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令和2年度第2回 国立国会図書館活動実績評価に関する有識者会議 議事概要

1.開催日時

令和3年3月1日(月曜)15時29分から17時27分まで

2.開催形式

Web会議システムによるリモート開催

3.構成員

  • (座長)糸賀 雅児(慶應義塾大学名誉教授)
  • 只野 雅人(一橋大学大学院法学研究科教授)
  • 田辺 国昭(国立社会保障・人口問題研究所所長)
  • 山口しのぶ(東京工業大学環境・社会理工学院教授、国連大学サステイナビリティ高等研究所所長)

4. 国立国会図書館出席者

田中副館長、片山総務部長、大場総務部副部長企画課長事務取扱

5. 主な会議内容

国立国会図書館ビジョン2021-2025 -国立国会図書館のデジタルシフト-(以下「新ビジョン」という。)の概要を紹介した後、令和3年度国立国会図書館活動実績評価の枠組み(案)について、国立国会図書館(以下「NDL」という。)から説明し、有識者会議構成員(以下「有識者」という。)による意見交換を行った。意見交換の概要は、以下のとおりである。

ビジョンについて

有識者:
新ビジョンとこれまでの中期ビジョン「ユニバーサル・アクセス2020」(以下「旧ビジョン」という。)とのつながりについてはどのように考えればよいか。新しいものがスタートすると考えるのがよいのか、あるいは旧ビジョンとある程度の連続性があると考えるのがよいのか。

NDL:
旧ビジョンは、NDLの基本的な役割を全て網羅しており、それを引き続き推進していかなければいけないということに変わりはない。そのような基本的な部分を全て継承しているということは、新ビジョンのうち「I 国立国会図書館のデジタルシフト」中の「ユニバーサルアクセスの実現」という文言、あるいは「II 基本的役割」全体に表現されている。ただ、情報基盤の整備、もう少し端的に言うと資料のデジタル化は、かつて補正予算で一時的に大規模に進められたこともあったが、その後通常予算では少しずつしか進捗しないという現実があった。それについては、新型コロナウイルス感染症が招来した状況下で、短期的・集中的に進める必要があると考え、新ビジョンでは「資料デジタル化の加速」と特記した。つまり、基本的な部分を継承しつつ、メリハリをつけたものだと御理解いただきたい。

有識者:
旧ビジョンと新ビジョンの構成の差異についてもう少し説明いただきたい。

NDL:
新ビジョンでは、旧ビジョンと異なり、この5年間で力を入れる事業を、最初に「7つの重点事業」として提示している。それに続く「II 基本的役割」については、旧ビジョンにおける「国会活動の補佐」「資料・情報の収集・保存」「情報資源の利用提供」が「1国会活動の補佐」「2資料・情報の収集・整理・保存」「3情報資源の利用提供」にほぼ対応している。また、旧ビジョンでは行動指針として別立てで整理していた連携についても、四点目に「4各種機関との連携協力」として並べる形にしている。

有識者:
基本的役割が旧ビジョンから新ビジョンに継承されていることが理解できた。そして、今回基本的役割に加わった「4各種機関との連携協力」も非常に重要である。これは重点事業の後半の「国のデジタル情報基盤の拡充」にも関連する。国のデジタル情報基盤は、NDLだけが努力すれば成立するというものではなく、国内の図書館等もそれを進める必要があり、デジタル化やアーカイブ化においても、他機関との連携という視点が重要であるためである。本日この後に行う令和3年度の評価の枠組みに係る議論でも、その点を踏まえさせていただく。

NDL:
了解した。

有識者:
旧ビジョンでは、「四つの視点ないし行動指針」の一つとして、「組織力:個々の職員の能力をいかす」という項目があった。新ビジョンでは、それに当たる項目がないのが少し気になる。公的機関について、組織のガバナンスやコンプライアンスの重要性は、以前にも増して高まっている。説明責任を果たすことができる機関か、ということに、国民は強い関心を寄せている。「個々の職員の能力をいかす」とはやや異なった視点にはなるが、この点どのように補っていく想定か、考えがあればお聞かせいただきたい。

