、この仕組みは紙のものにはそのまま使えず、リンクリゾルバ業者も非常に苦労しているそうです。そういった点についても、どこがイニシアチブを発揮されるのか分かりませんが、三者でよく協議してよい解決法を是非見出していただきたいと思います。
長尾館長: 分かりました。
土屋委員: 報告資料3について質問します。一つは、今の議論と関係あるのですが、ナビゲーション機能等はよいとは思うのですが、今までのNDLは、納本制度があって、国内で出版された本はすべてあるということで特別な位置を保っていたと思うのですが、ナビゲーション機能というのは、時実委員もおっしゃったとおり、NII、JSTなどでも行っており、コマーシャルプロダクションもあります。つまり、競争にさらされる機能であり、負けないでほしいとは思うが、NDLは負けるかもしれない。果たしてナビゲーション機能はNDLの存在に対して国民が求めるものなのか、という疑問が残ります。それが一つ目の質問です。
二つ目は、報告資料3において第二期科学技術情報整備基本計画の残課題に関して、6頁までで到達点、7頁に残課題が書いてあるのですが、到達点の部分に関して何となく恣意的に書いてある印象を持ちます。第二期科学技術情報整備基本計画の課題リストがあり、それぞれチェックしたというわけではなく、実施したことを一部のみ書いてあるようで非常によろしくないと思います。例えば、スライド5頁の“関係機関との連携・協力の拡充”に相手機関が書いてあるのですが、それぞれどうなったのか全部検証されているのでしょうか。大学図書館との連携・協力が、連絡会の設置という形で強化されているのですがそれについて触れられていません。“科学技術”ということかもしれませんが、NDL全体としての取組全部を書いていないような気がします。是非、最終的には全部をチェックしていただきたいというのがお願いです。
三つ目は意見になりますが、スライド7頁の主要な残課題について、課題が残っているという認識は正しいと思いますが、外国雑誌の長期保存の話は、個人的意見としては、もう取り組まなくてもよいと思います。二期の計画を立てたときから世の中は進んでおり、CLOCKSSやKB(オランダ王立図書館)の動きなど、海外での取組がいろいろ行われており、国内の主要な雑誌は大体海外に出ているので、残課題としてとりあげる必要はもはやなくなってしまったのではないかと思います。残課題の二番目にある電子ジャーナルの遠隔複写サービスの活用に関しては、大学間では紙ならばOKということでずっと運用してきており、その間NDLがもたもたしていただけで、今更やらなくてもよいと思います。館内業務の効率化のためにはよいかもしれませんが、特に課題として残すことではないと思います。残課題の三番目にある統合検索サービスの提供に関しては、今申し上げたように統合検索サービス自体が競争性のあるサービスなので、これを残課題として取り組むことでNDLの存在意義を問うというのは、危険ではないでしょうか。以上、そういう意味では7頁で示された残課題は、すべてもう取り組まなくてもよいものという印象を持ちました。到達点に関してのチェックが全部なされているのであれば、二期計画としては大変よくできましたということでよいと思っています。残った課題は実質的にはほとんどない、ということでよかろうという解釈です。
委員長: 報告資料3スライド7頁の外国電子ジャーナルの長期保存に関してですが、学術的な成果が商業出版社にあることについて、仮にそこが倒産してもどこかではちゃんと保存されているという状況を作る必要があると思います。そう考えた場合、日本はやはり応分の責任があると私は思っていまして、どこか余所でやっているからもういいだろういうわけにはいかないと思います。
土屋委員: それについては、CLOCKSSにNIIがコミットしているのだから、日本としては十分だと思います。
委員長: 二番目の残課題についてですが、電子ジャーナルの遠隔複写サービスができるということになりますと、大学等は電子ジャーナルの問題で非常に困っているわけですから、NDLがこれを行うのであればうちは電子ジャーナルの購読契約を止める、という機関が出てくるような感じがします。そういった面もあると思います。
坂内委員: 逆に、お任せしますということでもよいでしょうか。
