日本語学校の閉鎖(邦字紙記事)

O fechamento das escolas de língua japonesa (artigo publicado em jornal de língua japonesa)

Closure of Japanese language schools

日本語学校閉鎖の事態に対し、1938年(昭和13)12月23日ブラジル日本人文教普及会主催の第1回地方学校協議会会長会議において、同普及会葛岡忠雄学務課長から「和魂伯才」を人物養成の指導原理とすることが示された。

新裁可の教育国家管理令

  外国語教育に又制限

  十才が十四才までに延長され
    教師は総て伯国生れ伯国人に


『伯剌西爾時報』昭和13年5月7日

 既報の通り広汎に亘る外国人入国取締令を裁可したヴアルガス大統領は更に移植民審議会を設けて大統領任命の直属委員七名を置き、その下に又委員任命のオブザーバーを設置する権限を与へて外国人取締を厳にする制度を布いたが此の入国取締に附随してゐる教育国家管理令は今迄通りの教育令と大略同様であるが農村学校教育と外国語教育に付いては尚ほ一層制限を加えてゐる、即ち

  全国内総ての農村学校教育には必須の塲合を除く総てに葡語を使用し管理者は伯国生れの伯国人なる事、尚ほ十四歳以下の学童には校内で外国語教授をする事厳禁す、使用教科書は総て葡語、小、中学校教育には伯国地歴教授を義務とす

 以上の通り改制されてあるが従来十歳以下となつてゐた外国語教授禁止が十四歳まで延ばされその上農村学校教師は伯国生れの伯国人なる事と限定されてゐるので日本人教師に影響する所甚大と云はなければならない、前項には外国語書籍、雑誌、新聞発行の塲合は前以て司法省に登録し許可を受けなければならないと云ふ一条がつけ加えられてゐる


邦教育非常時打開は
 ただ熱意と努力のみ
  全伯邦人の決意堅し教育会議最終日


『聖州新報』昭和13年12月24日

 前日教育令発布の経過と州教育局の動向について説明をきき[、]ついで各地教育問題の実情を開陳した各代表は[、]而上更に緊張の度を加へ真剣に子弟の問題否日本民族の問題としてあく迄解決の方途を見出さんとする努力をみせてゐるが[、]昨日野村事務長の文教普及会概況説明に次いで[、]葛岡学務課長が「子弟教育の目標」を提げて起つや[、]万場片唾を呑んで之に聞きほれ[、]従来日本民族が云はんとして云ひ得なかつた力強きその一言一句に一同今更の如く沸々たる祖国の血を燃やしたかの観があつた

子弟教育の目標
 伯国における我第二世三世の日本語教育の必要は、日本帝国の存在と共に永久に不可欠なものであるといふのは[、]日本帝国の移植民政策なるものは飽迄も日本帝国の発展に資たるべきもので日本人を其移民国にくれてやると言ふ事ではない、

 依つて移民たる我が同胞は其世界に冠たる独特優秀なる個性を発揮我が祖国と同線上に起ち我が国家民族の発展の基にならねばならないのである、その為にはその精神を日本語によつてよく第二世に伝へる事は一世の義務であり、又一面に其の個性発揮を容易ならしむる為伯語をよく修得せしめて伯国における生活権をよく保護助長せしむる事も第一世の義務なのである

 従つて此処に「和魂伯才」なる指導原理を以て我が第二世を完全なる日本人に仕上る事が二世教育の目標であると広言してはばからぬものである尚同化と海外発展につき英国の植民政策を例にとり同化が一民族の海外発展に障害となる場合、或は基礎民族のない伯国が同化々々と呼ぶのは甚だドウカと思ふ等のユーモア混りで日本人は日本人として伯国に発展せねばならぬ事を一層強調し次で

目標への到達
 如何なる同問題の本門に入つた[、]これに対して名案ありやと問れれば正直になしと答える以外を知らぬのである、この問題は名案とか頓智とかが解決する問題ではな[く]只熱意と努力に依つてのみ解決さるべきものなのである、其為には従来しばしば経済問題と感情によつて起りつつあつた村落内の係争等は先づ改め社会家庭学校が三位一体となり全村学校といふ意気の下に身を以て第二世の指導に当らねばならぬのである

と子弟教育に対する全伯同胞の熱意を促し、いよいよ家庭における父兄の自覚の必要を説き就中母の位の重大なる事にふれ現在聖市にある岡田千代子女史が会長として結成されて居る【母の会】を称揚し文教会としてはこの種の会の全伯化を計り更に援助する旨を発表した後愈よ右の具体案に入つた

子弟教育具体案
 伯語教育 伯国人の伯語教育と日本人の伯語教育には前述の如く根本的に相違があるので今後伯人教師の赴任によつて植民者対教師間に或種の紛擾を惹起する事も予想されるのでその村の経済状態及び其他の事情のゆるす限り私立学校を設けて親日教師今後育英生中より出る伯国生れの合法的教師の誘引を計る事は今後の方針として充分考慮されてよいと思ふ

 日語教育まづ満六、七歳迄は家庭に於て特別の規則的日語教育は必要ないが[、]必ず日常日本語をのみにて子弟に当り其後伯語学校に入る事がまづ日語教育の一番大事な温床である第二段とし伯語学校通学の傍ら文教会編纂の日本語読本第四巻を四年間一年各一巻に終了さすべきでこれによつて日本の初等程度の課程は終る訳である、尚其他少年団、青年団の組繰ママ強張ママこれによる

▲体育、野球、剣道、柔道、バスケツトボール、バレーボールによる精神教育
▲修養、共同作業(奉仕的なるもの、児童産組、共同農園)による共同精神産業知識の涵養をめざす
▲衛生 各地に講習会を開催十二指腸虫、トラホーム撲滅を計る一方衛生知識を助長する

その他寄宿舎に就ては之を一農村寄宿舎(州立グルポ[注 小学校]附近に設置し葡語学修に便ならしめる事、又経済的には生活の物資は自給自足による)と二都市寄宿従来都会にあるものを一層盛んにするとの二つにわけ[、]これによつて日語教育の欠を補ふ事となつた以下後報