NDL:
仰るとおり、組織力については今回明示的には表現していないが、決してその点を軽視している訳ではない。新ビジョンは、NDLという組織が社会に対してどのような役割を果たすか、国会や国民等に対してどのような機能を提供するかという観点でまとめたものである。説明責任は、それとは別に、活動実績評価の活動等を通じて適切に示していく必要があると考えている。

有識者:
理解した。この有識者会議も、NDLのガバナンスにおいて重要な役割を果たしうる。そのような視点も持ちつつ、この会議を進めていく必要があるだろう。

NDL:
そのようにお願いしたい。

有識者:
新ビジョンについて三点コメントしたい。一点目は対象期間に係る考慮についてである。新ビジョンは、2021年から2025年、つまりこの四半世紀の最後の5年間を対象としている。その点から考えると、この間に情報技術の進展によりコミュニケーションの在り方が大きく変容したという点をもう少し前面に押し出すべきかと思う。そして、2025年に、新型コロナウイルスの影響がどの程度残っているかが予見できない中で、それに係る記述が最初に登場することにも違和感がある。二点目は、「7つの重点事業」の構成についてである。「ユニバーサルアクセスの実現」のうち、「1国会サービスの充実」や「2インターネット提供資料の拡充」は、「国のデジタル情報基盤の拡充」が実現されて初めて可能となるものである。一方で「3読書バリアフリーの推進」や「4「知りたい」を支援する情報発信」はどちらかと言うとリアルなサービスを含意しているように読める。かように、デジタル化に関する情報が拡散している印象がある。三点目は、基本的役割の「4各種機関との連携協力」についてである。新ビジョンは、海外の関係機関との協力という部分が旧ビジョンに比して薄く、かつ具体性を欠いているように感じられる。新型コロナウイルスの影響で、リモートでの作業、リモートでの会議等が日常的なものとなり、国際連携はむしろ進めやすくなったという面もあるはずなので、この項目については、どのように強化していく想定なのか。

NDL:
一点目については、まず21世紀の最初の四半世紀という視点は大変重要だと思う。それに関連して申し上げると、この5年間で、20世紀の文献全てをデジタル利用できるようにするというのが、NDLが新ビジョンで掲げる目標である。重点事業の「5資料デジタル化の加速」中の「5年間で100万冊以上」は、21世紀の四半世紀が過ぎる頃には前世紀の文献は全てデジタル利用可能とすべき、という構想を含意している。そして、新型コロナウイルスの中期的な影響については、確かに現時点で予見できないが、デジタルシフトの大きなきっかけであるため、2021年に公表するビジョンということもあり、冒頭部分に記載した。なお、新ビジョンは、一度策定し公表したら変更しないというものではなく、大きな社会変動があった際には対象期間中に見直しを行うこともあらかじめ想定するものであるので、その点もお踏まえいただきたい。次に二点目についてだが、「3読書バリアフリーの推進」と「4「知りたい」を支援する情報発信」についても、デジタルを中心としたものである。前者については、これまでデジタル化は画像中心だったところ、今後はテキストデータを作製し、障害者の方に利用していただくことを想定している。後者については、デジタルの情報を横連携させ、再編するということを含意している。つまり、全て「デジタルシフト」というキャッチフレーズに紐づくものである。最後に三点目だが、仰ったように、NDLも国際会議や海外出張はこの1年間ほとんどなく、代わって海外の機関ともWeb会議を日常的に行うようになり、従来よりもはるかに密な連携が可能となっている。具体的施策として今後膨らませていきたい。

有識者:
デジタルシフトを進めるための「7つの重点事業」について、全体的な考え方が理解できた。

枠組み(案)全体について

有識者:
「国立国会図書館活動実績評価の運用について」に「従前の運用を一部変更した上で実施する」とあるが、この一部変更というのは、年度ごとの重点事業は設定しないという部分だけか。他にも変更点があれば教えていただきたい。

