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令和3年度第2回 国立国会図書館活動実績評価に関する有識者会議 議事概要

1.開催日時

令和4年3月4日(金曜)13時27分から15時31分まで

2.開催形式

Web会議システムによるリモート開催

3.構成員

  • (座長)糸賀 雅児(慶應義塾大学名誉教授)
  • 只野 雅人(一橋大学大学院法学研究科教授)
  • 田辺 国昭(国立社会保障・人口問題研究所所長)
  • 山口しのぶ(東京工業大学環境・社会理工学院教授、国連大学サステイナビリティ高等研究所所長)

4. 国立国会図書館出席者

片山副館長、山地総務部長、上保総務部企画課長

5. 主な会議内容

令和4年度国立国会図書館活動実績評価の枠組み(案)について国立国会図書館(以下「NDL」という。)から説明を行った後、有識者会議構成員(以下「有識者」という。)による意見交換を行った。意見交換の概要は、以下のとおりである。

枠組み(案)全体について

有識者:
令和4年度は「国立国会図書館ビジョン2021-2025 -国立国会図書館のデジタルシフト-」(以下「ビジョン」という。)の2年目であるが、今回の枠組み(案)について、5年間の計画の中の2年目であることの特徴はどこにあると考えればよいか。令和4年度に、総合調査プロジェクト等各種の事業を実施するということは理解したが、そのような個別的な話ではなく、ビジョンの2年目であるためこういうことを達成するという大きな目標があれば教えてほしい。旧ビジョンである「ユニバーサル・アクセス2020」の対象期間中には暫定的な総括(中期暫定評価)を行った。今回のビジョンの対象期間中でも、中間年である3年目等に同様の総括を実施するのであれば、そこまでの2年間あるいは3年間にどのような目標を掲げたかを確認しておく必要があるため伺う次第である。

NDL:
ビジョンを踏まえた来年度の評価の特徴として、ビジョンの重点事業に係る二つの事業分野「ユニバーサルアクセスの実現」「国のデジタル情報基盤の拡充」についての評価がある。それらについては、枠組み(案)の最後で、事業分野2でも説明した個別事業、例えばデジタル化の推進や有償等の電子書籍・電子雑誌の制度収集の開始等について、定性的な目標を記載している。

有識者:
枠組み(案)の最後のところで、ビジョンを踏まえた目標設定がされているということで了解した。それについては後ほど伺うことにする。次に、評価指標のうち「3か年平均基準型」について伺いたい。これは直近3年の実績値から目標値を設定するものということだが、直近3年については、用語解説で「ただし、[]を付した特殊な事情のある年度の実績値を除いた直近3年」と補足されている。この「年度」には注記も付されていて、「目標値を未達成だった年度の内、当該年度の実績値が前年度以前の過去3か年平均±3σ(標準偏差)から外れた年度」とされている。標準偏差の3倍ということは極端な外れ値であるから、このようにするのはやむを得ないとは思うが、背景や事情があれば御説明いただきたい。これにはコロナ禍も影響しているのか。

NDL:
御指摘の点について、令和3年度活動実績評価の枠組みでも同じ記述としている。御推察のとおり、コロナの影響もあってこのようにしており、「特殊な事情がある」と判断した指標には、目標値算出において除外した旨注記で説明している。

有識者:
了解した。個別の指標については後ほど具体的に確認したい。

事業分野1及び事業分野2について

有識者:
四点お尋ねしたい。一点目は、事業分野1について、今年は選挙があるが、その影響についてどのように考えているのか。指標1「依頼調査の処理件数」や指標5「国会議員の調査サービスの利用」は、選挙期間中には数字が減少する傾向があると以前に伺ったと記憶しているが、目標値の設定はどのように行うのか。例えば、減少幅を経験的に予測し、それを基に行うのか。二点目は、同じく事業分野1の総合調査プロジェクトを実施して成果を公表するという目標について。「格差、分配、経済成長」というテーマで行うということだが、このテーマは現政権の経済政策に合致しているようにも思われる。これはどのように選定したのか。また、通常の立法に関わる調査と異なり、経済学の深い知識が必要だと思われるが、どのような体制で行うのか。外部の研究者を専門調査員として招き、その人を中心にまとめるといった形か。三点目は、事業分野2の有償等の電子書籍・電子雑誌の制度収集の開始について、来年度の評価の前提となるため、現在の準備状況と残課題を教えていただきたい。四点目は、同じく事業分野2の長期保存対策について。電子形態の資料は、媒体やフォーマットの変化が課題だと認識しているが、NDLではその課題をどのように捉え、どのように対応しようとしているのか伺いたい。

