びぶろす-Biblos
平成20年4月号(電子化40号)
- NATIONAL DIET LIBRARY
- 発行/国立国会図書館総務部
- ISSN 1344-8412
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日立製作所日立研究所図書館について−さらなる発展を目指して
服部 博之
1.はじめに

(筆者)
専門図書館の場合、たった1人、もしくはごく少人数で運営している「ワンパーソンライブラリー」は少なくない。また、スタッフが他業務との兼務者であったり、見た目無人化して運営されている図書館も少なくないであろう。弊所図書館も、現在2名で切り盛りしており、かなりハードな毎日を送っている。
日本経済のバブルがはじける前後では、『図書館という存在』の一般的な見方が、大きく変化したように思われる。
かなり大雑把な表現になるが、過去の高度成長の時代には、予算も潤沢にあり、在れば良いというような、「ハコモノ」的な扱いを受けていた部分が少なからずあったように思える。
しかし、現在のように厳しい時代では、図書館の予算も大幅に削減される傾向にあることは否めない。特に、図書館運営における主役であるはずの「図書館資料(情報)」と「図書館スタッフ(人財)」という2枚看板が欠乏する事態が進行・深刻化している。
このような状態に陥ると、図書館スタッフにはネガティブな雰囲気が蔓延し、
- 〜してくれない
- 〜が悪い
- 〜のせい
- 〜したのに
といった負の意識を持つようになり、それらが負のスパイラルを描き始めてしまう。
果たして、自分(達)は図書館スタッフとしての専門性を磨き、役割を認知していただけるような行動を起こしているのだろうか?他を批判する以前に、このような自問自答から、私の全ての行動は始まっている。
確かに、図書館という存在や、図書館のサービス活動は、直接的な成果や利益を生み出すとは見なされていない節があるし、それを数値化して表現することは非常に難しい。
それならば、図書館の存在意義、サービスを、利用者や組織に理解いただくことで、数値で示す「量的効果」では表現できない、「質的効果」として出してみよう、と考えてみたい。質的効果を出していくことで、波及効果として、量的効果も期待できる。
どのようにすればうまくいくのか?
ポジティブ志向であれば、誰でも、おのずと答えを考えてしまう。誰かが動いてくれるわけではない。自分が動き、そして周りを動かすのだ。
そのためには、PR(Public Relations)活動は必須である。人と人、人と組織の間に、双方向のコミュニケーション基盤をつくり、それを活性化させることが必要であると考える。
2.(株)日立技術情報サービスと(株)日立製作所日立研究所図書館の紹介
2-1 (株)日立技術情報サービスの紹介
私が所属する(株)日立技術情報サービスは、1987年に、(株)日立製作所の特許・技術調査をサポートする会社として設立された。従業員は120名ほどで、規模は小さいが、元気のある会社である。詳細は、下記Webサイトにアクセスいただきたい。
(株)日立技術情報サービス
http://www.hitachi-tis.co.jp/
(株)日立製作所日立研究所の図書館スタッフは、1989年に図書館の業務移管とともに(株)日立技術情報サービスへと転属し、現在に至っている。
2-2 (株)日立製作所日立研究所の紹介
(株)日立製作所は、1910年に茨城県日立市にて創業した。1918年には研究所の前身となる試作課研究係が創設され、1934年に、社内初の研究所である日立研究所が設立された。広範囲な分野の研究者群を擁している総合研究所である。詳細は、下記Webサイトにアクセスいただきたい。
(株)日立製作所日立研究所
http://www.hitachi.co.jp/rd/hrl/
