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トップ > 刊行物 > びぶろす > 平成19年1月号(電子化35号)

びぶろす-Biblos

平成19年1月号(電子化35号)

  • NATIONAL DIET LIBRARY
  • 発行/国立国会図書館総務部


はじめに

『びぶろす』は、昭和25年4月に創刊し、以後行政・司法各部門の支部図書館と専門図書館の連絡情報誌として今日に至っております。より広い範囲への提供を考え、平成10年8月号で冊子体を停止し、10月から国立国会図書館ホームページで公開しています。刊行形態は異なりましたが、今後も当館、支部図書館および専門図書館の折々の状況を掲載して行きます。

本誌に掲載された記事を全文または長文にわたり抜粋して掲載される場合は、サイトポリシーをご覧いただき、事前にご連絡ください。

目次

  1. レファレンス協同データベース事業の現況と活用
  2. アジア歴史資料センター資料提供システムの紹介
  3. IFLAソウル大会に参加して
  4. 平成18年度全国図書館大会に参加して
  5. 東京国立近代美術館フィルムセンターの映画関連資料について
  6. 平成18年度専門図書館協議会秋季セミナー
    「進化するライブラリーを目指して 体感!Web2.0」の報告
  7. 日誌

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レファレンス協同データベース事業の現況と活用

吉間 仁子

1.はじめに

レファレンス業務のスキルの共有と向上は、専門図書館、大学図書館、公共図書館といった館種を超えた共通の課題であり、これまでさまざまな図書館が取り組みを行ってきた。しかし、これまでの取り組みは単館か、あるいは館種や地域内に限定されていた。この課題に対し、さらに多くの図書館で、館種を超えて共通の手段で取り組んでいるのが、レファレンス協同データベース事業である。

本稿ではまず、レファレンス協同データベース事業の概要を解説する。その上で、データベースの現況と活用状況を紹介する。

2.レファレンス協同データベース事業とは

レファレンス協同データベース事業

図1:レファレンス協同データベース事業 トップページ
[http://crd.ndl.go.jp/jp/public/]

 レファレンス協同データベース事業とは、図書館におけるレファレンス業務や、一般の人々の情報検索に役立てることを目的として、図書館で行われているレファレンスサービスの記録や、調べ方に関する情報などのデータベースを協同構築し、インターネットで公開する事業である。協同でのデータの蓄積・公開の取り組みに加え、参加館フォーラム、研修会等を開催し、参加館が相互に、レファレンスサービスに関する情報交換、スキルの向上、人的交流を図ることを目指している。
 レファレンス協同データベース事業は、平成14年に実験事業として開始され、平成16年4月にデータ登録を開始し、データベースを参加館に公開した。さらに、平成17年度に本格事業となり、同年12月15日には、一般公開を開始した。
 平成18年11月30日現在、参加館は435館である(参加館一覧)。内訳は、公共図書館286、大学図書館110、専門図書館・その他35(東京都公文書館を含む)、国立国会図書館4(支部図書館を含む)となっている。支部図書館では、支部国土交通省図書館北海道開発局分館、支部農林水産省図書館、同農林水産技術会議事務局筑波事務所分館の3館が本事業に参加している。
 参加館がデータベースに蓄積しているデータ総数は、平成18年11月30日現在23,656件である。

2.1 4種類のデータとその内容
 データベースには、表1のとおり、4種類のデータが登録されている。それぞれのデータ・フォーマットとデータ項目の内容とを「レファレンス協同データベース標準フォーマット」として定め、公開している[http://crd.ndl.go.jp/jp/library/dataformat.html]。参加館はこれに準拠しデータの作成を行っている。
 また、参加館は、データ1件ごとに、インターネット上で一般に公開する「一般公開」、参加館の間では閲覧可能な「参加館公開」、登録した館のみが閲覧可能な「自館のみ参照」の3段階の公開レベルを定めることができる。

レファレンス事例
参加館におけるレファレンスサービスの記録。 利用者からの「質問」とそれに対する「回答」のほか、「回答プロセス」「参考資料」などが記載されている。
調べ方マニュアル
特定のテーマやトピックに関する情報源や探索方法に関する情報。「調査テーマ」とその「調べ方」が記載されている。
特別コレクション
個人文庫や貴重書など、参加館が所蔵する特殊なコレクションに関する情報。「内容」「来歴」「所蔵点数」などが記載されている。
参加館プロファイル
参加館に関する情報。 連絡先のほか、「利用条件」「特色」などが記載されている。

2.2 4種類のデータとその内容
データ作成及び公開の基本的な考え方については、『データ作成・公開に関するガイドライン』(以下『ガイドライン』)を刊行し、共通化を図っている。本文の理解を助けるため、付録として「標準フォーマット」、レファレンス事例データから約30件を選定した「レファレンス事例集」を収録している。
 なお、この『ガイドライン』は参加館に1冊ずつ配布しているほか、平成18年6月に日本図書館協会からも刊行されている[http://www.jla.or.jp/publish/bindex.html]。あわせて、インターネットでも全文を公開している。
[http://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/guideline_all.pdf]

3.機能

3.1 基本的な機能と、閲覧できるデータの範囲
レファレンス協同データベースは、一般利用者と参加館利用者とでインターフェースを分けており、利用できる機能、閲覧できるデータの範囲は、表2で示すとおり、参加館と一般利用者では異なる。参加館向け機能を使うには、IDとパスワードによるログインが必要である。

表2 レファレンス協同データベースで利用できるシステム機能とデータ
  一般利用者 参加館利用者
システム データ検索機能
データ閲覧機能
データ登録機能 不可
データ更新・削除機能 不可
参加館支援機能 不可
データ 一般公開データ
参加館公開データ 不可
自館のみ参照データ 不可 自館作成データのみ

3.2 参加館支援機能
レファレンス協同データベースは、一般利用者と参加館利用者とでインターフェースを分けており、利用できる機能、閲覧できるデータの範囲は、表2で示すとおり、参加館と一般利用者では異なる。参加館向け機能を使うには、IDとパスワードによるログインが必要である。

