びぶろす-Biblos
平成20年4月号(電子化40号)
- NATIONAL DIET LIBRARY
- 発行/国立国会図書館総務部
- ISSN 1344-8412
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二つの図書館の有機的運営
〜大阪社会運動資料センターと大阪府労働情報総合プラザの取り組み〜
谷合 佳代子
エルおおさか(大阪府立労働センター)にある二つの労働関係の専門図書館について紹介し、その一体的運営の成果について報告します。以下は、日図協の第93回全国図書館大会(2007.10.29-30)での講演用予稿集に掲載した文章に加筆したものです。
1.はじめに
財団法人大阪社会運動協会(略称社運協)が大阪府の委託を受けて大阪府労働情報総合プラザ(以下、プラザ)の運営にあたるようになったのが2000年4月。以来、右肩上がりで利用者数が増え続けている。1999年度の来館者数は3515人であったが、2006年度には14051人、と4倍になっている。2000年4月まで非公開であった社運協の資料室(当時の蔵書2万冊)と大阪府の公設公営であったプラザ(同1万5千冊)とを一体的に運営することによって両者の蔵書の特徴を補うあうことができるようになったことと、民間団体の運営によって専門性が蓄積できるようになったことが成果を生んだと思われる。
以下、両館の沿革にふれつつ、現状の報告と今後の課題を述べる。
2.両館の沿革
2.1 大阪府労働情報総合プラザの沿革
開室は1947年に遡り、「大阪府労働文庫」という図書室が大阪府労働部労政課と13の労政事務所によって開設されている。労働文庫が設置されていた場所は確認できなかったが、1953年にはオープンしたばかりの大阪府立労働会館(現在の大阪府立労働センター)に「大阪府立労働会館図書室」が設置され、これが同文庫の後身であることから、建替え前の府立労働会館に労働文庫があったのではないかと推測できる。労働会館の図書室は同会館を管理運営する財団法人大阪労働協会が運営した。
1978年の労働会館建替え、府立労働センター開館にともなって「府立労働センター労働情報資料室」と改称し、継続して大阪労働協会が管理運営していた。1989年の南館オープンと同時に大阪府中央労働事務所が置かれ、図書室も労働センター本館から南館に移転して中央労働事務所の直轄となり、建物配置は現在に至る。図書室の名称は「大阪府労働情報センター」となり、1997年の労働事務所の再編に伴ってさらに「大阪府労働情報総合プラザ」と改称、図書館機能と調査・情報発信機能を併せ持つ施設となった。運営は大阪府労働部労政課が担当、2000年の労働部と商工部の統合と同時に、プラザの機能のうち、図書館機能の運営を社運協に委託することとなった。
2.2 大阪社会運動協会資料室の沿革
社運協は1978年、『大阪社会労働運動史』の編纂・発行をその主要な任務として労働組合・労働福祉事業団体・研究者・弁護士などにより設立された公益法人である。設立当初より事務所を府立労働センター内に置き、運動史編纂のための資料収集にあたってきた。1980年代に入ると本格的に運動史の編纂作業を進め、随時書庫スペースを広げていったが、1989年に本館4階にあった大阪労働協会の労働情報資料室が南館に移転し、新たに労働情報センターとして開室するのに伴い、本館に残された集密書庫を借り受けることとなった。この頃、社運協資料室は一般公開せず、もっぱら『大阪社会労働運動史』執筆者への資料提供にのみ利用されてきた。つてをたどって来館される研究者も少しずつ増え、できるだけ早期の一般公開が望まれたが、スペースの都合やスタッフの手当てなど課題が山積していたため、先送りとなった。
3.プラザ運営の受託
1999年、『大阪社会労働運動史』全8巻の刊行を終えた社運協にとって次の課題は収集した資料2万冊の一般公開であったが、なお財政的基盤が脆弱で困難を抱えていたところ、大阪府からプラザの運営委託の申し入れがあった。社運協資料室とプラザはともに府立労働センター内にあり、本館と南館という隣接するビル内に同じ労働をテーマとする図書館がありながら運営主体はまったく別で、一方はグレーペーパー・ブラックペーパーを中心とする非公開館、他方はホワイトペーパーを中心とする一般公開館であったわけだが、2館を有機的に運営することによって両者の資料を補いあい、蔵書の質・量ともに飛躍的に高まることが期待された。
3.1 大阪府初の委託契約
2000年4月に大阪府で初の<府の外郭団体ではなく、民間団体への委託>という形態をとった契約が結ばれた(1年契約。以後毎年新たに契約)。これによりプラザの蔵書ばかりでなく、社運協の蔵書もプラザを通じて大阪府民に提供することとなった。また、社運協はそれ以前から府立労働センター本館11階にある連合大阪の資料室の管理運営も任されていたため、都合3館の運営に当たることとなった。これにより、社運協の事務所は府立労働センター本館4階においたまま、スタッフだけがプラザに移ることになった。

