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びぶろす-Biblos

平成20年1月号(電子化39号)

  • NATIONAL DIET LIBRARY
  • 発行/国立国会図書館総務部


国際図書館連盟(IFLA)「政府機関図書館のためのガイドライン」について:
2007年8月案の概要とIFLA2007年大会での討議

古賀 崇

1. はじめに

 世界最大の図書館関連団体である国際図書館連盟(International Federation of Library Associations and Institutions: IFLA)の中には、政府機関に置かれる図書館に関する事項について集中的に討議・提案する「政府機関図書館分科会(Government Libraries Section)」というものが存在する。この分科会はここ数年の間、政府情報・公的刊行物分科会(Government Information and Official Publications Section: GIOPS)と議会図書館・調査サービス分科会と協働して、「政府機関図書館のためのガイドライン」制定のための作業を進めてきた(ただし後述の通り、議会図書館・調査サービス分科会は最終的にはこの作業から外れている)。2007年8月にそのガイドライン案が提示され、同月19日〜23日に南アフリカ・ダーバンで開催されたIFLA2007年大会において、ガイドライン案に関する討議が行われた。
 筆者はこの8月よりGIOPS委員・兼・情報コーディネーター(IFLA本部と分科会との連絡、分科会ニュースレター編集などを担当)を務めているが、ガイドライン策定作業に直接かかわったわけではなく、IFLA2007年大会における討議に参加したにとどまる。このような立場であるが、このガイドライン案の内容について、国内の各省庁図書館の関係者の方々ほか読者の参考になればと思い、本稿で紹介させて頂くこととした。

IFLA2007年大会会場のInternational Convention Center Durban
(IFLA2007年大会会場のInternational Convention Centre Durban)

2. ガイドライン案提示までの経過

 IFLAにおいて「政府機関図書館のためのガイドライン」の策定を促した一因は、ガイドライン案にも言及されているように、特に先進国の政府機関図書館において予算・人員の削減や図書館そのものの閉鎖など、苦境が相次いでいる点にあったという。同時に、発展途上国の政府機関に対しても、図書館の設立や運営に関して指針や基準が必要である、という声が関係者からあがり、IFLAで2003年よりガイドライン策定のための委員会を設置することとなった。この委員会には、当初は政府機関分科会、政府情報・公的刊行物分科会、議会図書館・調査サービス分科会の三者が加わっていた。しかし、議会図書館には「議員のための調査サービス」という独自の機能があること、また議会図書館に関するガイドラインがすでに制定されており(注1)こちらを改訂する必要があることを理由に、議会図書館・調査サービス分科会は直接の策定作業からは外れている。その後はオブザーバー的立場で策定作業にかかわっているようである。
 最終案提示までは複数の案の提示もあったそうであり、全体の案の草稿がまとまったのは2007年に入ってからであったという。同年4月には英国ウェールズで草稿に対する公聴会が開かれ、その後の討議や加筆を経て、IFLAダーバン大会開催に先立つ2007年8月にガイドライン案が提示された。

3. 2007年8月のガイドライン案の概要

2007年8月時点でまとめられたガイドライン案の目次は、次の通りである(注2)。

  1. はじめに
  2. 政府機関図書館の種類
  3. 図書館運営についての概説
  4. 利用者の要求の確認と、それへの対応
  5. 政治的環境の中で働く上での課題と機会
  6. コレクション構築
  7. 物理的・電子的コレクションの組織化とアクセス管理
  8. 物理的・電子的コレクションの保存
  9. 人員の雇用と管理
  10. 財源の取り扱い
  11. 政府機関図書館の役割についてのアドボカシー
  12. 政府機関図館とその他の図書館との協働
  13. マーケティングとPR
  14. 利用者のプライバシー保護のための要件
  15. 政府機関図書館に関する最近の動向
  16. おわりに
  17. 寄稿者一覧