レファレンス協同データベースでは、参加館間の情報交換を支援するために、コメント機能や、掲示板機能、未解決レファレンス事例の電子メール配信を提供している。
 コメント機能は、レファレンス事例や、調べ方マニュアルの品質を向上させるために、参加館の間でコメントを交換する機能であり、一般には公開されない。なお、コメントの公開範囲を自館のみとするか、参加館公開とするかは受けた館が決定する。

衆議院、参議院の議席表が載っている資料(国立国会図書館)
[http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000028756]

 上記の事例では、メールレファレンスを受け付けている複数の参加館で、ほぼ同時期に同様の質問があり、当館にも図書館からの協力レファレンスとして問い合わせがあり調査・回答した。調査にあたって、先行してデータを公開した参加館同士でコメントの交換が行われ、さまざまなアプローチを共有できた例である。

3.3 新規公開及び更新データ情報のRSS配信
レファレンス協同データベースは、新規に一般公開されたデータ、あるいは一般公開レベルで更新されたデータについて、その情報を毎日RSS1.0で配信している。この機能を利用して、当館のデジタルアーカイブポータルでは、レファレンス協同データベースのRSSを3日に1回収集しており、ブラウジングのほか、他のデータベースと横断的な検索を可能にしている。

4.参加館での利用

基本的な機能と、閲覧できるデータの範囲
レファレンスの記録を『ガイドライン』に沿ってデータとして登録することは、手間と時間のかかる作業である。しかし、そのひと手間をかけてデータが蓄積されることにより、レファレンスの情報源としてはもちろん、ほかにも多面的な活用が可能となる。

4.1 研修
データベースのおすすめ事例や、カテゴリ別のブラウジング、新規公開事例をRSS配信で読むことにより、他の参加館での回答プロセスや参考資料を学ぶことができる。レファレンス研修の素材として、また自己研さんの資料として利用されている。

4.2 業務改善のデータ
レファレンス事例を蓄積し分析することによって、自館で受けるレファレンスの傾向を知り、「次に打つ手」を読むことが可能だろう。蔵書構築を見直す、自館のユーザに合った調べ方マニュアルを整備する、などの活用例がある。

4.3 広報
現在のところ、図書館におけるレファレンスサービスは利用者に広く知られているとはいいがたい。今後は、より具体的に「どんな質問にどんなふうに答えているか」をアピールする必要があろう。
 一般公開レベルのデータには、1件ずつ公開用URLが発行される。レファレンス業務を紹介するために、実際に自館で回答したレファレンス事例の公開用URLを図書館のホームページやブログで活用する、あるいは館報で知らせる、といった活用法がある。
 また、統計機能を用いれば、自館のレファレンス事例がどのくらい参照されているのか等を調べ、広報の成果を検証することも可能である。

5.一般公開後の反応

先に述べたように、この12月で一般公開後1年を迎える。以下、公開後の反応について紹介する。

図1 アクセス数の推移

図1 アクセス数の推移

水色が参加館向け公開画面からのアクセス、紫色が一般公開画面からのアクセスである。
 平成17年4月までは毎月1,000件程度であったが、国立教育政策研究所社会教育実践研究センターの図書館司書専門講座(平成17年6月)や、日本図書館協会主催の中堅職員ステップアップ研修(同年7月)で、このデータベースが素材として使われた影響で、アクセス数が大幅に伸びた。また、平成17年12月の一般公開後は、いったん落ち着いたものの、2月以降順調にアクセスが増え、6月以降は、一般公開直後よりも多く、最近では、月30,000件を超えている。特に、一般公開画面からのアクセスの伸びが大きい。これは、参加館だけではなく、RSS配信の結果、当館のデジタルアーカイブポータルや、ほかサーチエンジンの検索結果経由でアクセスできるようになり、参加館以外の図書館や、一般利用者のアクセスが増えた結果だと思われる。
 平成18年11月の一般公開データおよび参加館公開データ1件あたりの平均アクセス数は1.78回、最も読まれたレファレンス事例のアクセス数は822回であった。

5.2 一般利用者からの反応
登録データに関する質問は、データの提供館へお寄せいただくよう、「お問い合わせ」で案内している。このため、参加館に問合せや、未解決レファレンス事例への情報提供が寄せられているようである。
 また、最近では、一般公開事例に対し、ウィキペディア(Wikipedia)のデータ項目からリンクされるケースがでてきた。たとえば、「身土不二」の項目では、東京都立中央図書館のレファレンス事例、


「身土不二」の読み方と意味を知りたい。
 [http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000013089] を「外部リンク」として挙げている。回答プロセスや参考資料の記述が詳細なレファレンス事例が、信頼性の高い情報として参照されているのだと思われる。
 また、「レファレンス」がどういったサービスであるかを知らなかったブロガーが、デジタルアーカイブポータルで検索した結果、偶然自分が関心を持つ分野に関するデータを発見して、ブログの記事に感想を書き加えた例も現れている。

5.3 海外での反応
平成18年は、本事業が、海外からも関心を集めた年でもあった。8月に行われたIFLAソウル大会のプレカンファレンスでは、当館主題情報部の北川主任司書により当事業についての発表が行われ、一般公開する事例の選択基準についての質問や、コメント付与機能を用いた参加館の相互協力のあり方に興味を持ったという感想が寄せられた。続けて、9月に韓国国立中央図書館で行われた日韓業務交流では、筆者から「レファレンス協同データベース事業について」と題した発表を行い、韓国国立中央図書館からは、データ登録開始2年という短い期間で2万件を超えるデータが集まった理由について質問を受けた。さらに11月には中国国家図書館の代表団を招いて行った日中業務交流の場でも本事業が紹介された。ここでは、データそのものよりも、いかに経験知を共有していくかの試みに関心がもたれていたようである。

6.今後の予定

平成19年2月中旬には、今年度重点的に登録・作成を呼びかけた調べ方マニュアルのデータから、他の参加館にも作成の参考となるデータを選び、解説や参考資料を付した『調べ方マニュアル集』を刊行し、参加館に配布、本事業のホームページにも公開する予定である。
 平成19年2月22日に開催する第3回参加館フォーラムでは、今年度の事業報告のほか、参加館からの実践報告や、「レファレンスの醍醐味を語る」と題したパネルディスカッションを行い、さまざまな実践から得られた成果を、参加館の皆様と共有することを目指している。
 また、平成19年度は初めてのシステムリプレースに伴い、現在運用中のシステムの機能もいくつか改善していく予定である。

