史料にみる日本の近代 -開国から戦後政治までの軌跡-

進歩党の政策大綱

進歩党の政策大綱

※ 原史料の2枚目は欠落しています。テキストの該当箇所には、〔作業者注:2枚目欠落〕と注記しました。


【1コマ~5コマ】

進歩党の政策大綱     鶴見祐輔

一、 党名の由来
 党名を『進歩党』と呼んだのは、進歩といふことに対する我れ等の根本観念に基く。
 元来日本の政党政治が明治の末期より堕落して遂に満州事件を生み、全面的議会政治否認への途を歩むに至ったのは、日本の政治が政治哲理を失って、現実一本となり、更に低調実利的となり、為めに国民の信頼を失った為めである。

〔作業者注:2枚目欠落〕

する必要がある。これが為めには、国家の一員たる以外に、『人間』としての個人の存立することを教へる必要がある。そして人間といふことを教へる根本には、地上の人間の生命が今後百万年を越ゆる永久性を有するが故に、この長期に亘る人類の進化が、人類共通の最高目標たることを、新しく日本国民に教へる必要がある。即ち、地上の人類の『進歩』を信ずるところに、我れ等の世界観の出発点がある。此の観点から新しき人間としての生活、国家としての生活、家族としての生活が生れる。一切の政策も、政府施設も、かかる『人類』"humanity"を眼中に置いて初めて、世界的なる普遍妥当性を持ち得る。そしてその処から日本人の世界家族への復帰が可能となる。而してこれが為めに吾人は我国教育の指導原理の根本的改革を主張する。

二、 日本の国体護持と政界の安定勢力
 我れ等は日本の憲法改正の必要を認める。しかし乍ら、日本の天皇制の維持が、日本の政治の民主化の妨げとならず、寧ろ健全なる日本的民主々義は、正しき地位に置かれたる天皇制によりて却って促進せられ強化せらるることを信ずる。故に此の度の選挙に於いて、我れ等は従来の誤れる観念より蝉脱したる正しき天皇制の維持について、国民的レフェレンダムを求めんと欲する。而して健全なる民主々義を実現し、正しき天皇制を維持する為めには政界に安定勢力を必要とする。我れ等はこの政界の安定勢力を作らんとして国民の判決を求める。

三、 民生安定と徹底せる社会政策の断行
  現下の日本は深刻なる危機の前夜に立ってゐる。その根本的問題は、凡ての大衆の生活が不安であることである。
 この深刻なる社会不安を解決することが、日本の政治の最大課題である。
 その解決の根本は、社会政策の断行によりてのみ達成せらるる。
 社会政策の断行の為めには、国家の経済への干与を必要とする。自由放任主義の経済政策を以ってしては、此の日本の危急を救ふこ

【6コマ~10コマ】

とはできない。自由主義は、思想上の自由、政治上の自由の二つは、既に欧米に於いては二百年乃至五十年前に達成されてゐる。日本は此の度、ポツダム宣言のお蔭で、やっとこの二つを達成した。しかし第三の経済上の自由の達成の為めには、旧自由主義ではできない。
 其の意味に於いて、我が進歩党の経済政策は、社会党に近似する。ただ我れ等は私有財産権を否定せざる意味に於いて、社会党と異る。
 吾人は計画経済を主張する。しかしその実施に当っては、戦争中の如き官僚統制を排斥する。一般国民の自治と協同とによる統制を主張する。我れ等は、貧富懸隔の是正を主張する。その為めには、税制の改正、国家及公共企業、各種保険制度、農業及商工業制度の改革を断行せんと欲する。而して必要に応じて次第に国民生活必需品の専売と、各種大事業の国有国営への移行を豫想する。
 更に吾人は当面緊急の対策を断行せんと欲する。
 これが為めには食糧対策、戦災復興対策、インフレーション対策、失業対策、石炭対策、並に海外同胞急速引上対策の五大策を決定しその実施を政府に要求してゐるが、吾人が来るべき選挙により国民の信任を得て、安定勢力を形成したる場合には、自ら上記の諸政策を断行せんと欲する。

四、 対外平和政策と其の基調
 併しながら、上記一切の政策の実施は、聯合各国認諾を待ちて初めて可能である。
 故に聯合国殊に米国との関係は、一切の施策に先行する。
 吾人が食糧を輸入し得るも得ぬも、棉花を輸入し得るも、其の他凡ての緊急及恒久政策を実施し得るも得ぬも、悉く翻ってマッカーサー司令部の諾否に存する。而してマッカーサー司令部の諾否は、米国及聯合各国の政府及国民与論の向嚮により決する。
 故に日本の生き得る唯一の途は、世界に於いて失はれたる『日本の信用の回復』に存する。
 吾人は満州事件以前の日本が、如何に世界の信用を有したりしやを回顧し、今日の日本の不信を痛嘆する。この失はれたる国際信用を回復する如き対外施策が、我党の重大政策の一つである。

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