2-3 (株)日立製作所日立研究所図書館の紹介
基本的な開示情報は、以下のとおりである。
- 設立:1962年
- 面積:700平方メートル
- 収集分野:科学技術全般
- 書籍:約50,000冊
- 逐次刊行物(冊子体で受入継続中のもの):[和]約400タイトル、[洋]約500タイトル
- 蔵書数:約100,000冊
- 分類:UDC
- 特殊コレクション:Chemical Abstracts、Beilsteinなど
- 日立製作所が発行する逐次刊行物:日立評論(創刊号1918年〜)、Hitachi Review(1952年〜1998年)[1999年より電子ジャーナルのみ]
- スタッフ数:2名
次に、実際の取り組み事例のいくつかについて、ご紹介していく。
■図書館入口に大型ポスターを掲示
サンプルを図1に示す。
図書館の場所を示すサインとしての効果は絶大であった。特に、日立研究所以外の方にとっては、足を向けてみようと思わせ、実際に足を運んでいただく効果があった。ポスターを掲示する前と後では、明らかに「今まで見かけたことがない」方々の来館が増えた。
但し、いつも同じポスターだとマンネリ化するため、ほぼ毎月リニューアルし、季節感を出したりすることで、新鮮さと動きを表現するようにしている。

(図1)
■図書館入口
本物の観葉植物を数多く配置している。観葉植物にはリラックス効果や視覚疲労の緩和・回復効果があるだけでなく、酸素やマイナスイオンを大量に放出してくれる。
観葉植物は、図書館入口だけでなく、館内の至るところに配置している。
また、いつも同じではなく、定期的に入れ替えを実施している。例えば冬にはクリスマス・バージョンとして、ポインセチアやシクラメンを置いてみる(写真1)など、季節感を出すように心がけている。
また、図書館の入口は図書館内の一等地であるので、ここに新着の書籍を配置し、入館されてきた方の目に飛び込むようにしている。

(写真1)
■書籍
製造メーカーの研究所の図書館という位置付け上、所蔵する殆どの書籍は、科学技術に関する専門書である。
しかし、最近は下記のような類の書籍も所蔵するようにし、やわらかさや敷居の低さを表現するように心がけている。
- メンタルヘルス関連書籍
- 子供の危機管理関連書籍
- 茨城県の観光や情報
- 動物の写真集
など
■雑誌
書籍同様、科学技術に関する専門誌が大半を占めるが、下記のような類の雑誌も所蔵するようにしている。
- 女性誌
- 育児誌
- 余暇活用情報誌
新着の雑誌は、量が多いので図書館入口には配置できないが、図書館を歩き回る上で必ず歩く「動線」上に配置し、目に留まるようにしている。
また、表紙を見せるように配置することで、表紙に記載されている情報(文字やパターン)がごく自然に視界に入ってくるようにしている。
以前は配置スペースの都合で、背しか見えていなかったため、意識のある方だけが新着雑誌をチェックされていたが、見せ方と情報量の違いだけで、手にとっていただける頻度が抜群に増えた。
■移動書架の側面(壁)の利用法
蔵書量の増加に対応できるよう、移動書架を倍増したのだが、館内のフリースペースが手狭になっただけでなく、背が高いので圧迫感を感じるようになった。
何か良い解決策はないかと、視線を分散させることを主な目的に、私が撮った風景写真を貼ってみることにした(写真2)。意外に好評なので驚いている。
また、私の「こんな図書館にしていきたい」という想いを、手書きで書きこんだホワイトボードを、壁の中央に貼っている。当初は笑われることが多かったが、私が何を考え、何を目指しているのかを理解いただくきっかけになっており、「共感」を呼ぶ手段のひとつとして効果的に機能してきた。応援しているよ、と気軽に声をかけていただくことも増えてきている。