NDL:
仰った点が最も大きな変更点ではあるが、二点補足させていただく。一点は、従来とは異なり、評語を4段階に明確化して別出しにしていることである。もう一点は、重点事業について、基本的役割とは別の評価の仕組みを採用していることである。

有識者:
従前の運用からの変更点について理解した。

事業分野1について

有識者:
まず、内容というより、表の構成について伺いたい。指標の上位項目と下位項目の区分が見にくくなったと思う。以前の方が見やすかったように思うが、なぜ変更したのだろうか。

NDL:
指標の提示の仕方については少し工夫したい。

有識者:
新型コロナウイルス下で、政治と専門家との関係が従来以上に問われるようになった。それに関連してお尋ねするが、「事業分野の概要及び目標」の2段落目の記述は、専門的な観点からの情報を取りまとめるということなのか。あるいは、国会議員との間のやり取りを含意しているのか。いずれであるか示してほしい。

NDL:
専門家の知見を活用して調査をしていくことに重点を置いている。専門家の方々が研究している成果、あるいはNDLでプロジェクトを立ち上げ、専門家の方々にも調査に加わっていただいてまとめた成果を、国会にも還元していく。具体的には、出版物としてまとめ、配布する、あるいはセミナーをリアル又はオンラインで開催して参加いただく。それらの手段で提供した知見を、政策立案等に活用いただくということを想定している。

有識者:
同じ箇所について。旧ビジョンの下での活動実績評価では、例えばEBPMのように、海外の専門家と一緒に成果を出したというプロジェクトがあったが、次の5年間について、現時点でプロジェクトの候補はあるか。活動実績評価は、基本的にはインプットで評価するものではないとは思うが、可能であれば教えていただきたい。

NDL:
これまでに御紹介してきたものとも重複するが、例えばベトナム国会図書館への支援なども継続している。現状では、直接訪問しての支援はできないが、状況が改善されれば当然継続していくということになると考えている。そのほか、欧州議会調査局(EPRS)との連携も継続しており、今年度も、オンラインで状況の共有や意見交換を行っている。これらのプロジェクトについては、来年度以降も継続することを想定している。

有識者:
評価指標「4政策セミナーの開催回数(オンライン開催を含む)」について、せっかくオンライン開催も含んでいるのであれば、参加者数も重要な指標になると思うがいかがか。

NDL:
オンラインにした結果、参加者数が増えているという傾向はあるようなので、指標として追加可能か、担当部署とも相談する。

事業分野2について

有識者:
評価指標「19資料保存対策を行った資料点数」について、どのような課題があるか伺いたい。例えばマイクロフィルム等、どのような状況にあるのか。そしてその数字はこの点数の中に含まれているのか。

NDL:
マイクロフィルムについては、NDLはかなりの数所蔵しており、紙媒体の資料をマイクロ化したものについては、今後デジタル化に切り替える。デジタル化の初期の段階では、マイクロフィルムからのデジタル化もかなり行っていたが、近年は現物から直接デジタル化を実施する方向に切り替えたため、マイクロフィルムは補助的な役割になってきている。一方でそれとは異なり、最初からマイクロフィルムの形態で購入している資料というのも相当数あるため、それらについては、適宜状況をモニタリングしつつ、保存対策を行っていく必要があると考えている。一気にできることではないため、「マイクロ資料長期保存対策実施計画」を立ててまず現状調査から取り組んでいる。マイクロフィルムの再作製、あるいはデジタル資料のマイグレーション等も、「資料保存対策を行った資料点数」の点数には含める想定である。

有識者:
NDLの長期的な媒体変換の計画が整うと、国内の他の図書館でもそれを踏まえやすくなっていく。そのことがデジタルシフトの一翼を担っていくのだろうと思う。

有識者:
今後デジタルシフトを進める中で、電子媒体と紙媒体が同時に刊行・提供されているものの収集をどのように考えていくのか、想定を教えていただきたい。電子媒体中心になっていくのか。あるいは、紙媒体も残していくのか。

