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びぶろす-Biblos

平成19年7月号(電子化37号)

  • NATIONAL DIET LIBRARY
  • 発行/国立国会図書館総務部


はじめに

『びぶろす』は、昭和25年4月に創刊し、以後行政・司法各部門の支部図書館と専門図書館の連絡情報誌として今日に至っております。より広い範囲への提供を考え、平成10年8月号で冊子体を停止し、10月から国立国会図書館ホームページで公開しています。刊行形態は異なりましたが、今後も当館、支部図書館および専門図書館の折々の状況を掲載して行きます。

本誌に掲載された記事を全文または長文にわたり抜粋して掲載される場合は、サイトポリシーをご覧いただき、事前にご連絡ください。

電子環境下における国立公文書館 -デジタルアーカイブズへの対応を中心に-

高山 正也

はじめに

 本稿では最近の国立公文書館の主な動向を概観する。本稿での「電子環境下における」の意味は、電子技術の発展の中でも特にデジタル技術が直接的に国立公文書館活動に及ぼした影響のみならず、デジタル技術が普及した社会の下での国立公文書館活動の変化の結果を記述することで、電子技術、特にデジタル技術のもたらす間接的な影響をも視野に入れるとの意である。
 「経済や技術の進歩が文化のあり方にも影響し、規定する」とは、古くからよく指摘されるところであるが、20世紀の第3四半期ともいえる1970年代後半からの、いわゆる情報革命は大きく日本社会の構造をも変化させ、また公文書館活動を含む蓄積・検索型の情報サービスにも影響し、それを変化させたことにもあてはまる。
 1971(昭和46)年7月に設立された国立公文書館はその後4半世紀は国立機関として機能したが、21世紀に入った2001(平成13)年4月からは独立行政法人国立公文書館として法人化された。公文書館活動の基盤となる移管される公文書群は、30年原則を適用するなら、今まさに1970年代から80年代の初頭にかけて官公庁を含む日本の各層で生じた「文書起案(作成)の電子化」に対応するべき時期にさしかかりつつある。そのような認識の下に本稿での主眼は独立行政法人化された国立公文書館活動、特にデジタルアーカイブズ化に主眼を置き、その活動実態と変化の動向について述べることとする。

1. 社会的な環境の変化への対応と独立行政法人化

 日本における事務部門、オフィスワークの機械処理化(オフィス・オートメーション、略称OA)は1970年代後半から1980年代にかけて進展をみた。その中で文書作成の機械化、いわゆるワード・プロセッサーの登場が1980年代に進展し、1990年代にはパーソナル・コンピュータのハード、ソフト両面での発展、ネットワーク技術、検索用プロトコルの標準化の進展などが実現した。この結果は直ちに、オフィスワークに影響を与えた。従来の事務・文書処理における、いわゆるアナログの世界がデジタル化したのも、高度経済成長がやがてバブル経済を生みそして失われた十年と言う停滞期に移行するのも、この時期であった。
 この時期に生じた動きには、単に目先の経営の建て直しのための、リストラ・リエンジニアリングに留まらず、政治の世界での1955年体制の見直しに象徴されるように、高度成長からの脱却、構造変革、小さな政府等に見られる従来からの思考・行動原則や価値基準の見直しがあった。この流れの中で、国立公文書館業務に関する環境も変化していた。その主な変化としては次の3点を挙げることができる。*1)

  1. 行政に対する説明責任の要請や国民の公文書利用意識の高まりにより、重要な公文書等の移管・保存、並びに利用体制の整備が求められたこと。
  2. 情報技術の著しい進展に対応し、政府のIT戦略の推進や電子政府・電子自治体の確立に向けての取り組みが進められた結果、電子文書量の増大とそれへの対応が喫緊の課題になったこと。
  3. 過疎化、少子高齢化等を背景に、平成の大合併と言われる市町村合併等に伴う、地域の記録や史料の散逸防止と保存の重要性等についての認識が高まったこと。

