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トップ > 刊行物 > びぶろす > 平成19年10月号(電子化38号)

びぶろす-Biblos

平成19年10月号(電子化38号)

  • NATIONAL DIET LIBRARY
  • 発行/国立国会図書館総務部


はじめに

『びぶろす』は、昭和25年4月に創刊し、以後行政・司法各部門の支部図書館と専門図書館の連絡情報誌として今日に至っております。より広い範囲への提供を考え、平成10年8月号で冊子体を停止し、10月から国立国会図書館ホームページで公開しています。刊行形態は異なりましたが、今後も当館、支部図書館および専門図書館の折々の状況を掲載して行きます。

本誌に掲載された記事を全文または長文にわたり抜粋して掲載される場合は、サイトポリシーをご覧いただき、事前にご連絡ください。

SLA 2007 Annual Conference参加報告

葉山 和美

1.はじめに

 SLA(Special Library Association)は、1909年にアメリカで創立され、現在では全世界に会員がいるInfoPro(情報専門家)のための団体である。その年次総会であるSLA 2007 Annual Conferenceが6月にコロラド州デンバーで開催された。今回、海外研修としてこのSLA 2007に参加したので報告する。

1-1. SLA 2007 Annual Conference概要
 開催地デンバーはコロラド州の州都で、愛称Mile High Cityの名のとおり、標高1600mの高原都市である。最近ではデンバーを本拠地とするコロラド・ロッキーズに松井稼頭央が移籍したことから日本でも知名度が上がっているのではないかと思う。デンバーは1年を通して好天に恵まれ、夏は過ごしやすい気候のため避暑地として観光客にも人気である。市街地には西部開拓時代の名残を残す歴史的建造物も多くあり美しい都市であった。Conferenceの会場はコンベンションセンターとすぐそばのHyatt Regencyで、宿泊したホテルHoliday Innとはワンブロック程度の距離であったため、早朝のSessionの参加には便利であった。

写真1 左上:コンベンションセンター外観 右下:SLA Registry Counter
写真1 左上:コンベンションセンター外観 右下:SLA Registry Counter

 大会のスケジュールは表1のとおりである。SLAには分野によるグループのdivisionと地域によるグループのchapterがあるが(会員はそれぞれ1つのdivisionとchapterに無料で加入できる)、Registryをすると配布されるConference GuideにくわしくSessionやイベントの案内が記載されており、自分の所属するdivisionやchapterのものや興味のある分野のものを確認することができる。

表1 SLA 2007 Annual Conference のおおまかなスケジュール
SLA ホームページhttp://www.sla.org/より転載
表1 SLA 2007 Annual Conference のおおまかなスケジュール

 今回は400以上の出展と5000人以上のConference参加があった。会期は2007年6月2日〜2007年6月7日であったが、6月2日は主にContinuing Education(継続教育)、6月7日はSLAが主催するデンバー周辺のツアーが催され、6月3日から6月6日がAnnual Conferenceのメインであった。筆者は6月3日のINFO-EXPO Openから、Closingの6月6日まで参加した。
  INFO-EXPOの開場に先立つイベント Open INFO-EXPO Grand Opening with Prize Drawing Announcementでは、18世紀半ばメキシコからアメリカに移住したアステカのコスチュームをまとったネイティブアメリカンのダンスが披露され、主催者の挨拶の後に展示会場であるINFO-EXPO Hallが華やかにオープンした。

写真2 左上:ネイティブアメリカンのショー 左下:開催者の挨拶 右:INFO-EXPOの開場
写真2 左上:ネイティブアメリカンのショー 左下:開催者の挨拶 右:INFO-EXPOの開場

2. Conference

 朝はBreakfastから時には夜の12:00におよぶReceptionまでと、会期中は非常に忙しかった。筆者が所属するPharmaceutical and Health Technology Divisionでは、会期中Networking Breakfastが催されていた。SLAは情報交換をおこなえるような交流の場を設けているが、このNetworking Breakfastもそのひとつである。たいていはここで朝食をとりながら、旧交をあたためたり、情報を交換したりすることになる。Networking BreakfastではこのDivisionに関連したSessionのみを抽出した小冊子が配布され、スケジュールのチェックに非常に有用であった。 筆者は初参加ということもあったのでPharmaceutical and Health Technology DivisionのSessionを中心に出席したが、もちろんどのDivisionのものでも出席は自由である。
 次に出席したSessionの一部を紹介する。