NDL:
利用の観点では、元々は紙媒体しか存在しないものも、電子媒体が流通しているものも、あわせてデジタルで提供するというのが当面の目標である。ただし現状では、電子媒体は収集できていないものが多いということが課題である。いずれにせよ、現時点では、紙媒体と電子媒体、いずれをも収集して保存していくという基本方針に変わりはない。

有識者:
旧ビジョンまでは、「資料・情報の収集・保存」という活動目標に、「東日本大震災アーカイブ 新規メタデータ数」という評価指標があったが、今回はそれがないように見受けられる。ちょうど東日本大震災から10年が経過しようとしているところでもあり、この理由を伺えればと思う。

NDL:
10年が経過し、新しいアーカイブが立ち上がってくるという状況ではなくなってきているというのが大きい理由である。むしろアーカイブをこの10年を機会に閉じるという話もいくつか出てきているような状況であり、東日本大震災アーカイブの今後の活動の重点は、新規に連携してメタデータを増やすということではなく、閉鎖アーカイブをいかに救うか、ということに移っていくのではないかと考えている。アーカイブの閉鎖を推奨する訳にはいかないため、これを指標として掲げるのは難しいという判断をした次第である。

有識者:
被災した方々にとっても重要な東日本大震災アーカイブを、NDLとしては当然続けていく、ただ今回評価指標からは外れる、という理解でよろしいか。

NDL:
そのとおりである。

有識者:
理解した。ただ、その変更点についての説明責任を果たすことが可能なように備えておいていただく必要はあるだろう。

事業分野3について

有識者:
「26所蔵資料のデジタル化実施数(紙資料・マイクロ資料)」には、国際子ども図書館で所蔵する児童書も対象として含まれているという理解でよいのか。新型コロナウイルスのため、子どもたちも学校に行けない期間があり、かなりオンラインでの活動に移行している。また、国際子ども図書館を実際に訪問するのが難しくなっていることもあるので、児童書のデジタル化が進むとよいと思いお尋ねする。また、先ほど、政策セミナーについて参加者数は指標として示さないのかと質問したが、「31イベント」では総参加者数を示し、加えてその内数である国際子ども図書館関連等のイベントへの総参加者数まで示している。この指標はなぜここまで細かくしたのか。いずれにしても、政策セミナーの指標との整合性があった方がよいのではないか。

NDL:
児童書のデジタル化は、令和3年度に調整・準備を進めていく計画になっている。児童書のうち、図書と紙芝居を対象としており、古いものからとなるが順次取り組んでいく。イベントの指標については、国際子ども図書館のイベントについては、子どもの読書支援に関する指標として特に他のイベントから区別して記載しているため、このようにやや複雑な構成となっている。

有識者:
国際子ども図書館の指標について、やや特殊な扱いが必要であるということで理解した。他の指標と比較した時に精粗が異なることになるが、やむを得ないだろう。

有識者:
「事業分野の概要及び目標」に「展示会や講演会等のイベントを実施する」とあるが、資料5「令和3年度国立国会図書館活動実績評価の評価指標・参考指標一覧」には「展示会に関してはコロナの影響で少なくとも令和3年度は廃止」とある。これは整合しているのか。

NDL:
電子展示会は引き続き行っていくことは明確に打ち出しており、また講演会もオンラインで実施することが可能である。一方で、リアルな展示会は、密にしないということを考えると、中小規模のものは継続して実施可能ではあるが、大規模なものは実施できない。そのような状況を受け、「事業分野の概要及び目標」には展示会を実施する旨を記述しつつ、関連する評価指標は当面廃止という形とした。なお、指標上は、イベントの開催回数についてはオンラインとリアルを区別していないが、展示会については区別しており、今回の枠組ではオンラインに関する「25電子展示会のデータへのアクセス数」のみを参考指標として用いることを想定している。

有識者:
理解した。リアルの展示会に関する指標の廃止は、当面は状況的にはやむを得ないと考える。なお、国際子ども図書館の児童書の展示は、実際に親子で見ていただく必要があるものだろう。今後は、国際子ども図書館で行うだけではなく、全国で巡回展示などにするとよいのではないか。新型コロナウイルスが収まった後は、そのようなことも御検討いただきたい。