NDL:
指標1「依頼調査の処理件数」や指標5「国会議員の調査サービスの利用」は、選挙だけでなく外的要因の影響を被りやすいため、従前から目標値を設定しない参考指標としている。この指標が選挙によってどのように変化するかについては、新しく国会議員になった先生にはNDLの利用方法について御説明しており、それにより依頼をいただけるようになる効果もあるため、必ずしも大幅に減少するとは言えない。なお、調査研究や政策セミナーについては、計画的に実施する事業であるため、選挙の影響はない。次に、総合調査プロジェクトのテーマだが、現政権の経済政策を意識したものではなく、コロナ禍の影響で国民の間で格差についての不安が高まっているという社会情勢、また依頼調査も格差についてのものが多いという状況を受けて選定した次第である。データに基づき、中立的・客観的な報告書となるよう取り組むことになる。また体制については、現在は経済学の外部研究者は招いていないが、客員調査員という形で外部専門家にも御参画・御指導いただいて、高い水準の報告書をまとめたいと考えている。事業分野2の有償等の電子書籍・電子雑誌の制度収集の開始は、令和5年の1月を目途にしているということを既にプレスリリース等で発表している。その準備状況について三点御紹介する。一点目は法規の改正で、衆議院法制局等で素案について検討いただいている。二点目は広報だが、納本制度審議会等の公式な場での議論から発展して、出版団体等に協力いただき、会合等での説明を積極的に進めている。三点目はシステムの準備だが、こちらについては現存の無償オンライン資料収集の仕組みを活用して、若干の改修を施して活用することを想定した準備を進めている。最後に、電子形態の資料の保存については、仰るとおり様々な課題がある。DVD、VHS等の有体の資料、インターネット資料、オンライン資料等の無体の資料のいずれについても、長期保存において、資料の再現性をどの程度担保できるかということが課題となっている。可能な限り計画的に、長期の保存対策としてマイグレーションを進めることが最優先であると考えている。

有識者:
いまの四点について、評価の方法、あるいは関連指標等に何らかの形で反映させる必要はないか。例えば令和5年1月に有償等の電子書籍・電子雑誌の制度収集を開始することについて、この枠組み(案)のどこかに反映されているのか。

NDL:
有償等の電子書籍・電子雑誌の収集については、先ほど御説明したとおり、現在各種の検討、調整、交渉等をしている最中であるので、現時点ではまだ関連指標には表していない。ただし、指標11「オンライン資料(電子書籍・電子雑誌)の新規収集データ数」では、既に無償のオンライン資料の新規収集データ数を捉えている。令和4年度について、有償等の電子書籍・電子雑誌を仮にこの指標の中で扱う場合、内数として示すことも可能かもしれない。そのあたりは、今後業務、システム等の組立てを踏まえて検討させていただく。

有識者:
令和5年度活動実績評価の枠組みを検討する際には、そのあたりをもう少し考えて指標化していく必要が出てくるだろう。

有識者:
科学技術に関する調査プロジェクトについて、透明性の観点から、この3件のテーマが選ばれた理由をお尋ねしたい。いずれも現在重要なテーマであり、テーマ自体に異議はないが、その選定理由を共有し、後にどのように評価するかという点を議論しておくことは、事後の活動実績評価を十全に実施することに資すると思われるため、お尋ねする次第である。