そのほか、先人の図書館に対する想いを記した書籍の1ページを貼ってみたり、トライアル中の情報サービスのポスターを貼ってみるなど、掲示スペースとして、有効に活用している。

(写真2)
■フリースペース
カフェをイメージし、デザイナーズブランドの椅子と丸机を配置したスペースを、小さいながらも用意している。机の上にはプリザーブドフラワーを置いている(写真3)。
また、傍らにはCD-ROMの写真集(風景や動物など)をオートプレイするパソコンを配置しており、気軽に楽しんでいただいている。
CD-ROMは発売元と交渉し、使用許諾と著作権の了解が得られているもののみを利用している。
その近くには、雑貨や、癒し系の書籍を飾り、ミニギャラリーにしている。
思い立ったときに資料を持ち寄って、いつでも議論できるスペースとして、また、リラックスできるスペースとして活用いただいている。

(写真3)
■アロマセラピー
図書館のフリースペースに香炉を設置し、色々なエッセンシャルオイルをためしている。図書館の入口には「今週の香り」というイラスト付きポスターを貼り、効能もあわせてコメントしている。
ポスターは、あまり凝ったものではなく、クリップアート等を有効に使い、時間をかけずに作成している。
■BGM
図書館内でBGMを流している。(社)日本音楽著作権協会と交渉し、条件の範囲内で利用している。
■スタッフ紹介ポスター
図書館カウンターには、スタッフの満面の笑みの写真と、業務内容を記したポスターを掲示している。『お気軽にお問い合わせください』のことばも添えている。
■照明スイッチとエアコンスイッチの集約化
当館は24時間オープンにしており、残業時間や休日は、図書館入口の入退館管理システムにて社員証で認証し、自由に出入りできるようにしている。この時間帯は、利用者自身が館内照明スイッチをON/OFFし、必要に応じエアコンを稼動することになる。
従来は、照明スイッチやエアコンのスイッチは分散して配置されており、面倒であったり、消し忘れがあるなど使い勝手が悪かった。このため、スタッフスペースを除く館内の照明スイッチとエアコンのスイッチを集約化するとともに、照明スイッチとエアコンスイッチを隣接して配置することで、あちこち歩き回らなくても済むようにした。
■バーチャル版図書館
日立グループの社員が利用できる、社内SNS(Social Networking Service)が開設された。ここに、図書館コミュニティを立ち上げ、情報交流をはかっている。
SNSには実証実験の段階から参加し、図書館コミュニティを立ち上げていた。まずは研究所群を対象にした研究所SNSで、次に日立グループを対象にした実証実験が開始された時点で、そちらにも図書館コミュニティを立ち上げ、同時進行で情報を発信していた。
図書館というアナログな環境にとどまらず、SNSというバーチャルな環境での「場」づくり、人と情報の交差点づくりをすすめていくことで、ワークプレイスマネジメントへの大きな流れをつくっていきたいと考えている。
これらは、図書館という“場”の提供について考えて動いた結果である。
- 知的興奮を与える
- 技術情報を探索することが楽しい!
- 癒やされる、ほっとする
場所を提供することが、図書館を使いこなしていただいたり、図書館のリピーターになっていただいたり、図書館のファンになっていただくきっかけになればと考えている。
3.私のこれまでの主な取り組み
3-0 コンセプト、ポリシー
入社以降、私が取り組んできた主な業務を紹介する。入社して以来、図書館業務に留まらず、様々な業務を兼務で経験してきたが、私のポリシーは一貫している。
- 前例がない、だからやる!!
- お客さま(図書館利用者)に「ヒラメキ」と「ワクワク」を!!
そして、お客さま(カスタマー)の「笑顔」がみえるモノづくりを!! - 元気に、楽しく!!
