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第18回科学技術情報整備審議会議事録
日時:
令和7年7月17日(木)午後2時00分から午後3時45分まで
場所:
東京本館総務課第一会議室(ウェブ会議サービスを用いたハイブリッド開催)
出席者:
科学技術情報整備審議会委員・専門委員 12名、陪席 2名
(委員)安浦寛人委員長、竹内比呂也委員長代理、池谷のぞみ委員、大隅典子委員、小口正範委員、戸山芳昭委員、野末俊比古委員、林隆之委員、村山泰啓委員、渡部泰明委員、池内有為専門委員、生貝直人専門委員
(陪席)金子博之科学技術振興機構理事(橋本和仁委員の代理)、坂下鈴鹿文部科学省大臣官房審議官(松浦重和委員の代理)
館側出席者 17名
館長、副館長
(幹事)総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、利用者サービス部長、電子情報部長、関西館長、国際子ども図書館長
(陪席)総務部副部長企画課長事務取扱、総務部副部長会計課長事務取扱、総務部司書監関西館図書館協力課長兼務、収集書誌部主任司書、利用者サービス部副部長サービス企画課長事務取扱、電子情報部副部長
(事務局)利用者サービス部科学技術・経済課長、電子情報部電子情報企画課長
会議次第:
開会
国立国会図書館長挨拶
新幹事紹介
議題
(1)第六期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けての提言(素案)について
その他
閉会
配付資料:
(参考資料)
議事録:
1. 開会
安浦委員長:
出席予定の皆様がおそろいになりましたので、ただいまから、第18回科学技術情報整備審議会を開催いたします。委員の皆様には、お忙しいところ、当審議会に御出席いただきましてありがとうございます。本日は、14名の委員の中で10名の委員に御出席いただいていますので、定足数は満たされております。
まずは、事務局からお知らせをお願いします。
福林科学技術・経済課長:
当館東京本館の会場での御出席は、安浦委員長、竹内委員長代理、小口委員、野末委員、林委員、渡部委員の6名です。オンラインでの御出席は、池谷委員、大隅委員、戸山委員、村山委員の4名です。なお、池谷委員は、用務のため15時50分頃までに中座されると伺っております。
御欠席は、浅川委員、黒橋委員、橋本委員、松浦委員の4名です。橋本委員の代わりに、科学技術振興機構(以下「JST」)の金子博之理事にオンラインで御陪席いただいております。また、文部科学省(以下「文科省」)の研究振興局及び高等教育政策連携担当審議官が、令和7年7月15日付けで松浦委員から坂下鈴鹿審議官に交代されましたが、坂下審議官への委嘱手続が間に合いませんでしたので、本日は松浦委員の代理として坂下審議官に会場で御陪席いただいております。なお、坂下審議官は、用務のため14時40分頃に中座されると伺っております。
また、会場で生貝専門委員、オンラインで池内専門委員に御出席いただいております。大向専門委員は御欠席です。
本日、当館からは幹事のほかに、倉田館長、山地副館長、審議会事務局等の職員も同席しております。新幹事につきましては、後ほど御紹介いたします。
今回は、対面及びオンラインのハイブリッド開催とさせていただいております。オンライン参加の委員の皆様方におかれましては、会議中、常時カメラをオンにしてくださるようお願いいたします。マイクは、御発言の時以外はミュートにしていただくようお願いいたします。御発言については、委員長から指名を受け、会場参加の委員の皆様は、お手元のマイクのスイッチを入れてお話しください。オンライン参加の委員の皆様は、マイクのミュートを解除してからお願いいたします。なお、御発言を求められる場合は、お名前を挙げて御発声して、委員長にお知らせください。
2. 国立国会図書館長挨拶
安浦委員長:
開会に当たりまして、倉田館長から御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
倉田国立国会図書館長:
本日は、皆様、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。日頃より、当館の活動に御理解、御協力を賜り、心より御礼申し上げます。
令和3年に審議会から頂きました御提言「『人と機械が読む時代』の知識基盤の確立に向けて」を踏まえ、当館が策定いたしました「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」に基づく取組は、今年度、その最終年度を迎えております。
来年度からの第六期基本計画を策定するに当たり、審議会から新たな御提言を頂くことをお願いし、昨年8月の第17回審議会で御提言案を作成する基本方針検討部会を設置していただきました。野末委員をはじめ、池内専門委員、生貝専門委員、大向専門委員の4名の先生方から構成された基本方針検討部会では、これまで5回の部会を開催して、御提言の素案を作成いただきました。部会員の先生方には大変な御尽力を頂いておりますこと、厚く御礼申し上げます。
本日の第18回審議会では、この基本方針検討部会で作成いただいた素案について御審議いただきます。本日の御意見を踏まえ、部会で議論を深めていただいた上で、審議会として最終的な御提言を取りまとめいただく予定と伺っております。
学術情報の世界では、オープンアクセス、オープンサイエンスが進展し、学術情報に限らず、社会では多様かつ膨大なデジタル情報があふれ、生成AIの急速な普及も加わり、科学技術情報の流通の在り方は大きく変化しております。今後、国立国会図書館(以下「NDL」)がどのようにこれらの情報へのアクセスを保証する知の基盤を整備していくべきなのか、次の基本計画策定に向けた指針となる御提言を頂戴できれば幸いに存じます。本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。
3. 新幹事紹介
安浦委員長:
倉田館長、ありがとうございました。事務局から、幹事の交代につきまして報告をお願いします。
福林科学技術・経済課長:
NDL内の人事異動に伴い、幹事に異動がありましたので、御報告いたします。藤本電子情報部長が前回の審議会以降に新たに幹事に任命されました。
4. 議題
安浦委員長:
それでは早速、議題に移りたいと思います。
倉田館長の御発言にもありましたように、来年度から5か年を対象とする「第六期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」の策定に向け、前回、第17回審議会で設置された基本方針検討部会が、資料2のとおり議論を行い、提言素案を取りまとめました。検討部会の先生方には非常に御苦労をお掛けしたと思いますが、どうもありがとうございました。まず、部会長の野末委員から御説明をお願いします。
野末委員:
野末でございます。お手元の資料2を引き続き御覧ください。
資料にあるとおり、また、先ほど倉田館長から御説明がありましたとおり、基本方針検討部会は、昨年の9月以降合わせて5回開催し、本日御検討いただく提言の素案をまとめました。各回の主な意見は2ページ目以降に簡単にまとめられています。この提言素案について本日先生方から御意見を頂戴し、それらを踏まえて更に検討を加えて、最終案を次回の審議会でお示しする予定です。