NDL:
NDLは、国立国会図書館法に基づき、国会で議論になるようなテーマについて調査や研究を実施し刊行物として公表するということを長年にわたり行ってきた。近年の傾向として、分野横断的なテーマが増えてきたため、複数の調査員が参加してチームを編成して報告書をまとめるプロジェクトとして、総合調査プロジェクトを平成13年度から、科学技術に関する調査プロジェクトを平成22年度から実施している。科学技術に関する調査プロジェクトのテーマは、調査及び立法考査局の中で議論して選定している。例えば、あるテーマを視野に入れて外部の有識者から意見聴取をし、そのテーマ選定に賛同いただけたら、翌年度にその有識者に参画いただいてプロジェクトを実施するという形で進めることもある。あるいは、あるプロジェクトの終了時に、プロジェクトに参画いただいていた外部の有識者から次のテーマについて助言をいただき、決定することもある。いずれにしても、テーマは基本的には調査及び立法考査局が主体的・自律的に決定し、調査自体は外部の有識者等の指導も受けながら実施し、最終的には報告書を刊行して国会議員等に配布し政策セミナーを実施する、という形で調査プロジェクト全体を進めている。

有識者:
総合調査プロジェクト等について、NDLとして評価はどのように行っているのか。どれだけ国会活動の補佐ができているかをこの有識者会議の場でも評価する必要があるわけだが、その点についてどのように考えているか。

NDL:
指標としては、指標2「国政課題に関する調査研究の総件数」がそれに当たると考えている。これは、総合調査プロジェクトだけでなく、NDLで刊行している『レファレンス』や『外国の立法』などの論文も含んだ数字である。総合調査プロジェクト等は大きなプロジェクトであるため、同指標に刊行状況を反映することに加え、このような報告書を刊行したということを、「評価結果」において定性的に御報告している。この会議の構成員にプロジェクトの報告書を読んでいただいて評価していただくということまでは想定していない。

有識者:
関連して、総合調査プロジェクト等の予算規模についてお尋ねしたい。

NDL:
科学技術に関する調査プロジェクトの一部については外部委託しているが、総合調査プロジェクトを含めて大半は調査及び立法考査局の職員が執筆している。この場合に予算を執行しているのは、そのテーマに関連する分野の有識者を招いて説明聴取会を行う時の謝金程度である。科学技術に関する調査プロジェクトの一部は、企画競争で調達して実施しており、予算規模は令和3年度実績で約500万円である。

有識者:
今後も、調査プロジェクトについては、関連指標及び定性的記述によるマクロな評価の範囲で、どれだけ国会活動の補佐ができているかをチェックしていく必要があるだろう。

有識者:
事業分野1の指標4「政策セミナーの開催回数(オンライン開催を含む。)」について、参加者数も考慮した方がよいのではないかという話が昨年議論になったと記憶しており、脚注2で触れられている。従来は定員設定がある対面での開催で、今後定員設定がないオンライン開催も増えていくと思う。そのように開催形態が変化する中で、今後の参加者数の変動について、現時点ではどのように見込んでいるかお尋ねしたい。

NDL:
政策セミナーについて、対面で開催していた頃、定員を超過してお断りするような状況ではなく、むしろ、部屋の割には参加者数が少ないという状況もあった。オンライン開催になって参加しやすくなったということか、国会議員の参加人数は従来に比して増加傾向にある。新型コロナウイルス感染症の終息後も、対面とオンラインは並行して開催していくべきだろうと考えている。

有識者:
参加者数を評価指標とすることも今後検討すべきと考えるが、あまりに外的要因を主因とする変動が大きいと外れ値が多くなってしまうため難しいところなのだと思う。当面は様子を見ることになるだろうか。