7.事業参加のお誘い

本事業では、随時、参加受付を行っている。行政・司法各部門の支部図書館をはじめ、各図書館で、少しでも関心をお持ちであれば「参加館募集について」をご一読のうえ、ぜひ事務局までお問合せいただきたい。もちろん、参加館の方からのお問合せも大歓迎である。データを作成し、登録、公開していくことでスキルはさらに磨かれる。


お問合せ先:
国立国会図書館関西館事業部図書館協力課協力ネットワーク係
E-Mail:info-crd@ndl.go.jp

参考文献:
レファレンス協同データベース事業に見るデジタルレファレンスサービス / 依田紀久、情報の科学と技術. 56(3) [2006.3]
デジタル時代のリソース・シェアリング、レファレンス、蔵書構築-実践的アプローチ / 北川知子、国立国会図書館月報. (548) [2006.11]
第2回レファレンス協同データベース事業参加館フォーラム報告 / 関西館事業部図書館協力課、国立国会図書館月報. (542) [2006.5]
第2回レファレンス協同データベース事業参加館フォーラム記録集 / 関西館事業部図書館協力課 [http://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/forum_h17_report.pdf]

(国立国会図書館関西館事業部図書館協力課)

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アジア歴史資料センター資料提供システムの紹介

堀井英夫

1.はじめに

新年あけましておめでとうございます。干支の猪のように前に突き進みたいものです。アジア歴史資料センターは、2001年11月30日に発足して昨年で5 周年を迎えました。当システムも5年目のシステム更新を行いましたので、センターの設立と目的、それを可能にしている資料提供システムについて、ご紹介したいと思います。

2.国立公文書館アジア歴史資料センター

 名称を省略して「アジ歴」と呼んでいます。アジ歴は、独立行政法人国立公文書館のもとに運営されています。国立公文書館、外務省外交史料館、防衛庁防衛研究所図書館が所蔵保管している近現代史資料のうち、日本とアジア近隣諸国等に関する原資料をデジタル化、データベース化して、インターネット上に無料で公開をしています。歴史研究の専門家でなくとも、キーワード検索を駆使すれば、新聞紙上等で話題となるような当時の近隣諸国との記録に辿り着けるかも知れません。一般の方々にも興味を持っていただけるように、インターネット特別展「公文書に見る日米交渉」なども展示しています。歴史の勉強になりますので、是非、ウェブサイトを訪問してみて下さい。

 当時の公文書等が誰でも自由にアクセスできることは、石井米雄センター長の「歴史認識の共有は難しくとも歴史事実は共有できる。」というお話に集約されます。アジ歴は、システム的にはサーバ環境だけの存在といえますが、その目的とする内容は、実は大変重要な役割を担っているのです。

 アジ歴のセンタースタッフは、外務省や文部科学省からの出向者などにより少人数で構成しています。場所は、千代田区平河町にあるテナントビルの4階に入居しており、近くには、国立劇場や最高裁判所があります。国立国会図書館にも近い位置です。インターネット接続環境がない方には、閲覧室も用意してありますのでご利用下さい。

3.資料提供システムの更新

システム的には、電子化された原資料画像と目録のデータベースであり、近現代史のデジタルアーカイブシステムです。画像は、情報をインターネット上で大量に提供するために開発された画像圧縮技術DjVu(デジャヴュー)形式で提供しています。目録情報は各資料の先頭から300文字程度を収録し検索キーとしています。デジタル化されたものから順次公開していますが、昨年10月現在での資料公開件数は、約85万3千件、1270万画像となっています。

キーワード検索画面

(キーワード検索画面)

システム構成は、資料データを保存しておく10TBのディスクストレージを中心に、Webサーバ、メール/DNSサーバ、一般検索用サーバ、画像配信サーバ、JPEG配信サーバのほか、辞書サーバ、外字フォントサーバ、データベースサーバ、運用管理サーバ等で構成されています。外部ネットワークからは、ファイアウォールを経由してDMZ(DeMilitarized Zone)から公開しています。辞書(検索を補助するための用語集。基本語と同義語・関連語を搭載している。)も順次更新しており検索を手助けします。

サーバー室

{サーバー室(左・筆者)}

データ作成ですが、所蔵機関が原資料のマイクロフィルムから、白黒2値400DPIでデジタル化したTIFF形式の画像をアジ歴に納品します。それを簿冊名、件名、先頭300文字の目録情報、所在情報等メタデータを作成し、画像はDjVu形式に変換します。文字はUnicode(UTF-8)、外字フォントは文字鏡を採用しています。

 今回のシステム更新では、電子データをXML/EAD(Encoded Archival Description)の目録仕様に置き換えました。これにより所在情報は、資料群データ、目録データを階層構造に可視化できました。検索機能としては、五十音検索、階層検索、キーワード検索、同詳細検索、レファレンスコード検索が可能です。また、来年度から、国立公文書館、国立国会図書館でも採用している新しい標準規格のJPEG2000での作成・公開も開始する予定です。また、データを公開するための作業やシステム運用管理機能も扱いやすくなっています。是非、http://www.jacar.go.jp/を訪問してみてください。

4.資料の共有に向けて

他機関との横断検索を可能とするZ39.50、SRW(Search/Retrieve Web Service)の技術を採用しました。現時点では、国立公文書館、岡山県立記念資料館(公文書)(古文書)、NACSIS Webcat だけが可能になっています。近い将来、国立国会図書館とも可能になると良いと思います。

5.おわりに

アジ歴の資料提供システムは、日本の近現代史アーカイブシステムとして、今後も充実していきます。歴史教育の重要性についてメディア等により紹介され関心が高いこの頃ですが、歴史事実を検証する手段として、教育現場の副教材などにも、みなさまの更なるご利用を願ってやみません。

(独立行政法人国立公文書館アジア歴史資料センター)

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IFLAソウル大会に参加して

堀越修

今年8月20日から24日まで、第72回IFLA(国際図書館連盟)年次大会(WLIC)が韓国ソウルで開催されましたが、私も専門図書館協議会の平成 17年度「若手育成基金」の助成を受け、参加しました。この文章ではIFLAソウル大会の概要を述べ、個人的に訪問したソウルの専門図書館数ヵ所をご紹介いたします。