(大阪府労働情報総合プラザの閲覧コーナー写真)クリックすると大きくなります。
3.2 電子化の経過
2000年6月に富士通の図書管理パッケージソフトILISを導入して、社運協と連合大阪の蔵書目録(「桐」で作成)とプラザの蔵書目録(EXCELで作成)のデータを載せ、書誌情報の統一化を図った。それまで館内になかった利用者用検索端末も設置し、バーコードラベル導入により貸出返却業務も機械化したため、利用の便は飛躍的に向上した。社運協のHPは2000年2月に開設していたので、新たに5月より同じサイト内にプラザのページを作った。さらに7月にはOPAC検索も可能になった(データ更新は月1回)。
図書管理ソフト上では、プラザを本館とし社運協資料室と連合大阪資料室を二つの分館とする扱いで蔵書検索の結果が示されるが、一般の利用者には、社運協とプラザの蔵書はその区別を意識することなく利用してもらっている。社運協の蔵書のうち新刊はプラザに配架するようになり、現在、プラザの開架に配架している図書の半分は社運協の蔵書が占めている。
OPACを設置するだけでは蔵書の特徴がつかめないので、所蔵伝記資料一覧や所蔵労働組合史一覧などをHPに掲載することにより、検索エンジン経由で資料の照会も増えてきた(現在ではこれらのリストは掲載せず)。プラザでは社内研修用ビデオを多数所蔵し、これを貸出して好評を得てきていたが、さらにそのリストをHP上に掲載することによって、検索エンジンでヒットするようになり、電話による貸出照会や来館が増えた。また、積極的に各図書館や行政機関、労働組合、社労士会などへの相互リンクの申し込みをすることにより、利用者の掘り起こしの努力も行った。
3.3 資料の拡充と広報活動
プラザは労務管理や労働法の実務書・統計書を中心とした蔵書構成を持ち、社運協の蔵書はさらにそれより幅広くまた一般に流通しない労働組合の内部資料・機関紙誌、企業の労務管理関係の内部資料、企業広報誌、社史、官公庁資料、戦前発行の古い図書・雑誌を含む。両館の蔵書で重複する部分もあったが、概ね「プラザはフロー、社運協はストック」という蔵書の特徴を活かして利用者の幅広いニーズにこたえられるようになった。
また、プラザが労働部直営の頃は専任司書がおらず、アルバイト司書一人でまかない、司書不在時には調査担当職員が窓口対応するという状況であったため、専門知識の蓄積が困難だったが、社運協が受託したことにより、人事異動がないメリットを活かせるようになった。
レファレンスにインターネットをフルに活用するようになったのもリピーター増につながったと思われる。
プラザはビルの二階にある小さな図書館ゆえ、通行人からはまったく目に付かず、エルおおさか(府立労働センターの愛称)の貸し会議室利用者にも認知されにくかったが、社運協が運営を受託して以来、宣伝に努め、通りの通行人からも見えるように看板を設置したり外に向かって図書室の存在をアピールするステッカーを貼ったり、エルおおさか各所に表示板を置いたりした。リーフレットも大量に作成して、府内各図書館に配布を依頼した。
以上のように宣伝に努めた結果、認知度は徐々に上がり、とりわけインターネットによる利用者増が大きかった。2002年4月に「大阪府Web-OPAC横断検索」の対象館になったため、このサイトを利用しての来館者も増えた。
さらに、2004年度にジョブカフェ(若者就業支援施設)がエルおおさか本館2階にオープンしてからは、学生や若年求職者の利用者が増えたため、ヤング層をターゲットに選書したり、憩いの場としても利用してもらうために若干ではあるが漫画や文芸書(いずれもスタッフの寄贈)も置くようにした。レファレンスで照会のあった資料を積極的に選書に取り入れるようにし、昨年度からはリクエスト用紙を常備して利用者のニーズに応えられるよう取り計らっている。
4.大阪社会運動資料センターの開設
上記のように社運協の蔵書はプラザを通じて利用者に提供することが可能となったが、労働センター本館の事務所と書庫はふだんは施錠したまま無人の状態であった。長らく社運協の念願であった「社会運動資料センター」のオープンはプラザの運営を受託して以降も粘り強く追求しており、大阪府・大阪市に対して補助金の要求を続けていた。
その結果、2006年4月に「大阪社会運動資料センター」として社運協の資料室は生まれ変わった。貴重な資料が眠る書庫内を自由に利用してもらえるよう、書庫を整備し、倉庫として使っていた部屋を書庫に模様替えして戦前資料の書庫とし、展示用ショーケースを用意して記章、旗、アルバム、帽子、水差し、などの三次元資料を展示した。三つに分かれている書庫のうち、一番大きな書庫に隣接する部屋に閲覧机と椅子を配置した。
このように、社会運動資料センターは3つの書庫を持つ資料室となった。第1書庫は集密書架で一般図書・雑誌・新聞記事コピーを配架、第2書庫には労働組合資料(大会議案書・労働組合史・広報パンフレット・調査報告書・機関紙等)を配架、第3書庫には1945年以前の資料を配架している。
利用は予約制で、見学会も適宜行っている。