NDL:
仰るとおり、当面様子をみて、指標が設定できるような状況となったら是非設定したいと考えている。

有識者:
事業分野2について、二点お尋ねする。一点目は、指標13「東京本館で受け入れた和図書の受入れから書誌データ校了までに要した日数」における外れ値の処理について。この指標の数字は、令和2年度にコロナ禍の影響もあって60.1日にもなってしまったため、同年度を除外するということだと理解している。指標13の脚注を見ると、「目標値算出にあたって、令和2年度の実績値を除外し、平成30年度の実績値(13.6日)を算入」とある。用語説明のところにあった「特殊な事情のある年度の実績値を除いた直近3年」によれば、令和2年度の数字を除き、令和元年度、平成30年度、平成29年度の平均値を採るのではないのかと思うのだが、その理解で良いか。あるいは、令和元年度と平成30年度のみで算出するのか。二点目は、指標16「国立国会図書館オンラインからの書誌ダウンロード件数」と指標17「国立国会図書館サーチからの書誌ダウンロード件数(MARC形式)」についてだが、この利用者は、個人ではなく国内の図書館等の機関ではないかと思う。そうすると、この指標は事業分野2というよりは事業分野4に位置付けるのが適切ではないかと思うのだが、いかがか。

NDL:
指標13の目標値算出については、現在は空欄となっている令和3年度の実績値が入ったうえで、令和3年度、令和元年度、平成30年度の3か年の平均で出すということになる。二点目の指標16と指標17については、確かに図書館も利用するものだが、個人の利用者や研究者が、特定テーマの書誌や参考文献集を作成するために活用するようなケースもある。

有識者:
指標13の目標値算出については了解した。国立国会図書館オンラインや国立国会図書館サーチからのダウンロードは、事前申請が必要か。あるいはそのような手続きはなしで利用できるのか。

NDL:
指標16と指標17は、伝統的には、MARCという書誌のグループを対図書館サービスとして提供していくという位置付けだった。ただ、近年は書誌データを無償で自由に使っていただけるという制度を整備したため、オンラインでの書誌データダウンロードについて事前申請は必要なく、現在、利用者は図書館にとどまらない。全件データについても出力可能となっているが、こちらについてはシステムでの操作等の準備が必要であるという実務上の理由から、申し込んでいただくこととしている。

有識者:
了解した。図書館等の各種機関に対するサービスという要素も引き続きあると思うので、事業分野4に位置付けても良い指標ではないかと感じたため、意見を申し上げた次第である。

事業分野3について

有識者:
参考資料4「「個人向けデジタル化資料送信サービス」の開始について」を見ると、利用できるのが日本国内の居住者となっている。この限定はどのような理由によるものなのか。デジタルになれば一般に海外の方は利用しやすくなるものであるし、例えば国立公文書館のアジア歴史資料センター等は海外からも利用できる。デジタルシフトを契機としてNDLが世界に開かれた図書館になれるのかという点にも関わるところなのでお分かりであれば教えていただきたい。

NDL:
御指摘の点は課題と認識している。もともと絶版等資料のデジタル化資料送信サービスは平成26年に図書館送信として始まったが、開始当初の対象は国内の図書館のみだった。その後著作権法が改正され、平成31年から外国の図書館にも送信することが可能になった。ところがその改正の際に、日本からの送信については権利制限規定を設けることができるが、現地での複写利用について日本の著作権法では規定できないということが難しい課題となった。資料デジタル化及び利用に係る関係者協議会等で議論した結果、図書館での複写に関する規定が日本よりも緩い国で、その規定に基づき運用されると、日本国内における複写の運用とバランスが取れないという理由で、外国の図書館ではまずは閲覧のみで開始し、複写については引き続き検討となった次第である。これは海外の図書館からも批判されているところである。今般、個人向けデジタル化資料送信サービスが開始されることになり、海外にも展開できれば、海外に居住している方にとっての利便性という積年の課題がクリアできるかもしれないと期待していたのだが、残念ながらそのような組立てにはならなかった。今後、個人向けデジタル化資料送信サービスが適切に運用されているという評価が得られ、海外に居住する個人にも送信できるようになればと期待しているところである。国立公文書館のアジア歴史資料センターは、おそらくパブリックドメインであるため海外でも特に制約なく複写できるのだと思われる。

