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令和2年度第3回納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会議事要録

日時:
令和2年11月16日(月)午後1時~午後2時50分
場所:
Web会議システムによるリモート開催
出席者:
福井健策小委員長、植村八潮委員、遠藤薫委員、奥邨弘司委員、柴野京子委員、永江朗委員、根本彰委員、佐々木隆一専門委員、樋口清一専門委員
会次第:
  1. 有償等オンライン資料制度収集に向けた課題の整理について
  2. その他
配付資料:
  • (資料1)納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会所属委員・専門委員名簿
  • (資料2)有償等オンライン資料制度収集に向けた課題の整理について
  • (参考資料1)有償等オンライン資料制度収集に向けた課題について
  • (参考資料2)オンライン資料収集のイメージ図
  • (参考資料3)収集・保存・所在情報検索のイメージ図
  • (参考資料4)主要国のオンライン資料収集制度
  • (参考資料5)オンライン資料収集に係る法規対照表
議事概要:

資料2に基づいて、事務局から、有償等オンライン資料制度収集に向けた課題の整理について説明し、質疑応答が行われた。主な発言は次のとおりである。

  1. 収集及び収集除外について
    • 「DRMの付されていないファイルを収集対象とすべき」という記載だと、DRMなしで流通する資料のみが収集対象であるように読み取られる可能性がある。「DRMが付されている場合にはそれをはずして収集対象とすべき」と記載した方がよい。
    • 公的機関や学術機関が運営するリポジトリに限らず、営利的機関が運営するリポジトリも規程第3条第3号の対象として収集除外になり得るというのは、従来の解釈と異なるため、次の複数の理由で慎重であるべきだ。
      • 前回ヒアリングを行った一般社団法人日本電子書籍出版社協会が構築予定のリポジトリについて、「長期間にわたり継続して公衆に利用可能とする」への該当性判断は慎重に行われるべきである。特に利用料金体系等が明らかになっていない段階で、「公衆に利用可能」と言ってよいものか判断し難い。
      • オンライン資料の収集目的は「文化財の蓄積及びその利用に資するため」である。収集除外のリポジトリについて、NDLが契約その他の方法により館内で利用可能にしたとしても蓄積はされず、本来の目的を達成できないのではないか。これを認めるなら、規程第3条第3号の改正が必要なのではないか。
      • 今後、出版物の電子化が進み、紙での出版物から電子書籍・電子雑誌に転換することは明らかである中で、民間が運営するリポジトリを収集除外とすることは、納入されないオンライン資料が増え、納本制度の在り方自体を揺るがすことになる。
      • 参考資料4の主要国の国立図書館におけるオンライン資料収集制度を見ると、DRMを解除したものを収集するところがほとんどである。
      • 民間運営リポジトリにより、一度電子化されてリポジトリに収録された資料は、常に入手可能な状態になるため、NDLがデジタル化した資料の一般向けないし図書館向けの公衆送信できる資料の範囲に影響を与える。これはさらに、現在文化審議会(著作権分科会 法制度小委員会 図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム)で検討中の国民への直接のインターネット送信の有効性に影響を与えるものである。
      本来、国立国会図書館法の考え方及び欧米諸国の国立図書館で行われているオンライン資料納入の方法からすれば、営利的リポジトリのコンテンツはDRMを外したものが納入されるべきである。少なくとも、DRM付きの資料が営利的リポジトリで提供されることで収集除外になる可能性があることについて、具体的な検討なしに原則的に認める方向での議論には賛成できない。具体的な検討とは、資料2の項番2.2にある、「公衆(NDLを含む。)への利用提供方法、コンテンツ保存方法(修正・削除方針の妥当性を含む。)、「運営停止時のコンテンツの取扱い(NDLや他のリポジトリへの移管等)、定期的な運営状況報告(提供停止コンテンツの情報共有を含む。)