 まず、このガイドライン案において、政府機関図書館とは「政府の資金により開設・運営され、政府職員を主な利用対象とする図書館」と定義されている。ここには立法・行政・司法の三権にわたる機関の図書館が含まれうるが、国レベルの議会図書館については「議会図書館のためのガイドライン」が優先するとしている。また行政では各省庁ほか政府機関、大使館、地方政府機関の図書館、および特定の主題を扱う国立図書館(国立農学図書館、国立医学図書館など)、司法では各種の裁判所図書館が含まれうる。
 ガイドライン案の個々の項目を検討してみると、政府機関以外の様々な図書館にも当てはまる内容も多いと考えられる。具体的には、利用者の要求の確認とそれへの対応(上記4.)、コレクションの組織化・管理・保存(上記7., 8.)、人員や財源の扱い(上記9., 10.)などである。また、このガイドライン案では利用者の要望を把握し、それに沿った図書館サービスを展開する必要性や、それを実現するための様々な方法―来館者・非来館者調査や、利用者を含めた「図書館委員会」の構築など―が強調されているが、これらも政府図書館のみならず、様々な図書館に応用できるだろう。
 以下では、このガイドライン案の特色と思われる点に絞って紹介したい。
*「政治的環境の中で働く上での課題と機会」:政府機関は政権交代を含め政治的状況に左右されやすい。その中で政府機関図書館の職員は「図書館員として、また公務員としての倫理規定」の遵守により、政治的環境の変化の中でも一貫した姿勢を保つように注意を促している。
*政府情報の取り扱い:政府機関図書館の特色としては、自機関の活動の先例あるいは方針・計画を記録したものとしての「政府情報」を多く収集しサービス対象とすることが挙げられる。そこでは政府刊行物ないし政府情報の「寄託制度」を活用し、またこの制度の実効性を高めるための取り組みが必要だと強調している。
*アドボカシーとマーケティング:このガイドライン案は「政府機関図書館の存在意義」―図書館によるサービスがなければ、政府機関の活動は非効率な状態に陥る、ということ―をいかに図書館外部の人々に認識させるか、という点に大きな関心を払っている。そのための手段として、アドボカシーとマーケティングが位置づけられている。このガイドライン案において、「アドボカシー」は政府情報アクセスに関する国内の法や政策に依拠しつつ、政府機関図書館の存在意義をアピールする取り組みを指す。一方、「マーケティング」は、働きかける対象(政府機関の上層部の人間、また政府内部・外部利用者など)やアピールしたいサービスをより特定させて、政府機関図書館の存在意義を示すための取り組みとされる。
*「政府機関図書館に関する最近の動向」:ガイドライン策定の背景となる問題意識はこの項目によく現れている、と思われる。ここでは、政府情報や「政府上層部の意思決定に深くかかわる情報源(新聞など)」が電子化されたことにより、政府上層部の人間にとって図書館の存在意義が薄れている、という状況にまず言及される。これを打開するためのカギとしては、政府機関の職員、特に政府上層部の人間とのコミュニケーションを密にとること、他機関との連携を探ること、図書館は「情報のセンター」から「コミュニティの文化に働きかけるセンター」に移行すべきこと、などを挙げている。
 なお、このガイドラインを含め、IFLAによるガイドラインには強制力があるわけではなく、むしろ各国における図書館活動の参照となることをねらいとしている、という点にも留意して頂きたい。