有識者:
「28図書館向けデジタル化資料送信サービス」について、対象資料数が増えると大学にとってもありがたいが、実際には平成30年度から令和元年度にかけてあまり増えていないようである。著作権処理の問題が関わっているのか、あるいは今後の5年間で増えていく想定であるのか等、そのあたりの事情を伺いたい。

NDL:
平成30年度から令和元年度にかけて指標があまり伸びていないのは、デジタル化自体が進んでいないためである。図書館向けデジタル化資料送信サービスの対象資料は、絶版等入手困難なものと限定が付されている。ただ、毎年度のデジタル化では、入手困難な図書を多く対象としているため、著作権処理の問題のために点数が伸びていないということではない。今後は2000年までの資料の全てを目標に大きくデジタル化を進めるため、この対象資料数も伸びていくはずである。

有識者:
現在、著作権法改正の議論で、デジタル化資料を利用者の自宅まで送信可能とするような法改正の動きもあるようである。図書館を経由せず利用者の自宅や研究室にダイレクトに送信可能となれば、数字も変わっていくかもしれない。NDLへのアクセスは増えることになるだろうが、図書館向けの送信サービスがどうなるか。この点について最近の動向を把握されていたら教えていただきたい。

NDL:
おそらく近日中に国会に法案が提出されると思われるが、NDLに利用者登録を行う等一定の条件をクリアすれば、個人に送信可能とするように著作権法を改正する想定のようである。NDLとしても、デジタル化資料がより広く利用していただけることになるので、期待して見守っているところである。

有識者:
今回、評価指標としてはこれで良いと思うが、今後、法改正等により、国内の各図書館でのデジタル化資料の利用方法が変更されていくのであれば、NDLの数値の増減に一喜一憂するのではなく、背景や、そのような動きに対するNDLの貢献が捉えられているとよいと思う。法改正や、社会的制度の変化に目配りし、定性的な記述をしていくべきであろう。いずれにせよ、デジタル化資料送信サービスは、特に首都圏以外に居住する利用者にとって、非常に有用なサービスである。引き続き、重要な位置付けを与えていただきたい。

事業分野4について

有識者:
連携協力の相手が、やや図書館関係の各種機関に偏っている印象がある。ただ、「38ジャパンサーチ」は、図書館の領域を越えた取組であると思う。こちらの本格稼働はいつ頃の想定か。また、「①累積データ数」、「②累積データベース数」、「③連携(つなぎ役)機関数」といった各指標がどのようなものか、もう少し詳しく教えていただきたい。

NDL:
ジャパンサーチは既に本格稼働しており、連携先も増えつつある。仰ったとおり、図書館に限らず、特に博物館、美術館とも幅広くつながっていこうと活動している。こちらは、国全体で進めている事業で、知財戦略本部の下のデジタルアーカイブジャパン推進委員会と実務者検討委員会が方針を定め、NDLが運用するという分担になっている。お尋ねの指標についてだが、「①累積データ数」はメタデータの件数である。「②累積データベース数」は、連携先データベースの数である。「③連携(つなぎ役)機関数」は、「つなぎ役」というのが少し分かりにくいかもしれない。ジャパンサーチが直接全ての個別機関と連携するのは難しいので、領域ごと等の中間的な機関が、一旦メタデータを取りまとめたうえでジャパンサーチに提供する、という構造にしており、その取りまとめ機関のことを「つなぎ役」と呼んでいる。例えば美術館の領域では全国美術館会議などがその役割を果たしており、そのような機関を増やすことでより幅広い連携を行っていこうとしているところであるため、指標として採用することとした。

有識者:
ジャパンサーチは、事業分野としては、「4.各種機関との連携協力」で良いのか。「3.情報資源の利用提供」にも関わると思うが。

NDL:
もちろんサービスとしての側面もあるが、現段階では、様々な機関との連携という側面を重視して「4.各種機関との連携協力」に入れている。サービスの側面を軽視している訳ではなく、例えば画像検索など、新しい技術への取組も進めている。