 このような国立公文書館設立時には十分に想定されていなかった社会的な環境変化に即応し、館に課せられた使命や期待に応えるために、国立公文書館は独立行政法人化するとともに、組織体制の見直しも行った。独立行政法人化したことにより、館の運営についても中期計画を定め、事業年度毎に目標設定と監事による会計と業務の両分野での監査に加え、外部組織である内閣府評価委員会による評価の下での効率的な運営に努めており、最高レベルの評価を得ている。こうして、国立公文書館は国家と社会の歩みを記録する貴重な歴史資料ともなる公文書を国民の共有の財産として将来の世代に確実に伝えると言う、国家の基本的な使命の遂行に資するべく、折から実用化されたデジタル技術を最大限に活用することとなった。

2. 組織体制の見直しと整備

2.1 館内組織とその活動成果
 1971年の国立公文書館の設置に際して、館には歴史資料として重要な公文書の保存・閲覧・展示に加え、内閣文庫がその重要な一部門となり、その蔵書の保存・利用も任務に加えられた。その後、1998(平成10)年には書庫等の拡充のためつくば分館(茨城県つくば市)を設置し、2001(平成13)年には「アジア歴史資料センター」を開設し、現行の国立公文書館の体制が形成された。
 本館の組織体制は当初、資料種別に基づく公文書課と内閣文庫に分かれ、あたかもアーカイブズと図書館が並存するともいうべき機能別組織であった。この組織が環境の変化に応じて現行の、連絡調整、保存修復、目録、利用、研修並びに情報システム関係を担当する業務課と、公文書・古書を問わず、所蔵資料に精通して移管、評価・選別、レファレンス、公開審査、国際関係等の業務を担当する専門官室という1室1課体制に改められている。この組織変更はデジタル化という時代背景の推移を反映して、アーカイブズ機能と図書館機能とが国立公文書館内において統合され、一体として運用する体制が整備されたとも見ることができる。
 所蔵資料等の現況と利用状況についての概要は、平成19年3月末現在において、公文書625,996冊、古書・古文書479,500冊、計1,105,496冊で、データベースへの搭載率は99.7%である。うち、92,795冊、1,607万コマがマイクロ化されている。これらの利用は平成18年度において年間来館者数、29,420人、アクセス件数490,666件で、資料複写2,974件、マイクロ複写384,335コマである。これらの業務処理には業務量に比して極端に少人数の42名の常勤職員と若干の非常勤、嘱託等の職員に加え、業務の外部委託等で柔軟で機敏に対応しており、その労働生産性はきわめて高いと自負している。
 2001(平成13)年11月に発足した「アジア歴史資料センター(略称、アジ歴)」は(独)行政法人国立公文書館の組織を構成する重要な一部分であり、近現代のわが国とアジア近隣諸国との関係に係る公文書に特化したアーカイブズでもある。わが国初の実用化された本格的デジタルアーカイブズとして国内外からのアクセスに応じ、原則として1945年までの帝国陸海軍、外務省、そして国立公文書館所蔵公文書等をデジタル化して提供している。現在、日本語および英語での検索が可能であり、中国語、ハングルで概要を解説したホームページを提供している。利用に供されている画像数は平成18年度末で、1,250万画像であり、開設以来5年4ヶ月でのアクセス累計は国内外から約300万件を超えて、利用者は国内はもとより、極東アジアや北米に止まらず、世界的な広まりを見せている。

3. 公文書館サービスの高度化

 現行の国立公文書館の活動を規定する中期目標は2005(平成17)年度から2009(平成21)年度にいたる5ヶ年計画であるが、その計画の骨子には公文書館を巡る環境の変化に即応し、業務運営の効率化、財務内容の改善と並び、国民に提供するサービスの質の向上が掲げられている。この目標実現に向けて、中期経営計画において、以下の事項の取り組みが実施されている。