及びNDLとのメタデータ連係の実施に関するNDLとリポジトリ運営者の協定書等による「担保」の内容についての検討である。リポジトリに関する解釈変更が今後の納本制度全般に大きく影響するだけでなく、今、国民的に議論されているネットを通じた情報アクセスの方向性を左右するものであり、議論は慎重であるべき。また、文化審議会での議論では、「国民の情報アクセスの充実」と「権利者・出版社の利益保護」とのバランスに配慮した議論が行われている。こちらも同じ態度で臨んでいるのだろうが、どうも結論ありきで進んでいるような気がしてならない。あちらのワーキングチームの議事録が逐一公開されていて、開かれた場で議論が行われているのに対して、こちらの議論が閉鎖的に見えるのも問題である。
    • 電書協のリポジトリは完成しておらず、収集除外として認めるような段階ではない。現時点では、営利企業で構成される組織が運営するリポジトリであっても、「長期間にわたり継続して公衆に利用可能とすることを目的とし」「特段の事情なく消去されないと認められるもの」であれば、学術機関が運営するリポジトリと同様に、収集除外として認められる可能性があるということを確認するのみである。具体的な除外認定に際しては慎重であるべきであり、協定書の具体的な内容等については、今後の検討事項である。また、規程第3条第3号において、「長期間にわたり継続して公衆に利用可能とすることを目的とし」「特段の事情なく消去されないと認められるもの」を収集除外としているのは、リポジトリにおいても、NDLが主体的に行う「文化財の蓄積及びその利用」と同様の機能を有している場合には、NDLにおいて必ずしも重複して蓄積しなくてもよいという趣旨であり、学術機関のリポジトリが収集除外に該当する可能性があるのと同様に、民間リポジトリについても該当する可能性があるという考え方は、現行規程の範囲から逸脱するものではない。なお、有体物の納本制度においてはNDLによる網羅的収集を目的としているが、インターネットで提供される情報については、オンライン資料を含め、網羅的収集は困難であること等から、納本制度とは別の収集制度を構築してきた経緯がある。オンライン資料収集制度においては、NDLが主体的に行う「文化財の蓄積及びその利用」と同様の機能を有している場合には収集除外を認める仕組みがあり、NDLだけでなく、リポジトリとの役割分担により、日本全体で「文化財の蓄積及びその利用」を実現しようという考え方である。また、市場においてDRMが付された状態で流通する電子書籍等であっても、DRMが無い状態のファイルを収集することを目指しているものであり、諸外国と同様の対応である。民業と図書館機能の線引きとして、入手可能性がある場合には図書館送信、あるいは現在議論されている家庭向け送信の対象にしないというのが、どの立場の関係者においても、概ね共通理解であろう。NDLが商業コンテンツを収集したからといって、何らかの形で流通している以上は、無制限に配信対象となるものではない。NDLとしても「国民の情報アクセスの充実」と「権利者・出版社の利益保護」とのバランスへの配慮が重要だと考えている。オンライン小委員会の記録については、現状、概要をまとめて議事要録としてNDL-HP上で公開しているが、議論の様子が分かるよう、取りまとめの際に十分留意する。
    • 民間リポジトリと言われているものについて反対しているわけではなく、それを収集除外とする仕組みをどのように位置付け運用するのか、特に納本制度審議会の中でじっくり議論した方がよいのではないかと考えている。民間リポジトリについて学術的な機関リポジトリと同等の扱いをしてよいのか、検討すべき課題は述べられているが、具体的な判断基準が不明であり、これがある程度明確にならないと、個人的には賛成し難い。
    • DRMが付されていない状態のファイルをNDLに提供することを原則とするが、長期間にわたり蓄積し公衆に利用可能とする目的で運営されている場合には、収集除外を認めるオプションが設けられているものである。現状では、できるだけ早期に有償等オンライン資料の収集を開始し、資料の散逸を防ぎ、収集の経験を積んでいくことが大事であろうと考えている。令和4年度には制度収集開始するスケジュール感であり、その時点で運営実態のあるリポジトリとは協定書の締結を済ませるよう準備を進めたい。