有識者:
了解した。地道に解決していっていただければと思う。評価指標は、閲覧と複写の件数ということで妥当だと思う。

有識者:
個人向けデジタル化資料送信サービスについて、別の観点で三点お尋ねする。まず、同じ内容を指す言葉として、「複写」「印刷」「プリントアウト」が本日の配布資料の中で混用されている。これは統一すべきではないか。次に、指標28「デジタル化資料送信サービス(図書館向け及び個人向け)」の「②図書館向けデジタル化資料送信サービス参加館数」という表現は違和感がある。データを自ら登録するレファレンス協同データベースの参加館と異なり、デジタル化資料送信サービスは、NDLから送信されるデータを利用する受け手なのだから、「利用館」と呼んだ方が実態を正確に表すことになるのではないか。「参加館数」という表現は以前からのものだが、指標28に新たに加わった「⑤個人向けデジタル化資料送信サービス利用者からの閲覧件数」や「⑥個人向けデジタル化資料送信サービス利用者からの複写件数」が「利用者」としているため、違和感が際立つことになったと感じている。最後に、個人向けデジタル化資料送信サービスの開始は令和4年5月19日(木)ということだが、この日付には何か意味があるのか。

NDL:
「複写」「印刷」「プリントアウト」の混用については、規則類や内部の統計で用いている項目等を参考に記載していたが、御指摘の点を踏まえ、統一する方向で検討させていただきたい。

有識者:
そのようにお願いしたい。参加館という表現はいかがか。

NDL:
図書館送信サービスは、規約を遵守するという条件を整えて登録した図書館が対象であり、どの図書館でも無条件に利用できるというサービスではないため、従来参加館という言葉を使ってきたという経緯がある。利用者の場合も手続きが必要だが、登録利用者というステータスで利用できるため、個人向けのところは利用者という言葉を使っている。

有識者:
では「登録館」が適当かもしれない。御検討いただきたい。5月19日(木)開始についてはいかがか。

NDL:
5月19日(木)は、資料利用規則改正の施行日である。NDLは月に一度第三水曜日に資料整理休館日があり、その日にシステムの再設定などを実施するため、その翌日とした結果、木曜日というやや中途半端な日になってしまった次第である。

有識者:
了解した。関連して、メール等によりファイルを利用者に送信できる公衆送信の方では、補償金についての調整が進んでいることと思うが、個人向けデジタル化資料送信サービスについては料金徴収に係る課題はないと考えてよいか。遠隔複写サービスでは料金を徴収しているはずだが、それは具体的にどのように行っているのか。

NDL:
御認識のとおり、NDLの個人向けデジタル化資料送信サービスと国内の色々な図書館が実施可能な公衆送信は著作権法上全く別のものであり、前者は補償金が発生しない。公衆送信の補償金はいわば著作権使用料のようなものだが、NDLの遠隔複写サービスの料金は紙代や複写業者の作業に要する費用であって、補償金は現状で必要なく、今後も必要とはならない。そのため、公衆送信が開始された際、補償金が非常に高額となるのであれば、引き続き従来型の遠隔複写サービスの方を利用する利用者も多くいると思う。NDLの遠隔複写サービスの料金徴収は、送付した製品に振込用紙を同封し、後日に支払っていただくという形で行っている。未払いの利用者に対しては督促を行い、支払いがされない場合はしばらくの間遠隔複写の申込みを謝絶するようにしている。公衆送信では後日払い方式だと未徴収の発生率が高くなると思われるため、どのようなフローにするか検討する必要があるのではないかと考えている。

有識者:
後日払いだと未払いは発生し得るだろう。支払いのことがネックになって利用が進まないのは望ましくないので、いずれ電子決済を導入することを考える必要があるのではないか。円滑に支払いができ、必要な資料や情報が入手可能となるよう、公衆送信についても検討を進めていただければと思う。国内の図書館への働きかけを含め、関係者間の合意を形成して、サービスを早期に開始できるよう進めていただきたい。

