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びぶろす-Biblos

平成20年夏号(電子化41号)

  • NATIONAL DIET LIBRARY
  • 発行/国立国会図書館総務部


宮内庁書陵部所蔵禁裏ゆかりの資料群 −支部図書館制度60周年によせて

中村 一紀

 今年は国立国会図書館創立60周年という記念の年であり,さらに支部図書館制度も創立以来の制度であるという。1952年に刊行された岩波書店の岩波写真文庫68『東京案内』には,当時国会図書館本館として使われていた現赤坂迎賓館内での閲覧室の様子が載せられているが,そこにはほとんど空席のない状況が写されており,戦後すぐに創立された国会図書館の存在の大きさを表していよう。爾来国会図書館は絶えず前進を計り,国民の様々なニーズに答え続けている。一方で支部図書館制度の運営に当たり,その充実に向け力を注がれた職員の方々のご努力は,表には現れないご苦労があったであろうことが推測され,衷心より敬意を表する次第である。
 かくいう筆者も生年は1948年であり,国会図書館と全く同じ時代を歩んでき,70年に縁あって宮内庁書陵部に職を得た。この3月で定年を迎えたが,再任用制度でお手伝いをしている。書陵部では,もっぱらその所蔵する古文書,古典籍類の利用と保存管理を行っていたが,宮内庁支部図書館の管理する図書の出納も行う関係で,支部図書館員に名を連ねさせてもらっていた。
 さて,書陵部の所蔵資料であるが,その数は古典籍類だけで約40万点を数え,その中心には皇室や公家(五摂家の九条・鷹司家など公家20余家の所蔵していた古典籍類)の旧蔵資料群がある。このほか大名や学者の旧蔵書も多く,中でも金沢文庫旧蔵宋版などの貴重漢籍を含む徳川家の紅葉山文庫本や新井白石・古賀精里の自筆本などの蔵書はその代表的なものである。これらは日本文化の総合的研究資料であることはもちろん,中国史・中国文学等の幅広い分野に貴重な資料群である。ここでは,紙幅の都合もあるので,その中から皇室ゆかりの資料について述べていくことにする。
 皇室ゆかりの資料には,禁裏を中心として伏見宮,桂宮,閑院宮,有栖川宮家の旧蔵資料がある。それらは伝来が明らかで且つ系統的であるため,個々としてはもちろんであるがそれ以上に群として重要な意味を持っている。
 禁裏本は近世初期に後西天皇や霊元天皇らの命により書写された,現在御所本と通称される一群で,今も京都御所内の東山御文庫に尚蔵される書籍の一部である。これらの書籍は明治期に東京に移され,書陵部の前身である図書寮に収まったのである。この一群の殆どは歌書や物語の類であり,中でも『源氏物語』は10部もの多きを数える。今年はその源氏物語の千年紀の記念の年でもあり,あちらこちらで展示会が行われる。もとより源氏物語がいつ完成したか,明らかではない。しかし,紫式部には随筆風の日記『紫式部日記』(善本の一つが書陵部に所蔵されている)があり,その寛弘5年(1008)11月1日には,藤原道長の娘であり,一条天皇の中宮となった彰子の第二皇子(敦成親王,後一条天皇)の出産「御五十日(いか)」の祝いが道長の土御門殿で行われる様子を描くが,その中に若紫の巻がすでに完成していることをうかがわせる記述がある。今年はそこから丁度一千年というわけである。源氏物語は執筆途中から宮廷内では読まれていた気配が見えるという。以来千年の間,読みつがれ読みつがれして多数の書写本を生むことになった。書陵部に伝わる源氏物語には,鳥の子と呼ばれる雁皮紙に書写されている枡形本列帖装が多く,表紙に青や緑に染められた薄絹を用いたものや,本文料紙に数色からなる染め紙を用いたものなど,その意匠にはさすがに宮廷を思わせる華やかさがある。

御所本源氏物語
(御所本源氏物語)(クリックすると大きくなります。)

いろいろ紙料紙
(いろいろ紙料紙)(クリックすると大きくなります。)

 ところで『紫式部日記』寛弘5年11月の記事には,彰子の内裏還御直前の慌ただしさの中で土産としての源氏物語を新写する一こまが見える。「御前には,御冊子つくりいとなませたまふとて,・・・いろいろの紙選りととのへて,物語の本どもそへつつ,ところどころにふみ書きくばる,かつは綴ぢ集めしたたむるを役にて,明かし暮らす」と。ここに記される「いろいろの紙選りととのへて」出来たものが,写真に見られるような色違い料紙の冊子であろう。紫式部も料紙に染め紙を用いていたことがわかり,興味は尽きない。このような源氏物語は何人かの親王や公卿が各巻を分担して書く,所謂寄り合い書きから成り,筆者目録が付く。それにより何の巻の筆者は誰それと書写者がわかり,巻によっては後陽成天皇や霊元天皇の宸筆(天皇の直筆)であることも知られ,装訂の華麗さと相俟って雅さも増すのである。
 源氏物語は伏見宮本にも1セット存し,「桐壺」「箒木」など4巻は後陽成天皇の宸筆にかかるもので,ほかに八条宮智仁(としひと)親王や青連院宮尊朝親王らが寄り合い書きをしている。
 伏見宮本の中には宸筆の日記や書簡類も多く,鎌倉期の伏見天皇・花園天皇の宸筆日記をはじめ近世までの天皇の書簡等を含んでいる。また,この宮家は初代栄仁(よしひと)親王(北朝第三代崇光天皇第一皇子)以来の楽の家でもあり,鎌倉期からの琵琶の楽譜など楽書の一大コレクションを有し,そこにも崇光天皇宸筆のものなどが見られ貴重である。

崇光天皇宸筆譜
(崇光天皇宸筆譜)(クリックすると大きくなります。)

 最後にもう一家,近世初頭の宮廷文化に影響を残した旧桂宮家の蔵書についても触れておこう。先に名前を挙げた智仁親王は後陽成天皇の弟であり,秀吉の奏請により八条宮を建てた人物で,桂離宮の創設者としても知られる。江戸後期になり宮号を桂宮(現桂宮家とは別家)と改めたため,この資料群は桂宮家本と通称される。内容は智仁親王以下歴代親王の直筆歌稿の類をよく残しており,中でも智仁親王に関連する資料は多い。親王は,武将であり歌学者でもあった細川幽斎に早くから和歌などを学び,学才豊かな人物であった。慶長5年には幽斎から古今集の解釈である古今伝授を受ける。この時の伝授資料一式も宮家に伝世されてきた。後,この伝授は智仁親王から後水尾天皇に伝授され,以後御所伝授として宮廷に継承された。平成17年は古今集が成立して1100年の年であったため,この古今伝授資料も注目されたのであった。
 以上,書陵部所蔵品のうち禁裏ゆかりの資料群について述べてきた。ほんの一部ではあったが,そこには宮廷文化を色濃く感じることが出来,悠久の時を思うのである。

(宮内庁書陵部図書課)

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