1.ソウル年次大会の概要

IFLA(国際図書館連盟)は、1927年に設立された独立の非政府系国際団体で、約1,700の会員を擁し、団体・協会、機関、議決権のない個人と学生などが加盟していますが、その国籍は150カ国にも及ぶそうです。

IFLAは毎年別の都市で年次大会(WLIC:World Library and Information Congress)を開催しますが、時期はだいたい8月から9月の始めにかけてで、世界中から3,000人を超える参加者を集めるそうです。目的は、 IFLAの事業を行う、お互いの経験を交換する、専門的な問題を議論する、情報産業の最新製品を見る、ホスト国の文化を経験すること、等だそうです。

IFLA受付
IFLA受付

COEX
COEX

WLICには毎年異なったテーマが設定されますが、今年のテーマは"Libraries: Dynamic Engines for the Knowledge and Information Society"でした。「知識情報社会のためのダイナミックなエンジンとしての図書館」というような感じでしょうか。このテーマに従い、8つの部会の 45分科会が、Round Table等を含む200余の会議を開催しました。また、さまざまなレセプション、展示会、ポスター・セッションなど盛り沢山な5日間でした。

Sessionは事前登録しなければならないものが少なく、当日に行けば普通に座って話を聞けます。私が出席した主なSessionは、 Newcomers Session、Newspapers、Copyright and other Legal Matters、Education and Trainingなどでした。また、事前に登録を受けつけている図書館見学は、空きがあれば会場でも登録が可能でした。私はKDI School of Public Policy and Management Libraryに登録し、小ぶりながら無線ICタグを利用した先端的な図書館見学を堪能しました。

このようなプログラムやセッションも非常に興味深かったのですが、IFLAの大会を通して魅了されたのが韓国の情報に対する姿勢や図書館の文化でした。今回たまたま社内の人間の伝手などで類縁機関の図書館をいくつか訪問することができました。その紹介をさせて頂きたいと思います。

2.訪問図書館その1:KIEP(対外経済政策研究院)図書館

 KIEP(対外経済政策研究院)は、1990年に設立された国立の経済研究所で、韓国政府に対して重要な国際経済政策問題について答申すると同時に、国際経済政策に関する情報を蓄積する倉庫の役割も担っている、とホームページの李景台院長の歓迎の言葉に書いてあります(http://www.kiep.go.kr/eng/welcome.asp)。

その「倉庫」の役割を担うのがKIEPの図書館です。
 基本的には内部の研究員(博士号を保有するリサーチ・フェロウ40人とそれを支援する40人以上のリサーチャー)に特化された専門図書館ですが、外部からの利用申し込みにも対応するようで、1日に1〜2人の外部利用者がいるようです。
資料の点数は7万点で、国際経済、地域研究、国別研究などが中心となっています。また、65のデータベースがあり、中国との深いつながりを利用して、発展前から各省別の統計データを集めているのが特に目を引く資料でした。
KIEPのサービスの目玉は、個人別のキーワード配信で、研究員の指定したキーワードが出てくる資料を探し、毎日電子メールで送信しているそうです。プリントアウトすると、その厚さは優に30ページはありそうです。これだけでもたいへんな労力を必要とする作業です。  これからの目標としては、長期的には統計データベースを作成するほか、日本のアジア経済研究所などとも関係を深めたいとのことでした。

KIEP(対外経済政策研究院)図書館

また、余談ですが、KIEPの倉庫は地下にあるということで、書庫に資料を取りに行くのはエレベーターを利用しなければならないのですが、こうした業務に就くのは兵役を特別な理由で免除された人だということです。そうした人たちを「公益勤務要員」と呼び、例えば視力の問題で徴兵を免除されたペ・ヨンジュンもそのような任務を担っていたそうです。また、最近ではソ・ジソブがソウル麻浦区庁に公益要員として勤務したことから、麻浦区庁が出退勤の姿を見ようとする内外のファンで溢れたそうです。ひょっとしたら、KIEPの図書館で韓流スターに会えることがあるかもしれません。

3.訪問図書館その2:KOAMI(機械産業振興会)図書館

KOAMI(機械産業振興会)は、1967年に公布された「機械産業振興法」に基づいて、1969年に設立された政府系の非営利団体で、業界を代表する声となること目標としています。その役割は、カンファレンスやセミナー、展示会などの開催・参加を通じた海外技術と資本の導入で、韓国機械展示会、国際自動化精密機器展示会を交互に1年おきに開催しています。

KOAMIの図書館は、小規模ながら良く整理された図書館で、とりわけ機械産業関連の統計のコレクションは相当なものでした。この図書館を切り盛りするのはキム・ヒュンアさん一人で、貸出から書棚の整理、受入にウェブ・ページの作成、レポートの電子化を一手に担っています。

機械振興会館
機械振興会館

KOAMI図書室
KOAMI図書室

 

利用者は1日10〜15人だと言うことですが、ウェブ上には無料でPDFのレポートがダウンロードできるようになっていますので、そちらの利用者も多いようです。
 悩みは図書館の人員が一人しかいない、いわゆるワン・パーソン・ライブラリーであることに基づくものが多くて、中でも資料をほとんどネット購入にしている理由が、自分がカウンターを離れることができないからだ、と仰っていました。
 「機械産業」という非常に限定された分野の資料を集めねばならないため、開館時間以外に書店に足を向けて、関連書籍を物色することもある、とのことでした。その成果は見事なコレクションとして結実していました。

4.訪問図書館その3:SBC(中小企業振興公団)図書館

SBC(中小企業振興公団)は、中小企業の振興を目的に1979年に設立された非営利の政府系団体で、財政補助、技術コンサルティング、トレーニング、国際的な産業・技術協調などの支援を提供しているそうです。
また、中小企業の情報源としてはナンバー・ワンで、何十年にも及ぶ経験を蓄積した韓国中小企業のデータベースを保有しています。

SBCの図書館は、韓国中の中小企業への情報支援を行うと同時に、データベースの役割を担う、重要部分であると言えます。その図書館を切り盛りするのがアン・スンヒさんです。こちらも正規職員としては一人で、入れ替わり立ち替わり業務を補助してくれるアシスタントが2〜3人いるだけです。