事業分野4について

有識者:
事業分野4「各種機関との連携協力」についてお尋ねしたい。コロナ禍のため人の移動が難しくなっているという事情を理解したうえでの質問だが、以前は海外の国立図書館やJICAのスキームを使った人材交流のような具体的な事業が明記されていてそれを評価する形だったと記憶しているが、今回の各機関との連携協力の「事業分野の概要及び目標」はそれと比較して曖昧な記述になっているように思う。以前のように事業を具体的に挙げて、評価の対象としてもよいのではないか。また、これまでは新型コロナウイルスの影響が今後どうなるか分からないという状況で難しかったという事情は理解するが、アジアとの協力を強化する、あるいは今まで連携を続けてきたヨーロッパの国立図書館等と形が異なる連携を模索するというように、ポストコロナを見据えた今後の国内外の連携の方向性というものを少しずつ具体的に考えていく必要があるのではないか。

NDL:
御指摘のとおり事業分野4はやや曖昧な記述内容だが、実は令和3年度の枠組みとほぼ同じ文章であり、具体的な国際交流についてはむしろ関連指標に表れている。例えば、海外の国立図書館や関係機関との交流については、具体的には指標36「海外への書誌情報の提供」で、OCLCやVIAFとの連携という形で示している。ただ、仰るとおりコロナ禍の影響でここ2年は内外の図書館との連携がほとんどできていないので、元に戻していきたいと考えている。来年度は、IFLAのようにリアルでの開催を目指している会議もあると聞いているが、多くの会議が引き続きオンラインにとどまると思われる。御意見を伺い、そのような中での国際会議への参加状況等、内外の交流の成果について定性的な報告をすべきと考えたため、対応を検討したい。

有識者:
ヨーロッパについては、入国制限についても徐々に緩和している。そのような状況も踏まえて今後の方向性を検討いただければと思う。

有識者:
「令和4年度国立国会図書館活動実績評価の評価指標・参考指標一覧」の目標値類型を見ると、評価指標の数が、事業分野1は二つ、事業分野2は七つ、事業分野3は八つ掲げられているのに対し、事業分野4は指標34「図書館員向け研修」の一つしかなく、評価する上でやや不足しているように思われる。指標38「ジャパンサーチ」、指標39「レファレンス協同データベース」では累積データ数が参考指標として挙げられているが、いずれの指標についても、色々な図書館等の機関による協力の結果である新規のデータ数は評価指標たり得るのではないか。今後の課題ということでよいが、中長期的には、事業分野4の評価指標を増やすことを検討すべきではないか。

NDL:
新規データ数を指標にするのは難しい面があり、大量のデータを持っている組織に新規に参加・連携していただけるとその年度に大きく伸びるが、少数のデータしか持っていない組織しか新規に参加・連携しない年度には大きく下がることになる。つまり、他律的要因が大きく、3か年平均を基準としにくい領域と考えている。ただ、事業分野4について評価指標が不足しているのではないかという点は御指摘のとおりであるため、今後の検討課題とさせていただきたい。

有識者:
NDLでは、レファレンス協同データベースについてこれまでにも盛んに説明会を開催しており、今後も色々な事業で図書館等向けに説明会を開催されるかと思う。そのような場で、新規データを増やしていきましょう、そうするとお互いにリソースを共有できて便利になりますよ、と意義を訴えて働きかけていくことで、国内の図書館のボトムアップが進むことになる。その点でもNDLの役割は重要なので、そのような活動に関連する指標を評価指標とすることについて、今後御検討いただきたい。

重点事業に係る事業分野①、②について

有識者:
二つの「重点事業に係る事業分野」は、その前の四つの事業分野とどのような関係にあるのか。

NDL:
ビジョンでは、七つの重点事業を掲げている。「ユニバーサルアクセスの実現」という領域の下に「国会サービスの充実」「インターネット提供資料の拡充」「読書バリアフリーの推進」「「知りたい」を支援する情報発信国のデジタル情報基盤の拡充」の四つの事業、「デジタル情報基盤の拡充」という領域の下に「資料デジタル化の加速」「デジタル資料の収集と長期保存」「デジタルアーカイブの推進と利活用」の三つの事業が位置付けられている。「重点事業に係る事業分野」は、それら七つの重点事業に関する二年目の目標をまとめたものである。七つの重点事業の定量的な側面が、ビジョンにおける基本的役割に紐づいた先述の四つの事業分野の関連指標として捉えられている場合、それらを参照する形にしている。七つの重点事業を定性的にどのように評価するかについて、令和2年度第2回の会議で御議論いただき、令和3年度の国立国会図書館活動実績評価の枠組みが決まったが、それを踏襲したものである。