2-1.Opening General Session featuring Al Gore

写真3 元副大統領 アル・ゴア氏
写真3 元副大統領 アル・ゴア氏

 今年のKey Note Personは”不都合な真実”の著者としても知られている元副大統領のアル・ゴア氏であった。講演は情報の収集と利用についてであったが、InfoProは情報を収集・蓄積するだけではいけない、情報を外に出すことが必要であるということが主張された。そのなかでゴア氏は、彼が20年にわたって環境問題に取り組み、その調査結果を公表して現在大きな反響を得ているが、それらはすでに研究者たちは事実として知っていたことであり彼らが外に出すというアクションを起こしていなかったため、“真実”が周知されることはなかった、という事実を挙げて、Informationは表出したknowledgeにすることが大切である、と述べていた。

2-2. Synergy General Session
(議長Tom Hogan: CEO, Information Today, Inc.、パネリストStephen Abram: Vice President of Innovation at SirsiDynx、Clifford Lynch: Executive Director of the Coalition for Networked Information、 Eugenie Prime: formerly of Hewlett-Packard) “InfoProの将来はどのようになるのか?(どのようにあるべきか)”をテーマとしたSession。
 Googleで簡単に検索できるような時代にInfopro はOPACの良さをユーザーにどのように伝えたらよいのか、を考えるべきであり、また、サーチャーは正しい答えを出すことを目的として調べるが、ユーザーは何か答えがでてくればいいと考えている、このギャップを理解する必要があるということが議論された。パネリストたちの共通した認識は、「世の中が変わっていることをInfoproも知るべきである」ということであった。

2-3. Toxicology Roundtable: Invisible Environmental Toxicants
 有事の際の毒物特定や環境訴訟における適切な情報の収集と提供に図書館(情報センター)がどのように協力できるかについて2つの事例が報告された。いずれもlibrarianが積極的に情報の収集や提供にとりくむ姿勢が見受けられた。

2-3-1. Why Small Things Matter: Exposure to Amphibole Asbestos in Libby Montana (Christopher P. Wels: U.S. Environmental Protection Agency National Enforcement Investigations Center)
 Montana州Libby鉱山のアスベスト被害訴訟におけるNational Enforcement Investigations Centerの取り組みについての報告。
 Montana 州Libby では1920年代から1990年の閉山にいたるまで、建築用の断熱材、防火吹き付け材Zonoliteの原料としてバーミキュライトを露天掘りしていた。Libbyで産出されたバーミキュライトにはトレモライト、アクチノライトが含まれており、産出時に放出されたバーミキュライトはアスベストに変化し、野山に放置されたため環境被害の危険性があると、EPA(U.S. Environmental Protection Agency)が認定し現在Zonolite製造会社と訴訟中である。National Enforcement Investigations Center は現地を調査し、訴訟に必要なデータの収集に当たっている。Libbyにおける医学的なモニタリングの結果、Libbyの住民では18%、鉱山労働者では48%の生物学的影響が認められた。作業に基づいた曝露のモニタリングの中間結果では特定の状況下では重大な継続的曝露の可能性が示されている。Libbyにおける緻密なリスク評価のためにアスベストの人体への曝露を測定するには既存の技術を大幅に改良する必要がある。
 また、この件はすでに閉山された鉱山での事例であり、アスベストの危険性が認知されていなかったため、当時のデータが残っているとしても十分に活用できていない可能性がある。そこで、埋もれたデータを発掘し、利用できるようlibrarianの協力が必要であるということであった。
 この件については昨年のSLAでも報告されており、訴訟中であるため発表できない部分もあるが、今後も報告を継続する予定とのことである。

2-3-2. Hazardous Materials, Crisis Situations, and the Role of Information Specialist (Dean Walton: University Libraries, University of Oregon)
 有事における情報の必要性といかにして情報を収集し提供するかについての報告。
 化学工場で事故が発生した実際の事例をもとにlibrarianがどのように関わるべきかを発表した。事例ではその地域の公共図書館などがネットワークを構築し、事故を起こした工場の概要を検索し、その工場で扱われている化学物質を特定し対策が立てられるように情報を提供した。この事例を紹介したなかでは、librarianが災害時/危機的状況への対応に関わることの必要性、どのような情報が誰に必要とされているか、どのような質問がlibrarianに寄せられるか、トレーニングの必要性などについて述べられた。librarianが把握しておくべき有用なデータベース、リソースとして、化学物質を調べるためのATSDR(Agency for Toxic Substances and Disease Registry:http://www.atsdr.cdc.gov/)、災害時のよくある質問を掲載したAmerican Red Cross(http://www.redcross.org/)、防災・危機管理の専門機関であるFEMA(Federal Emergency Management Agency:http://www.fema.gov/)ならびにその付属機関であるEMI(Emergency Management Institute:http://training.fema.gov/)のなどが紹介された。
 また、Session出席者からもNLM(National Library of Medicine)が同様に有事の際の情報提供やネットワークの構築を行っているとの発言があり、未加入の図書館はNLMに是非連絡してほしいと呼びかけていた。