重点事業に係る事業分野①及び②について

有識者:
新ビジョンの説明で、七つの事業に重点的に取り組むと伺った。その重点事業が「ユニバーサルアクセスの実現」と「国のデジタル情報基盤の拡充」という二つの事業分野に分類されていて、それぞれについて評価の枠組みを関連指標として提示しているということかと思う。

NDL:
御理解のとおりである。

有識者:
特にデジタル化について、野心的な5年間の目標を立てている。先ほど仰ったように、以前も、大きな額の補正予算が認められて、デジタル化が一気に進むということがあったと思う。今回も補正予算が60億円付いたということだが、それは来年度限りの話と理解している。その後の4年間について、安定的に予算が付く見通しはあるのか、現時点の認識をお聞かせいただきたい。

NDL:
60億円の補正予算については、今年度に付いたものだが、年度末が近いので、1年繰り越し、来年度に執行する予定である。継続的な予算の確保は、確かに大きな課題である。本予算の中では、デジタル化の予算は2~3億円程度しか認められていないため、どのように拡充していくかということが、具体的な課題としてある。60億円の補正予算を認めていただいたが、もちろんそれだけでは目標の達成には十分ではないので、現時点で見通しが立っている訳ではないが、引き続き必要性を訴え、従来以上の規模での予算の確保、デジタル化を進めていきたいと考えている。

有識者:
国のデジタル情報基盤の拡充は、1年間ではもちろん、5年間でも完了するようなものではない。今後長期的に取り組んでいくべき課題であろう。ところで、「6デジタル資料の収集と長期保存」には「有償の電子書籍・電子雑誌の制度収集を開始し」とある。こちらも費用が必要だと思うが、それは、60億円の補正予算の中に含まれているのか。あるいはそこには含まれないとしても、「2000年までに刊行された図書資料全てのデジタル化」という構想の中には含まれているのか。

NDL:
含まれていない。有償の電子書籍・電子雑誌の制度収集については、現在納本制度審議会で議論しており、今年度中に方向性が示される予定である。その後は、それを受けて現在は制度収集の対象外である有償、DRMのある電子書籍・電子雑誌を対象とするための具体的な準備が進んでいくかと思う。なお、「2000年までに刊行された図書資料全てのデジタル化」は紙からのデジタル化を意味するが、それ以降については、ボーンデジタルの電子書籍を収集等していくことを想定している。それにより、どこかの時点で両者がつながり、全ての図書資料について、紙からデジタル化したものかボーンデジタルのいずれかの電子書籍は存在する、という状況を実現したいと考えている。

有識者:
いまの説明に関連して、評価指標「11オンライン資料(電子書籍・電子雑誌)の新規収集データ数」についてお尋ねする。いずれ、例えば令和4年度あるいは令和5年度くらいに、この指標の下に、無償と有償という区分が設けられるといったことが考えられるか。

NDL:
この評価指標について、有償と無償を区分できるかについては、今後の要検討事項である。場合によっては、包括の数字になるかもしれない。業務フロー上その二つが画然と分けられるかが現時点では明確ではないので、今後整理を進め、実施する段階で改めて御提案したい。

有識者:
理解した。先ほど説明があった「デジタルで全ての国内出版物が読める未来」に向けたロードマップ、進捗が、毎年の評価の枠組みの中に適切に落とし込まれ、捉えられていくのが望ましいと思うので、引き続き注視していきたい。本日提示された枠組みは、あくまで令和3年度のもので、重点事業に係る事業分野についても、令和4年度以降は当然評価の枠組みは変わっていく、という理解でよいか。

NDL:
そのとおりである。

全体を通して

有識者:
本日御説明いただき、構成員との質疑があった部分を踏まえ、令和3年度の国立国会図書館活動実績評価の枠組みの原案を了承したい。本日御指摘等あった箇所について、修正可能なところは修正する等、微調整いただければと思う。

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