土屋委員: NDLでも予算の問題があってキャンセルすることもありうるのですから、頼るのは危ないのではないでしょうか。
委員長: 国内の連携関係については、報告では大きな機関だけを書いてあるのだと思いますが、大学との連携は前から行っていますので、それは書けばよいと思います。
10頁のナビゲーション機能等については、google、yahooなど今もいろいろあります。しかし一方で、NDLが電子的資料をある種のフィルタリングをして、きちんとしたものを収集し、ある種の意味処理なども施した上でそれを提供するということであれば、そこで初めて社会課題解決のための、あるいは知識インフラという考え方が活きてくるという気がします。こういったことはgoogle、yahoo等が現行では行っていないサービスであり、NDLの特徴を出すとすると、そのような面にあるのだと思います。その際には、当然のことですが、辞書に相当するような、かなり大規模で意図的に収集された、ごみがほとんど入っていない、しっかりとしたナレッジが必要だと思います。そのように行えればNDLが活きてくるのかなと思います。
相川委員: 先ほど外国電子ジャーナルの長期保存はそれほど重要性がない、といった趣旨の発言があったことについて、医学の立場から言わせていただきたいと思います。私が慶應義塾大学医学図書館の館長をしていたときは、ちょうど電子ジャーナル化が非常に進んだ時でした。電子ジャーナルの契約には、冊子体と電子の両方が読める場合、電子のみの場合などいろいろな契約形態があるわけですが、一番問題になったのは、電子ジャーナルのみ契約して冊子体を購入していないものについてです。医学の分野では、ある時期ポピュラーだった雑誌が研究の時勢に合わなくなるケースが大変多く、例えば、電子ジャーナルを10年契約している間に、その雑誌がアンポピュラーになってしまうことがあります。その雑誌の電子ジャーナルは要らないから打ち切って別の新しい雑誌を買うということで、その時ポピュラーでよく読まれる雑誌の電子ジャーナルに切り替えた時が一番の問題なのです。冊子体で購入していた時には、その冊子を保存しているので、購入契約を打ち切った場合でもその期間までに買っていたものは図書館に残りますが、電子ジャーナルの場合には、契約を打ち切ると、昔契約していたものまでが読めなくなってしまう。古くてもよく引用されているような大事な論文が解約してしまったのでもう見られない、冊子体があれば見られたのに、ということが起こっています。是非、外国電子ジャーナルの長期保存という課題への取組も継続していただけるとありがたいと思います。
土屋委員: 長期保存してあるということと、契約をキャンセルした後もアクセスできるかどうかという話は論理的には独立しています。また、長期保存への取組に反対しているのではなく、NIIがCLOCKSSにコミットした現在、日本としては十分な責任を果たしているのであって、敢えてNDLにファイルを置いておくという意味があるのか、ということです。むしろ日本として果たすべき責任は、日本で生産した論文を日本の中で必ず保存してとっておくということであると思います。外国雑誌に関しては、国際的な連携というものができつつあり、CLOCKSS、Portico、KBもあるという状況の中で、敢えてNDLが外国雑誌の長期保存に手を出さなくてもよいのではないかと思いました。
坂内委員: 長期保存とは言っても、NIIがCLOCKSSで行っているのはいわゆるダークアーカイブのようなものであって、保存しておいて利用に供するというものではないのですが。また、先ほど相川委員が言われた、古くなっても利用したいと思うものをカバーしているというわけでは必ずしもありません。
土屋委員: ただ、NDLがやっても基本的にはそういうものにしかならないと思います。また、利用については契約なので、いろいろな形態がありえると思います。
委員長: この議論は非常に大事ですが、今日は予定していた時間がなくなりそうですので、ここで議論は一旦中断します。岡村幹事から何かありますか。
岡村主題
情報部長:
今日お出ししたこの四年間の到達点と課題という報告資料を作るに当たりましては、一つ一つのテーマについて全館に投げかけて精査した上で、作成しました。これは、主題情報部だけではなく、全館的な取組の中でやっております。全館的に到達点を確認したところで、要約して作ったものです。