SBC(中小企業振興公団)図書館

SBCの図書館は、KOAMIの2倍以上のスペースを有する図書館で、実際のところこの規模を一人で管理するのは想像しがたいものでした。加えて、SBC 図書館は韓国全土に5つの分館を抱え、その相互貸借等もアンさんが行うとのこと。さらに、ウェブ・ページの担当もアンさん、ということで聞いているだけで目が回りそうな仕事量でした。
実際のところ、資料がところどころで山積みになっていることから、とても一人では捌ききれそうもないは明らかでしたが、「私は強い人ですから」とアンさんは仰いました。
アンさんの努力が実を結び、韓国から一社でも多くの素晴らしい中小企業が誕生することを願って止みません。

5.おわりに

今回私がWLICソウル大会に行かせて頂けたのは、専門図書館協議会の平成17年度「若手育成基金」の助成があったからですが、年度の数字を見て頂いてもおわかりの通り、もともとは別の国際会議に出席するために頂いたお金でした。
そのため、ソウルに行ったのは本当に偶然でしかないのですが、その偶然を活かしたいと、精力的に現地の図書館を見て回りました。今回の報告では省かせて頂きましたが、KIEPで推薦された国立中央図書館も個人的に見学してきました。
その圧倒的な規模と、利用者の持つ熱気に小さなめまいを感じました。何というか、そういった強い「やる気」のようなものを日本の図書館で利用者から感じたことは久しくなかったからです。
 韓国の経済成長は「漢江の奇跡」と呼ばれました。しかし、それは純粋な「奇跡」ではなく、きちんとしたバックボーンに支えられたものなのだ、ということが今回のIFLAソウル大会出席でよくわかりました。  そうした「熱気」を取り戻すことができるのか、できるとしたらどうすればいいのか、そこで図書館が担える役割とは何なのか、そういったことをもう少し考えてみたいと思います。

{(財団法人)機械振興協会経済研究所情報資料部}

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平成18年度全国図書館大会に参加して

加藤 友江

1 全体会・基調報告

開会式・表彰式の後、日本図書館協会理事長塩見昇氏から次のような報告が行われた。
 今年は第1回全国大会の開催から100年目という話から始まり、教育基本法改正が進む中で改正法案第2条により図書館の役割・可能性が抑制されると危惧する図書館界の現状を述べられた。さらに、インターネットが普及している社会において、調べ物のほとんどがネット検索で済んでしまう状況の中での図書館利用者の減少、「図書館不要論」を語る者の出現もあり、図書館の重要性についての理解をいかに得ていくかが今後の焦点だと報告された。
 また、市町村合併が進む中で、公立図書館が合併されて公民館図書室などの分館化が起こっている一方、専門図書館では更なる細分化が進んでおり、人材面でも財政面でも今までとは違う図書館運営を強いられていることや、平成18年2月に自由民主党から出された国立国会図書館の法人化提言などについても述べられた。
 最後に、日本の図書館界は今後、地域を支えるための情報拠点をめざす必要があり、図書館同士の連携が重要だと語られた。

2 記念講演

「物語の日々」と題して、児童文学作家 あさのあつこ氏による記念講演が行われた。
 氏は、今回の大会開催地である岡山県出身とのことで記念講演の大役を引き受けられた。
 氏は講演の中で、「人生を変える“運命の本”との出会いが必ずある」と自身の幼少時代の体験を交えて語られた。作家になった経緯を実家の美作市(湯郷)の映像を背景に、「いつでも本と触れ合える場所の提供は子供にも大人にも必要であり、図書館はその最適な場所である。」と図書館業務に携わる参加者へエールを送られた。

3 分科会「第5分科会 専門図書館」

私が参加した第5分科会では、専門図書館ならではのノウハウを生かして作った独自のレファレンスツールについてオリエンテーションを受けた。

【講演1】
「『専門情報機関総覧』の二つの機能−変遷と特徴を踏まえて」

(独)日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館 青柳 英治

3年に1度刊行する専門情報機関を網羅的に収めたディレクトリー『専門情報機関総覧』の2006年版がこの度刊行された。今回の総覧刊行に携わった講師がその経験をもとに、最新版の編集過程を紹介、次いでこれまでに刊行された『総覧』の変遷と特徴を経年的に説明された。
 さらに『総覧』の機能をレファレンスツールとマネジメントツールの二つの視点から捉え、具体的な活用方法や事例を紹介された。
 版次を重ねる毎に、刊行時の状況に合わせて内容を充実し、その情報が蓄積されることで『総覧』の機能が高まってきたことや、今後の編集作業の一層の効率化や『総覧』を活用した新たな事業展開の模索などに取り組む必要があるという内容で講演を締めくくられた。

【講演2】
「銀行変遷史データベースの構築」

(社)東京銀行協会金融調査部 世良 裕一

銀行図書館創立100周年に当たる記念事業として企画された「銀行変遷史データベース」は、わが国において設立されたすべての銀行を対象にして、それらの設立・合併・解散といった経緯を辿ることができる便利なデータベースとして平成10年9月に完成した。
 データベースを作る際、検索方法を銀行名表音式にしようとしたが、漢字表記が同じで読み方が異なる銀行や読みが分からない銀行が多々あったため、銀行名表記式を採用した。データの更新は年4回行うこととしている。
 本年1月からは全国銀行協会のホームページで公開を開始し、1日平均85件のアクセスがあり利用者からの好評を得ているとのことである。

【講演3】
「必要が生んだレファレンス・ツール−企業名変遷要覧−」

(財)機械振興協会経済研究所情報資料部(機械工業図書館) 結城 智里

インターネットの普及により、昔に比べて資料の入手方法は格段に楽になったとはいえ、多種多様な情報の中から自分が必要な情報を選ぶにはそれなりの苦労が伴う。機械工業図書館では有価証券報告書が非常に利用頻度の高い資料であるが、検索に際して企業の合併や名称変更などがあった場合、その知識がないととまどうことがあった。そこで考え出したのが「企業名変遷要覧」である。
 この「企業名変遷要覧」の編集に当たり、データの収集が困難を極めた。インターネットを利用して検索をしても、吸収合併された会社の行方などは出てこない。書籍は残るがインターネット上の情報は日々変化し、切り捨てられていく情報量も多いのだと実感した。
 情報収集も検索も便利なインターネットだが、今後は時間の経過と共にインターネット上から消えてしまう情報を如何に保存し、利用出来るようにするかが重要になると思うと語られた。