資料3-1を御覧ください。提言素案の概要をまとめたものです。資料3-2が提言素案の本文になります。今回の提言素案では、「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」策定以降の私たちを取り巻く情報環境が大きく変化する中で、今後5年間、NDLにどのような知識基盤の構築に取り組んでほしいかをまとめております。すなわち、タイトルにあるとおり、第六期の計画にこの提言を生かしていただきたいという位置付けです。
サブタイトルは、「私たちの社会と未来をつくる知識基盤を目指して」としました。ここには今回、この提言素案が持つ二つの特徴を込めたつもりでおります。一つは、知識基盤について、それを構築する側だけでなく、基盤を活用する側、すなわち利用者、ユーザの視点を重視するということです。もう一つは、現在のデジタル社会を生きる私たちだけではなく、将来の世代、つまり未来のユーザにつないでいくという時間軸を打ち出していることです。
目次を御覧ください。構成をごく簡単に御説明します。最初に提言の位置付けを述べ、第五期計画を振り返っております。その後で提言の背景を記しております。今回、背景は、オープンサイエンス・オープンアクセスの進展と生成AIの普及という二点に絞って整理しました。次いで、今後の取組について大きく三つ、すなわち「知識基盤の整備」、「知識基盤の利活用」、そして「外部との連携協力」という視点から整理しております。
部会においては、昨年の第17回審議会で委員の先生方から頂きました御意見を踏まえて議論を行ってまいりました。部会を構成する専門委員の先生方からは大変積極的な御発言を頂き、活発な議論ができたものと受け止めております。ありがとうございました。大変活発な議論が行われ、内容も観点も非常に多岐にわたったことから、取りまとめに当たった事務局の皆様は大変だったと思います。感謝しております。
提言素案の詳細につきましては、事務局から説明をお願いいたします。
福林科学技術・経済課長:
(資料3-2に基づき説明)
安浦委員長:
ただいま御説明いただいた提言素案について、各委員の皆様方に御議論をお願いしたいと思います。提言素案には、「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」の実施状況や国内外の動向等を踏まえた上で、来年度から始まる次の計画期間でNDLが取り組むべき事項とその方針が記されています。
特にこの2年間で生成AIというものが急速に発達し、下手なレポートを書いたらAIで書いたものに負けるという時代になってきました。我々は過去に言語化された情報の蓄積の上でいろいろな仕事をしている、あるいはもうそれ自身が文化になっているという時代に突入しているのだと改めて思い知らされているのではないでしょうか。
そういった視点も踏まえ、各委員の御専門のお立場等から、提言素案について御質問、御意見、御提案等をお願いしたいと思います。口火を切っていただける先生、おられますでしょうか。竹内委員長代理、最初にいかがでしょうか。
竹内委員長代理:
ありがとうございます。委員長代理ですので、最後の方が良いかと思っていたのですが、御指名ですので発言させていただきます。
全体としましては、大変よくまとめていただいているものと感じております。特に前回の審議会では「リテラシー」が一つのキーワードとして出ておりましたが、それにとどまることなく、ユーザの視点で全体を整理し直していただいたことは大変良かったのではないかと思っております。先ほど安浦委員長から御発言がありましたように、特に生成AIの出現によってリテラシーの概念が大きく変わりつつあると思います。その中であまりリテラシーにとらわれてしまうと、5年間を見通すには厳しいだろうとも思っておりましたので、大変良い方向になったと考えているところでございます。
いくつか思っていることがあるので、少し発言させていただきます。
一つは、昨今のオープンアクセス、オープンサイエンスの流れの中で、日本国内で行われた研究の成果が必ずしも日本国内にとどまっていないという状況があります。例えば、海外のサブジェクトリポジトリなどにいろいろな研究成果が置かれているということがありますが、他国の今の政治的な状況などを見ているとその不安定さがかなり見えてきており、その点が気になりつつあります。そのため、NDLが収集し、保存するものはどの範囲なのかということが今一度課題になってくるのではないかと感じました。ただ、これは今回の提言に入れていただくというよりも、むしろ次のステップに向けて、NDLで検討いただく必要があることではないかと思います。
二点目としましては、今回「100年後の人々からも参照される存在へ」というのが非常に大きなポイントなのではないかと考えております。それに関連して、現在NDLが提供しているデジタルデータの中には、マイクロフィルムからデジタル化されたものが相当量あると理解していますが、やはりオリジナルの紙の資料からのデジタル化に比べるとクオリティの面で課題があると言わざるを得ないと思います。おそらく当面の措置としてマイクロフィルムからデジタル化されたのではないかと思いますが、100年後ということを謳うのであれば、オリジナルの資料からの再デジタル化も視野に入れた、100年後に本当に参照できるデジタルコレクションというものを是非ともお考えいただきたいと思います。まだデジタル化されていない資料がたくさんあるので、優先順位が低いということになるかもしれませんが、その点も是非視野には入れていただければと感じたところです。
私からはとりあえず以上でございます。
安浦委員長:
ありがとうございました。続きまして、時間的制約もお有りだと聞いておりますので、本日は文科省から松浦委員の代理という形で出ていただいております、坂下審議官にお願いしたいと思います。
坂下文部科学省大臣官房審議官(陪席):
坂下でございます。まだ正式な委嘱手続が完了しておりませんので、今日は陪席です。内容につきましても今日は直接的なコメントを控えたいと思いますが、まず御挨拶させていただきます。
ちょうど今文科省では、内閣府と一緒に第7期の科学技術・イノベーション基本計画の検討に取り組んでいるところでございまして、期間としてはNDLの計画と同じ期間で動いていると思います。議論の中でも出てまいりました、生成AIを含めた高度なAI技術の非常に大きな進展、急速な普及にどう対応していくのかが、やはり今大きな課題の一つになっていると承知しております。また、これから、こういったいろいろな複雑な問題を解決していく上で非常に重要な鍵になってくるため、NDLと歩調を合わせながら、どのような形で知識基盤をしっかり利活用できるのか一緒に考えていければと思っております。
もう一点、提言素案の最後に「外部との連携協力」という章があり、大学図書館のことにも触れていただいております。文科省では、竹内委員長代理に主査を務めていただいた「2030デジタル・ライブラリー」推進に関する検討会において、2030年の大学図書館の望ましい姿を具体的に描き、昨年の7月1日に公開した報告書では大学図書館とNDLとの連携に関するところも挙げさせていただきました。
文科省としましても、それぞれの大学図書館に閉じるのではなく、大学側からもNDLをはじめ国立情報学研究所(以下「NII」)やJSTといった様々な関係機関と協力の上で連携を進め、我が国の学術情報基盤を整備していきたいと思っております。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
