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「自然をみる眼」

これらの図譜は平成元年に当館で開催した展示会「自然を見る眼―博物誌の東西交流―」に展示されたもので、ここにはその一部を取り上げました。

  1. 江戸時代の図譜
  2. 西洋の植物図譜

1. 江戸時代の図譜

『草木実譜』 毛利梅園著 手稿本 1冊<特7-163>

題簽は「写真斎実譜」。果物、野菜をはじめとする植物の実の彩色図155図を収録。巻末に約30種の海藻を付載 (うち3種は解説のみ) 。いずれも漢名、和名を記す。形態、味などを解説したものもある。原表紙に貼付した紙片に伊藤圭介の識語がある。

『梅園草木花譜』 毛利梅園著 手稿本 17帖<別4231>~<別4321>

「春の部」4帖、「夏の部」8帖、「秋の部」4帖、「冬の部」1帖から成り、別に目録がある。美しく彩色された図には和漢の名称、採集地、和漢の書物からの引用などを付している。「春の部」の第1帖には文政8年 (1825) 、第2帖には天保15年 (1844) の自序がある。各帖の題字は「梅園草木攅花画譜」「楳園草木花譜」などとあり、阿部備中守、桂川甫賢、佐竹義行どにより揮毫されている。

『〔草花写生図〕』〔飯室庄左衛門著〕 手稿本 1冊<特1-215>

題名は題簽による。一部無彩色の物を含む。和名、漢名のほかに産地、方言などを書き入れたものもある。後見返しに「本草名家飯室庄左衛門自筆写生本」との明治38年 (1905) 10月29日の白井光太郎の識語がある。

『雪斎写生草木鳥獣図』服部雪斎画 自筆 1帖<特7-653>

雪斎の描いた絵を、森立之がまとめたもの。折帖で、片面は鳥21図・獣5図、その裏が草木13図となっている。いずれも精緻で美しい彩色の図。装訂して伊藤圭介に譲るという内容の、丙子 (1876) 11月の森立之の識語がある。

『蝦夷草木図』〔小林源之助編〕 栗本昌臧〔丹洲〕写 1帖<亥-215>

樺太を含む蝦夷地の植物の彩色図約60点を収録。当館所蔵の別本 (桂川国瑞写) によれば、原本は小林源之助画。小林は西丸与力で、1792年最上徳内の蝦夷地調査に参加した。この本は現地での名称、写生場所を墨書し、さらに朱墨で漢名、和名、蛮名等、藍墨で考証を記す。巻末の丹洲の識語によれば、堀田侯蔵本を写したもので、朱墨は丹洲自身、藍墨は坂丹邱の書き入れである。

『梅園菌譜』毛利梅園著 手稿本 1帖<別4255>

書名は題簽による。目録首には「写生斎菌譜」とある。地蕈類、木蕈類に分け、約150種のキノコを彩色で写生。名称、別名を記し、本草書を引用して解説。坂本浩然の『菌譜』を引くことも多い。各図には写生の日付と場所を明記している。天保7年 (1836) の自序がある。

『百鳥図』〔増山〕灌園画 自筆 12軸<別-112>

家禽、水禽、山禽を精緻な筆づかいで描く。羽の表裏の部分図や雌雄のかきわけなど、観察に裏づけられた描写の確かさがうかがえる。「文化戊寅〔1818〕四月写生 鷸」等、写生年月を記した個所もある。巻1、7は、くよく (ハッカチョウ) の様々な姿態をユーモラスに表現した巻。巻1末に「癸酉〔1813〕春日製/百くよく之図/石顛道人選」の奥書と「君選」「雪斎」の印記があり、巻5、6、8等には「灌園逸叟」と押印されている。

『薩摩鳥譜図巻』〔江戸末期〕 写 1軸 <別10-10>

題簽は「薩摩禽獣図巻」。97種の鳥を巧緻な筆法で描いている。風鳥、ヤールホーゴル (サイチョウ) など外国産の鳥も多い。巻頭に、昭和14年11月12日付の伊藤篤太郎の識語及び目録があり、識語には、この図譜一巻は祖父伊藤圭介の遺愛の書である旨が書かれている。

『梅園魚譜』毛利梅園著 手稿本 1帖<別4223>

書名は題簽による。目録首には「写真洞魚品図正 巻三」とある。87点の魚類彩色図を収録、漢名、和名を記し解説を付す。他の図譜等に拠ったと思われる鯨類以外は、写生の日付を明記しており、丙戌 (1826) から癸卯 (1843) に至る干支がみえる。

