史料にみる日本の近代 -開国から戦後政治までの軌跡-

Memorandum for: Imperial Japanese Government. Through: Central Liaison Office, Tokyo. Subject: Removal of Restrictions on Political, Civil, and Religious Liberties.(SCAPIN-93)

<参考> Memorandum for: Imperial Japanese Government. Through: Central Liaison Office, Tokyo. Subject: Removal of Restrictions on Political, Civil, and Religious Liberties.(SCAPIN-93)

※ この翻訳テキストは、国立国会図書館憲政資料室蔵「政治的、公民的及宗教的自由に対する制限除去の件」(芳賀四郎文書441-2)によるものであり、書式等の点で展示史料と一致しない部分があります。



連合国最高司令部発日本帝国政府宛覚書(仮訳)
(一九四五年十月四日附)(十月四日十八時接受)
政治的、公民的及宗教的自由に対する制限除去の件
一、政治的、公民的、宗教的自由に対する制限並に種族、国籍、信教乃至政見を理由とする差別を除去する為日本帝国政府は
a、左の一切の法律、勅令、命令、条例、規則の一切の条項を廃止し且直に其の適用を停止すべし
(一)思想、宗致、集会及言論の自由に対する制限を設定し又は之を維持せんとするもの 天皇、国体及日本帝国政府に関する無制限なる討議を含む
(二)情報の蒐集及公布に関する制限を設定し又は之を維持せんとするもの
(三)其の字句又は其の適用に依り種族、国籍、信教乃至政見を理由として何人かの有利又は不利に不平等なる取扱ひを為すもの
b、前項aに規定する諸法令は左記を含むも右に限定せられず
(一)治安維持法(昭和十六年三月十日又は同日頃公布せられたる昭和十六年法律第五四号)
(二)思想犯保護観察法(昭和十一年五月二十九日又は同日頃公布せられたる昭和十一年法律第二九号)
(三)思想犯保護観察法施行令(昭和十一年十一月十四日又は同日頃公布せられたる昭和十一年勅令第四〇一号)
(四)保護観察所官制(昭和十二年十一月十四日又は同日頃公布せられたる昭和十二年勅令第四〇三号)
(五)予防拘禁手続令(昭和十六年五月十四日又は同日頃公布せられたる司法省令第四九号)
(六)予防拘禁処遇令(昭和十六年五月十四日又は同日頃公布せられたる司法省令第五〇号)
(七)国防保安法(昭和十六年三月七日又は同日頃公布せられたる昭和十六年法律第四九号)
(八)国防保安法施行令(昭和十六年五月七日又は同日頃公布せられたる昭和十六年勅令第五四二号)
(九)治安維持法の下に於ける弁護士指定規程(昭和十六年五月九日又は同日頃公布せられたる昭和十六年司法省令第四七号弁護士指定規程)
(十)軍用資源秘密保護法(昭和十四年三月二十五日又は同日頃公布せられ昭和十四年法律第二五号)
(十一)軍用資源秘密保護法施行令(昭和十四年六月二十四日又は同日頃公布せられたる昭和十四年勅令第四一三号)
(十二)軍用資源秘密保護法施行規則(昭和十四年六月二十六日又は同日頃公布せられたる昭和十四年陸海軍省令第三号)
(十三)軍機保護法(昭和十二年八月十七日又は同日頃公布せられ昭和十六年法律第五十八号に依り改正せられたる昭和十二年法律第七二号)
(十四)軍機保護法施行規則(昭和十四年十二月十二日又は同日頃公布せられ昭和十六年陸軍省令第六号、第二〇号及第五八号に依り改正せられたる昭和十四年陸軍省令第五九号)
(十五)宗教団体法(昭和十四年四月八日又は同日頃公布せられたる昭和十四年法律第七七号)
(十六)前記法律を改正、補足若くは執行するための一切の法律、勅令、命令、条例及規則
c、目下拘禁、禁錮せられ「保護又は観察」下にある一切の者を直ちに釈放すへし拘禁、禁錮、保護観察下の状態に非るも自由の制限せられ居る者に付きてもも亦同し即自由の制限とは