    • 収集除外の民間リポジトリとNDLの間で協定書の締結を予定しているのであれば、協定書の内容について議論することにより、リポジトリ認定基準が具体化されるのではないか。協定書の内容についての議論を先送りするなら、「長期間にわたり継続して公衆に利用可能とすることを目的とし」「特段の事情なく消去されないと認められるもの」以上に具体化された言葉がない。ヒアリングや小委員会の議論を通じて、基準は具体化されつつあるように思う。例えば「公衆に利用可能」については、利用料金が相場と乖離していないかを確認する等、何をもって規程3条3号の要件を満たすかについての指針があってもよいのではないか。小委員会としての長きに渡る議論の結果を、判断基準のような形で報告書に盛り込むべきだろう。
    • 事務局でも基準の検討に着手はしている。確認すべき観点は、資料2の項番2.2で示したとおりであるが、具体的に何をもってどう確認すべきか、例えばリポジトリの永続性について、財務や人員体制をどれくらいチェックするのか等、詳細はつめきれていない。
    • 悪意をもってリポジトリを立ち上げ、NDLに収集されたくないコンテンツを登録すれれば収集対象から除外されるという名目にもなり得る。今後、リポジトリを理由とした収集除外の申出があった際に、単なる「収集逃れ」の自称リポジトリではないかを判定する機関を審議会の中に作るとよいかもしれない。
    • 「営利企業で構成される組織」には、一般社団法人のような非営利法人だけでなく、株式会社が個社で運用する場合も含まれるのか。非営利法人ならともかく、個社で運用するものを収集除外として認めるのは難しいのではないか。協定書で担保するNDLへのコンテンツ移管も、「運営停止時」という一言では表現が足りないように思う。また、リポジトリ内に、閲覧のみ可能だがプリントアウトは不可、図書館送信は絶対不可等、利用条件が異なるコンテンツが混在している場合、NDLに提供した後の取扱いもコンテンツごとに差別化されるのか。
    • 個社で運用するものをリポジトリと認めるのは、個人的には常識から逸脱しているように思う。それをリポジトリと認め得るとすれば、個社が管理・公開しているからNDLに提供しなくてよいということと同義にならないか。一営利企業が自社のコンテンツのみでリポジトリに該当するものを運営するとは、認定し難いのではないか。
    • 営利企業を集約する組織体として責任を取れるならともかく、個社が公衆に販売するから収集除外でよいという流れになることに懸念がある。
    • 一般社団法人を設立するのも難しいことではなく、一概に、一般社団法人なら認める、株式会社だと認めないとは言えないだろう。運営主体ではなく、認定基準を満たすか否かで判断せざるを得ないのではないか。とは言え、一営利企業が自ら、自社の作品だけでリポジトリを作るという状況には疑問はある。
    • 営利企業1社でリポジトリを運営するというのは確かに違和感がある。一方で、大学が単独で運営している機関リポジトリは収集除外として認められており、運営者が一者のみというだけではない何らかの差異が違和感の元だろう。その違和感が何かを精査し、差異を埋められるならば個社が運営するリポジトリも認められ、埋められないならば複数の営利企業で業界団体を作ってもらうこともあり得るのではないか。
    • 例えば、電子取次事業者や印刷業者が運営を委託されているような場合、あるいは、コングロマリットの場合は、個社が運営するリポジトリという状況は十分にあり得るのではないか。
    • 運営主体が個社か複数社かではなく、悪意の制度利用を排除する基準を考える方が建設的なのではないか。細かいルール作りが先送りされるならば、現時点では、「悪意によって制度が利用されることを認めない」という大きな条件を入れることも考えられる。
    • 悪意の「収集逃れ」を防ぐため、リポジトリの認定基準を満たすか十分に確認する必要はあるが、現状、運営主体の法人格をリポジトリ認定要件とする想定はなかった。
    • 海外事業者が運営するリポジトリについても、この法規は有効なのか。
    • 日本法人を有する海外事業者の場合、日本法人が運営していると見做してリポジトリとして認められる可能性もあるが、実効性の担保も含めて難しい点があるのは課題として認識している。
    • 海外事業者の場合、基本的にはサーバ、課金システム、管理ともグローバルに展開しており、日本法人が提供義務を負うべき発行主体として機能しているかは疑問。リポジトリの認定基準をどのくらい厳格に作るかによるが、海外に拠点が散らばっている場合に、リポジトリとしての責務を負い要件を満たせるかが大事だろう。