『水族四帖 春、夏、秋、冬』奥倉辰行著 手稿本 4帖<別11-45>

細密な描写の彩色魚類図譜で、解説には、各地での呼称、形態、和漢書の引用などを記す。切り抜いた絵を貼付した個所もある、第1冊巻頭に伊藤圭介筆の解題、後見返しに伊藤篤太郎の識語がある。

『〔海月・蛸・烏賊類図巻〕』〔栗本丹洲画〕 自筆 1軸<別10-20>

題簽は「蛸水月烏賊類図巻」となっている。クラゲ9図、タコ3図、イカ4図を描き、巻末にカメノテと数種のヒトデの図がある。他の丹洲の図譜と同様の精緻な図である。

『目八譜』15巻〔武蔵〕石寿著 服部雪斎画 手稿本 15冊<別6211>

900種以上の貝殻を、独自の方法で10分類し解説した石寿の大著。わが国最初の科学的貝類図譜とされる。雪斎の精密な図は、輪郭どおりに切り抜いて貼ってある。書名は「貝」の字を2つに分けたもので、富山藩主前田利保の命名。第1巻に天保15年 (1844) の凡例と、弘化2年 (1845) 利保の序がある。なお、東京国立博物館にも雪斎の図がある稿本が所蔵されている。

2. 西洋の植物図譜

Deutschlands Wildwachsende Arzney-Pflanzen und deren gewohnlichste Verwechslungen. Johann Gottlieb Mann. Stuttgart, [1823-]1828.<WB32-2(43)>

マン『ドイツ野生薬用植物誌』。ドイツ原産の薬草に関する唯一の著作。手彩色石版画186枚と解説シートから成り、これを2つの箱に収める。著者自身で描画から製版まで行っている。リンネの肖像画を付す。
『ドイツ野生薬用植物誌』 (画像)

Dissertatio de generatione et metamorphosibus insectorum Surinamensium. Maria Sibylla Merian. Amsterdam. 1719. 1v.<WB32-2(61)>

メーリアン『スリナム産昆虫の変態』。72枚の手彩色図版を収める。所蔵本は第2版で、初版 (1705) にない12枚が追加されている。著者は、1699年から1701年まで当時オランダ領であった南米スリナムで暮し、昆虫の生態を研究した。1図の中に幼虫と成虫をあわせ描く。蝶と蛾が興味の中心であったらしく、その図が多いが、食草などの植物とともに描いているのが特徴である。

Annales Musei Botanici Lugdono-Batavi. Dl. 1-4 Ed.van F. A. Willem Miquel. Amsterdam-Utlecht, 1863-69. 4v.<Z63-B281>

ミケル編『ライデン=バタビア植物学博物館年報』。同博物館は、ツュンベリー、シーボルト、ビュルガー、ピエロら来日学者の採集した日本産植物標本を多数所蔵。館長ミケルが中心となり研究した成果を、本書第2-3巻に収録している。掲載図版はその附図の中から選んだ。

Nederlandsche bloemwerk. Door een Gezelschap Geleerden. Amsterdam, 1794. 1v.<WB32-2(17)>

『オランダの花飾り』。ニコラ・ロベールの『花のいろいろ』 (Variae ac multiformes florum, 1640) の図を改作した53枚の手彩色銅版画を収録。花瓶に生けた花束を描いた標題紙の銅版画を、表紙には刺繍で示している。絹装訂の優雅な書。「ある学会」という筆名で作者は不明だが、本書がヒントを得たのは、同じくロベール画の『ジュリーの花飾り』 (Guirlande de Julie, 1641) らしい。これは、一貫族が婚約者に贈ったものなので、本書も同様に、恋人へのプレゼント用であったかもしれない。 手彩色銅版画 (hand-coloured engraving) 無彩色印刷または部分的に彩色印刷した銅版画に、1枚1枚手で色を塗って仕上げる。18~19世紀、豪華な図譜の全盛時代に広く用いられた。

Cornus.Charles Louis L'Heritier de Brutelle. Paris, 1788. 1v.<WB32-2(62)>

レリチエ・ド・ブリュテル『ミズキ譜』。ミズキ類の図6点を収録するが、それぞれ無彩色と手彩色と必ず二様の図がある。初めの3図はルドゥーテ画、後半3図はフレーレ画。子牛の皮 (vellum) に6部しか印刷されなかったうちの1本で、ゴロフキン伯爵、ブレイユ伯爵の蔵書票、ガリツィン公爵の蔵書印がある。