【講演4】
「大阪府建築士会のホームページで提供する建築士向け情報サービス」

(社)大阪府建築士会建設情報センター運営委員 水間 茂

建築士情報センターでは、建築士向けの情報サービスとして建築関連雑誌・書籍の開架閲覧や専門職員による情報レファレンスを行ってきた。近年はパソコンの普及に伴い、建築設計業界は一人1台パソコン時代となり、併せて、情報検索の中心がインターネットに移行したが、専門的情報を提供するサイトがまだまだ少なく、専門サイトの構築・サービス提供が必要との声が高まっていた。
 ネット上にある玉石混淆の情報から必要なものを検索することができるシステムの構築も大事だが、情報の再構築と自ら創造する努力を怠ってはならないと考え、今後一層のサービス充実を図っていく予定とのことである。

【講演5】
「瀬戸内海沿岸地域データベース作成を通じての情報利活用ツール作成への課題」

(社)中国地方総合研究センター地域計画研究部 渡里 司

近年、自治体や経済団体などが瀬戸内海に関する調査研究や提言を重ねてはいるが、その研究成果や収集データは各機関が保管するため、一般に人々がそれらデータを総括的に入手することが難しい状況になっている。
 こうした状況を解決し、瀬戸内海に関係する各主体間の効率的な連携を促進するために「瀬戸内海沿岸地域データベース」を構築し、インターネット上に公開した。  データの収集から作成・加工までを行ったが、過去の資料の電子化には時間・労力がかかるうえ、少し遡ると情報自体が破棄されている場合が多かった。
 また、既にデータ化されている情報だとデザイン等の関係で所有は印刷業界の権利となってしまうため、紙媒体に基づきデータを作成していく必要があった。
 今後のデータベース充実計画として、掲載データの一層の充実を図っていく予定である。利用者の要望等も収集し、ニーズに対応した整備や他ツールとの連携を図っていく必要があるとの考えを述べられた。

4 感想

このような全国大会へは初参加であったため、どんな方達が集まりどのような議論が展開されるのか期待半分、不安半分で臨みました。
 「調べ物はインターネットで」の現在、図書館の存在意義を真剣に考える人々が集って、お互いの意見が交わせたことはとても有意義でした。
 当館は、国立国会図書館の支部図書館であるため公共図書館とは少し違う立場を取っておりますが、利用者への情報提供という使命は同じであり、今大会に参加してその重要性を改めて実感しました。

(支部農林水産省図書館)

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東京国立近代美術館フィルムセンターの映画関連資料について

石井 俊行

1.はじめに

専門図書館協議会関東地区協議会情報サービス研究会では、”図書館における情報サービスとは何か、どうあるべきか”をテーマに事例発表会を開催している。平成18年9月6日に開催された第2回情報サービス研究会に出席し、東京国立近代美術館フィルムセンター情報資料室長入江良郎氏による講演を聞く機会を得た。「東京国立近代美術館フィルムセンターにおける情報サービス」と題したこの講演では、東京国立近代美術館フィルムセンター(以下「フィルムセンター」と呼ぶ)が所蔵する映画関連資料(ノンフィルム・マテリアル)に関する事例発表が行われた。入江氏の講演およびフィルムセンターホームページでの情報をもとに、フィルムセンターの活動とフィルムセンターが収集する映画関連資料(ノンフィルム・マテリアル)について紹介してみたい。

2.はじめに

フィルムセンター外観
フィルムセンター外観

フィルムセンターは東京国立近代美術館の一部門である。5館ある独立行政法人国立美術館のうちの1館である東京国立近代美術館は、東京都千代田区にある「美術館」「工芸館」そして東京都中央区京橋にある「フィルムセンター」の3つの組織でなりたっている。

昭和27年に国立近代美術館が設置され、この組織の中に、映画部門(フィルムライブラリー)が開設された。国立近代美術館はその後、東京国立近代美術館として東京都千代田区北の丸公園へと移転したが、その跡地である京橋の地に、昭和45年フィルムセンターは開館した。フィルムセンターはその後、火災により建物の一部と所蔵フィルムの一部を焼失するという不幸にみまわれたが、平成7年5月に全館建て替えのうえ新築オープンし現在に至っている。

フィルムセンターはわが国唯一の国立の映画保存機関として国内外の映画フィルムを収集・保管しているだけでなく、映画関連資料(ノンフィルム・マテリアル)の収集も行っている(これについては後述)。

大ホール
大ホール

収集した映画フィルムや映画関連資料は、フィルムセンター内ホール(310席の大ホールと151席の小ホールがある)での企画上映会や、図書室・展示室での所蔵資料の一般公開などにより、映画研究者をはじめ映画愛好者に利用されている。また、フィルムセンターは国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF)の正会員でもあり、映画フィルムを破壊・散逸から救うべく、世界各国の映画保存機関と連携して、フィルムの保存・復元に関する研究活動を行っている。その他、映画に関するシンポジウム・講演会、全国への巡回上映である「優秀映画鑑賞推進事業」、映画教育プログラム「こども映画館」、メールマガジンの発行など、映画文化の振興に関する諸活動を行っている。

これらの活動は、ホームページの他、年報や、各種刊行物でも紹介されている。刊行物の中でも「NFCニューズレター」の総目次をご覧いただければ、その活動の幅広さを知ることができる。

3.所蔵フィルムについて

約46,000本の映画フィルムを所蔵しており(うち邦画約4,000本)、神奈川県相模原市には、フィルムの特性にあわせた温湿度管理が可能な専用の保管施設もある。
 所蔵フィルムについては、「フィルムセンター所蔵映画目録 :
日本劇映画」(平成13年3月刊行)や「所蔵映画フィルム検索システム」(平成18年12月現在メンテナンス中)で検索可能である。
 日本映画の振興の一環として文化庁が公開する「日本映画情報システム」にも情報を提供している。ナショナルフィルモグラフィーというべき「日本映画総合目録」が存在しない現状で、フィルムセンターも協力するこの活動は今後注目される。