3-1 図書館ホームページ構築と運用
私が入社した1994年は、インターネットということばが、学術分野から、やっと市場に下りてきた頃であった。Internet Explorer (IE)というWebブラウザは未だ存在しておらず、Mosaicというブラウザが主流であった。IE登場以前に、長らく高いシェアを誇った Netscape Navigatorの1.0正式版が登場したのは、この年の12月のことである。
このような時期に、インターネットの可能性に着目し、独学で図書館ホームページのプロトタイプを作成していた。このため、研究所のWWW環境が構築された時には、どの部署よりも早くサイトを立ち上げることができた。
現在は、電子ジャーナルの導入、OPACのWeb化、各種業務システムなど、コンテンツ量の増強や機能拡張など、サービスの充実化を進めている。
3-2 全社技術報告書情報検索システムの構築と運用
日立グループ全体を対象にした、日立グループ初の、イントラネット上での技術情報系情報検索システムについて、企画から運用までの全般を担当してきた。
社内技術報告書類情報をWebで検索できるだけでなく、情報コンテンツ作成ツールも開発・運用した。
現在では技術報告書の全文をWebで閲覧可能としており、また、情報コンテンツ作成ツールもWeb化している。
3-3 グループ会社図書館システムの構築、図書館スタッフ育成コンサルティング
いくつかのグループ会社図書館にて、図書館システムを稼動させるためのデータ作成や整備だけでなく、図書館スタッフの育成コンサルティングも担当した。図書館の基礎知識からデータベースの使い方、図書館における情報発信までのコンサルティングを通じて、自らも多くを学ぶことができた。
3-4 広報業務
日立研究所の広報業務を担当した。社内外の取材、表彰、発表会、討論会などについて、企画から運用まで担当した。このような業務を担当することで、図書館にこもっていては絶対に聞けないような、研究者の生の声が聞けたこと、研究者とのコミュニケーションを密にできたこと、一緒に悩み、考え、最適な解を見出そうという「経験」ができたことは、後の図書館活動に大いに活かされることになっただけでなく、図書館応援団の増員にも繋がっていくことになった。
このように、多様な業務を経験してきた。上記の4例とも、「ある部分」の担当ではなく、その業務のほぼ全てについて担当してきた。それは確かに多忙を極めたが、図書館でお客さまをお迎えしているだけでは聞けないような、研究者や他の事業所・グループ会社の方々の生の声を聞けたり、より密なコミュニケーションをはかることができた。このことは、私の大きな収穫であり、貴重な財産となっている。
4.元気!な図書館を考える
4-1 ワンパーソンライブラリの「不安」「悩み」「迷い」
あくまで一般論としてであるが、ワンパーソンのデメリットは数多い。「人」「評価」「キャリア」の面からも、「仕事量」「人数」の面からも、挙げればどんどん出てくる。以下に一例を挙げてみたい。
- 「人」「評価」「キャリア」の面から
−お手本となる「師匠」のような人が周りにいない
−相談する相手がいない
互いに切磋琢磨し高めあうことができない
−成果が出ているのかどうか分からない
−自分のスキルが伸びている手応えがない
−自分への評価が低い
−思うように昇進できない
−組織内で孤立感を覚える
−中長期的な自分のキャリアプランを描けない
- 「仕事量」「人数」の面から
−仕事量が多すぎる
−割り当てられる仕事量が不公平
−人手が必要な作業的業務が後回しになってしまう
−資料の紛失、行方不明に対処できない
−緊急時に無人となる、閉館となる
−休暇や出張を取りにくい
−後継者の育成ができない
4-2 スタッフ数が多い図書館のデメリット
それでは、スタッフ数が多ければよいのか。そんな単純なものではないようだ。
やはり一般論だが、やりたい仕事を割り当ててもらえない、興味を持てない仕事を任されるなど、人数の多さがあだとなってしまうこともあるし、業務担当を細分化すると、業務の全体像が見えづらくなるため、自分の担当業務が何にどう役立つのかはっきりしないとか、何に対してどう貢献するのか明確でないというような問題も生じやすい。
また、人間関係でもめることも多いかもしれない。チームの間で意見がまとまらなかったり、各人に与えられた権限が乏しいなどのデメリットが生じる可能性はある。
4-3 「不安」「悩み」「迷い」をポジティブ志向に変える
お手本となる「師匠」のような人が周りにいないと嘆くのではなく、それなら、自分のやりたいことが自由にできる!と考えればよい。