    • グローバル企業の場合は、実効性の担保の問題が出てくるだろう。日本法人といっても代理店に過ぎず、トラブルが発生しても責任を逃れる場合もある。リポジトリの管理主体や協定書の効果が及ぼせるかを実態的に見ていく必要がある。
    • グローバル企業だと、実質において日本法に服していないこともある。少なくとも、規程第3条第3号の基準を満たすか否かは、実効性という点で、より慎重な考慮を要するだろう。
    • 単なる電子書店や電子図書館サービスはリポジトリと言えないだろう。リポジトリとは何なのか、基準を明確にすべきである。
    • 小さい出版社が電子書籍を制作しNDLへ直接提供する場合、簡便な方法は用意されているか。また、仮にDRM付きを誤って提供してしまった場合、やり直しを求められるのか。
    • 提供方法は、資料2の項番1.4に記載したとおり、原則として既存の自動収集、アップロード、郵送の3方法を想定し、大量提供の場合は他の簡便な手段を用意する。DRM付きのままだと複製ができないはずなので、誤ってNDLに提供されることは考え難いが、DRMが付されていないファイルを提供するよう求めることになる。
  2. 利用について
    • 館内利用しかできないデジタル資料は、外出困難な利用者にとっては役に立たない。様々な理由で図書館に行けない状況に置かれている人のフォローを真剣に考えなければならない。現時点で可能なサービスのみならず、将来におけるサービスの在り方を先手先手で考えないと、図書館の存在意義を国民に理解してもらうのは難しいだろう。きめ細やかなサービスを確立する必要性を感じる。
    • 現に市場で流通している資料を公衆送信できない点は、著作権法の制約もあり、すぐには変更できない。将来を見据えたご意見として受け止めた。
    • デジタル時代の図書館サービスの在り方は、大きな課題だと認識している。オンライン資料収集については、従来の利用形態を前提として議論を進めてきた。これ以上の利用拡大については、別の場で検討されるべきものだろう。
  3. 補償、政策的補償その他インセンティブ等について
    • ファイル本体に対する補償は不要であり、政策的にも経済的補償は不要ということか。納本制度には代償金があり、出版物の価値を評価しているものとも考えられる一方、オンライン資料の場合は事実上補償がないというのは、出版者から素朴な反発があるかもしれず、NDLには丁寧な説明を求めたい。
    • 手続費用について、編集から営業まで1人で行うような小さい出版社の場合、NDLへの提供の手間が大変だろう。「1人出版社」でも積極的に納本したくなる簡易な提供方法が用意され、提供の手間の分だけ100円でも200円でも還元されるとよいのではないか。
    • 振込手数料の方が高くなってしまう点が、課題解決を難しくしている。こうした、いわゆるマイクロペイメントは、社会のあらゆる部門が直面している課題である。
    • 収集に対する経済的補償は難しい。デジタル時代の新たな利用に係る補償金については、文化審議会で議論されているものもある。館内利用のための利用権契約の拡充については、前向きに考えている。
    • 収集した資料のメタデータが作成され、他の情報と連携し、販売にもつながるという仕組みは、出版者にとってもインセンティブとなるのではないか。
    • 資料2の項番4.3に記載したとおり、販売サイトへのナビゲートを行うことは可能であり、インセンティブとして受け取っていただけることを期待したい。
    • アクセシビリティの観点で、来館困難者に対して利用提供方法を緩和する考えはあるか。また、固定型PDFはアクセシブルとは言えない。
    • 視覚障害者等向けの図書館サービスという大きな観点で検討されるものと考えている。収集対象については、全文テキストデータありの版を優先的に収集する等、最良版の規定で対応することを想定している。
  4. その他
    • 本日の議論を踏まえ、事務局において課題の整理に関する資料を加筆・修正し、委員・専門委員にメールでご確認いただいたうえで、次の審議会で報告する。

(以上)

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