4.図書室・展示室とノンフィルム・マテリアルについて

京橋のフィルムセンターといえば、映画上映を思い浮かべる方が多いと思うが、図書室・展示室を一般公開し、来館利用に供している。図書室・展示室は、情報資料室という部署で運営しており、フィルム以外のあらゆる資料(ノンフィルム・マテリアル)の収集・整理・保存・公開を担当している。映画フィルムは過去の作品ほど現存しないものが多く、この場合のノンフィルム・マテリアルの存在価値は非常に大きいものとなるだろう。

 現在の建物の4階にある図書室は、昭和53年に辻恭平氏の旧蔵書を基本として開室した映画関係図書を中心とする専門図書室である(辻恭平氏は映画分野の参考図書である「事典映画の図書」の著者)。蔵書数は約26,000冊(うち洋書約3,700冊)であり、映画雑誌は、300種43,000冊を所蔵する。参考図書、「キネマ旬報」などの一部の資料は開架式だが、基本的には閉架式の図書室である。前述の辻氏考案の独自の十進分類法が採用されている。所蔵資料は、東京国立近代美術館図書検索OPACにより、美術館、工芸館で公開している専門図書も含め検索することができる。

専門図書館協議会関東地区協議会情報サービス研究会では、”図書館における情報サービスとは何か、どうあるべきか”をテーマに事例発表会を開催している。平成18年9月6日に開催された第2回情報サービス研究会に出席し、東京国立近代美術館フィルムセンター情報資料室長入江良郎氏による講演を聞く機会を得た。「東京国立近代美術館フィルムセンターにおける情報サービス」と題したこの講演では、東京国立近代美術館フィルムセンター(以下「フィルムセンター」と呼ぶ)が所蔵する映画関連資料(ノンフィルム・マテリアル)に関する事例発表が行われた。入江氏の講演およびフィルムセンターホームページでの情報をもとに、フィルムセンターの活動とフィルムセンターが収集する映画関連資料(ノンフィルム・マテリアル)について紹介してみたい。

図書館
図書館

また、7階にある展示室では、企画展示、常設展示が行われ、収集した映画関連資料の公開を行っている。図書以外の収集対象資料としては、シナリオ、ポスター、スチール写真、技術資料(映写機など)、生涯資料などがあり、その収集対象は幅広く、数値化できないものも多数あるという。これらは「映倫管理委員会」や収集家からの寄贈などにより収集しているものである。収集した資料は、保管・整理し展示という流れとなるが、美術館や博物館を対象に貸し出されるものや、出版社や放送関係企業に対し、特別閲覧として図版提供されることもある。
 情報資料室長の入江氏による今回の講演では、今後の課題として「コレクション露出率の向上」があげられた。収集の意義をアピールするためにはこれが一番大きい課題であると考えているという。これは、国立国会図書館をはじめ、資料収集機関にとっては同じことがいえるだろう。

展示会の様子
展示会の様子

5.おわりに

映像記録/再生技術の進歩に伴い、DVDなどの新しい媒体が登場し、家庭でもいっそう手軽に映画を楽しむことができるようになった。しかし、その一方で複合映画館(シネマコンプレックス)は、1990年代以降国内各地に急速に広がり、大きなスクリーンで映画を鑑賞するというスタイルも見直されている。フィルムセンターのホールでの企画上映も人気作品は満席になることがあると聞いている。フィルムセンターでの名作観賞後、図書室で関連の文献を読み、企画展示にも足を運べば、スクリーンに映らない映画の世界を味わうことができるのではないだろうか。

(国立国会図書館総務部支部図書館・協力課)

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平成18年度専門図書館協議会秋季セミナー 「進化するライブラリーを目指して 体感!Web2.0」の報告

永野 祐子

今年度の専門図書館協議会秋季セミナーは、11月30日(木)、12月1日(金)の2日間にわたって、名古屋で開催されました。筆者は専門図書館協議会で会員サービス委員会の研修担当委員をしていますが、他の30名の参加者の方々と同じくテーブルにつき、実習や討議に参加させていただきました。ここでは一参加者に近い立場からのご報告をさせていただきます。(日程表などはこちらの専門図書館協議会の秋季セミナーのページをご覧ください。)

「Web2.0」という言葉は今やインターネット上だけではなく新聞や雑誌等の従来のメディアでもよく目にしますが、「結局何なのか」分かりにくいと感じていた方もいらっしゃるかもしれません。それは、「Web2.0」が特定のサービスや技術をさすのではなく、一言で定義できるものではないからのようです。それでは何なのか、を学ぶために、その理論と実際に詳しい専門家の話を聞くことによってまずイメージをつかみ、それから具体例にふれて実感(体感!)できる場にしよう、というのがこのセミナーの眼目でした。専門図書館協議会のセミナーですから、そのあとに、それではそれをどう図書館の仕事に生かしていけるだろうか、とのディスカッションに発展させる時間も持たれました。

以下、各講師による講演の内容、実習とグループ討議の様子についてご報告します。

1.「Web2.0の基礎知識―進化するインターネット―」(多摩大学メディア&インフォメーション・センター 池田剛透氏)

そもそも「Web2.0とは何なのか?」というところから説き起こしてくださいましたが、この言葉は、2005年に出版社のティム・オライリー氏が発表した論文によって世界に広まったとのことです。ここ1〜2年で大きく変わったウェブをさした言葉です。OSやハードウェアが違ってもウェブにアクセスできれば同じようにサービスが利用できるという「プラットフォームとしてのウェブ」、Wikipediaを代表例とする「集合知の利用」など、論文中では「7つの原則」があげられています。池田講師は、それぞれの原則について実例を交えて説明したあと、従来のウェブ(Web1.0)との比較を通して、改めて新しいウェブの特徴をまとめてくださいました。また、Amazon、GoogleMap、MixiなどWeb2.0的なサイトやサービス、それらを可能にしている技術もあわせて紹介されました。

林講師による講演の様子

林講師による講演の様子

2.「ライブラリーからの情報発信事例―Web2.0の技術を活用して―」(農林水産研究情報センター 林賢紀氏)

次に、より実践的な内容にシフトし、Web2.0の技術を取り入れることで「待ち」から「攻勢」への転換を図るための図書館サービスの例があげられました。(1)RSSによる新着情報の配信、(2)書誌データを自由に引き出し利用できるなどの機能を持つ新しいOPACの開発、(3)Blog、Wikiを使った情報共有です。それぞれの技術の特徴や簡単な使い方の説明の後、体験(実習)の時間となりました。

