びぶろす-Biblos
平成19年10月号(電子化38号)
- NATIONAL DIET LIBRARY
- 発行/国立国会図書館総務部
- ISSN 1344-8412
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平成19年度専門図書館協議会全国研究集会に参加して
川上 洋一
1 はじめに
本年5月31日(木),同年6月1日(金)の2日間,東京都江東区の日本科学未来館において,平成19年度専門図書館協議会総会・全国研究集会が開催されました。
今回の全国研修集会の総合テーマは「立ち上がれ!ライブラリアンNEXTステージへ…」として,第1日目は「ドラッカー経営思想の神髄〜情報革命とその中での知識人の役割と働き方」と題して,ものつくり大学名誉教授上田惇生氏の基調講演が行われ,第2日目は6分科会(午前3分科会,午後3分科会)及び全体会が行われました。
そこで,私が参加しました第2日目の第1分科会,第5分科会及び全体会の内容につき,その概要等を紹介させていただきます。
2 第1分科会
午前に行われた第1分科会では,「著作権問題とライブラリアン」をテーマに,2名の講師による講演が行われました。
(1)「著作権問題の動向とライブラリアンの著作権認識」
講師:筑波大学大学院図書館情報メディア研究科教授 山本順一氏
著作物とは,「思想または感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術または音楽の範囲に属するもの」と定義されるが,これは特定個人が考えた,感じた,思ったことを表現することによって,著作物ができることとなり,現代社会においては「万人がクリエーター」状態である。
- ア 近代的著作権制度の歴史
- 著作物には,「消える著作物」(講演等)と「消えない著作物」(文字で書かれた著作物等)があるが,西洋における15世紀の活版印刷の発明・普及によって,大量に複製が行うことが可能となったことで,出版物に対する著作権という考え方が現れた。これが,近代的著作権制度の誕生であり,それは18世紀初頭のことである。その後,その法的保護対象著作物が音楽や美術等にも拡大されることとなった。近代的著作権制度とは,特定個人が制作した著作物について,一定期間その利用を著作者に独占することを法的に認める制度であるが,この著作権制度の国際標準となるのが1886年に締結されたベルヌ条約である。
- イ 著作権制度の目的
- 優れた著作物の製作者に対して,第三者がそれを利用しようとするとき,許諾と引換えに経済的対価を得さしめることによって,そのうまみを味わった著作者をさらなる経済的利益の獲得に誘導し,多くの優れた著作物の継続的生産に結びつけ,結果的に学術,文化の向上を実現することを目的としている。
- ウ 著作者の権利
- 著作者の権利には,人格的な利益を保護する「著作者人格権」と財産的な利益を保護する「著作(財産)権」がある。「著作者人格権」には,「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」がある。「著作権」は権利の束であると言われており,その内容として「複製権(コピーライト)」「上演権及び演奏権」「上映権」「公衆送信権」「口述権(朗読)」「展示権(美術の著作権)」「頒布権(映画の著作権)」「譲渡権」「貸与権」「翻案権」「二次的著作物の利用に関する原著作権者の権利」がある。
- エ 著作物の種類
- 「著作権法」上,9種類の著作物(「言語の著作物」「音楽」「舞踊,無言劇」「美術」「建築」「地図,図形」「映画(動画)」「写真」「プログラム(ソフトウェア)」)が例示的に明記されているが,これら9種類の著作物は排他的なものではなく,重畳的なものである。また,これらの著作物には,コンピュータという機械に対して,その部品となる無機的な指令群にすぎないプログラムも含まれている。
- オ 著作権の権利制限にかかる諸規定
- 著作権法の趣旨である文化学術の振興のために公共・公益的な観点から,権利制限にかかる諸規定がおかれている。図書館とその業務については,複写サービスのほか,文化財保全,私的使用,非営利無償の利用などの法原理が適用される。
- カ デジタル・ネットワーク社会における著作権問題
- 汎用複製機械であるコンピュータと,オリジナルと複製劣化をまぬがれた全く同じデジタル複製物を大量に増殖流通させる伝送路であるインターネットが普及した現代は,いわゆるスーパー・コピー社会でもあることから,違法コピーを制御するために公法的規律が必要とされる。しかしながら,著作権制度の目的である学術・文化の向上に損ねない配慮も必要となり,利害関係が輻輳することとなる。
今後,デジタル化,ネットワーク化の進展によって,デジタルコンテンツの遍在,大量複製,大量改変といった状況が生み出されてくる中で,著作権法はきわめて頻繁に改正され,不安定なものとなってくる。