Description des plantes rare cultvees a Malmaison et a Navarre.Ed. par Aime-Jacques Goujaud Bonpland. Paris, 1813. 1v.<WB32-2(56)>

ボンブラン『マルメゾン及びナヴァールの稀少栽培植物図譜』。マルメゾンはナポレオンの皇后ジョセフィーヌの居館。しかし1809年離婚後は、ノルマンディーのナヴァールの館に主に住んだ。その庭園造営を監督したのがボンプランで、本書は両庭園の珍しい植物の点刻彫版画集。64枚中54枚をルドゥーテが、9枚をベッサが描き、1枚は無署名。

Les liliacees.Pierre Joseph Redoute. Paris, 1802-16. 8v.<WB32-2(44)>

ルドゥーテ『ユリ譜』。ルドゥーテの代表作中の代表作といわれる。ルドゥーテは別に『バラ譜』 (Les roses, 1817-24) を描いたが、双子葉植物のバラに対し、本書は単子葉植物の図譜で、ユリに限らず、アマリリスやアイリス、蘭なども描かれており、全部で488図ある。彩色の点刻彫版で第372図のみ無彩色。ジョセフィーヌのマルメゾンの館で、最も華やかに生活していた頃の仕事。 点刻彫版 (stipple engraving) 普通の銅版画が線刻によるのに対し、点描による方法。ビュラン (一種の彫刻刀) の先でつついて無数の刻点を作り、点描の密度によって明暗を出す。微妙なぼかしの表現に優れる。ルドゥーテの植物図譜はこの技法を用いた代表的なもの。

Choix des plus belles fleurs.Pierre Joseph Redoute. Paris, 1827[-33]. 1v.<WB32-2(45)>

ルドゥーテ『美花選』。手彩色仕上げの点刻彫版画144点を収録。記録によれば、僅か5部しか印刷されなかったとあるが、実際はもう少し多かったらしい。浪費家のルドゥーテが晩年金に困って刊行したものといわれ、植物学上の意義よりは芸術的価値が高い図譜。自序で自分の生涯を回顧し、植物画は植物学に欠くことができず、その助けなしには博物学は成り立たない、と説いている。

Plants of the coast of Coromandel.William Roxburgh. London, 1795-1819. 3v.<WB32-2(48)>

ロクスバロ『コロマンデル海岸の植物』。手彩色銅版画300図を収録。イギリス東インド会社がインドのコロマンデル海岸で収集した植物の栽培を、力ルカッタ植物園で行ったとき、その監督であったロクスバロの業績。指導したバンクスが絶讃し、『インドのマラバル植物園』や『アンボイナ植物誌』より優れていると述べた。

The Botanical magazine.Ed. by W. Curtis. London, 1787-<Z53-L121>

カーチス『植物雑誌』。現在まで継続刊行されている世界最古の植物専門の月刊雑誌。キュー王立植物園で栽培されている異国産植物を描いた彩色図版数枚を毎月掲載。カーチスが創刊し、好評を得た。当初は年間45図くらいを掲げ、のち60図に一定した。学名や特徴の記載のほか、栽培法なども解説する。1920年以後王立園芸協会が刊行している。

A century of orchidaceous plants.Sir. William Jackson Hooker, London, 1849. 1v.<WB32-2(28)>

W.J. フッカー『蘭科百選』。ランばかり100枚を収録した手彩色石版画集。カーチスの『植物雑誌』中の図版から選択したもので、フィッチ画。本文はライオンズとフッカーが担当。続編 A second century of orchidaceous plants (1867) がベイトマンによって著わされている (当館蔵) 。 石版画 (lithograph) 1798年にドイツのゼーネフェルダーにより発明された。水や油を浸透する石版石に油性インクやクレヨンで描き、石面をぬらしてからローラーで油性インクを塗る。インクは絵の所のみに付着する。彫刻の技術を特に要しないので、画家に歓迎され普及した。これも微妙なぼかしにむいた技法である。博物図譜では手彩色によるものも多い。

The rhododendrons of Sikkim-Himalaya.Joseph Dalton Hooker. London, 1849[-51] 3pts. in<WB32-2(55)>

J.D. フッカー『シッキム・ヒマラヤのシャクナゲ』。30枚の手彩色石版画を収録。フッカーが東ヒマラヤ探検調査の際、野外でスケッチした原画をもとに、フィッチが石版画にした。フッカーは、フィッチの技術を賞讃して、「わざとしたのでなければ、フィッチが遠近感を誤ったり、不正確なスケッチをすることなどありえない」と述べたという。父のW.J.フッカー編

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