3.Web2.0の体験

1日目の最後は、6人ずつ6つのグループに分かれ、池田、林両講師の手助けや助言を受けながら、PCを使って実習をおこないました。PCは無線LANによって室内に設置したサーバに接続し、このセミナー用に準備された擬似環境の下で、それぞれのソフトを実際と同じように使ってみることができました。 Wikiを使ってグループごとにページを作り、他のグループの違う端末から編集をしてみたり、すでにあるページの名前をどこかで使うと自動的にリンクが貼られることを確かめたりしました。次に、Movable Typeというソフトウェアを使ってBlogを作成、公開してみることをしました。そして、RSSリーダを使って自分たちが作成したWikiやBlogの更新状況をチェックしました。Blogを自分でも書いているという人から、どれも触ってみるのは初めてという人まで、グループの中で相談しあい、他のグループからのレスポンスに歓声をあげたりしながらの体感!でした。

実習中に追加説明を聞く参加者

実習中に追加説明を聞く参加者

4.「専門図書館におけるWeb2.0活用の可能性―利用者からの提言―」(一橋大学総合情報処理センター 兼宗進氏)

セミナー2日目です。ウェブの歴史やWeb2.0の特徴をおさらいしながら、ロングテール、集合知などがWikipediaや、Amazonや Googleなどのサービスにどうあらわれているか等、幅広い話題がとりあげられました。また、従来の主に専門家を対象にした検索式を使用しての検索方法が、思いついた1〜2語を入れて1件の結果が出てくればよい、というものに変化していることも指摘されました。これについて、質疑の中で、レファレンスのニーズも変わってきているように感じるという参加者の声もあがりました。また、90年代には図書館の世界と同じだったウェブが、2000年代になって別の世界になっているという話もありました。ロングテールなどのWeb2.0のコンセプトや、Wiki、Blog、RSSなどのコミュニケーションツールの活用が、今後の専門図書館のあり方にとっても参考になるのでは、との示唆で講演はしめくくられました。

5.グループ討議

これまでに学んだWeb2.0の技術を図書館の業務にどう生かすことができるかについて、グループごとにディスカッションをおこない、その結果をまとめて Wikiのページを作成し、最後に発表を行いました。RSSによる新着資料・雑誌目次情報などの配信、Wikiを使った組織内での情報共有や共同での編集作業、一人ひとりの利用者にあわせて情報を提供できるOPACをAmazonのような技術を使って作成できないか、レファレンス事例の蓄積をWikiでおこなえば、リンクも自動的に作成されて便利であるなどのアイディアが出されました。どのグループでも、前日に習得したWikiの基本的なページ作成法を用い、見やすくまとめていました。

今まで、ウェブ上で利用できるさまざまなサービスについて、ただ「便利になった」と認識していただけでしたが、このセミナーで、それらが新しい技術とその応用によって生み出され、しかも日々進化していることに目を開かされました。漠然とした呼称ともいえる「Web2.0」がこれだけ世間で喧伝されるということは、多くの人が現在のウェブの状況に何らかの新しさと可能性を感じているからかと思います。また、技術の進歩によってばらばらに誕生してきたものが全体としてある傾向のようなもの、データの共有、多くの人の参加、専門家とアマチュアとの境界のあいまい化というような特徴を示していることを興味深く思いました。間口は広く、個々のテーマについては深くなってきているウェブの世界の中(外?)で、図書館や情報センターのありかたはどうなるのか、何ができるか、ということに思いをはせました。

また、2日目の午後には自由参加の見学もありました。会場の産業技術記念館は、名古屋駅から名鉄で一駅、トヨタグループの発祥の地に設立された紡績や自動車に関する展示を主とする施設です。糸車での糸紡ぎから完全機械制御の織機まで、次々に改良を加えられていった機械の数々に目を見張りました。一時代前まで夢のようだったことを、技術を生み出すことによって実現してきたものづくりの世界は、現在のウェブの世界にも通じるものがあるように思いました。写真を取り込むとその柄が布となってあっという間に織り出されていく機械だけを目にすれば、そのすばらしい技術をも当たり前のように思ってしまいそうです。ですが、はじめからあったのは綿の実から布を作るというシンプルな目的でした。道具が何のために作られてきたのかということ、それを使うのは私たちだということ、そして「見なければ分からない」ということをも、この2日間にわたるセミナーの終わりに感じました。

(国立国会図書館総務部支部図書館・協力課)

日誌(平成18年10月〜平成18年12月)
平成18年
10月3日 平成18年度行政・司法各部門支部図書館職員司書業務研修
 「著作権制度の概要について」「複写サービスと著作権」
10月6日 平成18年度行政・司法各部門支部図書館職員司書業務研修
「資料保存研修」
10月10日 特別研修
平成18年度行政・司法各部門支部図書館職員司書業務研修
特別科目「見学会:アカデミーヒルズ六本木ライブラリー」
9館 13名
10月23日 平成18年度行政・司法各部門支部図書館職員司書業務研修
「雑誌記事索引について」「交流会」
10月18日 平成18年度行政・司法各部門支部図書館職員司書業務研修
「レファレンス入門 人文分野」
「レファレンス入門 経済社会分野」
10月20日 支部図書館長異動
内閣法制局図書館長 三浦 武敏(前 山田 雅夫)
10月20日 特別研修「NDL-OPACの検索と各種サービス」
11館 16名
10月23日 平成18年度第1回兼任司書会議
10月24日 平成18年度行政・司法各部門支部図書館職員司書業務研修
「新聞資料について」「電子資料室について」
10月26・27日 平成18年度第92回岡山大会 全国図書館大会
13館 20名
10月31日 平成18年度行政・司法各部門支部図書館職員司書業務研修
「国会レファレンスについて」「研修に関する懇談会」「修了式」
11月6日 平成18年度第2回中央館・支部図書館協議会幹事会
11月21日 特別研修「見学会:財団法人渋沢栄一記念財団付属渋沢史料館及び実業史研究情報センター」
5館 8名
12月4日 国立国会図書館長と行政・司法各部門支部図書館長との懇談会

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