(大阪社会運動資料センター書庫および展示コーナー)クリックすると大きくなります。

(大阪社会運動資料センター所蔵品の一部。大正時代の労働組合記章など)クリックすると大きくなります。

(藤永田造船所労働争議(1921年)の資料。労働組合の嘆願書、要求書など)クリックすると大きくなります。

(1930年代前半の労働組合旗)クリックすると大きくなります。
5.ブログの開設
本年2月よりブログも開設し、新着図書・雑誌の情報を即座に更新できるようにした。臨時休館のお知らせやその他のお知らせを随時掲載し、新着本からピックアップ紹介したり、大量の寄贈や稀覯本の寄贈があった場合に紹介記事を掲載、また海外からの来館者の紹介も適宜行っている。
新刊雑誌は主要な記事見出しを掲載することによって利用者の利便を図っている。ブログの閲覧者数は徐々に増加しており、読者からすぐに反応があるのが嬉しい。
6.今後の課題
まずは新刊書購入費の増額が求められる。社運協の資料はほとんどが寄贈であり、プラザで購入する新刊書も数が少ない。新刊書の多寡が即座に来館者数に影響を及ぼすため、改善が必要である。また、資料センターの書庫が狭隘となっており、既に収容できない分はプラザの書庫に収納しているが、利用の便からいっても資料センターに必要な資料が集中的に配架されていることが望ましい。
資料センターはオープンして1年半が経過したが、まだまだ利用者は少なく、広報活動に力を注ぐ必要がある。また、未整理資料も多いため、その整備が急がれる。センター内に検索用端末が用意できないためこの措置も必要である。
プラザと資料センターは、これまでも専図協や社会労働関係資料センター連絡協議会(略称:労働資料協)といったネットワークを通じて研修やレファレンス協力・相互貸出を続けてきた。労働資料協では重複図書をリユースして有効活用している。今後も引き続き他館とのネットワークを追求していきたい。
| 大阪府労働情報総合プラザの概要 |
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※プラザと社運協蔵書の利用統計は区別なし
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| 大阪社会運動資料センターの概要 |
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雑誌のタイトル数は両館合わせて約3000

※リサイクル品の活用やスタッフの寄贈・手作りによって少ない予算でやり繰り工夫している苦労話を『専門図書館』第227号 (PDF:2.56MB)に掲載していますのでご笑覧ください。
(財団法人大阪社会運動協会)