安浦委員長:
坂下審議官、ありがとうございました。それでは続きまして、各委員から御意見いただきたいと思いますが、五十音順でお願いします。池谷委員、いかがでしょうか。
池谷委員:
オンラインから失礼いたします。よろしくお願いいたします。
幅広く取り上げていただいて、前回の議論を非常によく吟味してくださったのだと改めて感じました。意識しているかいないかにかかわらず、おそらく現在までは研究者や調査活動に従事している市民が対象であったと思いますが、今回の提言素案では、特に研究者に限られない幅広いユーザにアクセスを提供する役割を再確認なさっている点が良いと思います。
先ほど竹内委員長代理もおっしゃっていましたが、海外の状況を見ると、政治体制により知的基盤が打撃を受けてしまうことがあります。また、AIで生成したものをそのまま受け取る人たちが増えてしまうと、知的水準が非常に低くなるおそれもあります。そのため、きちんと知識に基づいて様々な知的活動に従事するということに幼少期から慣れてもらい、本物の情報に常にアクセスできて、それを用いてきちんと自ら大元のものを確認するという作業を常に何ともなくできるような人たちを若年層からきちんと育てることが、おそらく今まで以上に重要になってくるかと思います。
これまでNDLが構築されてきた知的基盤は正にそれを可能にするものであることを考えると、研究者等に限らず、初心者にもどんな入り口を用意したらよいか、今後もう少し検討していただいてもよいと思います。リサーチ・ナビやNDLサーチについても、初心者向けの入り口を用意するなどバリエーションがあってもよいように思いましたので、提言に直接入れていただくかどうかは別として、御検討いただければと思いました。
また、提言素案にあります、様々なコミュニティ等と連携するに当たっては、例えば、教員や学校司書、司書教諭等と一緒にワークショップを行うなどしてアプローチする取組を行ってみてはいかがでしょうか。そのような人々を巻き込んでいけば、個々の教員等にとっても教材作りなどの非常に良い経験になると思います。
最後に、文科省の方がいらっしゃるところで恐縮ですが、今、学びが多様化し、学校だけではなく「学びの多様化学校」やフリースクールなどが増えています。しかし、それらは必ずしも十分な教材が備わっているわけではない環境であることを考えると、公共図書館を活用することはもちろんですが、公共図書館に行けない生徒がNDLの知的基盤を使うことも十分にあり得ると思います。そのため、このような観点からNDLの知的基盤を十分に活用できるような入り口を工夫することも意味があるかと考えました。以上でございます。
安浦委員長:
池谷委員、貴重な御意見ありがとうございました。それでは続きまして、大隅委員お願いできますでしょうか。
大隅委員:
まず、第六期の基本計画策定に向けての大変大部にわたる提言の素案を御準備されたということに対しまして、心より敬意を払いたいと思っております。その上で、大きく二点ほどに分けてお話しします。
まず一点目として、NDLというのは、やはり日本の知のインフラの整備に非常に大きな位置を占めているものだと認識しており、その意義はますます重要になっているのではないかと感じております。2016年のG7科学技術大臣会合以降、日本でもいろいろな形でオープンサイエンスの推進について方針が打ち出されており、例えばシチズンサイエンスの推進において、市民活動をしている方だけではなく高校生の調べ学習など、様々な形で国民がアクセスできれば、非常に大きな広がりを持って知のインフラを活用することが可能なのではないかと思います。
NDLとしては、これまで基本的には日本で刊行された資料を収集し、保存し、提供することが第一であったと思いますが、今までよりも国際化が非常に速い勢いで進んでいる現状を考えますと、日本で刊行された資料だけに限られないインフラの整備がより重要なのではないかと考えます。
オープンアクセスというオープンサイエンスの中の一つの位置付けという形で、いわゆる電子ジャーナルなどを中心に様々な電子媒体で提供されている資料がありますが、それらはデジタル化する必要があるものではなく、もう既にデジタルになっているものです。それを是非、国民あるいは日本全国の研究者のために、NDLでバックファイルも含めて整備していただくということをお考えいただく時期に来ているのではないかと私は思います。
オープンアクセスの推進の一つの方法として、商業誌出版社との転換契約の価格交渉を進めようとしているのですが、日本の大学等の研究機関はその大きさや研究者の構成が多様で、個々の大学の事情で最適解が何かは違ってきてしまうため、全体としての交渉はやはり難しいと実感しております。そのため、国民の権利として、どこからでもそういった知にアクセスできるよう整備するというのが、やはりNDLのような立ち位置にある大きな図書館に求められることではないかと考えました。
二点目としては、日本の出版業界の状況を考えますと、漫画以外のテキスト化されている出版物は非常にデジタル化が遅れているという現状があります。そのため、是非NDLなどが中心となり日本の出版社へもデジタル化を働き掛けていただくことによって、NDLが紙の資料をデジタル化するという二重の手間を省くことができると思います。
また、今時、活版で組んでいるわけではありませんから、出版社にはデジタルな状態のものが存在しているはずです。法整備なども必要かもしれませんが、それをNDLが利用するという形で進めていくことによって、100年後の人々から参照される資料の収集が可能になるのではないかと思います。以上でございます。長くなりまして失礼いたしました。
安浦委員長:
大隅委員、ありがとうございました。特に学術雑誌のナショナルライセンス化という非常に大きな問題も投げ掛けていただいたかと思います。また、デジタル出版に積極的にどう取り組んでいくかという御指摘を頂いたのだと理解いたしました。
それでは続いて、今日御欠席ですが、NIIの黒橋委員から別途御意見が寄せられたと聞いております。事務局から御紹介をお願いできますか。
福林科学技術・経済課長:
黒橋委員からは、NDLがシステム開発、運用、連携に係る実務を担っているジャパンサーチについて、我が国にとって重要かつ大きな取組なのでしっかり書いてほしい、という御意見を頂いております。
安浦委員長:
ありがとうございました。それでは続きまして、小口委員お願いいたします。
小口委員:
小口でございます。提言素案の方針そのものについて、とやかく言うつもりはなく、よくまとまっていると思っております。
総論としまして、私どもは今、原子力関係の研究開発をしているのですが、時代の流れが非常に早い。原子力というのは、昔はワンプロジェクト10年が当たり前であったわけですが、10年で何かをするなどという時間軸では、もう世界競争に追いついていけません。10年計画自体がスタートしてあっという間に陳腐化するというスピード感の中にあるわけです。
一方で、さらに、日本には、古い原子炉などたくさんのオールドアセットを持っているという問題があります。オールドアセットが、最新の研究を進めていく上でのコストやリソース投入という意味でもマイナスになってきている。そのような昔からのオールドアセットが随分とあるがゆえに、日本はなかなか前に進まず、世界のスピードに追いつけない、どんどん取り残されている、こういう現実があると思います。今回のお話も少し似たところがあるのではないかと感じます。