  1. デジタルアーカイブ化の推進
  2. 国および地方公共団体の関係職員研修体制の強化
  3. 国際的な公文書館活動への参加と貢献
  4. 歴史公文書等の所在情報の提供
  5. 公文書館活動高度化のための調査研究活動の実施
  6. アジア歴史資料のデータベースの構築及び情報提供

(1)デジタルアーカイブ・システム
 国立公文書館では政府が推進するe-Japan戦略に呼応して、館内外の総力を結集し、 2004(平成16)年度より計画的にデジタルアーカイブ化事業を推進してきた。主な事業は所蔵歴史公文書等のデジタル化、検索用語辞書の作成、目録情報の充実、ホームページコンテンツの充実、アジア歴史資料の情報提供システムの構築などである。
 2005(平成17)年4月より「国立公文書館デジタルアーカイブ」の運用を開始した。これにより、インターネットを通じて「いつでも」、「どこでも」、「だれでも」所蔵資料の検索と、資料本体の画像の閲覧が可能になった。2006(平成18)年4月より、国立国会図書館が開設した「NDLデジタルアーカイブポータル」に参加し、国立公文書館からのデータ提供を開始した。これにともない、国立公文書館のデジタルアーカイブ・システムに国立国会図書館を通じてもアクセス可能である。また、同年7月からは、学生・生徒等の利用を意識し、普及啓発用の歴史公文書探求サイト「ぶん蔵」を公開している。
 デジタルアーカイブ・システムのコンテンツとなる一般歴史公文書等のデジタル化については、平成18年度末において、約428万コマの画像閲覧を可能にした。それらに加え、重要文化財、貴重資料、大型資料などを中心にデジタルギャラリーとして、710画像、531点をインターネットで公開している。
 平成18年度のアクセス件数は、ホームページに約19万1千件、デジタルアーカイブ・システムに約10万3千件、デジタルギャラリーに約5万6千件であった。アジ歴も含めデータベースに蓄積される画像資料はDjVu、JPEG、JPEG2000形式で、スムーズな閲覧を可能にしている。
 検索機能も逐次強化されており、アジア歴史資料センター、岡山県立記録資料館、国立情報学研究所との横断検索が可能である。今後も各地方公文書館のデジタルアーカイブ化を推進する過程で、目録データやデジタル画像の形式、接続システム等の共通化、標準化をはかり、それら地方公文書館を中心にネットワークが拡大される予定である。

(2)資料類の来館利用、閲覧・展示
 公文書館が所蔵する資料類は非現用文書ではあるが、原則公開とは言うものの図書館とは異なり、個人情報にかかわる文書や、国の安全保障、外交上の視点等から非公開となる文書類も存在する。
 毎年度の移管される公文書の数は情報公開法の施行前後に若干の変動があったが、ここ数年は比較的安定しており、平成18年度は約6,000ファイル(広報資料を含む)が移管された。これはファイル単位で保存期間満了文書の約0.5%程度に相当し、一般に1-3%程度と言われている主要各国の移管比率と比較すると、かなり低い水準と言わざるを得ない。今後各府省からの保存期間満了文書の更なる円滑な移管が望まれる。
 これらの移管文書は、薫蒸、目録原稿作成、装備、公開区分の概定、を経て、非公開文書も含め全ての文書の目録が作成、公開され、インターネットを通じてアクセス可能となる。受入れてから目録情報の公開に至る作業期間は11ヶ月以内に完了させており、年度を越えての目録作業の滞貨はゼロである。
 書庫は閉架で、図書館とは異なり来館者の書架へのアクセスは禁じられている。閲覧要求も、マイクロ化済みの資料についてはマイクロでの利用となる。そこで、原本の展示が、年に特別展として春と秋の2回、企画展として夏に1回行われるほか、常設展が折々のテーマで行われる。デジタルアーカイブがあるとは言え、未だ公開資料にも未入力資料もあり、また原本の持つ迫力等から、閲覧利用も来館目的の中で大きな比重を占める。
 アーカイブズへの関心の高まりや展示活動の充実等に伴い、資料展示の入場者数が年間で1万5千名を超えて、更なる増大が見込めるに至った。この状況の下で、更なる展示の充実ためには専門の展示スペースを持たない施設上の制約が顕著になりつつある。

