資料と解説

1-2 グルーのシカゴ演説 1943年12月29日

戦前の駐日大使を経て大戦末期に国務長官特別補佐官を務めたジョセフ・グルーが、1943(昭和18)年12月29日にシカゴで行った演説。この演説においてグルーは、日本の軍国主義は徹底的に罰しなければならないが、戦後改革の際には、偏見を捨て日本の再建と国際復帰を助けるべきだと主張した。そして、天皇を含む日本国民を軍部と区別すべきことを強調し、具体例を挙げて、日本人の多くが友好的であり「羊のように従順」であることを論じた。またグルーは、神道は軍国主義者によって教条的に利用されたが、天皇崇拝という面は平和国家再建のために利用できると主張した。さらに、明治憲法は天皇に主権を与えているため、どの政党も国民主権を主張できないと指摘したうえで、憲法が改正され日本国民が十分な時間を与えられれば、日本に議会制度を再建し政党制度を確立することができるだろうと論じた。

天皇制の存続と穏健な改革を提唱したグルーの論調は、国務省知日派の構想と類似していたが、こうした天皇制存置を訴えるグルー演説には、幅広い層から反発が巻き起こった。 

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