NDLというのは膨大な、オールドとは言いませんが、ある意味アセットがあって、これを例えばデジタル化することについて膨大な時間とコストを掛けているわけです。では、その時間とコストが目的にどれほど合っているのでしょうか。
例えば、昔はマイクロフィルムで記録していましたが、今デジタル化するとマイクロフィルムで記録していたことによってデータの鮮明さを欠いてしまいます。また、検索についてもどんどん進歩してきて、新たな方法が次々と出てくる。コンテンツについても、AIを含めてどんどん新しくなっていくというところで、オールドアセットにリソースをどこまで掛けるのかというのは、原子力研究開発の立場から言うと、大きな一つのポイントではないかと思っています。
今回5年の計画ということで、それはそれで結構ですが、もしその間にまたギャップがどんどん広がっていくとすれば、その方針を常にどんな形でリバイズするのかという点についても少し目線を置いておかないと、結果的にオールドアセットのハンドリングに膨大な時間とリソースを投入して、その結果が日々、言葉は悪いですが、時代遅れのようになるという可能性はないでしょうか。これは私どもが毎日原子力研究開発で直面している課題であって、提言素案についても常に変化に対して柔軟であるような方針という観点もあるのではないかと思いまして、意見として申し上げます。
安浦委員長:
計画をある意味でアジャイルな形に、そのとき、そのときの状況に応じて変えていけるようにしておくという視点も重要との御指摘と理解してよろしいでしょうか。小口委員、貴重な御意見どうもありがとうございます。
それでは続きまして、戸山委員お願いいたします。
戸山委員:
私もこの委員をかなり長く務めさせていただいています。100年先でも情報を取得できるようにというお話が先ほどありましたが、可能な限り書籍から研究論文から全てのものを保存することがNDLの基本だと思います。今までは紙媒体の資料について、時代とともにデジタル化を進めていって、それを今どのように利活用させるのかに差し掛かっており、非常に大事な時期だと私は思います。
前期や今期もデジタル化をかなり進めて成果が上がっていると思うのですが、それを進めるには、お金が掛かる、予算がない、人手が足りないというようなこともありました。今期も、可能な限りデジタル化を進めることがやはり大事ではないかと思います。そのためには、年代で区切ってこの年代までやりましょうというのではなく、何が今後優先的に必要だろうかという優先順位を付けて、できるだけ早く進めることがまずは大事ではないでしょうか。
前回も聞いたのですが、資料の中で今どのくらいの割合がデジタル化されているのか、また、全てなのか、どのくらいとお考えになっているのか、後でもしよろしかったら教えていただきたいと思います。
話が戻りますが、今後の利活用をどのようにするかということが一番のキーだと思います。私としては、教育分野と可能な限りリンクする、ないしは最先端の研究者にアクセスしてリンクできるような、そういう道筋をたくさん作ることが非常に大事かと思います。
今回のこのような提言は、やはり専門家側に立った人たちがこういう方法であれば図書や情報にアクセスしやすいし良かろうと考えたようになっていると思うのです。今度は逆の目から見て、例えば学生や最先端の研究者、教育者などが、どの資料をどのように利活用したいかがNDLがデジタル化する上でとても大事だと思うのです。それをどう結び付けて、いかに今期ないしはその次で手を打っていくかということを進めていただきたいと思います。
そうなるとNDLの役割とは、基本的にはたくさんの資料の保存ですが、今後はその利活用をということになるので、是非両方向でお考えいただいて、こういう提言を更に進めるとよいのではないでしょうか。以上です。
安浦委員長:
どうもありがとうございました。デジタル化の今の達成度合いという御質問がありましたが、事務局の方、お願いします。
藤本電子情報部長:
電子情報部長から回答いたします。国内の刊行物に関して申し上げますと、図書と雑誌に大別されますが、図書が全体で600万点ほどあります。そのうち2000年までに刊行された300万点強が今年度くらいでほぼデジタル化が完了するかというところです。
一方、雑誌につきましては1,000万点ほどあるのですが、まだ100万点強しかデジタル化が済んでいないという状況でございまして、2000年までに刊行されたもののデジタル化を今後集中的に進めていければと考えております。
これまでにどのくらいデジタル化されたかということにつきましては、配布している参考資料5-1の「①資料デジタル化の加速」に件数が出ています。図書、雑誌、古典籍など合わせて、全体で451万点のデジタル化が完了しています。
戸山委員:
今後は優先順位を付けてデジタル化するということはなさらないのですか。
藤本電子情報部長:
先ほど少し触れましたが、次の段階としては、やはり図書が2000年分まで終わったということで、雑誌につきましても2000年分までをまず終わらせたいと考えております。
戸山委員:
そういう分け方ですか。
安浦委員長:
20世紀分を終わらせて、それから21世紀分に入るという方針ですね。
先ほど大隅委員のお話に出た、出版社側で既にデジタル化している情報をそのままもらうというような取組は進められているのでしょうか。
藤本電子情報部長:
版下データのようなものを渡すことに関しては、出版界の方々にもいろいろ御意見もあり、正直なところそういう形で進んでいるといった状況ではございません。
安浦委員長:
今後の課題ということですね。
戸山委員:
教育者、研究者、学生、学校などいろいろな方がNDLで何がほしいか、今後何がやりたいか、アンケートと言いますか、そういう調査はなされているのでしょうか。
安浦委員長:
事務局の方、ユーザのリクエスト調査のようなものはあるのでしょうか。
福林科学技術・経済課長:
NDLとしてはアンケートについてはもちろん幅広く行っているところですが、教育者に特化しての調査というものは行っていないと思います。
デジタル化資料の教育利用等については、実際にそういう取組をされている研究者の方もいらっしゃいますので、そういった方々と連携しながら、我々の持っているデジタルコンテンツをどう使っていただくかという研究を今後も進めていきたいと考えております。
安浦委員長:
ありがとうございました。それでは続きまして、橋本委員の代理で金子理事がJSTから御出席になっていますが、何か御発言ございますか。
金子科学技術振興機構理事(陪席):
JSTの金子でございます。提言素案につきましては、非常に深い議論の下よくまとめられていると考えております。特段、個別のコメントはございませんが、文中何か所かJSTとの連携に言及していただいておりますので、今後ともよろしくお願いしたいと思っております。
私どもはNIIとの連携も進めておりまして、ちょうど昨日黒橋委員を含めたNIIの方と打合せをさせていただいたところです。そこで特に議論になったのが、私どもはJ-GLOBALやJDreamⅢ、J-STAGEといった情報資産を保有しているわけですが、それらのデータを生成AIの学習データとして活用したいというニーズが非常に高まっているということです。
今のところ、そういったデータ資産を著作権者の許諾なしに学習データとして提供してよいというコンセンサスはできていないので、個別に許諾を得たものについてのみ提供できるというスタンス以上は踏み込めていません。しかし、実際には、主に海外の機関が勝手にクローリングでデータを取って、モデルを賢くしてしまっているという現実があると思います。そういった海外の機関に対して競争力を持っていくには、許諾なしに使えるというコンセンサスを作る必要が出てきているのではないかといったことが議論されました。