(2)「専門図書館業務と著作権」
講師:複写と著作権メーリングリスト主宰者 末廣恒夫氏
- ア 図書館業務に関わる著作権
- ○閲覧と「上映権」
マイクロフィルムをマイクロリーダーに表示することや,CD−ROM,DVDをパソコンのディスプレイに表示する行為は「上映」に該当する行為となり,「上映権」が関わってくる。 - ○閲覧と「展示権」
「展示権」は,美術の著作物と未発行の写真著作物の原作品のみ及び,書籍・雑誌の展示には及ばない。 - ○貸出と「貸与権」
平成16年の著作権法改正によって,書籍・雑誌にも「貸与権」が適用されることとなった。原則として,著作権者の許諾なしに貸与を行うことはできなくなった。ただし,「貸与権」には権利制限規程があり,「非営利」かつ「無料」の場合は「貸与権」は及ばない。企業内専門図書館における貸出と「貸与権」の問題は,「非営利かつ無料」の貸与に該当するかの判断となるが,「非営利」と認められる可能性は低いのではないか。この場合,「無料」であっても「営利」となると権利制限が及ばなくなる。 - ○ファクシミリ送信等と「公衆送信権」
ファクシミリでの文献送信,電子メールによる文献の送信等の行為は,「公衆送信」とみなされるため,「公衆送信権」が関わってくる。「公衆送信権」には権利制限の規程がないので,全ての「公衆送信」に許諾が必要となる。 - イ 複写と著作権
- ○複写と「複製権」
複写は,「複製」に含まれる。「複製」は,「媒体」「手段」「著作物の種類」を問わない。 - ○「複製権」の制限
「複製権」に関わる権利制限で「専門図書館」に関連する著作権法の条項については次のものがある。
私的使用のための複製(第30条)については,原則として,民間企業で行われる「複写」には該当しないと言われている。
図書館等における複製(第31条)について,専門図書館が本条項の図書館の対象になるかは,図書館法における「私立図書館」の要件を満たすところであれば,対象となる。
また,平成18年の著作権法改正により,「特許審査」「薬事審査」などにおける複製についても,権利制限が認められた。(第42条) - ○著作権等管理事業者(集中処理機構)
権利制限に該当しない「複写」を行う場合には,「著作権処理」を行わなければならないが,許諾の処理を軽減するために「集中処理機構」がある。 - ○著作権処理における現状の問題点
「集中処理機構」が複数存在しており,それら団体が管理している著作物を統合的に調べる手段が存在していないため,著作権処理を行うためにはすべての団体において管理著作物を確認する必要がある。
また,「集中処理機構」に委託していない著作物も存在し,それらの著作権処理の問題もある。現状は,利用者は著作物を利用しづらい状況である。 - ウ 専門図書館と著作権
- 以上のような著作権にかかる状況の中において,ライブラリアンは,著作権についての知識の取得はもとより,著作権法の改正の動向についても常にウォッチングする必要があり,パブリックコメントの提出,法改正への意見提出等の図書館職員団体としても役割を果たしていくことが重要である。
3 第5分科会
午後に行われた第5分科会では,「図書館運営の一考察/先端事例に学ぶ」をテーマに,2名の講師による講演が行われました。
(1)「図書館のリストラから六本木ライブラリーの創設へ」
講師:アカデミーヒルズ六本木ライブラリー 小林麻実氏
企業においては,スペース及びスタッフの観点から,図書館を維持する余裕はないと考え,図書館自体を廃止する例も珍しくなくなりつつある。また,インターネットが普及した現代において,文献等資料はネットで検索及び電子情報を閲覧することができ,書籍についてもネット注文すると自宅に配達されることも,図書館不要論の根拠の一つであると思われる。
このような状況の中で,企業における図書館は,収益を生み出していることを証明できなければ,存在できなくなってきている。そこで,問題になるのは,図書館における収益とは何か,また,収益をどのように算出するかである。
企業内図書館は,企業の本業ではなく,本業をサポートするものであると考えられているが,図書館を一つの企業体と考えた場合,図書館経営という視点から収益を考えることができるのではないか。
六本木ヒルズに収益のある事業としてのライブラリーを創設するに当たって,会員制ライブラリーとしてどのような人が会費を払うのかといったところから検討を始めた。検討に当たっては,会費を払う人(顧客主義)と,既存図書館への不満を解消するものといったことについて考えていった。
その結果,六本木ライブラリーでは,「原則新刊書のみ,書店と同タイミングで入荷」として保存は考えないものとし,「カフェラテ,ビール,ワインを飲みながらの読書」を楽しめ,「PC,ネットの使用も可」とした。また,「貸出,複写サービスは提供せずにブックストアーを設置」することによって,著作権と情報に出会う「場」を重視したものとした。