4. IFLA2007年大会での討議内容

 南アフリカ・ダーバンでのIFLA2007年大会においては、政府機関図書館分科会、政府情報・公的刊行物分科会、議会図書館・調査サービス分科会の三者の合同企画として、「政府機関図書館のためのガイドライン」最終案に関する討議のためのセッションが8月21日午前に開催された(以下の肩書きはIFLA2007年大会当時のもの)。
 最初に、このガイドライン最終案策定において中心的役割を果たしたNancy Bolt氏(情報コンサルタント、元米国コロラド州立図書館長、IFLA政府機関図書館分科会長)が、ガイドライン最終案提示までに至る経緯や、ガイドラインの内容について紹介を行った。続いてJane Wu氏(国連食糧農業機関(FAO)ローマ本部図書館長、IFLA政府情報・公的刊行物分科会長)はガイドラインにおいて引用ないし参照すべき文献を紹介した。
 Nerisa Kamar氏(ケニヤ・エガートン大学図書館、IFLA政府情報・公的刊行物分科会委員)からは、アフリカをはじめとする途上国の事情を踏まえた提言を行った。特に、プライバシー保護を含め確固とした情報政策は途上国では少なく、また電子情報(特にオンライン情報)の保存や図書館サービスへの取り込みについても途上国では困難な点が多い、と強調した。
 Donna Scheeder 氏(米国議会図書館法律図書館サービス局長、IFLA議会図書館・調査サービス分科会長)は、「Web 2.0/3.0の時代に図書館はどう存在意義を発揮すべきか」「ガイドラインの内容は時間の経過に耐える(すぐに「時代遅れ」にならない)ものになっているかどうか」といった問題提起を交えつつ、この分科会の立場からのコメントを寄せた。
 その後、フロアの来場者を交えた質疑応答が行われた。筆者からは、「ガイドラインの内容は政府機関図書館のみならず、「政府職員を対象とする公共図書館サービス」などにも応用可能ではないか」という旨を発言させて頂いた。これに対し、Bolt氏は「公共図書館については別のIFLAガイドラインがあり(注3)、こちらを優先することになる。しかし、発言された点についての可能性は否定しない」と返答された。その他、「アドボカシーについては政府上層部(シニア・マネジャー)への働きかけが特に必要」「“政府機関図書館”の定義はガイドライン案で示されたもので適切か」など多くの意見や質問が、来場者から寄せられた。

(8月21日のセッションにおける、Nancy Bolt氏の発表)
 (8月21日のセッションにおける、
Nancy Bolt氏の発表)

(8月21日のセッションにおける、フロアからの発言の模様)
 (8月21日のセッションにおける、
フロアからの発言の模様)

5. 今後の予定など

 「政府機関図書館のためのガイドライン」については、2007年10月1日でガイドライン案へのパブリック・コメント受付が締め切られ、その後に関係する分科会での討議・修正を経て、2008年春頃に正式のガイドラインとして公表される予定である(その前に「最終案」が提示される可能性もある)。今回紹介したガイドラインが、日本での各省庁・裁判所の図書館を含めた「政府機関図書館」の関係者のために、また政府職員を対象とするサービスを進めたい公共図書館の関係者のために、少しでも参考になるところがあれば、筆者としては誠に嬉しく思う。
 なお、IFLA2007年大会全体の内容については、『図書館雑誌』2007年12月号、ならびに『国立国会図書館月報』2007年12月号に各方面からの報告が掲載されている。うち前者では拙稿「政府情報アクセスに向けての国際的課題:IFLA政府情報・公的刊行物分科会(GIOPS)の活動より」も収録されているので、あわせてご参照頂ければ幸いである。


(注1) Dermot Englefield (ed.) Guidelines for Legislative Libraries. (IFLA Publication No. 64) Munchen: KG Saur, 1993. 123 p.

(注2) ガイドライン案は以下より入手可能(URLは2007年11月14日に最終確認)。
http://www.ifla.org/VII/s4/pubs/Guidelines-Gov-Lib_Draft.doc
http://www.ifla.org/VII/s4/pubs/Guidelines-Gov-Lib_Draft.pdf

(注3) このガイドラインは以下の通り日本語版として出版されている。理想の公共図書館サービスのために:IFLA/UNESCOガイドライン(The Public Library Service: IFLA / UNESCO Guidelines for Development). 国際図書館連盟公共図書館分科会ワーキング・グループ編・山本順一訳. 日本図書館協会, 2003(原著2001). 156p.

(国立情報学研究所情報社会相関研究系助教)

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