特に結論が出たわけではないのですが、問題提起として御紹介させていただきました。
安浦委員長:
ありがとうございます。収集した著作物等のデータをAIの構築のために利用していくことは、NDLでも今後新たに大きな課題になってくると思いますので、引き続き御検討をお願いします。
著作権の問題も含めて、いろいろ関連する問題はあると思いますが、オープンなものはできるだけ使っていく。ただ、データに偏りがあると偏ったAIができてしまうというまた別の問題も起こってきます。そのようなところをどう解決していくか、NDLだけではなく、NIIやJSTと議論しながら国全体で進めていっていただくことではないでしょうか。
それでは林委員お願いします。
林委員:
はい、ありがとうございます。オープンサイエンスと生成AIは、提言の方向性としてNDLで正に議論するべきところだと思いますので、しっかりと書いていただいたと思っています。それぞれについて考えを述べます。
まずオープンサイエンスに関してですが、なかなか難しい状況だと思っています。先生方も御承知のように、論文がもう既にレビューを通さないプレプリントという形で出ていたり、書籍であってもオープンアクセスブックが出ていたり、学術論文という形ではない様々な報告書のようなものがいろいろなリポジトリに入っていたりしています。このような、レビューも経ない、どこまでが学術的なものであって、どこまでがそうではないのかが非常に不明瞭な情報が、今までと異なる形でどんどん出ていく状態になっていると理解しています。
頂いた資料3-2の4ページには、NDLは「JSTやNIIとは異なり、ある程度定着・一般化された研究成果や、研究の素材となる多様な情報を収集・保存する」と書いてあります。先ほど申し上げたように今ですら境界がよく分からないところが、5年くらい経つともっと分からなくなってくる中で、NDLが一体どこまでを収集範囲とするのか。おそらく今この段階でも判断がつかず、今後もどんどん変わっていくので、継続的に検討する体制が必要ではないかと思っています。
この点を少し違う視点からも申し上げます。研究の情報というと、昔ならWeb of ScienceやScopusといった論文データベースを使っていたのが、今ではオープンな研究情報ということで、欧州ではOpenAlexやOpenAIREなどが使われるようになっています。先日International Society for Scientometrics and Informetrics(ISSI)というビブリオメトリクスの学会に出て、その前は科学技術イノベーション政策の学会に出ましたが、もう皆OpenAlexを使っている状態になってきています。
ならば我々も使わなければと思って使い始めたのですが、日本からは、学術的なものだけではなく、一般の大衆誌や雑誌のようなものも何の区別もなく収録されています。単純に集計を取ると、そういうものも全部入ってきてしまう。これがどういう流れでOpenAlexに入ってきているのか詳しくはよく分からないのですが、どうやらNIIのCiNiiを経由してNDLのデータが入ってきているようです。
そのため、そのようなOpenAlexなどを国際的にも使うようになってきている中で、せめて国内で様々な情報をどのようにカテゴライズするかが問題です。これは学術的なものであって、これはそうではないなどの情報を付けていかないと、非常にオープンな研究情報のデータベースが今後出てくる中で、情報の分析が難しくなってくると思っています。
さらに、OpenAlexなどですと、昔は研究分野が付与されていたところが、最近はBERTなどの手法でダイナミックにトピックが作られ、分析され、付与される状態になっています。例えば、NDLが持っているデータが今トピックで検索できるようになっているのかどうか恐縮ながら分からないのですが、検索機能をどうしていくのかも問題です。収集する範囲という前半の話だけではなく、収集したものに、タグ、カテゴリー、分野、トピックなどをいかに付けるのかも悩ましい問題だと思っています。そういう点を是非可能な範囲で今後検討していただけるとよいと思っているところです。
先ほどの書籍のデジタル化の話では、我々の機関に文科省から話があり、書籍の参考文献の部分をデータベース化して引用数が取れるようにするという試行も始めています。本当はNDLなどでそのような整備がされていれば手間暇掛ける必要はないのですが、十分整備されていないという状態にあると思っているので自分たちでやらなければなりません。もしデジタル書籍のデジタルデータが取れるのであれば、そういうところをもう少しNDLでも進めていっていただけるとよいと思います。
生成AIに関しては、私から申し上げることはそれほどなく、ここに書かれているとおりだと思っています。ちょうど先週か今週の中央教育審議会のある部会で、生成AIを学習者が非常に使うようになっており、それをどうしていくかという話がありましたが、議論されたことは正にこの提言素案に書かれているとおりでした。良質なデータで生成AIが学習し、それを使っている人が鵜呑みにしないで批判的に吟味できる、結局そういうことだと理解しています。
やはり、高等教育の分野で議論していても、自分でできないことを生成AIにやらせるのは学習ではなく、自分ができることを生成AIが非常に効率的にやってくれるのであれば使うのがよいという、そのような仕分けだと思います。大学や初等中等教育機関などと連携しながら、書籍を検索して調べて学んでいくという昔ながらの作業を経験させつつ、その効率化として生成AIがあるという発想をきちんと学習させていくことが必要なのではないかと思っています。NDLがどこまで高等教育機関などと連携してサービスを提供できるのか分かりませんが、このあたりも是非、いろいろな外部機関と連携しながら御検討いただけるとよいと思いました。
安浦委員長:
はい、どうもありがとうございます。特に前半のオープンサイエンスのお話で、非常に貴重な御指摘を頂いたと思います。
情報のスクリーニングと言いますか、査読を経て、ある意味、学術コミュニティにおいて認められたものが出版されるという時代から、何でもオンラインで見られるところに置ける時代になって、一般的な出版物であっても非常に安いコストで、多くの人の目に触れる場所に置くことができるようになりました。昔ながらの学会誌や、あるいはコストをかけて組版した書籍を収集するという考え方から随分違う時代になってきている中、どこにカテゴライズされた文献なのかユーザにもしっかり分かるようにしていかないといけません。いろいろな情報をひとまとめにして置いておくのは、おそらく、それを学習する生成AIからしても非常に危険な部分があると思います。
それでは、続きまして村山委員お願いいたします。
村山委員:
本日は先約の国際会合があり、会場で参加できず申し訳ありません。私からは日本のオープンサイエンス時代の構築の一翼を担わせていただいた者の一人として、コメントをさせていただきます。
オープンサイエンスは、政策的には、元のe-ScienceやScience 2.0といったような、研究のデジタル・トランスフォーメーションの中での学術の新しい在り方として欧州等で議論されていました。デジタル化されたテキスト資料や知識基盤がまた更に次の世代へ向けて使われるという方向性を示していただいたことは、感無量ですし、大変よくまとめていただいたものと理解しております。