これからの図書館は,「図書館に何を求めているのか」といったことを意識しながら,図書館はどのような収益を生み出しているのかについて,社内外にアピールしていかなければならない。
(2)「ライブラリアンのための広報戦略マニュアル−専門性を訴求する5つのポイント−」
講師:早稲田大学図書館 仁上幸治氏
図書館員の自己イメージは社会的イメージと大きく乖離している。社会的に認識されている図書館員像は,融通が利かない,サービス精神と専門職業意識が低い,仕事は定型業務ばかりといったものである。
このようなイメージは表面上のものではなく,社会的な評価そのものであることを認識する必要がある。
図書館業務における広報活動とは,従前考えられてきた「お知らせ」や「一方通行の情報伝達」ではなく,パブリック・リレーションズ(PR)という本来の世論形成手段である。
また,図書館員のイメージの形成においては,実際の図書館の現場で利用者本位のサービスを徹底的に展開することが必要不可欠である。
つまり,利用者本位のサービス改善や業務の合理化を積極的に行い,そのことに対し,利用者に理解,共感,参加,協力が得られるよう広報戦略を練るとともに,新しい専門性として学術情報リテラシー教育を支援するための専門的な知識と技能を取得する必要がある。
このことによって,新しい図書館員像を創造し,専門職としての社会的評価を回復・向上させていくことができるとのである。
広報活動については,戦略的に行う必要があり,利用者に対しては,まず,図書館の存在について「印象づけ」を行い,図書館を快適,便利,気軽,自由,信頼性といったイメージを持ってもらう必要がある。
そのためには,職場のカルチャーを変え,オリエンテーションや講習会を変える必要がある。
4 全体会
全国研究集会の締めくくりとして,全体会が行われました。全体会では「立ち上がれ!ライブラリアンNEXTステージへ向けて,専門図書館員に求められるもの」と題して,各分科会のテーマを踏まえ,ファシリテーターに越山素裕氏(清水建設株式会社,専図協広報委員長),パネリストに仁上幸治氏(早稲田大学図書館),岡本真氏(ACADEMIC RESOURCE GUIDE編集長)を迎えて,参加者とパネリストの間で議論が交わされました。
まず,問題提起として,越山氏から,「著作権処理」,「IT化と図書館の評価尺度の問題(従前の評価尺度として来館者数,貸出冊数であったが,IT化に伴い新たな尺度が必要となるのではないか)」,「広報活動」「IT化に伴う図書館業務の変化(例えば,資料の修繕とデジタルアーカイブとの関係,蔵書管理とデジタルコンテンツの整備との関係等)」の話があり,岡本氏からは,「専門図書館員に求められるもの」として,現状のwebへの取り組みについてあまり進展していないのは,図書館員の知識・経験不足や意欲の欠如といった傾向が見られ,危機感が不足しているからなのではないかといった話があった。また,仁上氏からは,広報活動や顧客満足度向上について,生き残るための戦略と作戦,フォローアップが重要ではないかとの話があった。
パネルディスカッションでは,「企業図書館」の生き残りについて,既得権益の意識があるので危機意識が少ないのではないかといった意見や,「図書館不要論」に対抗するために図書館の必要性について社内(組織内)への広報といった視点や,「情報サロン」,「コミュニティ」,「情報に出会う場」をつくっていくことが重要ではないかといった意見が出された。また,オリエンテーション等は,図書館の存在を知らしめる場であり,戦略的に広報活動を行っていくこと,図書館に来るかどうかも大事であるが,来なくても,利用してもらえればいいので,図書館が組織の中で果たすべき機能,どのように使われているかをリサーチし,図書館に足らないものを知ることが必要であるとの意見が出された。図書館の必要性の説明のためには数字を出さなければならないが,IT化の中でもデータベースのアクセス件数や検索件数等の数値を利用することができるのではないか,経済的効果についても,有料で情報提供を行ったり,レファレンスを有料にするといったことも一つの方法ではないかといった意見も出された。
5 おわりに
今回,専門図書館協議会の全国研究集会に初めて参加させていただきましたが,現在の情報化時代の流れの中で,図書館及び図書館員を取り巻いている今日的な課題に合わせたテーマを設定して分科会を設け,そのテーマを検討する上で参考となる講師の方々のお話をうかがうことができ,今後の図書館に求められていること,その実現のために図書館員は何をしていかなければならないかを考え,実践を行っていくために必要なノウハウが詰まった研究集会でした。私自身,今,図書館を取り巻く状況がこんなにも厳しく,たくさんの課題があることについて気付かせていただき,とても有意義な機会となりました。
最後になりましたが,講師の方々をはじめ,今回の全国研究集会の開催に関わったすべての方々に対し,感謝申し上げます。
(前支部法務図書館)