(一)前記事第一項a及bに掲げたる法令に拠り
(二)告発なく
(三)実際には拘禁、禁錮、「保護又は観察」又は自由制限の理由か当該者の思想、言論、宗教、政治的信念又は集会にありたる場合に当該者を技術的に微罪を以て告発せる場合を云ふ
一切の前記該当者の釈放は昭和二十年十月十日迄に完全に実施せらるるものとす
d、前記第一項a及bに掲けたる法令条項実施のため設置せられたる一切の機構の本所支所及前記条項の執行を補助支援する他の官庁及機関の局課の部署又は機能を廃止すへし
右は以下に述ふるものを包含するも右に限定せられす
(一)一切の秘密警察機関
(二)出版監督、一般集会及機構の監督、映画検閲を管掌する警保局の如き内務省の諸部局及思想、言論又は集会統制に関係ある其他の諸部局
(三)出版監督、一般集会及結社の監督。映画検閲を管掌する警視庁、大阪警察局、其他の都市警察官署、北海道庁警察部及諸種県警察部内の特別高等警察部の如き諸部局及思想、言論、宗教又は集会統制に関係ある其他の部局
(四)保護及観察並に思想、言論、宗教又は集会統制を管掌する司法省下の保護観察委員会及右を責任とする一切の保護観察所の如き諸部局
e 内務省の官職より左記の者を罷免すべし
内務大臣、警保局長、警視総監、大阪府警察局長、其の他の都市警察部長、北海道庁警察部長、各県警察部長、一切の都道府県警察部特高警察全職員、保護観察委員会及保護観察所の教導司、保護司及其の他の全職員、右の中の何人と雖も内務省、司法省又は日本に於ける如何なる警察機関の下に於ける如何なる地位に再任命せらるることなかるべし本指令の諸条項を完全に実施する為右の中の何人かの援助を要するときは本指令の完全実施迄其の職に留任せしめ然る後之を罷免すべし
f 前記第一項a及bに記載の諸法令及前記第一項dに拠り廃止せられたる機関及職務に関係ある警察官吏、官公吏に依る爾後一切の活動を禁止すべし
g 日本の法律、勅令、命令、条例及規則等何等か一切の法令に基き拘禁、禁錮せられ又は保護及観察下にある一切の者に対する体刑及虐待を禁止すべし
h 前記第一項dに拠り廃止せられたる機関の全記録及其の他一切の資料の安全と維持とを保証すべし
i 本指令の一切の条項に従ひ採られたる一切の措置を詳細に記載せる包括的報告を一九四五年十月十五日迄に本司令部に提出すべし右報告は個別的補助報告の形式に於て準備せられたる左記の特殊の情報を含むべきものとす
(一)前記第一項cに従ひ釈放せられたる者に関する情報(抑留又は釈放せられたる刑務所又は施設毎に又は保護及観察を司る役所毎に類別すべきものとす)
(a)拘禁又は禁錮より釈放せられ又は保護及観察より釈放せられたる者の氏名、年齢、国籍、種族及職業
(b)拘束又は収監より釈放せられたる各人に対する告発の明細又は各人が保護及観察下に置かれたる理由
(c)拘禁、禁錮又は保護及観察より釈放せられたる各人の釈放期日及推定住所
(二)本指令の諸条項に基き廃止せられたる諸機関に関する報告
(a)機構の名称
(b)第一項eに従ひ罷免せられたる者の姓名、住所及官職名
(c)一切の書類綴、記録、報告及其の他一切の資料の種別に依る記述及所在地
(三)刑務所組織及刑務所職員に関する情報
(a)刑務所組織の組織図表
(b)一切の拘置所又は拘禁所及刑務所の名称及所在地
(c)一切の刑務所職員(典獄及典獄補、看守長及看守長補、看守及保健技師)の姓名、官名及職名
(四)日本政府に依り公布せられたる一切の法令(本指定の諸規定を実施すべき典獄及地方庁官吏に依り交付せられたるものを含む)の写
二、本指令の条章に関係ある一切の日本政府官吏及属僚は個人的責任に本指令の精紳及文字に従ひ又之を恪守することに付個人的に責任を負ひ且厳重なる責任を負はさるべし
総司令に代り 高級副官部
高級副官補陸軍大佐「H、W、アレン」
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