同時に、オープンサイエンス・オープンアクセスの考え方が多様なコミュニティ、機関で根付き始めた正に今この時期に、かつ、AIの問題があって、ちょうどデジタル基盤上で専門的知識がどのように扱われるのかという曲がり角の時代に、非常に御苦労されたのではないかと想像しております。改めて御礼申し上げたいと思います。
一つ、本質的ではないかもしれませんが、本文ではなくて、資料3-1の1ページの概要図は、提言を見る方のために、おそらく本文を詳しく見る前にこれをぱっと見て、この提言の良さ、狙いの概略をつかんでいただくために作られたと思います。そこで、この図をどのように使っていただくかという点を考え、コメントさせていただきたいと思います。
「NDLの知識基盤」という真ん中の大きい箱の上に100年後を目指した「未来」への矢印があるのですが、その100年後の未来に到達する過程において、例えば、右側の赤い箱の「機械、ユーザ・コミュニティ、研究者、市民、視覚障害者等、海外研究者」、そのようなユーザを意識した上で「新たな価値の創造、社会課題の解決、シチズンサイエンスの促進、日々の課題解決」という、我々が今視野に入れることのできる課題にとって、NDLの知識基盤は正に貢献していくだろうと思います。また、100年経ったときには、おそらく今我々の視野ではまだ見えていない社会問題や知識に対する課題が生まれていると想定されますが、今の課題を乗り越えた先に100年後はやってくるという意識も、おそらく部会の先生方が考えられたビジョンの中にあるのではないかと想像しました。ですので、可能であればこの矢印の途中にそれを入れることも一度御検討を頂けないかどうか、と考えました。
生成AIやオープンサイエンス・オープンアクセスの進展などの情報環境の変化の中においてもNDLの知識基盤やメタデータ、テキスト化された資料は活用され、社会的にも非常に大きな価値を持つことと思います。今視野に入っている課題に貢献して活用され、更にそれを越えて100年後の未来においてその知識基盤が維持され、成長して将来の課題においても更に活用されると思います。
AIも、20世紀後半にはエキスパートシステムなど、今のディープラーニングと異なるアルゴリズムで研究開発がされていましたが、これが50年、100年経てばおそらく今のニューラルネットワーク、ディープラーニング等の技術を中心としたAIと全く異なるアルゴリズムのAIができているかもしれない。そういうことは今我々の視野の中ではとらえられず、そういう未来は、今我々の視野に入っている課題を乗り越えた先に生まれるでしょう。
このような背景の下で、上向きの矢印の途中で、社会に、まず今我々の見えている課題に貢献していきつつ、NDLの知識基盤は更にそれを越えた先の100年後にも価値を持つ、というビジョンも語れたらどうでしょうかと問い掛けさせていただきたいと思います。NDLや委員の先生方から見て、そういう作図をするとこちらに無理がある、そういう構図にすると現実的にやるべきこれが語れなくなるといった無理があれば、無視していただいて結構です。無理にこれを通してくださいということではございません。このような意識も持った上で一度見直し、御検討いただけると有り難いと思います。
安浦委員長:
今の御提案について、野末委員、何か御発言ございますか。
野末委員:
ありがとうございます。おっしゃったように、この概要図は一枚にまとめるという趣旨があるので、現在のやり取りと時間軸のやり取りがいろいろな意味で混在していると言えば混在している面があるかと思います。今村山委員がおっしゃった点を踏まえて、また事務局と少し相談させていただいて、矢印の種類や色使いなども整理し、より分かりやすいものにできればと思っております。
村山委員:
ありがとうございます。御無理のない程度によろしくお願いいたします。
安浦委員長:
村山委員、非常に貴重な御意見どうもありがとうございました。こういう一枚の図は、実は一番よく参照されてしまう可能性があるので、やはり残った再考の時間を使ってしっかり見直していただければと思います。よろしくお願いいたします。
それでは渡部委員お願いいたします。
渡部委員:
国文学研究資料館(以下「NIJL」)の渡部泰明です。今回この提言素案をおまとめくださって、大変充実した、密度の濃いものを作っていただいて、まずこのことに感謝申し上げたいと思います。そして、NIJLのことも取り上げ、連携に言及してくださったこと、大変心強く感じます。こちらからも是非力を合わせていきたいし、本当にNDLにはリードしていっていただきたいと思います。
今回の提言素案を拝見しても、本当にNDLは知の基盤を構築する最大の機関になっているとつくづく感じました。日本の知の未来がかかっているとすら言えるかと思いますし、またそこに私たちも是非関わっていきたいと強く勇気付けられました。
特にその中でも、NIJLが教えていただいたものとしては古典籍OCRです。その技術を私たちなりに更に昇華していきつつ、古典籍のテキスト化を今大きく推進していこうとしております。その点でもNDLには先駆者として頑張っていただいていることを感謝申し上げたいと思いますし、更に力を合わせつつ、御協力しながら進めていきたいと思っております。
そこで、もう少し大きな視野から考えてみると、私たちは地域というものの大事さを特に感じています。今回の提言の中にも取り上げられておりましたが、それがどのような形なのか、今一つはっきりしないところもありました。もし可能でしたら、そのあたりもう少し何か突っ込んでいただけたらと思います。
先ほどから委員の方々もおっしゃっていましたが、今回利活用ということに踏み込んでこられ、それはやはり大きな柱だろうと強く感じます。教育との連携も何人かの委員の方々がおっしゃっていました。研究も学びであるため、私は最近教育よりも学びと言うようにしています。研究者も初心者もお互い参照し合いながら学んでいけるような、そういう場があればよいと思います。そういう場は当然、地方と言わずやはり地域と言いたいのですが、地域に形成される。ラーニングコモンズなどという言葉もありますが、そういう場の大切さは、おそらくこれから更に注目されていくだろうと思います。
例えば、特色ある教育をしている学びの場を持っていることが、地域の魅力にもなります。どんどん子どもが少なくなっていきますから、特色ある教育をしていると思えば、わざわざそこに移住するという親御さんたちも結構多くいます。それから学校教育ではどうもなじめないという人も大変な割合で増えています。最近研究者の中にも、実は高校に行っていなかったり大学を中退したりしながらも苦労して大学院で学んでいますという人たちも出てきています。
学校教育でも、例えば国語の教科書だと作品ごとにQRコードが付いておりすぐにその資料に飛べるようになっていて、おそらくNDLの資料へも多くリンクしていると思います。これが全ての教科書に入っています。NIJLでもこのような取組に対して、このように使ってほしいとむしろNIJLから定義するなどして積極的に関わっていくことを前提に進めなければいけないと意識し始めております。
それから、100年後ということをおっしゃっていましたが、地域の活動は正しく大事なことで、地域の方々が地域資料を保存し、研究し、勉強することは100年後も間違いなく行われているはずです。