(3)教育・研修・普及啓発
 国立公文書館では主に国及び地方公共団体のアーカイブズ職員を対象とする教育・研修と、国の文書主管課職員を対象に適切な公文書の移管を継続的に実現するための記録管理業務の啓発のための研修との両面での研修を実施しており、主な研修プログラムは次の五種である。

  1. 公文書館等職員研修会
  2. 公文書館専門職員養成課程
  3. 公文書館実務担当者研究会議
  4. 公文書保存管理講習会
  5. 国立公文書館つくば分館研修・見学会

 1.2.3.はアーキビスト養成のため、4.5.はアーカイブズの啓蒙・普及のための研修プログラムであると言える。平成18年度においては、延べ受講者は138名であった。いずれの研修においてもデジタル環境下でのアーカイブズ活動が前提となっており、広義のデジタルアーキビストの養成や、デジタルアーカイブズのための記録の管理保存が前提となっている。研修の内容や講師陣の充実は高く評価されているが、受講者は原則として国と地方自治体のアーカイブズ業務関係者に限定されており、院生を含む学生の受講は認められていない。研修期間をはじめ具体的な研修内容は国立公文書館のホームページを参照されたい*2)。

4. 公文書館の充実とプレゼンスの高まり

 わが国の公文書の適切な管理、保存及び利用のためには現行の体勢があるべき水準からかけ離れて小規模・貧弱であることが指摘され*3)、これを強化するための提言が内閣府の懇談会から政府に提出された*4)。この提言において、速やかな「中間書庫システム」の導入による、重要な公文書の適切で円滑な移管の実施と、電子公文書の円滑な移管と長期保存の必要性が当面の喫緊の課題として強調された。この結果、平成19年度において、内閣府では中間書庫システムの実験・検討を行い、あわせて電子公文書等の長期保存の実証研究を行うことになっているが、この両課題について国立公文書館が緊密に協力・支援することで、デジタル化時代の公文書館活動に遺漏無きを期すべく、職員数等の制約のある中で体制を整えている。これはこのような体制を作ることで、政府部内、公文書館界のみならず、研究を含む情報管理の世界で国立公文書館のプレゼンスが高まることにもつながる。さらに、国立公文書館館長の国際公文書館会議(ICA;The International Council on Archives)副会長就任(2004年)もあり、ICA内はもとより、国際的な公文書館界で、日本はその公文書館の数や規模には不似合いな程の大きなプレゼンスを占めている。これには国立公文書館のICAに対する貢献の大きさに加え、日本のデジタル技術と伝統的な保存修復技術等への海外からの期待も寄与している。そしてこのプレゼンスの高まりは公文書館の充実を実現させるためには強力な追い風になりうるともいえる。
 言うまでも無く公文書館に代表されるアーカイブズは組織にとっての記憶中枢であり、組織の意思決定や組織文化の確立・伝承のための不可欠で枢要な機能であり、組織である。単に国や自治体などの公的組織のみならず、私的組織を含み、全ての組織におけるアーカイブズ機能をデジタル環境下において再認識することで、アーカイブズの充実発展を図ることが必要と考える。

註・引用文献

1)(独)国立公文書館.中期目標期間事業報告書(平成13年度-平成16年度)2005, p.1
2)URL:http://www.archives.go.jp/
3)高山正也編. 公文書ルネッサンス. 国立印刷局, 2006, 318p.
4)公文書等の適切な管理、保存及び利用に関する懇談会. 中間段階における集中管理及び電子媒体による管理・移管・保存に関する報告書. 内閣府, 2006, 103p.

(独立行政法人国立公文書館理事)

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