土屋委員: そうだとしても見落としが多いように思います。
坂内委員: “知識インフラ構築”というのは、次期の科学技術基本計画に向けて大事なことと思いますが、地道な連携基盤の構築というものに関しては、充分な理解が得られにくいことがあります。したがって、例えば、他機関との連携の推進といったことについて、この知識インフラ構築という言葉をNIIもJSTももち、それぞれ特徴のある施策を行う。要は、知識インフラ構築というのを旗がしらに行っていく、というのは非常に連携という意味では実利があるのではないかと思います。NIIも使ってよいでしょうか。
長尾館長: 日本全体としてやっていくべきものであって、NDLだけがやるというものでは全くありませんし、NDLだけでうまくできるものでもありませんので、どうぞ。
坂内委員: ある意味ではどの機関も同じようなことを言っていますので、“知識インフラ構築”は旗印としてよいと思います。
委員長: 活発な討論をありがとうございました。まだ3分の1くらいしか議論していないような気がするのですが、様々な論点が明らかになってきたと思います。もう少しさらに議論を深めていく必要があるように思いますが、NDL側から意見があればお願いします。
岡村主題
情報部長:
先生方から様々な観点のご指摘をいただき、本当に感謝申し上げます。国全体の科学技術をめぐる情報環境が大きく変化する中で、当館が果たすべき役割をより明確に再定義する必要性を改めて感じました。今後の科学技術情報整備の基本的な方針について、審議会として、引き続き、検討することをお考えいただけないでしょうか。
委員長: このあとのことですが、我々の審議会に「科学技術関係資料整備審議会基本方針検討部会」を設置し、そこで集中的に基本的な方針について議論をしていただき、その結果を報告の形にまとめる作業を行っていただくのはどうかと考えています。部会のメンバーについては、かなり大規模なウェブ上のデータなどを考えなければならないので、理論的・実際的にも経験をお持ちの今回入られた喜連川委員、そして図書館の専門家であります倉田委員にお願いしたいと思います。全体の部会長は倉田先生にお願いできればと思っております。それから、この審議会の議事規則に“専門委員を置くことができる”とありますので、もう一人はNDLのほうで専門委員を選出いただきたいと思っていますがよろしいでしょうか。
一同: 異議なし。
委員長: それでは、そのようにいたしたいと思います。倉田先生よろしくお願いします。
倉田委員: 大変荷が重いと思っていますが、できる範囲で頑張りたいと思っています。
委員長: この部会では、必要に応じて審議会委員の皆様又は関係機関の有識者の方に意見聴取を行うことも当然あろうかと思いますが、その際はなるべく建設的な方向でご協力をよろしくお願いします。
 
7 閉会
委員長: 時間を少し過ぎてしまいましたが、これで閉会とします。部会での報告書作成に向けて、NDLには、一層充実した科学技術情報整備に関する施策に取り組んでいただきたいと思います。
最後に長尾館長から一言お願いいたします。
長尾館長: 今回は、2時間にわたって様々なご議論をいただきありがとうございます。従来ですと、きちっと整理した資料を報告し、それに対してぽつぽつとご意見をいただいてそれで終わりという会議が多かったのですが、NDLの将来に向けて、皆様のご意見をフリーにいただきたい、また、辛辣なご意見も当然いただく必要があると考えました。今回は、最後の報告で生煮えの資料を出しまして、何を考えているのか、煮詰まっていないのではないか、といった話にもなりましたが、そういうことも含めて将来に向けてもっとNDLはこうするべきだというご意見をいろいろな形でいただいたと思っております。大変感謝を申し上げます。いただいたご意見を基にして部会で我々の今後の基本方針について精密にご議論いただいき、方向性をお示しいただけるということにもなりまして、大変ありがたく思っております。今後とも私どもの活動につきまして様々なご意見を下さいますよう、お願いいたします。本日はどうもありがとうございました。
委員長: これにて終了します。ありがとうございました。

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