例えばNIJLは設立50年ですが、作るのに50年掛かっている目録もあります。だから100年掛かって、その地域が保存している資料を基にその地域のことを考え、それを世界に向けて発信したいということだって当然あるだろうと思います。そのようなことにどう関わっていくかはおそらくこれから大事になっていくだろうと思うので、利活用とおっしゃった中に、是非その点を加えていただきたい。
そのときに先ほど林委員がおっしゃったテーマやトピックごとの階層、位相分けのようなことは非常に大事になってくるだろうと思います。
やはり調べるということは本当に基本だと思います。勉強させて押し付けなくても、自分でもできる部分がある点にデジタルの良さがあり、非常に大事なことです。能動的な学びを促すことに最大の利点があるだろうと思います。だからこそ当然問題も出てきますが、そういうところに積極的に働き掛けるということをお考えいただければ更によいと思います。
以上です。どうも失礼いたしました。
安浦委員長:
はい、どうもありがとうございます。地域の視点、それと学びという考え方は、今後検討していく上で非常に重要かと思います。
今回御出席いただいております専門委員の先生方にも、まとめていただいた立場からお感じになっていることがあると思います。まず池内専門委員、何か御発言ございますでしょうか。
池内専門委員:
ありがとうございます。まずはたくさんのコメントを頂戴したことに、深く御礼申し上げます。
いろいろな論点が出て、その中から重要であろうと思われるところを集約して、こちらの提言素案をまとめました。本日は、例えば村山委員から概要図の部分に新しく出てきた課題への対応も含むとよいという御意見を頂きました。本日頂戴したコメントの中から、たくさんヒントを頂きましたので、それらを盛り込んだ上で、更に良いものにして提言案を提出させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
安浦委員長:
どうも御苦労様でした。それでは生貝専門委員お願いいたします。
生貝専門委員:
はい、ありがとうございます。今回、提言素案については、部会長の野末委員以下の部会での議論を、意欲的なところも含めて、非常に丁寧にまとめてくださったと思っています。今日、先生方から頂いた御意見もあるので、私もよく勉強して、提言案作成のお手伝いをできればと思います。
今回の提言の中で、個人的にここが重要だと思っているポイントを簡単に三点ほど言及させていただこうと思います。
まず一点目としまして、今回個人的に、資料3-2の5~6ページに、「資料・データの宝庫であるウェブサイトの収集範囲の拡大に取り組む」、ひいては、「日本関連ドメインのウェブサイトのバルク収集についても、その必要性について議論を行うべき時期が来ているのではないか」と書いていることは極めて重要だと思っております。
御案内のとおり、今、日本のウェブアーカイブできちんとバルク収集をしているのは、NDLによる地方公共団体と政府のウェブサイトだけであり、民間ウェブサイトの記録と記憶は、アメリカの一民間財団であるInternet ArchiveのWayback Machineに完全に頼り切っています。
他方で、私も数年前に調べ始めて初めて気が付いたのですが、今回参考資料6として詳しくNDLの方にまとめていただいたとおり、今世界では、例えばフランスだったら「.fr」、英国だったら「.uk」のバルクでの収集は国立図書館が責任を持ってやっている。100年後に、今この時代を確認しようとしたら、中核的な刊行物であるウェブサイトというものをきちんと保存しておくことが、やはり21世紀の図書館の役割だと広く認識されているのだと思います。
これは記録という意味でも重要ですし、あるいは生成AI時代の信頼できる情報基盤として、フェイクニュースやディスインフォメーションの実態も含めてきちんと後で確認できるようにしておく上でも非常に重要だと思います。正に日曜日に行われる第27回参議院議員通常選挙を前に、今、国民がウェブ上でどのような情報に接していて、どのような情報が流通しているのか、誰も保存していないというのはやはりおかしいことだと感じます。バルク収集には様々な課題があると思いますが、是非この5年間で積極的に力を入れて検討していただきたいということが一点目でございます。
二点目としまして、資料3-2の9ページの「図書館との連携」の中で「NDL館内限定公開デジタル化資料の一定の条件の下での館外閲覧の可能性検討」と言っていて、これも大変重要なところだと思っています。
例えば、先ほどのウェブアーカイブは収集しても全部公開するわけにいきません。いわゆる館内限定公開資料になるわけです。イギリスですと、その館内限定公開資料としてのウェブアーカイブは、ロンドンの英国図書館だけではなくて、オックスフォード大学やケンブリッジ大学の図書館、それからウェールズ、スコットランド、そしてダブリンと、大体英国全体でくまなく閲覧できるようになっています。
対して日本の館内限定公開資料は、ここ東京本館、京都にある関西館と上野の国際子ども図書館の三館です。館内限定公開資料は、ウェブアーカイブもそうですが、これから様々非常に重要な知的基盤となるであろう中、北海道や九州、四国の人などにとって、ディバイドが新しく生まれてきているように感じるところです。これもいろいろな検討が必要かと思いますが、是非力を入れていただきたい。
三点目としまして、同じ資料3-2の9ページの「関係機関との連携」のところで、学術機関やアーカイブ機関との連携も重要ですが、府省庁との連携も強調している点は非常に重要だと思います。
例えばリテラシー教育であれば、文科省がやっていることもそうだし、私の関わっている範囲で言えば、例えばディスインフォメーション対策のリテラシーで言えば総務省がすごく力を入れている。あるいはこれから人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)に基づいて作られるAI戦略本部の中でも、やはりそういった議論は非常に多く出てくるでしょう。
それに加えて、デジタル行財政改革会議でちょうどこの6月に「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」が取りまとめられ、来年度に官民データ活用推進基本法の大幅な改正を念頭に置いたデータの収集と活用のための総合的な政策についての制度整備が行われる予定です。このこととNDLのデジタルデータの施策が関係しないとは思えません。完全に切り離されて行うのはもったいないところです。
今言ったことを含めて、是非そういった機関との連携調整、場作りを積極的に検討いただきたいと思います。
安浦委員長:
はい、生貝専門委員、ありがとうございました。
それでは、池内専門委員、生貝専門委員の御発言も含めて、おまとめいただいた野末委員から全体を通して何か御感想、あるいは各委員からの御意見に対する御返答でも結構ですので、よろしくお願いします。
野末委員:
ありがとうございます。先生方から頂いた御意見については、もちろんそれぞれのお立場・背景がありますが、いずれもとても重要な論点であると受け止めております。
今回、この提言素案は100年後を見据えており、今想定できる範囲の将来を書いています。この後に様々なことが起こり得るところも見据えていかなければならないのですが、そこは書けないので、挑戦的というか意欲的というか、そのようなところも含めて、今見える範囲では書いておくようにしました。