自分のスキルが伸びている手応えがない、とか組織内で孤立感を覚える、と思うのであれば、積極的に外に学び、視野を拡げればよいのである。幸い、図書館関係の学協会や団体は数多く存在する。これらを最大限に活用したい。
図書館スタッフが暗い顔をしていたら、お客様である図書館利用者は、ますます離れてしまう。明るく、元気に、ポジティブに!気持ちの問題と侮るなかれ。人は気持ちが入らないと動かない。
4-4 利用者の情報獲得意欲を下げさせない
決裁を必要とする書類に稟議があるのは当然であるが、稟議者が必要以上に多かったり、稟議に時間を要してしまうのだとしたら問題である。
技術情報を入手したいという依頼者は、少しでも早く欲しいのであるから、書籍や文献複写物の購入・入手にあたっては、最大限配慮し、少ない稟議で入手できるようにしている。
文献入手が遅延したり、入手ができなかった場合にも、一筆コメントを入れたり、関連情報を提供するなど、情報を獲得したいと思う研究者のモチベーションを下げないような配慮をできる限りするようにしている。
上述のようなことは一例に過ぎないが、もっとどんどん情報を利用したいと思わせる仕組みを作ることで、更なる情報獲得意欲やモチベーションを高めることができ、それが結果的に利用満足度を高めることにも繋がると考えている。
4-5 潜在的利用者の掘り起こし
潜在的利用者については、ニーズの掘り起こし活動をすることで、利用者の底辺を広げる。これにより、より多くの利用者を獲得し、利用者層の偏りを少なくしていくことで、図書館の敷居を低くし、図書館はいつでも気軽に簡単に利用できるのだという意識付けをするのである。
図書館スタッフに限らず、人と関わって仕事をしている方は、広義の営業職であると認識している。良い商品であるだけでは売れないし、その商品単独では売れないことも多い。営業マンの心意気や、いくつものサービスをうまく連携させることでワンストップ・サービスを提供したり、利用者層の囲い込みもあわせて必要だと考えている。
営業は、Face to Faceの活動が基本中の基本である。イントラネットでの情報発信は、確かに見た目はカッコイイが、案外、効果は低いというのが経験則としてわかってきた。何かイベントをするときにチラシを手渡しで配布してみたり、利用者の元に出向いて説明してみたりという地味な働きかけの効果を、もう1度見直してみる時期にきていると考えている。これらの活動には、時間も手間も必要である。業務の効率化やコスト削減を推し進めてきた、ここ10年ほどの流れとは相反する行動であるため、理解を得られにくいかもしれない。だが、「質」を重視する動きは明らかに高まっており、この波に乗っていきたいと考えている。
利用者の情熱には、私もアツい情熱をもって応えたい。うわべだけの事務的なサービスではなく、心と心が通い合う、あたたかい(もちろん、内容が的確でスピードも速いといった「中身」があっての話だが)サービスを続けていけば、必ずや良い方向に向かうと確信している。
理想論かもしれないが、利用者とのコミュニケーションを高めることで、利用者が意識して「情報」に触れていただけるお手伝いをすることができれば、その経験を高めていくことで、的外れな情報ではなく、利用者が求めている情報を的確に迅速に提供できていくようになるはずである。
これにより、利用者の満足度が高まっていけば、その方には、更に利用していただけるようになるし、口コミで来館者や問い合わせが増えてくることも大いに考えられる。
それらが更なる利用者層獲得(利用事業所・グループ会社の拡大)に繋がり、スタッフ(人財)の増員と、活動費の獲得につなげられるような行動をしていきたいと考える。
4-6 お客さまの意識の変化:図書館スタッフは、情報検索・情報ナビゲータのプロ
弊所図書館の利用者の声を伺ってみると、満足度には興味深い傾向がある。よく利用していただく方ほど満足度が高く、ほとんど利用されない方ほどクレームをいただく。図書館をPRし、実際にご利用いただき、かつ、満足していただくことは重要であると、改めて認識させられる。
人は、経験のもとにしか考えることができない。その人の思考や判断は、その人の経験に基づいているのである。