有識者:
四つの事業分野に横断的に関連するものとして、重点事業に係る事業分野①「ユニバーサルアクセスの実現」と重点事業に係る事業分野②「国のデジタル情報基盤の拡充」が示されていると理解した。

有識者:
重点事業に係る事業分野①に障害者向けのサービス拡充についての記載がある。こちらは関連指標を見ても成果が出ているようなので、今後も是非取り組んでいただきたい。関連してお尋ねするが、主要国と比べた場合、日本の図書館における障害者向けのサービスはどのくらいの位置にあるのか。進んでいるのか、遅れているのか、もし分かるのであれば教えていただきたい。

NDL:
大きい流れとしては、視覚障害者等は、これまで点字や録音カセット等で読書を行っていたところ、テキスト情報を持つ電子書籍を、音声読み上げ機能を用いて読むようになってきている。アメリカやフランス等では、図書館が電子書籍の貸出しも行っており、視覚障害者等もそれを利用している。日本ではコロナ禍を契機として、公共図書館でも電子書籍サービスの普及が本格化しつつあるところだが、視覚障害者等がそれを十分に利用しているとは言えない状況である。同サービスをアクセシブルにし、視覚障害者等による利用を促進するための取組みを進められればと考えている。

有識者:
状況と取組について理解した。

有識者:
コロナ禍で色々な事業が負の影響を被ったと思うが、一方ではそれを契機としてデジタルシフトが進んだという面があると思う。重点事業に係る事業分野②に関連してお尋ねするが、令和4年度の予算で、デジタル化の予算はどの程度増額されたのだろうか。

NDL:
デジタル化の予算については、令和2年度と令和3年度の補正予算で手当てがされたが、本予算では増額にはなっていない。本予算におけるデジタル化経費は近年は2億円程度である。2回の補正予算で約45億円と約38億円、計約83億円(システム関連経費を除く)を手当ていただき、大きく前進した。

有識者:
ジャパンサーチについてはいかがか。NDLがシステム運用を担っていると思うが、それについて、予算面、人員面で特別な手当てはされているのか。

NDL:
御認識のとおりジャパンサーチのシステム運用をNDLが担当しているが、その経費は当館の予算から捻出している。人員面の特別な手当てというものもなく、職員が他の業務も行いながらジャパンサーチのシステム運用にも従事している。ただ、外部の方とは密に連携している。内閣府の知的財産戦略本部の下で開催されているデジタルアーカイブジャパン推進委員会及び実務者検討委員会で、美術館分野や博物館分野の代表の方と情報共有・意見交換しつつ、外部の色々な専門家、大学の研究者、学校の教員等と協力しながら、ジャパンサーチの利活用の可能性を探求しているところである。

有識者:
重点事業に係る事業分野①と②の二つは深く連動すると理解している。重点事業に係る事業分野①に「専門知識を活かして膨大な資料・情報をキュレーションし、効率的な調べ方のガイドや、知識を深めるための資料の紹介等、社会に役立つ情報を発信」とあるが、これは非常に重要である。いまのコメントにもあったとおり美術館や博物館をも対象とするのであれば、従来の紙媒体、電子媒体やそれ以外の情報コンテンツからなる巨大な知の集積をナビゲートする役割が、今後NDLに課されていくのではないかと思う。ここでは「資料」という言葉が使われているが、図書館資料に限定すべきではなく、より広く、博物、人物、音楽や演劇等のパフォーマンス等についてもナビゲート可能となるはずであり、デジタル化資料送信サービスもそのための有力な手段たり得るだろう。NDLには、その役割を十全に果たすことが可能な職員体制やシステムづくりを目指していただきたい。

有識者:
構成員との質疑があった部分を踏まえ、令和4年度の国立国会図書館活動実績評価の枠組み(案)を了承したい。本日御指摘等あった箇所について、修正可能なところは修正する等、微調整いただければと思う。

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