実際にはこの後にNDLで優先順位を付けて取り組んでいただくわけですが、その中には人やお金の問題もあります。今はない課題や技術等を踏まえた取組も考えていただかなければならないので、その点はこの先の計画の策定、あるいは実際の計画を基にした取組に委ねている側面はどうしてもあると思っております。
話が戻りますが、先ほど先生方から頂いた意見についても、今回のこの提言に取り入れる部分と、論点としては提示しつつ次の第六期の計画で実現するよう検討していただきたいところ、実践で取り組んでいただきたいところ、更にはその先まだ見えてない部分で検討いただきたいところと、少し仕分けをしながら部会で再度検討して、次回のこの審議会で御検討いただく、そのように整理をする必要があるかと思っております。
今回取りまとめてみて分かったことは、やはり利用者側からの発想、視点が非常に重要だったということです。とにかくいろいろな論点がありましたので、議論が右往左往することはありましたが、最終的には利用者側の目線、視点、利用者がどう使うかということで、ある程度まとめることができたのかと思っています。
もう一つは、先ほどから繰り返しになりますが、時間軸を持ち、今だけを見るのではなくて、先々に日本として押さえておくべき基盤は何かということを考える視点でまとめることができたと思っております。
少し雑駁な感想になりましたが、以上でございます。
安浦委員長:
野末委員、どうもありがとうございました。
一通り御意見を伺いましたが、何か全体を通して追加の御意見や御質問がございましたら、どうぞ御自由にお願いします。
では、竹内委員長代理、最初にお願いしたので、最後にもう一度、今までの議論をベースにして御意見いただければと思います。よろしくお願いします。
竹内委員長代理:
ありがとうございます。
先ほど、部会長の野末委員がおまとめになったことがやはり大事だと思っております。様々なアイデアがある中で、この提言に含めること、それから計画に含めること、そして具体的に実践していくことという、いろいろなレイヤーが存在していて、今回様々議論されてきたことがその中にどのように位置付けられていくのか、部会でも御議論いただくことになると思いますし、おそらくNDLでも御検討いただくことになると思います。うまく組み合わさって機能していくということを強く期待させていただきます。
あと一点だけ、御承知のようにNDLには18歳以上でないと入館できないという規則がございます。国際子ども図書館は別ですが、東京本館と関西館の規則はそうなっています。ところが今回のこの提言素案は、それを軽々と越えるものになっているというのが私の理解でございます。
この点は非常に大きいのではないかと実は思っておりまして、先ほど渡部委員をはじめ多くの方々から、学ぶということと図書館の提供できる情報基盤、あるいはそのリソースとの関係について御発言がありました。もちろんオンラインでオープンになっているものは誰が使っているか分からないわけですが、従来18歳以上、つまり大学生、高等教育の対象者以上でないと制度的にNDLのリソースは使えないとなっていたものが今回、明らかにそれを乗り越えていく方向性が示されました。特に学校図書館に言及されることによって、初等中等教育にNDLのリソースがつながるということで、非常にインパクトが大きい提言になっているのではないかと考えているところです。
そういった意味で従来のバリアを軽々と乗り越えていただいた今期の検討部会の皆様方には改めて敬意を払いたいと思います。
安浦委員長:
竹内委員長代理、おまとめありがとうございました。
ほかに特に御発言がなければ、基本方針検討部会の皆様におかれましては、本日出ました様々な御意見をフィードバックとして受け止めていただき、素案を改訂していただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
また、おそらく今回のところでは、まだ議論の入り口までしか来ていないとは思いますが、正に今、図書館という概念が大きく変わりつつあるような時代感があります。公共図書館や大隅委員がおっしゃった大学図書館、あるいは渡部委員から出ました地域の視点を持ち地域の資料を集めている図書館などとの関係性、それとデジタルテクノロジーとの絡み、こういった論点で、今後の図書館の在り方について日本の中で先頭を切ってお考えいただくのはNDLではないかと思います。
今回の提言に書き込むのは時期尚早かもしれませんが、常に御議論いただいて、この審議会でもまた更に議論をさせていただければと感じている次第です。
さらに、村山委員から見えない未来に対してどういう情報を残していくかというお話がございました。科学技術情報とNDLとの関係というものをどう位置付けるか、科学技術情報だけではなくて、先ほど生貝専門委員から出ましたように政治情勢や社会情勢をどう記録として残していくかという視点も含めて、NDLが果たすべき役割についても引き続き議論していただければと思いますし、この審議会もそういう場として使っていただくのがよいのではないかと感じております。
以上で今日予定しておりました議題は終了いたしました。
5. その他
安浦委員長:
この度、戸山委員が令和7年6月26日をもちまして、一般財団法人国際医学情報センターの理事長を退任され、この科学技術情報整備審議会委員につきましても御退任されることになりました。戸山委員におかれましては、平成23年の第1回科学技術情報整備審議会から非常に長い間にわたりまして、御尽力いただきました。心より感謝申し上げます。
せっかくですので、戸山委員から一言お言葉を頂戴したいと思います。戸山委員、よろしくお願いいたします。
戸山委員:
ありがとうございます。戸山です。どれだけお役に立てたか分かりませんが、今、日本の政治も経済も情報もNDLも大きな曲がり角にあるのではないかと思います。本当に素晴らしい方が委員に入っておりますので、是非これから日本の科学技術や知識が更に進展することを願って、私からの最後のお話とさせていただきます。
長きにわたってどうもありがとうございました。
安浦委員長:
戸山委員、ありがとうございました。
それでは最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。
福林科学技術・経済課長:
本日の審議会の議事録につきましては、案がまとまり次第、委員の皆様にメールでお送りいたします。御多忙のところ恐縮でございますが、内容の確認をお願いいたします。確認が終わりました議事録については、委員長の御了承を頂いた後、NDLのホームページで公開いたします。
今後の日程につきまして御説明します。資料4を御覧ください。本日の提言素案に寄せられた御意見等を反映させるために、8月に基本方針検討部会を開催いたしまして、その上で12月頃に開催する第19回審議会で次期基本計画策定に向けた提言を館長にお渡しいただくということを考えております。具体的な日程については改めて御連絡を差し上げますので、引き続きよろしくお願いいたします。
本日は貴重な御意見、御提案を頂きまして、誠にありがとうございました。
6. 閉会
安浦委員長:
予定しておりました議事は全て終了いたしました。本日はこれにて閉会したいと思います。委員の皆様方、様々な御議論を頂きましてありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。
(閉会)
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