図書館を使いこなしている方(図書館利用の経験が豊富な方)は、「考える力」や「情報を分析する力」を身につけている方が多い。問題に直面したときに、悩むのではなく、考えることで、じっくりと時間をかけて思考のステップを踏み、解決策を探ろうとしている。こういう方の図書館スタッフに対する要求レベルは高い。例えば、自分では見つからない、見つけることができなかった有用情報を探し出して提供して欲しいとか、もっと効率的に探すアプローチはないのだろうか、といった、難解で時間のかかる要求である。即ち、図書館スタッフを、情報検索・情報ナビゲータのプロとして、少なからず認識していただいているということではないだろうか。
5.さらなる発展を目指して
企業図書館のような専門図書館は、資料の所蔵数や敷地面積、予算、電子ジャーナルの導入タイトル数、データベースの充実度、スタッフ数など、数や量で比較してしまうと、あらゆる項目で、大学図書館のそれとは程遠い状況にある図書館が多いことは否めない。
だからこそ、私はあえて言いたい。
企業図書館は、「人」がすべてである、と。
企業図書館のスタッフは、利用者=お客さまの視点で考え、お客さまとできる限りコミュニケーションをとることが重要な要素だと考えている。お客さまと対峙する機会・経験を積むことで、お客さまから問題を聞きだす(引きだす)力、つまりレファレンス力の基礎は鍛えられていくのである。意図的にこれを避けている、もしくは無意識のなかであっても、これを避けている状態で運営しているのだとしたら、それは図書館スタッフ自らが、チャンスを絶っていることになる。あまりにもったいない話である。
レファレンス力を磨き、必要な情報を必要なときに、鮮度もあり付加価値もつけた状態で、必要とされている方にご提供できるような図書館スタッフに、お客さまをガッカリさせない・離さない、図書館スタッフになっていこうではありませんか。私は以下のようなことを心がけている。
- 情報を発信すること
(浅くてもいいから)広い情報アンテナを持つ。 - 行動を起こすこと
躊躇していたのでは、次がない。チャレンジし、たくさん失敗して、たくさん恥をかく。
但し、同じ失敗を繰り返さないこと。何が悪かったのか、何が間違っているのかを分析・理解し、次のチャレンジに繋げる。 - 出る杭になること
- 抵抗勢力に負けないこと
従来と異なることを推し進めたり、改革をはかろうとすると、従来の方法に慣れている方や、新しいことに恐怖心を抱く方、面倒臭いと思う方、新しくすることで不利益を被る(と思っている)方など、いろいろな方、いろいろな角度から、反発や反感を買う。
これはある意味しょうがない事。だが、方向性・ビジョンがしっかりしていて、実際に行動をおこしていけば、少しずつ理解は得られていく。
出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない。出過ぎた杭になる。
クレームや苦言は、ありがたく頂戴する。めげない。クレームはチャンスである。
お客さまにご満足いただき、リピーターになっていただきたい。図書館を通じて情報を操ることの楽しさを経験いただき、そこで得た情報を知識に昇華していただきたい。お客さまの発想が豊かに柔軟になり、感性を磨き、市場のニーズ(潜在的なニーズも含めて)を的確に反映したよいモノづくりをし、世の中に送り出していただきたい。
そのような図書館のお客さまを増やし、そのたくさんのお客さまから、熱烈なご支持をいただいた形で、図書館改革の企画提案をすることができれば、図書館スタッフの独りよがりではないのだ、ということを、経営層に理解していただくことができる。
2-3にて、今回紹介した取り組みは、どちらかといえば潜在的利用者の掘り起こしを目的として実施しているものである。情報に触れていただく機会を増やし、図書館を身近に感じていただくのと同時に、確実にレベルアップしている利用者と向き合い、より高いレベルの要求にプロとして応えていくためには、私自身も、もっとレベルアップしていかねばならないと痛感している。
しかし、それはプレッシャーとは少々異なる。利用者との相乗効果を感じており、お互いを尊重しあいながら高めあっていけることに楽しみを感じているし、良い刺激となっている。
図書館のPR活動は、突き詰めていくと、図書館の経営戦略に繋がると考える。今の時代には、戦略的思考で、
- 図書館の存在意義を認めていただく
- 図書館のサービスを高めていく
- 図書館経営の合理化と効率化を図る
- 図書館サービスを「商品」として捉える
ことが、「図書館」が存在し続けるための必要条件であると考えている。そしてそこに、あたたかいココロが通いあえば、図書館の未来は明るい。
私自身のモチベーションは、利用者である研究者の皆様からいただいていると感じ、極めて多忙ながら、充実した毎日を送っている。
(日立製作所日立研究所図書館)