図1 紹介されたサイトの一部
上:http://www.atsdr.cdc.gov/ 右:http://www.fema.gov/より転載
図1 紹介されたサイトの一部

3. INFO-EXPO

 INFO-EXPO Hallは会場が大きいこともあって盛大な印象をうけた。製品の紹介やデモンストレーションは各ベンダーそれぞれのブースで行われるが、そのほかに、特設会場で時間を決めてのプレゼンテーションがあり、興味のある製品があれば自由に聞くことができた。

写真4 左:INFO-EXPO 出展者ブース 右:Turning The Pagesのプレゼンテーション
写真4 左:INFO-EXPO 出展者ブース 右:Turning The Pagesのプレゼンテーション

 各ベンダーの多くの製品のデモンストレーションやプレゼンテーションを見る機会を得たが、特に印象に残ったものとして英国図書館(The British Library: BL)のTurning The Pagesを紹介する。

3-1. The British Library: Turning The Pages - "Bringing our Treasures" to Life Through Technology
 Turning The PagesはBLの貴重資料のオンラインギャラリーである。今年の2月にバージョンアップし、Turning The Pages 2.0としてWebならびにCDで公開されている。BLの蔵書のデジタル化に協力しているマイクロソフト社とのコラボレーションであり、Windows Vistaの発売にあわせて発表された。
 Ver.2.0ではオリジナルをスキャンして特別なプログラムにより立体的に再現し、ページをめくる、拡大する、個人的なノートを他人と共有する、付与された音声データを再生することにより朗読を聴く、ことを可能としており、デモンストレーションではビル・ゲイツの所有するレオナルド・ダヴィンチのノートが再生された。このダヴィンチのノートは分断されていたが、Turning The Pagesでは1冊にまとめられて復元されており、オリジナルが分断、破損している場合の安全な閲覧方法として期待できる。BLのサイトではこのほかに不思議の国のアリスのオリジナルなど、稀覯本が公開されている。
 また、BLはTurning The Pages 2.0のオープンを期に、英国中の図書館から、電子化して公開すべき貴重資料を募集し、コンペティションを行うとも発表している。
 このBLの試みは図書館の重要な役割である資料の保存と公開をどのようにすべきかを示す良い例と思われる。

図2 Turning The Pages
http://www.bl.uk/onlinegallery/ttp/ttpbooks.html
図2 Turning The Pages

4. おわりに

 SLA Annual Conferenceの参加は今回初めてであったが、SLAの活動が非常に活発でその内容が多岐にわたっていることに非常に感銘を受けた。参加者はSessionのみならずReceptionでも積極的に交流を持ち、意見を交換していた。各ベンダーも最新の製品を紹介するビジネスの場として力をいれており、また、スポンサーとしてもConference全体をサポートしていた。
 全体を通して、運営者、参加者、ベンダーが一体となって盛り上げ、Conferenceを成功させようという意志が感じられた。専門図書館(特に企業内などでは)は職員1人という場合も多く、このような場で新しい知識を得ることやネットワークを築くことが大切であると思われる。筆者自身も日常業務に埋もれがちであったが、他のInfoProの活動や様々な新製品をみることにより非常に刺激を受けた。
 なお、Closingではアメリカで人気の漫画家 Scott Adamsが講演したが、InfoProもストーリテリングの能力が必要ということが、Adamsが選ばれた理由のひとつであり、SLAではストーリテリング能力、さらには交渉力を重要なものとして考えていることがわかった。いずれのSessionにおいてもコミュニケーション能力の必要性が語られており、InfoProもビジネスパーソンとして周囲への働きかけをおこなうことが大切であると改めて実感した。
 次回は2008年6月15日〜2008年6月18日にシアトルで開催される。また機会があれば是非参加したいと思っている。

{(財)国際医学情報センター 東京分室}

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