p1  国立国会図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領(案)  平成28年○月○日     (目的)   第1条 この要領(以下「対応要領」という。)は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第9条第1項の規定及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)の趣旨を踏まえ、法第7条に規定する事項に関し、国立国会図書館職員(非常勤職員を含む。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。   (不当な差別的取扱いの禁止)   第2条 職員は、法第7条第1項の規定の趣旨を踏まえ、その事務又は事業を行うに当たり、障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。以下同じ。)を理由として、障害者(障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。以下同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。   なお、別紙中、「望ましい」と記載している内容は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する(次条において同じ。)。   (合理的配慮の提供)   第3条 職員は、法第7条第2項の趣旨を踏まえ、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。   (監督者の責務) p2   第4条 職員のうち、室長相当職以上の地位にある者(以下「監督者」という。)は、前2条に掲げる事項に関し、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。   一 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、その監督する職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。   二 障害者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。   三 合理的配慮の必要性が確認された場合、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。   2 監督者は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。   (懲戒処分等)   第5条 職員が、障害者に対し不当な差別的取扱いをし、又は、過重な負担がないにもかかわらず合理的配慮の不提供をした場合、その態様等によっては、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合等に該当し、国会職員法(昭和22年法律第85号)の規定に基づく懲戒処分等に付されることがある。   (相談体制の整備)   第6条 国立国会図書館は、職員による障害を理由とする差別に関する障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するための相談窓口を総務部人事課に置く。   2 相談等を受ける場合は、相談者の性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファクシミリ、郵送、電子メール等に加え、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。   3 第1項の相談窓口に寄せられた相談等の内容については、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り、以後の相談等において活用することとする。   4 第1項の相談窓口については、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。   (研修・啓発)   第7条 国立国会図書館は、障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修・啓発を行うものとする。   2 新たに職員となった者に対しては、障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために、また、新たに監督者となった職員に対しては、障 p3 害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ、研修その他の必要な措置を講ずるものとする。   3 前項の内容、回数等の詳細は、総務部人事課長が定める。   4 職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、障害者に適切に対応するために必要なマニュアルの活用等により、意識の啓発を図る。     附 則   この要領は、平成28年4月1日から施行する。   p4  別紙  国立国会図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項  第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方   法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。ただし、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。    第2 正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。国立国会図書館においては、正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び国立国会図書館の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。  第3 不当な差別的取扱いの具体例  不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、それらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。  (不当な差別的取扱いに当たり得る具体例) p5  ○障害を理由に窓口対応を拒否する。  ○障害を理由に入館、図書館資料の利用、国立国会図書館主催の講演会、研修等への参加等を拒否する。  ○障害を理由に対応の順序を後回しにする。  ○障害を理由に書面等の交付、パンフレットの提供等を拒否する。  ○事務又は事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来館の際に付添者の同行を求めるなどの条件を付け、又は特に支障がないにもかかわらず、付添者の同行を拒否する。  第4 合理的配慮の基本的な考え方  1 障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号。以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。  法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。  合理的配慮は、国立国会図書館の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。  2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、第5に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。 p6  なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。  3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。  また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。  なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。  4 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。  なお、国立国会図書館がインターネット等を通じて提供するサービスのウェブアクセシビリティについては、国立国会図書館が定めるウェブアクセシビリティ方針に基づき、多くの利用者への確実かつ正確な情報伝達に努めている。  5 国立国会図書館がその事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。  第5 過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。   ○事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か) p7   ○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)   ○費用・負担の程度  第6 合理的配慮の具体例  第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。  (合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例)  ○段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする。  ○書架やラックの高い所に置かれた図書館資料やパンフレット等を取って渡す。図書館資料やパンフレット等の位置を分かりやすく伝える。  ○館内施設の利用に際して、車椅子及び杖の貸与、目的地への移動介助等を行う。また、目的地までの案内の際には、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩き、また、前後・左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞く。  ○障害の特性に応じて閲覧席の位置に配慮する。また、機器操作の支援及び代行等を適切に行う。  ○疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の希望があった際、健康管理室を案内する。健康管理室が利用できない場合には、当該障害者に事情を説明し、別室を用意するなど臨時の休憩スペースを設ける。  ○不随意運動等により書類や図書館資料等を扱うことが難しい障害者に対し、書類や図書館資料等を固定できるものを提供し、又は職員がページをめくる。  ○災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、避難誘導員が誘導旗を示し、非常文字表示装置や筆談等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。  ○視覚による表現の認識に障害のある利用者に対して、必要に応じて、点字ディスプレイ・点字キーボード、音声拡大読書器を接続し、DAISY再生ソフト又は画面読上げソフトをインストールした常設の専用検索・閲覧用端末を案内し、操作支援を行う。  ○同伴者による資料の対面朗読を希望する場合は、別室を提供する。  ○最寄りの公共交通機関までの単独移動が困難な障害者に対しては、公共交通機関までの移動補助やタクシー乗車までの見送りを行う。  (合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例)  ○筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いる。 p8  ○意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。  ○図書館の各カウンター等で通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。  ○利用者登録や図書館資料の利用に関する書類への記入時に、本人の希望がある場合には、記入方法を本人の目の前で示し、分かりやすい記述で伝達し、また、代読や代筆等の配慮を行う。  ○比喩表現等の理解が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。  ○障害者から希望があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて渡す。  ○講演会や研修において、障害のある講師や参加者に対し、その障害の特性に応じた支援を行う。  ○問合せへの対応の際には、電話・ファクシミリ・郵送・電子メール等の様々な媒体を用意する。  (ルール・慣行の柔軟な変更の具体例)  ○利用者入口からの入館が困難な障害者に対し、当該者から申出があれば、職員が当該利用者を迎えに行き、必要な場合は事務用エリアを通って、利用者入口まで誘導する。  ○順番を待つことが苦手な障害者に対し、職員が順番待ちを代行する等の配慮を行う。  ○立って列に並んで順番を待つことが困難な障害者に対し、待機するための席を別に用意して、職員が手続を代行する等の配慮を行う。  ○自動車で来館した障害者に対しては、通常提供している身体障害者用の駐車スペースが満車である場合、その他の駐車スペースを案内する。なお、利用者用駐車場が満車である場合は、業務用駐車場への駐車を認める。  ○入館時にICカードゲートを通過することが困難な場合、別ルートからの入館を認める。  ○他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、不随意の発声等がある場合、当該障害者に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する。  ○非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。  ○電動車椅子の充電が必要な場合、利用者エリアの電源を使用することを認める。  ○必要に応じて、通常は持込禁止品と定めているものの持込みを認める。